舞台通信

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2017年11月2日(木)

ルルフォが書いたかのような「マクベス」
‘Macbeth’ como si lo hubiese escrito Juan Rulfo

メキシコの劇団ロス・コロチョスが昨日から今週土曜までマドリード・カナル劇場で『メンドーサ』Mendozaを上演中です。舞台装置が一切ない真四角のステージに九人の俳優が出ずっぱりで演技し、観客は四方からステージを見つめます。演出家のフアン・カリージョと劇作家のアントニオ・スニガがシェイクスピアの『マクベス』を換骨奪胎し、1910年に始まったメキシコ革命に時代を設定し直しした作品。コロンビア、キューバ、ペルー、コスタリカ、ドイツ、イギリス、スペインを巡演して大評判をとりました。

スペインでは2014年にアルマグロ古典演劇祭の非公式部門で初演を行い青年クリエイター賞を受賞。これをきっかけに、いまは閉場してしまったマドリードの小劇場クビック(Kubik)で短期間再演し、ムルシアのシルコ劇場でも上演し、カディスのイベロアメリカ演劇祭に招聘されました。二週間前にはジローナのハイシーズン演劇祭(Temporada Alta)に招聘されて大成功。今週いよいよ満を持してマドリード・カナル劇場に登場しました。

作品が生まれたきっかけはフアン・カリージョが学生時代に参加した『マクベス』の公演を観た彼の母親が「話はわからなかったけど素敵だったよ」と漏らしたひとことでした。「話はわからない」母親になんとかしてシェイクスピアの世界を伝えたい。そこで劇作家のアントニオ・スニガと協力して、時代設定をメキシコ人に親しみやすいメキシコ革命に置き換え、まるでフアン・ルルフォが書いたかのような文体で戯曲を書き改めました。

主人公メンドーサは架空の革命家で、マクベスと同様に魔女――本作では祈禱師――と妻にそそのかされてリーダーを殺害し、良心の呵責にさいなまれた挙げ句血で血を洗う争いになります。