スペインの舞台演出家ミゲル・ナロスが一昨日亡くなりました。享年八十四。
1928年マドリード生まれ。王立音楽朗読学校(Real Conservatorio de Mísica y Declamación)を卒業後奨学金を得てフランスに留学。帰国後は演出家のルイス・エスコバールに見込まれてマリーア・ゲレーロ劇団に入団し俳優としてデビュー。エスコバール演出、ダリの舞台美術によるホセ・ソリーリャ作『ドン・フアン』での演技でその名を知られるようになりました。演出家ホセ・ルイス・アロンソによって発掘された衣裳デザイナーとしての腕も鍛えました。
演出を手がけた作品は記事の最後に一覧表があります。古典から現代の名作まで多岐にわたります。わたくしが見たなかで印象に残るのは1987年にエスパニョール劇場で観たシェイクスピア作『真夏の夜の夢』。とりわけ舞台を所狭しと駆け回っては低い声で笑うパックを演じた俳優の演技に魅了されました。
エルネスト・カバジェーロが二期目の芸術監督を務めるスペイン国立演劇センター(CDN: Centro Dramático Nacional)。予算が2007年当時に比べて半減したにも関わらず、秋に始まる新シーズンのラインナップはなかなか見応えがありそうです。
スペインの映画製作者エリーアス・ケレヘータが他界しました。1963年に自身の製作会社を設立。その十年後、1973年に『ミツバチのささやき』でサン・セバスティアン国際映画祭の金貝賞(コンチャ・デ・オロ)を受賞。約四十年にわたって手がけた作品は名作佳作ぞろい。
ビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』『エル・スール』、カルロス・サウラ監督の『狩り』『ママは百歳』『カラスの飼育』『我が愛しのエリーサ』(Elisa vida mía)『愛より非情』『アナと狼』、ハイメ・チャバリ監督の『幻滅』(El desencanto)、マヌエル・グティエレス・アラゴン監督の『凶暴』(Feroz)『唖よ、話してごらん』(Habla mudita)、モンツォ・アルメンダリス監督の『タシオ』『二十七時間』『クローネンの物語』、エミリオ・マルティネス・ラサロ監督の『マックスの言葉』、フランシスコ・レゲイロ監督の『また会えたら』(Si volvemos a vernos)、リカルド・フランコ監督の『パスクアル・ドゥアルテ』、フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督の『家族』『地区』(Barrio)『月曜日はひなたぼっこ』(Los lunes al sol)、愛娘グラシア・ケレヘータ監督の『通過駅』(Una estación de paso)『ロバート・ライランズ最後の旅』『七つのキャロムテーブル』(Siete mesas del billar francés)……。生涯で五十五本の作品を製作しました。
今年のアストゥリアス皇太子賞文学賞はアントニオ・ムニョス・モリーナに決まりました。スペイン人の受賞者は1998年のフランシスコ・アヤーラ以来十五年ぶり。民政移管後にデビューした作家、いわゆる民主主義時代の作家として初の受賞です。
アンドラ出身の作家アルベール・サルバド Albert Salvadó の小説、ジャウマ一世三部作が映画化されます。2011年にバルセロナに設立されたばかりの製作会社プリメル・シンケーナ(Produccions del Primer cinquena)のプロデューサー、ジョルディ・カルブネル氏によると、制作費は一作あたり二千万ユーロ(約25億8千万円)、三作で六千万ユーロ(約77億3千万円)、公開開始は2015年。しかしながら今のところ資金調達の真っ最中で、調達の目処が立ち次第監督を選ぶとのこと。『グラディエーター』や『ロード・オブ・ザ・リング』級の世界配給を目指すそうですが、どうなりますことやら。
マドリードのカナル劇場で『ペピータ・ヒメネス』を上演中の演出家カリスト・ビエイトが活動拠点をスペインからスイスに移し、バーゼル歌劇場の芸術監督スタッフの一員になると発表しました。同歌劇場では2006年から定期的に仕事をしてきましたが、今月からバーゼルに住まいを移して名実ともに歌劇団の芸術監督の仕事に専念するそうです。移籍後最初の演目はフェデリコ・ガルシーア・ロルカ作『血の婚礼』の予定。その後は古代ローマの詩人ルクレーティウスの哲学詩『物の本性について』 De rerum natura を舞台化するそうです。
スペイン俳優組合(La Unión de Actores y Actrices)が主催する第22回俳優組合賞の授賞式が昨夜マドリードのアルテリア・コリセウム劇場(Teatro Arteria Coliseum)で開催されました。生涯功労賞はフリエタ・セラーノ。
組合賞は映画、演劇、テレビの三ジャンルにそれぞれ三つずつ部門があるのですが、主演賞(protagonista)と助演賞(secundario)はいいとして、三つ目の reparto 賞をどう訳したらよいか迷います。要するに脇役のことなのですが、〈脇役賞〉ではどうも格好がつきません。でもこれ以外に思いつかないのでとりあえず〈脇役賞〉にしておきます。受賞者リストは以下の通り。
部門 | 受賞者 | 対象作品 |
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主演賞 | ||
マリベル・ベルドゥ | 白雪姫 Blancanieves | |
アントニオ・デ・ラ・トーレ | グループ7 Grupo 7 | |
助演賞 | ||
カンデラ・ペニャ | 両手にピストル Una pistola en cada mano | |
フリアン・ビリャグラン | グループ7 Grupo 7 | |
脇役賞 | ||
アンパロ・バロー | マクトゥブ Maktub | |
アルフオンソ・サンチェス | グループ7 Grupo 7 |
部門 | 受賞者 | 対象作品 |
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主演賞 | ||
ブランカ・ポルティーリョ | 人生は夢 La vida es sueño | |
カルロス・イポリト | フォリーズ Follies | |
助演賞 | ||
マレーナ・アルテリオ | 息子たちは眠った Los hijos se han dormido | |
アルベルト・ベルサル | イスカリオテのユダ最期の日々 Los últimos días de Judas Iscaariote |
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脇役賞 | ||
アスンシオン・バラゲール | フォリーズ | |
アルベルト・イグレシアス | 二十日鼠と人間 De ratones y hombres |
部門 | 受賞者 | 対象作品 |
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主演賞 | ||
アドリアナ・オソーレス | グラン・オテル Gran Hotel | |
ロベルト・エンリケス | イスパニア Hispania | |
助演賞 | ||
コンチャ・ベラスコ | グラン・オテル | |
ペドロ・カサブランク | イサベル Isabel | |
脇役賞 | ||
マリビー・ビルバオ | 忍び寄る女 La que se avecina | |
ホアキン・クリメント | 迷える時代の愛 Amar en tiempos revueltos |
受賞者 | 対象作品 |
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エレーナ・ラヨス | 笑劇と牧歌 Farsas y Églogas |
アレックス・ガルシーア | 死亡通知 Entre esquelas |