夕空の法則

表彰せずにはいられない

年末である。年の瀬を迎えるとなぜか人は表彰することになっている。

「年末だからな。表彰しなくちゃな」

理由はわからない。だが人は表彰せずにはいられない。

年末に発表される賞はたくさんある。

「パートナー・オブ・ザ・イヤー」

パートナー・オブ・ザ・イヤー審査委員会という組織が毎年表彰している。今年は渡辺裕之・原日出子夫妻だそうだ。どういう基準で、なにが目的で贈られる賞なのか、わたしにはわからない。

「日本レコード大賞」

大晦日の恒例行事である。主催は日本作曲家協会だ。去年はサザンオールスターズの「TSUNAMI」だった。選定基準は「作曲、編曲、作詩を通じて芸術性、独創性、企画性が顕著な作品とする。優れた歌唱によって活かされた作品で大衆の強い支持を得た上、その年度を強く反映・代表したと認められた作品」だという。

だが年末の表彰といえば「ベスト」だ。

「ベストジーニスト賞」

日本ジーンズメーカー協議会が、ジーンズがもっとも似合う有名人に授ける賞である。今年は草彅剛と浜崎あゆみが選ばれた。

「日本メガネベストドレッサー賞」

日本医用光学機器工業会の賞だ。今年は「芸能界部門」がKONISHIKI、「スポーツ界部門」が新庄 剛志、「サングラス部門」が浜崎あゆみだ。そしてこんな部門がある。

「特別賞部門」

その実態とはなにか。

「メガネをかけてほしい人に贈る賞」

なんだそれは。受賞者は米倉涼子だ。授賞パーティーでは本当にメガネをかけていた。

だが「ベスト」で有名なのはなんといってもこれだろう。

「ベスト・ドレッサー賞」

社団法人日本メンズファッション協会が選ぶ。「単にファッション性を問うのではなく、自主性と流行性、時代性、さらに人間性が問われる」という。今年は石原伸晃行革担当大臣、渡辺貞夫、新庄剛志、米倉涼子などが受賞した。

どうやら今年は米倉涼子の年である。

「日本メガネベストドレッサー賞」
 「ベスト・ドレッサー賞」
 「ベスト・レザーニスト賞」
 「ネイル・クイーン賞」

ところで、賞をもらえる人がいるということは、当然もらえない人もいるということである。これではかわいそうだ。年末だ。表彰してあげようではないか。

「ベスト瞬き賞」 石原慎太郎

石原慎太郎はベストドレッサー賞をはじめ数々の受賞歴を誇るが、なぜ人は彼の瞬きを表彰しないのか。

「ベスト・あの人は今賞」 つぶやきシロー

どこでどうしているのか。

「ベスト謹慎賞」 田代まさし・稲垣吾郎

二人揃っての受賞である。甲乙つけがたい。

「ベスト逮捕賞」 野村沙知代

この人は前から胡散臭い人だと思っていたよ。

「ベスト生物兵器賞」 炭疽菌

あまり表彰したくない。

「ベストまだご存命ですか賞」 森繁久彌

老いてますます盛んだ。

だが今年もっとも重要な賞はこれだ。

「ベスト・セキセイインコ賞」 レモン

我が家のインコである。

(2001.12.9)