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まんじゅう

マスコミのスポーツニュースはワールドカップの話題でもちきりである。新聞を開けば「あと9日」とあり、「そうか、あと9日なんだな」となぜかそわそわさせられ、テレビのレポーターが「カメルーンがまだ来ません」と興奮気味に喋るのを聞くと、「まったく何をやっているんだカメルーンは」と、こっちも意味もなく憤慨してしまう。

 日本代表の一次リーグの対戦相手はベルギーとロシアとチュニジアだ。ベルギー代表にはニックネームがある。

「赤い悪魔」

1906年に赤いユニフォームで挑んだオランダ戦で劇的な逆転勝利をおさめた際に、「赤い悪魔のようだ」と雑誌でたとえられたのが始まりらしい。しかもベルギーの国旗には、勝利を意味する赤が使われていて、縁起がいい色なのだそうだ。そこでベルギー代表は公式ニックネームとしてこれを使い続けているという。

自ら悪魔を名乗るというのは、考えてみるとすごいことである。代表入りが決まった選手が親に朗報を知らせる。

「やっとぼくも悪魔になりました」

まずいんじゃないか。これは、まずいんじゃないか。と思っていたら、韓国のキリスト教系団体が、「悪魔はキリスト教徒の敵だから、赤いトラなど、宗教的意味のないものに改称すべきだ」と反発しているらしい。だがベルギーのサッカー協会は伝統を重んじて無視しているという。仮に別の名前を選ぶとしたら、何を選ぶべきだろう。

「ベルギーといえば」

ワッフルやムール貝やレース編みが一般的だろう。だが、私にとって、ベルギーといえば小便小僧である。

「赤い小便小僧」

赤い小便小僧が相手なら、日本は勝てるに違いない。

 だが実を言うと、私が気になっているのは、対戦相手のニックネームではない。

「まんじゅうの出番ではないのか」

大きなイベントがあるたびに、日本人はなぜか記念のまんじゅうを作る。羊羹でもいいはずだし、せんべいだって構わないと思うのだが、なぜか必ず「まんじゅう」なのだった。

 ワールドカップほどの世界的なイベントとなると、公式スポンサーというものがあるから、小さな会社が勝手にあやかって物品を発売するわけにはいかないと思うが、きっとどこかでこっそりとまんじゅうを作っている人がいるはずだ。調べてみると、案の定見つかった。

「エムボまんじゅう」

カメルーンのキャンプ地である大分県中津江村の観光施設が、ガンバ大阪で活躍したカメルーンの英雄エムボマにちなんだまんじゅうを開発中だという。

新潟にもあった。

「酒蒸まんじゅう」

宣伝文句がある。

「ワールドカップ2002新潟限定商品 酒を使った蒸まんじゅうです」

なぜワールドカップの限定商品が「酒蒸まんじゅう」なのか、まるで見当がつかないが、それが「まんじゅう」でさえあれば中身はどうでもいいに決まっている。

「まんじゅうさえあれば、それでいい」

まんじゅうには、人を思考停止へと誘う力があるから不思議である。

(2002.5.22)

夕空の法則