12月10日EFE通信配信による日刊セビーリャ紙の記事。
下で触れたクリスティーナ・オヨスですが、2005年にセビーリャにフラメンコ博物館を設立したのはご存じの通り。しかし収入が伸び悩み、この秋建物の売却を決定。不動産サイト idealista.com で売りに出しました。売却価格は599万7千ユーロ(約7億8500万円)。1平米あたり3500ユーロ(約45万8千円)。購入価格は78万1000ユーロ(約1億200万円)で改修費用が250万ユーロ、プラス展示物目録作成費用も加わり、投資額は合計540万ユーロ(約7億700万円)とのこと。
博物館の責任者であるクルト・グロッツ氏とティナ・パナデーロ氏によると、投資額の82.36%は民間資本で、公的補助はヨーロッパ基金から53万4000ユーロ(約7千万円)、アンダルシア州政府文化省から32万7000ユーロ(約4280万円)、セビーリャ市から12万ユーロ(約1750万円)。
厄介なのはヨーロッパ基金の助成金。契約では最低5年間開館するのが条件。買い手が博物館以外の用途に使う場合、これまでの助成金を返済しなくてはなりません。売却後も開館を続ければ問題なし。
2005年以降の赤字額は2005年が56,000ユーロ、06年が128,000ユーロ、07年が152,000ユーロ、去年は54,000ユーロ。入館者数は三年半で58000人と悪くはないものの(九割以上は外国人)経営状況は厳しい。
博物館として存続させるには建物を売却する以外ないと判断。うまく買い手がつくといいのですが。
11月28日の予告記事なので旧聞に属しますが。
ラモン・オリェール率いるバレンシア州政府劇場バレエ団 El Ballet de Teatres de la Generalitat の公演『カルメン』が中国ツアーを行います。11月28日・29日の北京公演を皮切りに、12月2日深圳(記事には Shinzen とありますが一般的には Shinzhen)――、3日Lvyinge(どこ?)、4日海口、6日成都、8日重慶(これも Chongqin とあるけどふつうは chongquing)と、六都市を回ります。ていうか、回ったはず。
クリスティーナ・オヨスが参加して話題なのですけど、振付のみならず出演もしたのでしょう。ラモン・オリェールとは2005年の愛知万博で名古屋公演を行った『南への旅 Viaje al Sur』でもコラボレーションをしました。
12月17日ラ・バングアルディア紙の記事。
今年創設されたばかりの現代音楽国家賞にシンガー・ソングライターのジュアン・マヌエル・セラットが選ばれました。賞金3万ユーロ(約390万円)。現代音楽の分野で功績顕著とされる個人・団体を毎年顕彰する賞で管轄は文化賞。
セラーは1943年バルセロナ生まれ。シンガー・ソングライターであり作曲家であり詩人。標準スペイン語(カスティーリャ語)とカタルーニャ語の両言語で活動。代表曲に「伝統歌集」 Cançons tradicionals 、「ラ・パローマ」 La paloma 、「友へ」 Per al meu amic 、「ポートレート」 Retratos 、「愛の歌」 Canciones de amor 、「僕の愛する女」 La mujer que yo quiero 、「一言居士」 Cada loco con su tema 、「敬具」 Sinceramente teu 、「愛の詩」 Poema de amor 、「理想郷」 Utopía 、「完璧な人間はいない」 Nadie es perfecto 、「こちらこそ」 El gusto es nuestro (アナ・ベレン、ミゲル・リーオス、ビクトル・マヌエル共演)、「一石二鳥」 Dos pájaros en un tiro (ホアキン・サビーナと共演)、「地中海」 Mediterráneo 、「ペネロペ」 Penélope 、「幸いなるもの」 Bienaventurados 、「愛の言葉」 Paraules d'amr など。枚挙に遑がありません。
カタルーニャの〈ノバ・カンソー〉(新しい歌)運動の旗手で、1968年にユーロビジョン・ソング・コンテストのスペイン代表として「ラ、ラ、ラ」 La, la, la, で参加(作曲はドゥオ・ディナミコのマヌエル・デ・ラ・カルバとラモン・アルクーサ)。カタルーニャで歌いたかったもののフランコ時代ゆえカタルーニャ語は禁止。後にマシエルがこの曲を標準スペイン語で歌い優勝。
45年に及ぶキャリアで30枚以上のレコードをリリース。最新作は詩人ミゲル・エルナンデスに捧げた『光と影の息子』 Hijo de la luz y de la sombra 。
10月29日からアルファカルのフェデリコ・ガルシーア・ロルカ公園(旧フエンテ・バケーロス)で行われてきた発掘調査の結果が発表されました。 276.75平米、75.75立方メートルを調査したものの「人を埋葬した形跡は全くない」とのこと。地表から40cmのところに石が一つ見つかりましたが、人骨や歯のかけらはなし。ボタン、ファスナーなど衣服の断片もなし。人を埋葬するには最低一メートル半は掘らねばならないのに石は僅か40cm。「この場所で何があったという可能性は絶無」とレポートは結論づけたそうです。
ロルカの遺族は「メディアの見世物」になるのを恐れて最初から発掘調査に反対していたからいいものの、他の五人の遺族の心中は察するに余りあります。
ロルカの遺骨が眠っている場所はどこなのか。死後73年を経て、振り出しに戻りました。
近々発売予定のガブリエル・ポソの新著『ロルカ、最後の散歩』 Lorca, el último paseo (Almed 社)でロルカ殺害に関する新事実が明らかにされたそうです。
暗殺に関与したとされるラモン・ルイス・アロンソは事件に関して沈黙を守り、フランコ将軍の死後アメリカに逃亡。その直前に逃亡の理由を長女エンマ・ペネーリャに語ったというのです。エンマは2007年8月に他界。本にはエンマ・ペネーリャの証言が載っているとのこと。
これまでの定説によると、ロルカがロサーレス家に匿われているのを密告したのは妹コンチャで、父親の身の安全を守るためだったとされてきました。しかしエンマの証言によると、ロサーレス家の長男がファランヘ党員の行進のさなかに「ロルカは我が家にいる」とエンマの父ルイス・アロンソに告白。「でも出て行ってほしい」。この会話のあと、ルイス・アロンソはスペイン独立右翼連合(CEDA)のトップに報告、「フェルナンド・デ・ロス・リーオスお気に入りの甘えん坊をひとつ懲らしめてやるか」という話になった。 ロサーレス家からロルカを連れ出したのはルイス・アロンソではなくロサーレス家の長男で、ロルカは手錠もかけられなかった。CEDAとフアランヘ党は権力争いをしており、ロルカはその餌食にされたとエンマは語ったそうです。
ルイス・アロンソはロルカ暗殺の手柄を立てたことで喝采を浴びた。「父は告発書に署名し、逃げも隠れもしなかった。告発書にはロルカはフェルナンド・デ・ロス・リーオスの秘書で、〈アカ〉だと明記されていたんです」。 スペイン内戦終結後、ルイス・アロンソは一本の電話を受けます。スペイン国外でロルカ暗殺の真相をめぐる動きが出始め、フランコ将軍が苛立った。電話の主はフランコ将軍。事実調査のためルイス・アロンソに話を聞こうとした。以後、ルイス・アロンソは事件に関して一切口にしなかった。証拠品は全て破壊、自分の命も危くなった。
記事の写真の前列で赤ん坊を抱えた男は、「ロルカの遺骸をこの手で埋めた」と歴史学者イアン・ギブソンに証言し、場所を初めて教えたマノリーリョ。しかしマノリーリョは他の人たちには別の場所を教えたそうで、「ギブソンに教えた場所は最初にぱっと思いついた場所を言っただけ」。さらにロルカの亡骸は「共和政府のプロパガンダに利用されるのを恐れた当局によって隠された」というアグスティン・ペニョンの証言も。
謎は深まるばかり。
12月12日の記事。
グラナダ近郊、アルファカル市のフエンテ・バケーロスで発掘調査が進行中。今週18日(金)が最終日。この日までにロルカの遺骨が発見されない場合、ロルカについては再調査は行わないことが、アンダルシア州政府と歴史記憶委員により発表されました。
調査を開始して既に一ヶ月半。八ヶ所のうち五ヶ所を発掘して見つかったのはただの大きな石ころだけ。墓穴らしきものは見当たらず。ロルカと一緒に殺された小学校教師ディオスコロ・ガリンド、銛打ち士フランシスコ・ガラディーとホアキン・アルコーリャス、収税官フェルミン・ロルダン、家具修理士ミゲル・コボの六人の亡骸も今のところ見つかっていないばかりか、その形跡すらないそうです。今回何の成果もなければ来年アンダルシアの外の場所で調査が行われる予定。
第67回ゴールデングローブ賞。ミュージカル『NINE』のペネロペ・クルスが助演女優賞候補。対抗馬は『プレシャス』のモニーク、『ア・シングル・マン』のジュリアン・ムーア、『マイレージ、マイライフ』のアナ・ケンドリックとヴェラ・ファーミガ。
『NINE』の予告編を観た限りでは「うーん…」という感じ。今年オスカーを獲ったばかりだし。でもいま世界でいちばんキラキラ輝いている女優であるのは間違いありません。数年前まではニコール・キッドマンでした。
そしてペネロペ主演のアルモドバルの新作『抱擁のかけら』 Los abrazos rotos は外国語作品賞にノミネート。ライバルはジュゼッペ・トルナトーレの『バアリア』 Baarìa 、ミヒャエル・ハネケの『ザ・ホワイト・リボン』 Das weisse band ――カンヌ映画祭とヨーロッパ映画賞を制覇――、ジャック・オディヤールの『預言者』 Un prophète 、チリ人監督セバスティアン・シルバの『子守』 La nana 。アルモドバルが同賞にノミネートされるのは六回目で、『トーク・トゥ・ハー』『オール・アバウト・マイ・マザー』で受賞済み。
作曲家のアルベルト・イグレシアスがアルモドバルの新作『抱擁のかけら』 Los abrazos rotos でヨーロッパ映画賞を受賞。2006年の『ボルベール《帰郷》』に続いて二度目です。
『抱擁のかけら』は監督賞(ペドロ・アルモドバル)と主演女優賞(ペネロペ・クルス)もノミネートされましたがどちらも落選。
今年5月の記事なので「何で今ごろ?」と思うかも知れませんが、単にブログに書き忘れていただけでございます。
サイモン・ウェスト監督、アントニオ・バンデラス主演によるサルバドール・ダリの伝記映画『ダリ』、製作がちっとも進んでません。理由は、製作者とガラ=サルバドール・ダリ財団が脚本をめぐって揉めているため。
バンデラスの説明によると、特にダリの晩年の描き方が問題だそうで、ダリの才能が衰えてゆき、それをいいことに周囲の人たちが彼の名前を利用するらしい。「財団側はあまり好ましく思っていなくて、監督のサイモン・ウェストはというと強情っ張りで石頭のイギリス人、頑として譲らないんだよ」とバンデラス。サイモン・ウェストって『コン・エアー』『ブラックホーク・ダウン』『トゥームレイダー』の監督だからなあ。期待していいのかどうか…。ダリ役にバンデラスを指名したのはウェストだそうです。
財団との交渉は続いているものの、これだけ遅れてしまった以上、来年撮影を開始するのは日程的にほぼ絶望的(繰り返しますがこの記事は5月)。バンデラスは7月にウディ・アレンの "You Will Meet a Tall Dark Stranger"に出演したし(12月現在ポストプロダクション中)、その次にトニー・クランツ監督の "The Big Bang" を撮影(これもポスプロ中)、その後はメキシコのルイス・マンドーキ監督の『ナイチンゲールの娘』 La hija del suiseñor の撮影があり(記事には Mandoqui とありますが正しくは Mandoki)、さらにナスル朝グラナダ王国最後の王ボアブディル(ムハンマド11世)の伝記映画もプロジェクトが進行中。
12月4日、スペイン政府が村上春樹に芸術文学勲章を授与しました。村上の「きわめて独創的な叙述の声」 originalísima voz narrativa が授章理由。
EFE通信社の記事なんですが、「1982年に『羊をめぐる冒険』のスペイン語版が刊行されて以来、スペインでも多くの読者を獲得」なんて書いてある。『羊をめぐる冒険』は原作が1982年、ロドリゲス・イスキエルドのスペイン語版は1992年だよ。他の新聞はどうかと検索したらラ・バングアルディア紙も同じEFE通信社配信記事。この舞台通信でも何度か苦言を呈したけど、EFEはアテになりません。要注意よ。