静山社の『ハリー・ポッター』シリーズが飛ぶように売れている。
イギリスのJ・K・ローリングという人が書いた小説だ。あいにく読んでいないので中身は知らないが、おそらく冒険小説なのだろう。第一作の『ハリー・ポッターと賢者の石』は全世界で一億部売れたらしい。以後、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』『ハリー・ポッターとアズガバンの囚人』と、続編が次々と翻訳されている。『賢者の石』は映画化もされて、興行成績も順調だ。
『賢者の石』の原題はこうだ。
「Harry Potter and the Philosopher's Stone」
まさに「賢者の石」である。ところがアメリカ版はタイトルがちがう。
「Harry Potter and the Sorcerer's Stone」
sorcerer は魔法使いとか魔術師という意味だ。
賢者の石の由来は錬金術である。卑金属を金や銀に変える究極の物質であり、永遠の生命をも可能にする生命の秘薬だ。実際には存在しない。いわば伝説の石である。錬金術は一種の魔法だから、アメリカでは「賢者の石」を「魔法使いの石」にしたのだろう。
思えば、原題を勝手に変えることはよくある。とくに映画で多い。
ヴィヴィアン・リー主演の『哀愁』の原題はまったくちがう。
『ウォーター・ルー橋』
『サウンド・オブ・ミュージック』のスペイン語タイトルを見たときは驚いた。
『微笑と涙』
微笑と涙が出てこない映画がこの世にあるだろうか。どんな映画も『微笑と涙』でよさそうな気がする。
数年前大ヒットしたインド映画『ムトゥ』の邦題も原題といささか異なる。
『ムトゥ 踊るマハラジャ』
おそらく『踊る大走査線』のヒットにあやかろうとしたのだろう。
映画化された『ハリー・ポッターと賢者の石』はイギリスで大ヒットしている。週末3日間の興行収入は28億円で、『スター・ウォーズ エピソード1』を10億円も上回っている。日本でも封切り2日間で興行収入15億7千万の新記録を樹立した。
こうなると気になるのは続編だ。『ハリー・ポッターと秘密の部屋』である。だが二匹目のどじょうはなかなかいないものだ。どうすればヒットするか。
「邦題を変える」
『ウォーター・ルー橋』を『哀愁』にするお国柄だ。ここはぜひともあらたな邦題をつけてもらいたい。
『ハリー・ポッター 秘密の部屋でござるの巻』
いいのか。これでいいのか。
『ハリー・ポッターの男はつらいよ望郷編』
ハリーのナレーションで始まる。
「わたくし、生まれも育ちもイギリス・ロンドン。ウエストミンスター寺院で産湯をつかい、姓はポッター、名はハリー。人呼んでフーテンのハリーと発します」
バナナを叩き売りしそうである。
『ハリー・ポッター平成残侠伝 唐獅子牡丹』
高倉健の出番だ。宣伝コピーが気になる。
「死んでもらいます」
いやだ。死にたくない。映画を観るのは子供だ。子供が喜ぶタイトルにしてほしい。
「さ~て次回のハリー・ポッターは? 『波平二日酔い』『カツオの宿題』『タラちゃん旅に出る』の三本です」
続編の健闘を祈る。
(2001.12.15)