今年3月アストゥリアス県アビレス市にオープンしたオスカー・ニーマイヤー国際文化センター(Centro Niemeyer)にケヴィン・スペイシー主演の舞台『リチャード三世』が登場します。会場はパラシオ・バルデス劇場。日程は9月28日から30日までが午後7時半開演、10月1日はマチネと17時半の回あり。合計5回公演。初演はもちろんスペイシーが芸術監督をつとめるロンドンのオールド・ヴィック劇場。演出はサム・メンデス。
体制を嘲笑し続けて50年。現役の民間演劇グループとしてはヨーロッパ最古の歴史を誇るアルス・ジュグラース Els Joglars。1961年結成。今年は創立50周年。記念公演に選んだ作品は1993年初演の『エル・ナシオナル』 El Nacional。バルセロナ五輪とセビーリャ万博でお祭りムード一色だった1992年の翌年、にわか景気が一気にしぼんで不況が始まった初演当時と、出口が見えない財政危機の現在とはパラレルであるというのが再演の理由。マドリードの新アルカラ劇場(Nuevo Teatro Alcalá)で9月1日から公演開始。
ストーリーは、ドイツ銀行に差し押さえられる寸前の劇場で、昔の客席案内係が乞食やストリートミュージシャンをかき集めて歌劇『リゴレット』の上演を目論むというもの。1962年にバルセロナのイメージ・サロンで上演した『パントマイム術』 L'art del mim に出演したメンバーで今も在籍するのは一人だけ。主宰者アルベルト・ブアデーリャも創立メンバーのなかで唯一現役。
劇団のメンバー同志はカタルーニャ語で意思の疎通を図りますが、作品ではカスティーリャ語を多用、そのため故郷カタルーニャでは阻害され、今はマドリードを拠点に活動中。「僕が先頭に立つ限りカタルーニャには戻らないと思う」とボアデーリャ。
現存するスペイン最古の叙事詩『わがシッドの歌』。作者は誰なのか、どのように伝わってきたのかについては古来百家争鳴。民衆のあいだで歌い継がれたとする〈伝承説〉と、ペール・アバットもしくは別人が創作したとする〈個人説〉が真っ向から対立してきた顚末は国書刊行会の『わがシッドの歌』所収の「解説」に詳しく述べられていますが、本日付のエル・ノルテ・デ・カステーリャ紙の記事によると、現存する唯一の写本の制作には複数の――記事に varias personas とあるのでおそらく五六人の――人物が関わっていたようです。
研究者アルベルト・モンタネールがマドリードの国立図書館所蔵の写本にハイパースペクトル分析をかけたところ、数種類の異なるインクが用いられていることが判明。写本は十六世紀から二十世紀中葉に至るまで様々な化学薬品による検査を受けた結果、表面が黒ずみ、多くの箇所が判読不可能になってしまいました。この度のハイパースペクトル分析によって、これまで判読できなかった部分が解読され、あらたに三人目の人物画の挿絵も発見。既知の挿絵二枚はシッド・カンペアドールの娘二人を描いた女性像でしたが、三枚目はシッドの友人でモーロ人の大将アベンガルボンである可能性が高いそうです。
1951年に遺跡が発見され、1991年から修復作業中だったマラガのローマ劇場が再開します。9月15日午後7時半に記念式典が行われます。劇場本来の観客席の収容人数はわずか220人。残りの人たちはアルカサビーリャ通りから観劇。出演はバリトン歌手カルロス・アルバレス、ギタリストのダニエル・カサーレス、画家アンドレス・メリダ。アルバレスは歌ではなくマラガ出身の作家フベナル・ソトがこの日のために書いた散文を朗読し、併せてマヌエル・アルカンタラとピカソの詩も朗誦。カサーレスは『ゲルニカ』75周年を記念した作品の一部を演奏し、音楽に合わせて画家メリダが絵を制作するそうです。
リドリー・スコット監督が自ら手がける『エイリアン』シリーズの前日譚『プロメテウス』。Internet Movie Database によると既にポスト・プロダクションに入ったようですが、こちらの記事によればスペイン・アリカンテのスタジオ「光の都」(シウダー・デ・ラ・ルス Ciudad de la Luz)でこれから撮影が行われるそうです。
バレンシア州政府文化省が明かしたところによると、『プロメテウス』撮影チームがスタジオ内の巨大な水槽を明日21日から12月10日まで予約済み。巨大なヨットが嵐に見舞われるシーンを撮るらしい。さらに一日だけアリカンテの浜辺でもロケをする予定。日時や場所は秘密。来週から水中のセット設営作業を始めて、撮影は早くても9月最終週から。リドリー・スコットはもちろん、主要キャストのシャーリーズ・セロン、マイケル・ファスベンダー、パトリック・ウィルソン、ガイ・ピアース、ノオミ・ラパス、ローガン・マーシャル・グリーンが顔を揃えるそうです。
第59回サン・セバスティアン国際映画祭でスペイン映画の現在を15作で紹介する特集 "Made in Spain" のラインナップが発表されました。
日本で言えば〈炭坑節〉にあたるスペインのカンテ・デ・ラス・ミーナス。毎年八月にムルシア県の町ラ・ウニオンで開催されるフラメンコ歌唱コンクール、カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル。今年の最高賞ランパラ・ミネーラ賞(炭鉱ランプ賞)に輝いたのは16歳の少女セリア・ロメーロ。バダホス県ヘレーラ・デル・ドゥーケ生まれ。将来が楽しみです。
日本では青山真治監督の『東京公園』が金豹賞審査員特別賞を受賞したニュースが大きく報道されましたが、正真正銘の金豹賞に輝いたのはアルゼンチンのミラグロス・ムメンタレール監督『扉と窓を開ける』(Abrir puertas y ventanas/英語タイトル Back to Stay)。ムメンタレールは短編作家で、今回は長編監督デビュー作で見事最高賞を受賞。さらに主演のマリア・カナーレが主演女優賞を獲得して二冠達成。審査委員長はポルトガルのプロデューサー、パウロ・ブランコ。祖母を亡くしたばかりの三姉妹の共生を描いた作品だそうです。
来月開幕する第59回サン・セバスティアン国際映画祭。今年のドノスティア賞はグレン・クローズに決定。近年はテレビドラマ『ダメージ』で人気を集めエミー賞主演女優賞を二年連続獲得。舞台活動も盛んで、トム・ストッパード作『リアルシング-ほんもの-』、マイク・ニコルズ作『死と乙女』、アンドリュー・ロイド・ウェバー『サンセット大通り』でトニー賞主演女優賞。授賞式は9月18日、会場はクルサアル公会堂(Auditorio Kursaal)。
1986年に始まったドノスティア賞(生涯功労賞)の歴代受賞者を、フェスティバル公式サイトからリストアップしておきます。
第1回 | 1986 | グレゴリー・ペック |
第2回 | 1987 | グレン・フォード |
第3回 | 1988 | ヴィトリオ・ガスマン |
第4回 | 1989 | ベティ・デイヴィス |
第5回 | 1990 | クローデット・コルベール |
第6回 | 1991 | アンソニー・パーキンス |
第7回 | 1992 | ローレン・バコール |
第8回 | 1993 | ロバート・ミッチャム |
第9回 | 1994 | ラナ・ターナー |
第10回 | 1995 | スーザン・サランドン、カトリーヌ・ドヌーヴ |
第11回 | 1996 | アル・パチーノ |
第12回 | 1997 | マイケル・ダグラス、ジェレミー・アイアンズ、ジャンヌ・モロー |
第13回 | 1998 | ジョン・マルコヴィッチ、アンソニー・ホプキンス |
第14回 | 1999 | フェルナンド・フェルナン=ゴメス、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、アンジェリカ・ヒューストン |
第15回 | 2000 | マイケル・ケイン、ロバート・デ・ニーロ |
第16回 | 2001 | ジュリー・アンドリュース、ウォーレン・ベイティ、フランシスコ・ラバル |
第17回 | 2002 | ジェシカ・ラング、ボブ・ホプキンス、デニス・ホッパー、フランシス・フォード・コッポラ |
第18回 | 2003 | イザベル・ユペール、ショーン・ペン、ロバート・デュバル |
第19回 | 2004 | ウディ・アレン、アネット・ベニング、ジェフ・ブリッジス |
第20回 | 2005 | ベン・ギャザラ、ウィレム・デフォー |
第21回 | 2006 | マックス・フォン・シドー、マット・ディロン |
第22回 | 2007 | リチャード・ギア、リヴ・ウルマン |
第23回 | 2008 | アントニオ・バンデラス、メリル・ストリープ |
第24回 | 2009 | イアン・マッケラン |
第25回 | 2010 | ジュリア・ロバーツ |
第26回 | 2011 | グレン・クローズ |
アンダルシア州には古代ローマ劇場の遺跡が四つあります。セビーリャ県サンティポンセ市のイタリカ劇場、カディス県タリファ町のバエロ・クラウディア劇場、残る二つはマラガ市とカディス市。これら四ヶ所を連携させ共同制作による公演を行いたいと、アンダルシア州政府パウリーノ・プラタ文化大臣が発表しました。あくまでも「できたらいいな」というレベルの話です。マラガ市がローマ劇場を現役の劇場として活用したいと申し出たのを受け、州政府は残る三ヶ所と連携することを条件に応諾。ただしマラガの劇場は舞台復元に技術的な問題があり、場合によっては階段席を舞台として利用し、観客はアルカサビーリャ通りから観劇するスタイルになるかも知れません。
今年11月を目標に制作中のミゲル・ポベーダの新作アルバムにパコ・デ・ルシアが参加。彼のほかチクエロ、ホセ・ケベード・〈エル・ボリータ〉、フアン・ラモン・カロなども参加。アルバムのタイトルは「いろいろ考え中」で今のところ未定。発売時期も11月がメドですが、「よい作品をつくること」が優先事項で、発売時期は二の次だそうです。
メリダ古典演劇祭のディレクターを務める女優ブランカ・ポルテーリョが辞任しました。事の発端は演劇祭の関連行事として開催された、楽屋風景の写真を集めた展覧会「楽屋」に出品された一枚の写真。写真家セルヒオ・パーラの作品で、全裸の俳優アシエル・エツェアンディアが楽屋でキリスト磔刑像を模したポーズをとり、陰部をベラスケスの『キリストの磔刑』で覆ったもの。これがカトリック教会関係者先週物議をかもし、展覧会側が「世論に配慮して」写真を撤去。その後も騒動はおさまらず、ブランカ・ポルテーリョが辞任を発表。
しかし辞任の最大の理由は写真騒動ではなく政治のようです。ポルティーリョが昨年ディレクターに任命された当時のエストレマドゥーラ州は社会労働党(PSOE)が第一党でしたが、今年の地方選挙で敗退し、国民党(PP)が第一党に。州政府が政権交代し、もともとそりが合わないポルティーリョと国民党は一触即発状態。そこに写真騒動が起きて辞任に至ったようです。