米『タイム』誌の映画評論家ステファニー・ザカレックが2019年に公開された映画のトップ10を発表し、1位にアルモドバルの『ペイン・アンド・グローリー』(Dolor y gloria)が選ばれました。順位は以下の通り。
アメリカの『タイム』誌が2019年に公開された映画
昨日ビクトル・エリセがビルバオ美術館で『石と空』(Piedra y cielo)と題するビデオ・インスタレーションを行いました。バスク出身の彫刻家ホルヘ・オテイサと建築家ルイス・バリェーが作曲家アイタ・ドノスティア(ホセ・ゴンサロ・スライカ)に捧げて制作しナバラ県レサカのアギニャ山頂に設置されている記念碑に基づく作品です。エリセにとってオテイサは「著作のみならず彼の作品の意味と人生観からして詩人でした」。
今回のインスタレーションはギプスコア県オリオ生まれのオテイサの内面へダイブする試みで、タイトルの「石と空」はスペイン内戦を逃れて渡ったコロンビアで地元の革新的な詩人たちが自分たちの創作活動をフアン・ラモン・ヒメネスの詩集『石と空』のタイトルにちなんで「石と空」と名づけたことに由来します。
作品は二部構成で、第一部「昼の時間」(Espacio Día)は11分3秒、「夜の時間」(Espacio Noche)は6分35秒。音声にはアイタ・ドノスティアが1954年に作曲した最後のピアノ曲『悲痛なアンダンテ』(Andante doloroso)が用いられます。エリセの説明によると「昼の時間」は自然が歴史の痕跡と共存するイメージ提示し、「夜の時間」は月明りに照らし出された舞台の形而上学的な次元をとらえようとする試みとのこと。特に夜の撮影は「夜は熟考にとって根本的な時間である」というオテイサの考えに従ったそうです。エリセは2008年にオテイサ生誕百周年を記念するドキュメンタリー映画の製作を委嘱されたのですが仕事の都合で撮影できず心苦しく思っていたので、『石と空』で借りを返せたとのこと。
Piedra y cielo - trailer
俳優で吹替声優としても活躍したオメロ・アントヌッティが昨日イタリアのウディネの病院で亡くなりました。84歳でした。記事によると映画デビュー作はアルマンド・クリスピーノ&ルチアーノ・ルチニャーニ監督、ヴィットリオ・ガスマンとジーナ・ロロブリジーダ主演のイタリア映画Le piacevoli notti(1966年10月28日イタリア公開、日本未公開、タイトルを直訳すると『夜の快楽』)ですが、Internet Movie Databaseで調べた限りでは同年7月29日に西ドイツで公開されたアーンスト・ホーフバウアー監督のSchwarzer Markt der Liebe(タイトルを直訳すると『愛の闇市場』)のほうが先のようです。
スペインにおけるアントヌッティの代表作はビクトル・エリセ監督の『エル・スール』(1983年)です。以後ハビエル・レボリョ監督の『ビスカヤ湾』(1985年、日本未公開)に出演し、1988年にはカルロス・サウラ監督の『エル・ドラド』でロペ・デ・アギーレを演じました。ペドロ・オレア監督の『剣術の師範』(El maestro de esgrima、1992年、日本未公開)とハイメ・デ・アルミニャン監督の14, Fabian Road(2008年、日本未公開)にも出演。イタリア映画の代表作はタヴィアーニ兄弟の『父/パードレ・パドローネ』(1977年)、『サン★ロレンツォの夜』(1982年)、『カオス・シチリア物語』(1984年)。
イタリアでは『スター・ウォーズ』『ロード・オブ・ザ・リング』などの外国映画の吹替声優としても名高く、ロベルト・ベニーニ監督の『ライフ・イズ・ビューティフル』ではナレーターを務めました。
劇作家で演出家のアルベルト・コネヘロの戯曲『小麦の幾何学』が今年のスペイン国家劇文学賞に選ばれました。文化スポーツ省が授与し、賞金は2万ユーロ(約2万4千円)。初演は今年2月、マドリードのバリェ=インクラン劇場で自ら演出しました。ともに建築士であるジュアンとライアのカップルがジュアンの父親の葬儀に参列するためバルセロナから南部の寒村へ向かう物語。
コネヘロは1978年ハエン件ビルチェス生まれ。王立劇芸術高等学院を卒業しマドリード・コンプルテンセ大学で博士号を取得。代表作は『熱』(1999年、国家短篇劇賞次席)、『ハンガリー人』(2000年、国家大学演劇賞)、『断崖』、『ウシュアイア』(2013年、リカルド・ロペス・デ・アランダ賞)、『暗い石』(2016年、マックス賞最優秀劇作家賞、セレス賞最優秀劇作家賞)、『ある日のすべての夜』、『雪の日』(2017年)。
古典劇の上演台本も数多く手がけており、代表作は『シェイクスピアのマクベスと嵐』(2009年・2010年、劇団デフォンド)、『プロジェクト ホメロス/オデュッセイア』(2016年、劇団ラ・ホベン・コンパニーア)、『ドン・ペルリンプリンが庭でベリーサと恋する話』(2016年、劇団マタタルソ、秋から春への演劇祭参加)、『リンコネーテとコルタディーリョ』(2016年、劇団セクスピア・テアトロ)、『トロイアの女たち』(2017年、メリダ古典演劇祭参加)、『フエンテオベフーナ』(2017年、スペイン国立古典劇団)。今年の初めにはフェデリコ・ガルシーア・ロルカが遺した未完の戯曲『題名のないコメディア』を「完成」させた『人生の夢』をマドリードのエスパニョール劇場で初演したばかりです。
コネヘロ作品はスペイン国外ではギリシャ、イギリス、チリ、メキシコ、ウルグアイ、コロンビア、パラグアイ、アルゼンチン、ペルー、ロシアで上演されています。