カタルーニャ州議会で反闘牛法が可決され、来年1月1日に施行されるのを受け、25日バルセロナのムヌマンタル闘牛場で最後の闘牛が行われます。カタルーニャで初めて闘牛が行われたのはアラゴン王国の古文書によるとジュアン一世統治下の1387年、場所はバルセロナ。624年間の歴史が幕を下ろします。掉尾を飾るのはホセ・トマース José Tomás。
完成するのは百年後か二百年後かと噂されてきたバルセロナのサグラダ・ファミリア(聖家族贖罪教会)。ついに完成へのカウントダウンが始まりました。中央に聳える高さ170メートルの塔の完成が七年後の2018年、教会全体は十五年後から十七年後、すなわち早ければ2026年、遅くとも2028年にめでたく完成の予定。
ゼロ年代後半から続く財政危機に加えて、正面ファサードの真下にAVE(スペイン高速鉄道)のトンネル建設計画がもちあがるなど、逆風も吹いていますが、観光客が増え入場料収入が増加するのに合わせて作業のピッチも急上昇。訪問者が増えた一因は昨年11月のベネディクト16世の来訪。2010年の入場者数が231万6千人だったのに対し、今年は約320万人を見込んでいます。入場料収入も約3100万ユーロ(約32億3千万円)に達する予定。これらの収入は建設費に充てられると同時に、2012年4月にリニューアルオープン予定のガウディ博物館の建設費にも使われます。
ピカソの大作『ゲルニカ』の構図はゲーリー・クーパー主演の映画『武器よさらば』からインスピレーションを得た――ビクトル・エリセの『エル・スール』やアルモドバル作品で有名なスペインの名カメラマン、ホセ・ルイス・アルカイネが新説を唱えました。
専門誌 "Cameraman" に発表したアルカイネの論文によると、『武器よさらば』の後半、夜道を行く軍人と民間人が空襲に遭い逃げ惑うシークエンスをビデオでつぶさに見直したところ、指がごつごつした瀕死の女の〈白い手〉、〈口をあけた馬〉、〈天に向かって泣き叫ぶ女〉のショットがあり、さらに〈中が抜けた扉の枠〉、〈白いガチョウ〉を積みこんだ手押し車、〈馬の脚〉、ピエタさながらの〈幼い息子をかき抱く母親〉、〈腕を広げて泥に横たわる男〉のショットがモンタージュで矢継ぎ早に登場。画面左端には地獄絵さながらの炎も。
どれも『ゲルニカ』に描かれたモチーフであると同時に、ストーリーが展開する方向も一致するとアルカイネは指摘します。『ゲルニカ』では明らかにカンヴァスの右から左に向かって物語が展開する。『武器よさらば』の夜道のシークエンスもストーリーは右から左へと流れる。
ピカソが『ゲルニカ』を制作した1937年当時、『武器よさらば』は公開中でした。パリで公開が始まったのは1933年ですが、当時の配給システムによると最長六年間上映できたのです。「ピカソはまちがいなく映画を観た。ガートルード・スタインを通じて知り合ったヘミングウェイと親しかったからだけでなく、当時のピカソは映画館に足しげく通った。しかもこの映画はハッピーエンドで終わるのが物議を醸していた。ピカソが見逃すはずはない」とアルカイネ。「ただし」とアルカイネがつけ加えます。「『ゲルニカ』のモチーフとの共通性が見られるのは人物が静止したシーンだけ。アクションが止まったときに初めてスクリーンの事物が絵のモチーフと一致する」。
アルカイネの理論で唯一未解決だったのが牡牛で、あの眼は誰を見ているのかが謎でした。この問題も、ベラスケスの『女官たち』を横に並べて比較したところ氷解したそうです。牡牛の眼が見つめる相手は絵を見る私たち。『女官たち』でベラスケス本人が画布から私たちを見つめる構図と同じだとアルカイネは説きます。
アルカイネが『武器よさらば』を初めて観たのは1960年代末、スペイン国営テレビ第二チャンネルで放送されたときでした。後年、自宅でビデオ鑑賞し、夜道のシークエンスを見て『ゲルニカ』だと気づき、2006年に研究を始めたものの、2007年には五作品の撮影に関わり多忙を極めて頓挫、以後撮影監督をつとめたのはアルモドバルの新作『わたしがまとう皮膚』 La piel que habito 一作だけで、時間に余裕ができ、一コマずつ丹念に調べることができたそうです。
手もとにDVDがないので確認できませんが、YouTube にないかなあと検索してみたら……ありました。1時間18分24秒のノーカット版。問題のシークエンスは55分くらいのところから始まります。
9月16日に開幕する第59回サン・セバスティアン国際映画祭の審査員が発表されました。脚本家で監督のギジェルモ・アリアーガ(メキシコ)、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督(スペイン)、俳優フランシス・マクドーマンド(アメリカ)、ベント・ハーメル監督(ノルウェー)、女優バイ・リン(中国)、女優ソフィー・オコネドー(イギリス)、撮影監督ソフィ・マンティニュー(フランス)。マンティニューの綴りが Mantigneaux とあるのは Mantigneux の誤り。予定されていたメンバーのひとりが降板し、改めて人選を行ったため、誰が審査委員長をつとめるかは未定。
[9月5日追記: 審査委員長はフランシス・マクドーマンドに決定]
〈ラテンの地平〉 Horizontes Latinos 部門の審査員長は俳優フアン・ディエゴ・ボット。委員はモレリア映画祭ディレクターのダニエラ・ミチェルと、フォーロム・デ・ジマージュの番組編成ハビエル・マルティン。サバルテギ新人監督部門の審査員長は作家で映画批評かのジョナサン・ローゼンバウム。