夕空の法則

英語

ウッディ・アレンの映画が好きである。

毎年のように喜劇の秀作を発表しているが、どれも水準が高い。アレンといえば、ユダヤ人独特のユーモアと、ニューヨークである。「音痴の人のためのミュージカル」という企画で撮影した『世界中がアイ・ラブ・ユー』ではベニスが舞台になったが、映画そのものの出来は良かったものの、やはりウッディ・アレンはヨーロッパの風景にはなじまない。アレンはニューヨークに限る。とりわけ監督しては『ハンナとその姉妹』が傑出している。『カメレオンマン』も捨てがたい。

喜劇映画といえば、ディズニーが製作したCGアニメの『トイ・ストーリー』も好きだ。主人公は、男の子に大切にされているカウボーイのおもちゃである。男の子はカウボーイのおもちゃに名前をつけている。

「ウッディ」

アメリカ人にはウッディという名前が多いのだろうか。『ランダムハウス英語辞典』で調べてみた。

woody 《米俗》 勃起したペニス」

なんだこれは。いきなり、とんでもないことになっている。なぜウッディが男性の陰部を指すのか。由来がわからない。

落ちつこう。こういうときは、落ちつくに限る。

話を映画に戻そう。

秋にスピルバーグの新作『A.I.』を観た。かのスタンリー・キューブリックが監督しようとして果たせぬまま他界し、その遺志をスピルバーグが継いで撮影した。期待したが、残念ながらつまらなかった。「キューブリックなら絶対こんな撮り方はしない」と何度もつぶやきながらスクリーンを観ていた。近年のスピルバーグの作品では『プライベート・ライアン』が佳作だと思う。とくに冒頭の25分間のノルマンディー上陸作戦の描写はすごい。

ちなみに『プライベート・ライアン』の「プライベート」とは兵士という意味の名詞である。「ライアン二等兵」というくらいの意味だ。たしかそのはずである。念のため『ランダムハウス英語辞典』で調べてみよう。

private 《軍事》 兵卒、兵士 private Johnson ジョンソン二等兵」

やっぱりそうだ。だがほかにも意味があった。

privates 《婉曲的》 陰部、秘部」

またしても陰部である。アメリカ映画は大丈夫か。

例文に「ジョンソン二等兵」があるということは、ジョンソンはアメリカの男性名の代表なのだろう。これも調べてみよう。

Johnson 《米黒人俗/卑》 陰茎、ちんぽ」

いったい、なにがどうなっているのか。なにを調べても陰部だ。

陰部といえば、クリントン大統領が元実習生と「不適切な関係」を結んでしまいスキャンダルになったことは記憶に新しい。クリントンのファースト・ネームはビルである。だがこれはウィリアムの愛称である。そしてウィリアムには「ウィリー」という別の愛称もある。有名なカントリー歌手にウィリー・ネルソンがいる。

いやな予感がする。

Willie 《英俗》 ペニス、おちんちん」

予感が的中してしまった。

話題を変えたほうがよさそうだ。

わたしは日本野鳥の会会員である。先日キツツキを見た。キツツキは英語でペッカーという。漫画のウッドペッカーをご存知の方は多いだろう。

pecker 《主に米・カナダ俗/卑》 陰茎、ちんぽ」

しばらく英語には関わり合いたくない。

(2002.1.2)