夕空の法則

嬉し嬉し

今も昔も、宇宙人の存在を信じて疑わない人は多い。「そんなものはまやかしだよ」と言下に否定する人も、また多い。だが想像を絶する広大な宇宙である。なんらかの知的生命体がいても不思議ではないだろう。

私が藤原宗好さんのホームページを見つけたのは偶然のたまものだった。この人が所属する組織の名前にまず驚いた。

「地球計画推進本部事務局」

なにを推進するのかよく分からない。ホームページの最初のページを見た。

「我々はこれからどうすればよいのでしょうか?それにはたった一つだけ残された希望があります。それは地球の開港を行ない、高度な宇宙文明を導入することです。その日を今か今かと待つ宇宙の仲間たちが月面基地で待機しています」

「宇宙の仲間たち」とは何者か。誰だか知らないが、「今か今かと」待っているらしい。よく分からないので、次のページを見た。タイトルがある。

「地球開港に向けての宇宙での式典ご案内」

宇宙で式典があるらしい。説明がある。

「この度のセレモニーは宇宙の神々様のご計画です。宇宙には8000名のキリストが用意されています」

意味が分からない。「キリストが用意されています」。どういうことなのか。

「歴史上の人物も今回の式典に参加されます。一例をあげると、ナポレオン、リンカーン、ケネディ元アメリカ大統領、ガンジー、ダライラマ、ヒットラー、ワシントン、アインシュタイン、ベル、エジソン、日本からは織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、上杉謙信、武田信玄、聖徳太子、坂本龍馬、湯川秀樹などの方々です。皆様その方々との出会いをお楽しみ下さい」

お楽しみ下さいと言われても困る。藤原宗好さんはこの人たちに会ったのだろうか。会ったのだろう。それにしても何の式典なのか。

「只今、セレモニー参加の出欠をとっております」

藤原宗好さんが出欠をとっている。

「費用について  無料です 会費もいりません」

宇宙の式典が無料。これは安い。

「服装について  自由です」

どんな恰好でもいいらしい。

「行き方  円盤搭乗場所(ラプチャー地点)より円盤で行きます」

「円盤搭乗場所」が分からない。月面にあるのか。

「搭乗場所・日時  直前になりますが、必ず申込みいただいた方にご連絡致します」

申込み方法も明記されている。

「参加希望者の方は、住所、氏名、生年月日、電話番号、FAX番号、緊急連絡先(携帯番号)をご記入の上、地球計画推進本部事務局 藤原宗好(fax:0729-71-XXXX) までご一報下さい。頂いた情報は、搭乗名簿用として宇宙へ提出する以外は、一切使用しません」

名簿は宇宙へ提出するらしい。

「何をすべきか、何をする為に私たちはこの時代、この地球に生まれてきたのかを知るときが来るのです。そして、新生の星地球で、嬉し嬉しの時代を共に迎えようではありませんか」

嬉し嬉しの時代。それはそれでまた困った時代だと思う。

(2001.11.4)