夕空の法則

正月は餅だ。とにかく餅である。雑煮はもちろんのこと、海苔餅、きなこ餅、砂糖醤油餅、そのほか地方によっていろいろな餅の食べ方があるだろう。

そして正月の餅といえば気になるのが、餅を喉に詰まらせて亡くなる老人である。なぜか毎年必ずどこかの老人が、まるで規則でもあるかのように、餅を喉に詰まらせる。毎年死者が出るのだから、小さく切って食べるとか、汁物といっしょに食べるなど気をつけて食べれば事故は防げるはずだが、どういうわけか事故は後を絶たない。

東京消防庁は毎年暮れになると、餅による事故防止を呼びかけている。

「餅による事故」

東京消防庁の用語は微妙にちがう。

「餅による窒息事故」

たしかに窒息して絶命する。

去年の12月26日から今年の1月3日にかけての「餅による窒息事故」の統計がある。カッコ内は前年度の記録だ。

死亡重篤重症中等症軽症
男性4 (2)4 (9)1 (1)0 (1)3 (7)12 (20)
女性3 (0)2 (1)3 (1)1 (2)2 (5)11 (9)
7 (26 (10)4 (2)1 (3)5 (12)23 (29)

つまり去年の正月は男性が4人、女性が3人、餅で命を落としているのである。

毎年必ず死者を出す食品。考えてみると、これは恐ろしいことではないか。「毎年必ず」である。ここには法則がある。

「餅を食えば死ぬ」

餅を食うときは心してかからねばなるまい。餅に目がない人は悩むだろう。

「あとひとつ食べようかな。でも死にたくないからな。やめようかな。どうしようかな」

ぶつくさ言ってないで食ったらどうだ。

ところで去年は狂牛病が猛威を振るった。安全だと言われてきた和牛も、もはや安心して食べられなくなった。ここにも法則がある。

「牛を食うと狂う」

では餅と牛肉を食べなければいいのか。危険な法則はほかにはないだろうか。

「納豆を買うと必ずタレとカラシの袋がついている」

それのどこが危険だというのだ。

「納豆のタレの袋を破ると必ずタレがピュッとこぼれる」

言われてみればそうである。あれはいったいどうなっているのだ。必ずピュッとこぼれる。こぼすのはみっともない。これも危険な法則である。

「餃子のラー油の袋はなかなか破れない」

たしかにそうだ。まったくイライラさせられる。どうにかならないものか。だが危険なのは納豆や餃子に限らない。

「牛乳を飲んで笑うと鼻から出る」

鼻から牛乳である。情けない光景である。

「鼻から牛乳を出す浜崎あゆみ」

ファッション・リーダーの浜崎あゆみも、鼻から牛乳を出してはカリスマ性もへったくれもなくなる。

「鼻で牛乳を飲む米倉涼子」

なぜ鼻から飲む。口で飲め。

「鼻で牛乳を飲み、目から出す」

それは電撃ネットワークという芸人の芸だ。よい子は決して真似してはいけない。

(2002.1.1)