舞台通信

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2012年1月31日(火)

理事会メンバー続投 レアル劇場
El Teatro Real renueva su patronato

昨日マドリードのレアル劇場理事会選挙の結果が公表されました。来年で任期切れになる理事長グレゴリオ・マラニョンは続投、あらたに五年間現職をつとめます。親PSOEの総支配人ミゲル・ムニスも今シーズンが終わる七月まで続投。理事のマリオ・バルガス・リョサとラウラ・ガルシーア・ロルカ(フェデリコ・ガルシーア・ロルカの姪でロルカ財団理事長の)も。新たに理事となるのはハビエル・ゴマー(フアン・マルク財団事務局長)、フェルナンド・ベンソ(教育文化省次官)、前マドリード市長アルベルト・ルイス=ガリャルドンに代わってアナ・ボテーリャ現マドリード市長、前マドリード市文化委員に代わってアリシア・モレーノ現文化委員。

2012年1月25日(水)

予算不足で三公演中止 テアトラ・リウラ
El Teatre Lliure de Lluís Pasqual suspende tres montajes por la crisis

バルセロナのテアトラ・リウラ(自由劇場)の芸術監督リュイス・パスクアルが予算不足のため三公演の中止を発表しました。今シーズンは五月末に終了し、再び幕を開けるのは新シーズンが始まる十月半ば。ただし七月のフェスティバル・グレック Festival Grec には参加。公演が中止されるのはイグナシオ・ガルシア・メイ作、マルク・ムンサラット演出『波』 L'onada(5月2日~6月3日)、サルスエラの作曲家アマデオ・ビーベスをテーマにしたアルベルト・ブアデーリャ演出作品『アマデウ』 Amadeu(6月12日~22日)、ペップ・ボウとリュイス・パスクアルによるシャボン玉パフォーマンス『ボンボリャバ』 Bombollavà の三作品。カットされた予算は総額614,000ユーロ(約6224万円)。

アルベルト・イグレシアス、三度目のオスカー候補
Alberto Iglesias: “Mi trabajo es lograr la metamorfosis”

サン・セバスティアン生まれの作曲家アルベルト・イグレシアスが米アカデミー賞にノミネートされました。対象作品はスウェーデン人監督トーマス・アルフレッドソンの初英語作品でゲーリー・オールドマン主演のスパイ映画『裏切りのサーカス』 Tinker Tailor Solder Spy(スペイン語題: El topo)。ノミネートは今回が三度目。一度目はフェルナンド・メイレレス監督の『ナイロビの蜂』(The Constant Gardener/2005年制作/スペイン語題: El jardinero fiel)。二度目はマーク・フォースター監督の『君のためなら千回でも』(The Kite Runner/2007年制作/スペイン語題: Cometas en el cielo )。なぜか非スペイン語圏の映画ばかり。アルモドバルの新作『私がまとう皮膚』 La piel que habito がハリウッドで好評との噂を聞いていただけに、これがノミネートを逸したのを残念がっています。

『裏切りのサーカス』は原作小説と脚本を両方読んで「最初は何の話かチンプンカンプンだった」そうです。しかも仕事の依頼を受けたのが五月で、七月にはオーケストラの録音をするという強行スケジュール。でも監督のアルフレッドソンは落ち着いた人で、マドリードに来てスコアを気に入ってくれたとのこと。

2012年1月24日(火)

アバディーア劇場でロルカ作品上演、視聴覚障碍者に対応
Teatro de la Abadía acogerá el martes una obra de Lorca adaptada para discapacitados auditivos o visuales

本日午後8時、マドリードのアバディーア劇場で上演されるフェデリコ・ガルシーア・ロルカ作『従妹アウレリアの夢』 Los sueños de mi prima Aurelia は、目や耳が不自由な人にも楽しめるように字幕と音声ガイダンスがつきます。演出はミゲル・クベーロ。ONCE(スペイン盲人協会)と CESyA(字幕音声解説スペインセンター)が発表しました。

演出は通常の回と変わりません。舞台上方にさまざまな色で台詞の字幕を表示します。おそらく登場人物によって色分けするのだと思います。日本では黒い背景に白い文字、あるいは赤やオレンジなど一色の文字で表示するのが通例ですが、人物ごとに色分けするアイデアは秀逸だと思います。視覚障碍者には無線型イヤホンを配布。台詞のみならず、作品の背景や衣装、俳優の動きや表情の解説をリアルタイムで聞けます。

2012年1月22日(日)

危機の時代に挑戦する「新辺境劇場」
El Nuevo Teatro Fronterizo y la investigación teatral para paliar la crisis

戯曲家・演出家のホセ・サンチス・シニステーラが去年設立した演劇集団「新辺境劇場」 NTF: Nuevo Teatro Fronterizo。欧州信用危機のまっただ中にあるマドリード各所でワークショップや討論会、実験的上演などを積み重ねて演劇の境界と範囲を模索し、危機を生き延び、かつ危機の時代に敢えて成長せんとする前衛運動です。今年最初の四ヶ月の活動内容が発表されました。

「補助金が削減されても創造性は増し新たな価値を生むことができる」のを信条とするサンチス・シニステーラ。活動の目玉は昨年に引き続きマドリードのカサ・エンセンディーダで行う二十世紀戯曲の連続ドラマリーディング「歴史に耳をそばだてる演劇」 El teatro a la escucha de la historia。仏ル・モンド紙のオピニオン誌ル・モンド・ディプロマティークの協賛のもと、マックス・アウブ作『状況の演劇』 Teatro de circunstancias(2月27日)、ペーター・ヴァイス作『追求』(3月26日)、Pierre Halet の『リトル・ボーイ』 Little Boy(4月23日)。

もうひとつの企画が「演劇(再)考」 (Re)pensar el teatro。会場は NTF の本拠地ラ・コルセテリーアで、2月から4月にかけて行われる哲学者と戯曲家の討論会。そのほか劇団マノデオブラとの共催による、21世紀ラテンアメリカ演劇の促進企画「視線」 Miradas を3月に開催。またマドリード脚本学校の設立者アリシア・ルナとサンチス・シニステーラが1月から4月にかけてラ・コルセテリーアで野外劇に関するワークショップを開催。1月25日から4月まで「放浪地区」 Barrios Nómadas と題するパネルディスカッションを行います。ラバピエス地区とバリェーカス地区在住のスペイン人と外国人が集まり、社会問題を劇にする方法を探ります。

2012年1月18日(水)

フィデル・カストロの伝記映画、主演はアントニオ・バンデラス?
Antonio Banderas, ¿nuevo Fidel Castro en el cine?

アントニオ・バンデラス主演によるフィデル・カストロの伝記映画の製作が進行中。タイトルは『カストロの娘』 Castro's Daughter。亡命したカストロの娘アリーナ・フェルナンデスの著書『カストロの娘 キューバ亡命の回想録』が原作で。監督は『イル・ポスティーノ』のマイケル・ラドフォード、脚本はロバートモレスコ(『クラッシュ』)とニロ・クルス。ニロ・クルスは戯曲『アンナ・イン・ザ・トロピックス』 Anna in the Tropics でヒスパニック作家初のピューリッツァー賞戯曲部門を受賞した人。

2012年1月16日(月)

ペピ、ルシ、ボンとアンジェリーナ・ジョリー
Pepi, Luci, Bom y Angelina Jolie

今年の第69回ゴールデングローブ賞が発表されました。ドラマ部門はジョージ・クルーニ主演の『ファミリー・ツリー』が作品賞と主演男優賞を獲得。ミュージカル・コメディ部門ではサイレント映画『アーティスト』が作品賞・主演男優賞(ジャン・デュジャルダン)・音楽賞の三冠を得ました。スペインからはアルモドバルの『私がまとう皮膚』 La piel que habito(英題: The Skin I Live In)が外国語映画賞にノミネートされたものの、受賞作はイラン映画『別離: ナデールとシミン』。

でもって、標題の記事は昨日のもので、アルモドバルがハリウッド大通りのエジプシャン・シアター入口でマスコミ関係者とのインタビューに応じていたところにアンジェリーナ・ジョリーがやって来て、直々に出演交渉をしたというエピソードです。

アンジェリーナはアルモドバル作品への出演を切望しているそうで、「いつ仕事をくれるの? そのうち?」と詰め寄り、「心配無用。君はまだ若い」と応じたアルモドバルに、「でもいつか役をくれる? 約束してくれる?」とたたみかけ、「ああ、もちろんだよ。カメラの前での約束だからね」と、確約をとりつけたのでした。

アルモドバルはアンジェリーナが「大好き」で、折よくニューヨークを舞台にした脚本をあたためており、「ふさわしい脚本」が完成した暁にはアメリカで英語で撮影する予定。「ジョリーはうってつけだと思う。チャレンジングな人だからね。僕が書いた女性の役のすべてとは言わないけど、大部分は彼女にぴったりだ」とアルモドバル。「アンジェリーナは質素な女にもグラマラスな(=魅惑的な)女にもなれる。『ペピ、ルシ、ボムとその他大勢の女の子』 Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón(1980年)のペピ役をやってもおかしくないし、『グロリアの憂鬱』 ¿Qué he hecho yo para merecer esto?(1984年)のカルメン・マウラの役だって、髪を振り乱してほとんどノーメイクでやれる」。

2012年1月7日(土)

見果てぬ夢に終わるのか? 『AKIRA』実写化
'Akira', en la gran pantalla, ¿un proyecto imposible?

アニメの実写化で成功した例は数少ないのに、ネタ不足のワーナー・ブラザーズが大友克洋の名作『AKIRA』の実写化を発表したのが2008年。主演にレオナルド・ディカプリオの名が囁かれたり、監督に新人ルアイリ・ロビンソンや『フロム・ヘル』(2001年)のアルバート・ヒューズの名が取り沙汰され、企画は二転三転。最終的にメガホンをとることに決まったのはバルセロナ生まれのジャウマ・コレット=セラ。いよいよ今年撮影が開始されるのではないかと思われた矢先にワーナーがバンクーバーの製作事務所を突如閉鎖。今後二週間かけてプロデューサーとコレット=セラ監督が缶詰になり「脚本に磨きをかける」のだそうです。現時点での脚本にはすでに『アイアンマン』『カウボーイ&エイリアン』のマーク・ファーガスとホーク・オストビー、『ハリー・ポッター』シリーズのスティーヴン・クローヴスらが何度もリライト済み。そこに『ダークナイト』のジョナサン・ノーランや『グリーン・ランタン』のマイケル・グリーンが加わるとの噂。

キャスティングで決定済みなのは金田役のギャレット・ヘドランド(『トロン:レガシー』)だけ。肝腎の鉄雄役にはマイケル・ピットとデイン・デハーンの名が囁かれていますが噂の域を出ません。そのほかヘレナ・ボナム=カーターと渡辺謙と交渉中だそうです。