ゴヤの代表作の一つ『巨人』 El Coloso はゴヤの弟子の作――。調査していたプラド美術館が公式見解を発表しました。
画面左下隅に A J という署名が最近発見され、これはゴヤの高弟でバレンシア生まれのアセンシオ・フリアー Asensio Juliá ではないかとみられてきたものの、今のところ断定はできないとのこと。
作業チームの主任で十八世紀絵画とプラド所蔵のゴヤ作品の専門家マヌエル・メナ・マルケス。『巨人』がプラドに収蔵された1931年当時の文献を読み直したところ、無造作にゴヤ作と断定していたことが判明。暗い色調のせいで今までは作品が正しく評価できなかったが、よく見ると全体的に色彩は貧弱で筆運びも拙いとのこと。ただし、ホセ・フリアーの作と断言するにはまだまだ調査研究が必要。
で、具体的な証明ですが、ページ右に絵の細部がいくつかアップで見られます。描かれた動物や人間がほかのゴヤ作品とあまりにも違う、というのが報告書の見解。順番に見ていくと――
日本で「ペ」といえばペ・ヨンジュンですが、スペインではペネロペ・クルスが「ペ」 Pe の愛称で呼ばれます。
そんな話はともかく、ウディ・アレンの『それでも恋するバルセロナ』 Vicky Cristina Barcelona で米アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたペネロペ・クルス。ノミネート後初めてメディアの単独取材に応じました。エル・パイスのロシーオ・ガルシア記者の電話インタビューです。住まいはロサンゼルス。以下、内容をざっと訳してみます。
スペインを代表する劇場のひとつ、ビルバオのアリアーガ劇場が視覚障害者用に音声ガイダンスのシステムを導入。1月16日に初日を迎えたミュージカル『スウィーニー・トッド』で使われました。
「アウデスク」 Audesc (audio-descripción の略) と呼ばれるこのシステムを開発したのは国立スペイン盲人協会 ONCE (Organización Nacional de Ciegos Españoles)。このシステムを導入済みの劇場がある都市はビルバオの他にマドリード、バルセロナ、カディス、サラマンカ、バリャドリード、ア・コルーニャ。
セリフと情景を朗読者がリアルタイムで語るのをイヤホンで聴きます。イヤホンは片方の耳だけ。舞台上のリアルな音声もちゃんと聞こえるように配慮してのこと。全四回の公演で三回このサービスがありました。今後のラインナップではミュージカル『ドス・メノス』 Dos menos (2月26日~3月1日)と、『姉妹』 Hermanas (4月8日~11日)でも Audesc のサービスあり。点字のプログラムもありますよ。ちなみに『姉妹』はチェーホフの『三人姉妹』にヒントを得たコメディー。
ついでにAudesc を導入済みの劇場がどのくらいあるか、ONCE のサイトで調べてみました。
カンヌで始まった国際音楽著作権見本市(MIDEM)の「サウンド・フロム・スペイン」パビリオンで、スペイン音楽史上初めてのウェブ版レコード(オンラインでのみ発売)が出展されたというニュース。早い話が、iTunes などで楽曲をダウンロードするアレです。
発表者は作家編集者デジタル協会 Sociedad Digital de Autores y Editores (sDae)。代表者のホセ・ネリ氏によると、エリソ Erizo という若いアーティストのアルバム En plena Luz (直訳すると「光の真っ只中で」「白昼堂々」)が既に発売されているとのこと。テオ・カルダルダ Teo Cardalda、チェノア Chenoa、フアン・バルベルデ Juan Valverde といったベテランから、ジェシカ・エステベス Jessica Estévez やサダア SADAH などの新人が参加してるそうです。全然知らないけど。
しかし、オンラインレコード(ウェブ版レコード disco en formato web)って言い方は面倒ですね。でも「レコード」以外にふさわしい呼称が今のところはないんでしょうね。
マドリード市営のコンデ・ドゥーケ文化センター Centro Conde-Duque が全面的に改修され、マドリード最大の文化センターに変貌中。現在の広さ29,000平方メートルに25,000平方メートルをプラス、合計54,000平方メートルはなんとプラド美術館を凌ぎます。
この建物、そもそもは1717年に建てられた軍事施設で、元の名称はドゥーケ公爵兵舎 El Cuartel del Conde Duque。今は文化施設としてコンサートや展覧会、各種文化イベントの会場、として使われています。マンハッタン・トランスファーのコンサートもここでありました。図書館もあります。92年から93年にかけて、よく通ったもんです。
記事によると現在の拡張工事が始まったのは2004年。すでに1180万ユーロ(約14億円)を投入。今年は1600万ユーロ(約19億円)をつぎ込み、2010年から2012年にかけてさらに1800万ユーロ(約22億円)を投入予定。完成の暁には、市立文書館、定期刊行物図書館、印刷工房、市立現代美術館、美術館支援センター、歴史図書館、音楽図書館、中央図書館、二階建ての劇場(キャパ297人)、展覧会場、「メモリアデマドリー」(memoriademadrid=マドリードの記憶)という名のスペースと、これだけの施設が一堂に会します。2012年にはマタデーロ Matedero とパラシオ・デ・シベレス Palacio de Cibeles と並んでマドリード市の三大文化施設になる予定。
バンデラスがダリを演じるニュースの続報です。
記事の後半によると、バンデラスはサイモン・ウエスト監督の新作『ダリ』の撮影開始を待っているとのこと。契約は済んだのでしょうね。ダリが遺した日記とか彼にまつわる映像資料、80年代にパロマ・チャモーロが行ったダリへのインタビューなどで勉強中。資金問題がクリアできれば撮影開始のようです。しかし金融危機の真っ只中だからなあ。
それからバンデラス自身がプロデューサーと助演を兼任する映画『ボアブディル』 Boabdil の企画も資金集めに奔走中。ボアブディル(ムハンマド11世)は15世紀スペインのイスラムの王。カトリックによるレコンキスタ(国土回復運動)でイスラムの最後の砦だったグラナダを支配していたナスル朝最後の王です。
で、記事の見出しですが、代理業務事業会社をクリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)からウィリアム・モリス・エージェンシー(WMA)に変えたそうです。きっかけは去年の脚本家組合のスト。確実に仕事をもらえるエージェンシー探しに俳優たちは躍起で、ロバート・デ・ニーロも二十年お世話になったCAAを離れたとか。WMAが抱えるスターはメル・ギブソン、クエンティン・タランティーノ、ラッセル・クロウ、デンゼル・ワシントン、クリント・イーストウッド、リチャード・ギア、エディ・マーフィ、ジョン・トラヴォルタ、ナタリー・ポートマン、ウーピー・ゴールドバーグ(女優業は辞めると宣言してますが)、シャロン・ストーンなど。
コメントしようと思って忘れてました。去年の12月のニュースです。
サイモン・ウエスト監督の新作『ダリ』 Dali にアントニオ・バンデラスが主演する予定。ただし契約するかどうかは「少なくとも二週間経たないとわからない」とのこと。問題は米俳優組合のスト。さらにインディペンデント作品なので昨今の金融危機の影響をモロに受けているのもネック。要するに資金調達が難しそうってこと。
以下はバンデラスによる説明。
「最初にオファーを受けたときは断ったよ。ダリって僕の柄じゃないと思ったし。でもウエスト監督がしつこくてね、メーキャップしてカメラテストを受けてくれって。だから一番びっくりしてるのは僕なんだ」
オファーを引き受けることに決めてからはダリについて勉強。折しもダリの伝記映画が二本立て続けに公開される予定で、一本は今年制作予定のアンドリュー・ニコル Andrew Niccol 監督の Dali & I: The Surreal Story(原題) で、ダリを演じるのはなんとアル・パチーノ。もうひとつは2008年制作、今年公開されたポール・モリソン監督――記事には Morriso とありますが正しくは Morrison――の Little Ashes(原題)。こちらは若き日のダリとブニュエルとロルカの交友を描いたもの。ダリ役はロバート・パティンソン(『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のセドリック・ディゴリー役)、ブニュエルはマシュー・マクナルティ、ロルカはハビエル・ベルトラン。
ダリの妻ガラを演じるのは誰かについては、バンデラスはすでに女優の候補リストをもらっているけど中身は秘密だそうです。
見出しはヒース・レジャーですが、スペインではペネロペ・クルスとハビエル・バルデムがウディ・アレンの『ヴィッキー・クリスティーナ・バルセロナ』 Vicky, Cristina, Barcelona で受賞するんじゃないかとマスコミが煽りに煽って、結果は二人とも空振り。オールスペインロケでこの二人が出ているのに全編英語だそうで。それでも映画そのものはミュージカル・コメディー部門で最優秀作品賞。ちなみに邦題は『それでも恋するバルセロナ』に決定したそうです。アルモドバルは原題が「意味わからん!」って怒ってたなあ。
今年はケイト・ウィンスレットの年になりそうです。『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』で主演女優賞、『愛を読むひと』で助演女優賞の二冠達成。アカデミー賞に五回ノミネートされて煮え湯を飲まされ続けてきたケイトも今年は間違いないでしょう。主演男優賞はカンヌと同じく『ザ・レスラー』のミッキー・ローク。
今年のスペインで必見・必聴のカルチャーイベントを挙げたエル・パイス紙の記事です。
出版界では19世紀の批評家マリアーノ・ホセ・デ・ララが生誕二百年。同じくエドガー・アラン・ポー、チャールズ・ダーウィンも二百周年。国内の小説家ではベルナルド・アチャガ Bernardo Atxaga が『フランスの七軒の家』 Siete casas en Franciaを、パブロ・トゥセ Pablo Tusset は『坂村、コラーレスと笑う死者』 Sakamura, Corrales y los muertos rientes 主人公は日本人の特別捜査官サカムラ。ラミーロ・ピニーリャ Ramiro Pinilla は犯罪小説に挑戦。中南米ではトマス・エロイ・マルティネス Tomás Eloy Martínez がアルゼンチンの独裁制を題材にした『煉獄』 Purgatorioを出版予定。サンティアゴ・ロンカグリオロ Santiago Roncagliolo はペルー人移民の作家としてスペインで成功を収めつつあった時代を『ある貴婦人の物語』 Memorias de una dama で描くとか。
映画はなんといってもアルモドバルの『引き裂かれた抱擁』 Los abrazos rotos とアメナーバルの『アゴラ』 Ágora が目玉。どっちも日本公開は来年かな。アルモドバルの新作はどんな邦題になるのか気になります。今までの慣例からすると英語読みの『ブロークン・ハグス』とかになっちゃう予感。
演劇では重鎮の共演が楽しみ。エクトル・アルテリオとホセ・サクリスタンがブエノスアイレス発のコメディー『ドス・メノス』 Dos menos で初共演。演出はオスカル・マルティネス。ジョセプ・マリア・フロタとアルベル・トリオラはジャン=クロード・ブリスヴィルの『デカルトさんとパスカルくん』でそれぞれデカルトとパスカルを演じます。カルメロ・ゴメスとシルビア・アバスカルはブレイク・エドワーズの映画で有名な『酒とバラの日々』の舞台版に登場。9月にはマドリードのマタデーロ劇場でロルカの『ベルナルダ・アルバの家』。主演がヌリア・エスペルとロサ・マリア・サルダ、演出がリュイス・パスクアルという最強のキャスティング。