カルメン・マウラが『6階のマリアたち』(原題 Les femmes du 6e étage/スペイン語タイトル Muchachas)でフランスのセザール賞助演女優賞を獲得。同賞でのノミネートは二度目で、前回は1996年の『しあわせはどこに』(Le bonheur est dans le pré)。
今月1日、370万ユーロを確保するため全従業員の92%にレイオフを実施し劇場を二ヶ月閉鎖する発表したばかりのリセウ大劇場総支配人ジュアン・フランセスク・マルコが、閉鎖前の演目『ラ・ボエーム』のスタッフが抗議のため十八日間に及ぶストライキの実施を表明したのを受けて前言撤回。レイオフは取りやめになりました。キャンセルした演目を復活させる手続きを始めますが、スペイン随一の大歌劇場は大きくイメージダウン。
スペイン映画アカデミーによる第26回ゴヤ賞が発表されました。主要部門を制覇したのはエンリケ・ウルビス監督の『悪党に安らぎはない』 No habrá paz para los malvados。
部門 | 受賞者・作品 |
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作品賞 | 悪党に安らぎはない |
監督賞 | エンリケ・ウルビス(悪党に安らぎはない) |
主演男優賞 | ホセ・コロナード(悪党に安らぎはない) |
主演女優賞 | エレーナ・アナーヤ(私が、生きる肌) |
新人男優賞 | ジャン・コルネット(私が、生きる肌) |
新人女優賞 | マリア・レオン(眠る声 La voz dormida) |
オリジナル脚本賞 | 悪党に安らぎはない |
助演男優賞 | リュイス・オマール(エバ Eva) |
助演女優賞 | アナ・ワヘネル(眠る声) |
撮影賞 | ブラックソーン |
脚色賞 | 皺 Arrugas |
オリジナル作曲賞 | アルベルト・イグレシアス(私が、生きる肌) |
オリジナル歌唱賞 | (眠る声) |
編集賞 | 悪党に安らぎはない |
新人監督賞 | キケ・マイーリョ(エバ) |
美術賞 | ブラックソーン Blackthorn |
製作監督賞 | ブラックソーン |
衣裳デザイン賞 | ブラックソーン |
メーキャップ&ヘアスタイル賞 | 私が、生きる肌 |
音響賞 | 悪党に安らぎはない |
特殊効果賞 | エバ |
ヨーロッパ映画賞 | アーティスト |
スペイン系アメリカ映画賞 | 中国の物語 Un cuento chino |
ドキュメンタリー賞 | ガルソン判事に話を聞く Escuchando al juez Garzón |
アニメーション賞 | 皺 |
短編賞 | 海賊船 El barco pirata |
短編アニメーション賞 | 皺 |
短編ドキュメンタリー賞 | ビリディアナへの帰還 Regreso a Viridiana |
リセウ大劇場がレイオフの実施を表明したのを受けて、音楽監督をつとめるドイツ人指揮者ミヒャエル・ボーダーが総支配人ジュアン・フランセスク・マルコに抗議の書簡を送りました。リセウ大劇場はサッカーのバルサを除けばカタルーニャ文化を代表する唯一の公的機関であり、劇場を最高の水準に保つには長い歳月とたゆまぬ努力が必要で、数ヶ月にわたる閉鎖はこうした努力を台無しにするものである、というのがボーダーの主張。「あっという間にイタリアの田舎の劇場になりさがってしまう」。ボーダーの任期は今シーズンで終わり、後任はジュゼップ・ポンス。
アルモドバルの次回作はタイトルが『つかの間の恋人たち』 Los amantes pasajeros、今年の夏に撮影を開始するとプロデューサーのアグスティン・アルモドバルがラジオ局 Rac1 で発表しました。待望のコメディーだそうです。しかも『神経衰弱ぎりぎりの女たち』よりもっとどぎついコメディー。キャストは未定ですが、アルモドバルは主役にハビエル・カマラを想定している模様。
英国アカデミー賞(BAFTA)の外国語映画賞にアルモドバルの『私が、生きる肌』が選ばれました。下馬評では最有力だったイラン映画『別離: ナデールとシミン』を押さえての受賞。アルモドバルは1999年に『オール・アバウト・マイ・マザー』で外国語映画賞と監督賞、2002年に『トーク・トゥ・ハー』で外国語映画賞と脚本賞を獲っており、今回で五回目。
スペイン人作曲家アルベルト・イグレシアスも『裏切りのサーカス』 Tinker Tailor Solder Spy(スペイン語題: El topo)で音楽賞にノミネートされていましたが、受賞者は『アーティスト』のルドヴィック・ブールス。
〔2月16日追記: 邦題について。当ブログではこれまでスペイン語タイトルを直訳して『私がまとう皮膚』と書いてきましたが、五月末に日本公開が決定、公式サイトによれば『私が、生きる肌』だそうです。〕
プラド美術館が保管する「モナリザ」の複製画は、単なるコピーの一つではなく、ダ・ヴィンチがオリジナルを描いたのと同時に弟子が制作したものであることが判明しました。弟子は恐らく後にダ・ヴィンチの愛人になったアンドレア・サライか、もしくはフランチェスコ・メルツィだろうとのこと。
決め手となったのは二点。まず素材がオーク材であり、フィレンツェの画家はクルミを好んだことから、専門家は長らくこの作品がフランドルあるいはオランダの画家によるものと考えてきました。ところがよく調べると素材はオーク材ではなくクルミでした。
二点目は背景です。「モナリザ」にはトスカーナ地方の緑豊かな風景が描かれていますが、複製画の背景は真っ暗。ところがこの暗い部分は十八世紀に塗られたらしい。復元作業を行ったところ、その背後にオリジナル版そっくりの風景が色鮮やかに描かれています。
エル・パイスの記事ですが、両方の絵を重ね合わせて表示しています。絵の上にカーソルを乗せて左右に動かすとオリジナル版と複製画を見比べることができます。
バルセロナのリセウ大劇場も収入減のため二十七公演を中止、レイオフ(ERE = Expediente de Regulación de Empleo)により劇場を二ヶ月閉鎖すると発表しました。中止されるのはオペラ四作品(ツェムリンスキー『フィレンツェの悲劇』『こびと』、ドビュッシー『ペレアスとメリザンド』、エドゥアルド・トルドラ『五月のひまわり』)、モンテカルロ・バレエ団公演、コンサート二公演、スウェーデン人ソプラノ歌手ニーナ・シュテンメのリサイタル、『セビリアの理髪師』の児童向け公演 El Superbarber de Sevilla で、合計二十七ステージ。
財政難により過去三年間で公的助成金と協賛金が31%も落ち込んだのが原因。赤字を出さないためには370万ユーロ(約3億712万円)の節約が必要で、レイオフにより260万ユーロを浮かせるとのこと。閉鎖期間は3月20日から4月10日と、6月5日から7月8日まで。
先月末バルセロナの自由劇場(テアトラ・リウラ)が予算不足のため今シーズンの三公演を中止する旨、リュイス・パスクアル芸術監督が発表しましたが、予算カットの嵐はとどまるところを知らないようです。カタルーニャ州政府(ジェナラリタ)が自由劇場に通告した削減額は15%で614,000ユーロ。さらに今後はバルセロナ県と教育文化スポーツ省からも予算カットの通告がある見通し。テアトラ・リウラの台所事情はこれ以上切り詰められないくらい苦しく、具体的な例としてパスクアルが挙げたのが小道具係。テアトラ・リウラには小道具係がいないのです。なぜなら給料を払えないから。そこへもってきて今回の予算カット。泣く泣く三演目の中止を余儀なくされたわけです。
予算カットの嵐は当然ほかの劇場も直撃。セルジ・ベルベル芸術監督が率いるカタルーニャ国立劇場(Teatro Nacional de Cataluña)もジェナラリタからの予算が10%削減され、今年受け取る額は830万ユーロ(約8億2650万円)。ちなみに去年は925万ユーロ(約9億2100億円)、一昨年は1088万5千ユーロ(約10億840万円)でした。
セスク・カサデスス率いるコンテンポラリーダンスのメッカ、マルカット・ダ・ラス・フロールスも15%カットで、昨年の142万ユーロ(約1億4140万円)から今年は90万ユーロ(約8962万円)に減額。ん? 計算が合わないぞ? 15%カットなら120万ユーロのはずだけど。リセウ劇場も15%カット。
夏の風物詩、フェスティバル・グレック(Festival Grec)は予算の大半をバルセロナ市が負担しているため、削減額はテアトラ・リウラ同様5%で、大幅なカットは免れました。それでも新ディレクターのラモン・シモは開催期間を数日短くすると発表。例年は六月最終週に開幕し八月初旬まで開催されましたが、今年は七月が中心になりそうです。