アンケートのはがきにはどういう態度でのぞめばいいのだろうか。
本や雑誌のページのあいだにはさんである、あれだ。「抽選でプレゼントが当たります」と書いてあれば、悩んだりはしない。送ればいい。人はプレゼントに弱い。「私だめなんです、プレゼント」という人は、まずいない。
だからアンケートに応えてもらいたければプレゼントに限ることがわかるが、困るのは、「今後の出版の参考にさせていただきます」というだけの理由でアンケートをとるケースだ。プレゼントはない。なにももらえないんだから捨ててしまえばいい。ところが、こういうケースではたいてい「出版を希望するタイトル」を書く欄があり、希望者が多ければそのタイトルが出版されることがあるらしい。むかし読んだ本が今は絶版で手に入らないというのはよくある話だ。あるいは、単行本を文庫で出してほしいという人だっている。そこで、「ちょっと、書いてみるか」ということになる。アンケートの項目はだいたい決まっている。「住所」「氏名」「電話番号」「職業」「お買い求めの書店」「本書の感想」などで、めんどくさいなあと思いながら記入する。ところが、やっかいな項目がある。
「購読している雑誌(3点)」
ふだんどんな雑誌を読んでいるか、こたえなくてはならない。よく、本棚をみればその人がどんな人かわかるというが、おそらくこの項目の狙いもそこにあるのだろう。購読している雑誌でその人の人間性がわかってしまう。おそろしい。「1点」ならまだいいのだ。『25ans』と書けば、ファッションや美容に興味がありますといっていることになる。だが3点だ。3点というのが困る。
建築関係の本を出している会社に勤めているとしよう。アンケートのはがきが届く。「購読している雑誌」をみる。
『週刊東洋経済』『PRESIDENT』『週刊文春』
典型的な人、という感じがする。なんの典型かはわからないが、とにかく、「いるよな、こういう人」という感じだ。別のはがきをみる。
『エル・ジャポン』『クロワッサン』『きょうの料理』
これもどんな人か、なんとなく想像がつくから不思議だ。だが、この人がどうして建築関係の本を買っているのかは謎である。だがこういう人ならまだいい。
『たまごクラブ』『JUNON』『國文學』
何者だこいつは。職業は「自営業」とあるから、いよいよわからない。わからないけれど、これだけばらばらだと「好奇心旺盛な人」というふうにも考えられる。いちばんやっかいなのは、「微妙な人」だろう。
『サライ』『農耕と園芸』『スコラ』
微妙である。
(2003.1.1)