ラ・バングアルディア紙の速報。州民発案による闘牛廃止法案の採決がカタルーニャ州議会で行われ、法案が可決されました。賛成票68、反対票55、棄権票9。右派と左派で真っ二つに分かれていましたが、決め手となったのは賛否を所属議員の自由裁量にまかせた CiU (Convergència i Unió=集中と統一) の32票でした。スペインの自治体で闘牛を禁止するのは1991年のカナリア諸島に次いで二番目。施行は2012年。
つい先日スペイン国立舞踊団の芸術監督を辞任したナチョ・ドゥアトがミハイロフスキー劇場バレエ団(サンクトペテルブルク)の芸術監督に就任します。今日ボリショイ劇場で記者会見が開かれるようです。契約は五年間で、2011年1月に就任予定。外国人がロシアのバレエ団を率いるのはマリウス・プティパ以来百年ぶり。
1922年にマドリードの〈学生寮〉で出会い友情を深めたダリとロルカ。それぞれの政治信念がいかに二人の関係を変えていったか、その道筋をたどる展覧会「ダリ、ロルカ、そして学生寮」 Dalí, Lorca y la Residencia de Estudiantes が9月22日からカシャフォルム・マドリードで開催されます。
記事によると目玉のひとつは二人が倶に過した当時の寝室の再現。もうひとつが、文筆業に専念するため監督業を引退したマヌエル・グティエレス・アラゴンによるドキュメンタリー映画の上映。目下撮影中だそうです。
数十年の長きにわたってミュージカル専用劇場として運営されてきたマドリードのラ・ラティーナ劇場が経営陣を一新、あらゆるジャンルの舞台を上演する劇場として生まれ変わります。
所有者だった女優リナ・モルガンが2008年に売却を決断。以来さまざまな買い手との交渉は難航し、ようやくフォクスペンタ社 Focuspenta が七百万ユーロで買い取り、今月18日からフォクスペンタ社が新たな所有者になりました。新芸術監督にはバルセロナ出身の俳優ホセ・マリア・ポウ José María Por が就任。
フォクスペンタ社は、バルセロナでゴヤ劇場など複数の劇場をを運営するフォクス社 Focus と、マドリードの芸術劇場 Teatro de Bellas Artes を運営するペンタシオン社が今回の買収のために設立した合弁会社。9月13日のこけら落しはコンチャ・ベラスコ主演の『人生は続く』 La vida por dalante で、ポウがゴヤ劇場で2008年に初演した作品。「すぐれた作品をマドリードとバルセロナ間でピストン輸送する拠点」にするのが今回の買収の狙い」(ポウ)だそうです。
今後はジャンルにこだわらずバラエティーに富んだラインナップを用意し、観客の不評を買った作品はすぐやめて別のものに差し替える覚悟とのこと。こけら落しの9月13日(月)について「火曜日でなくてラッキー」とポウが笑って述べたというくだりは、スペインでは〈13日の火曜日〉が英語圏の〈13日の金曜日〉にあたる不吉な日であることを指しています。
カルデロンの戯曲『サラメアの村長』とロペ・デ・ベガの戯曲『フエンテ・オベフーナ』『オルメドの騎士』で世界に名を知られる三つの町が、町民による古典劇上演を通して相互文化交流を促進することを発表しました。
昨日オルメドで開かれた古典演劇祭「オルメド・クラシコ」にサラメア・デ・ラ・セレーナ(バダホス)の町長フランシスコ・ハビエル・パレーデス氏が出席。サラメアでは1994年から毎年町民が『サラメアの村長』を上演しており、これまでに二千人以上が参加、十七万人もの観客を動員したそうです。上演日は毎年八月の第三週末。パレデス町長によると、このイベントのおかげで舞台設営に関わる雇用が生まれ、宿泊施設や飲食店も潤い、経済効果が少なくないとのこと。ゆくゆくは知的財産法に関する議論も進めてゆくそうです。
オルメド(バリャドリード)の町長アルフォンソ・センテーノ氏もパレーデス氏の意見に賛同。「演劇が町の基本的な歴史遺産である三つの町が集まって一つのテーブルを囲み、古典劇の舞台になっていることを世に知らしめるのが大事」。2006年に始まった演劇祭「オルメド・クラシコ」は今年で五回目。
フエンテ・オベフーナ(コルドバ)の助役イサベル・カベサス氏も同意見。この町では1992年以来四年ごとにロペの『フエンテ・オベフーナ』が上演されており(次回は2012年)、毎年24万ユーロの予算を組んでいます。
二十年にわたってスペイン国立舞踊団を率いたナチョ・ドゥアト。二十年前に初めて国外公演を行ったモスクワを再訪、引退記者会見を開き、文化省を舌鋒鋭く批判しました。
「スペインではサッカーと同じくらい舞踊の人気が高いのか」というロシア人女性記者の質問に「スペインのサッカー熱は異常」で個人的には「うんざり」しており、「私はオランダとの決勝戦を見なかった唯一のスペイン人だと思う」。ロシアでは天才振付家として知られるナチョ・ドゥアトがなぜ解雇されたのかについては「わからない。とにかく文化省の連中はサッカーが好きなんだ」「残念なことにスペインでは芸術家があまり尊敬されない。文化省にとって舞踊は取るに足らないものなんだ。舞踊に対する興味が全くない」と、積年の恨みをぶちまけています。
訪問先のロシアではアントン・チェーホフ国際演劇祭のクロージング作品としてドゥアトの二作品が選ばれました。一つはチェーホフに捧げる『無限の庭』 Jardín infinito(モソヴィエト劇場)、もう一つはバッハに捧げた『複数性: 沈黙と空白の形』 Multiplicidad. Formas de silencio y vacío(ボリショイ劇場)。
昨日開幕したメリダ国際演劇祭。オープニングはエバ・ジェルバブエナの『雨』 Lluvia。2009年2月27日の初演以来各地で上演、マックス賞の二部門に輝いたとはいえ、古典演劇とは何の関係もないこの作品が選ばれたのにはわけがあります。当初はギリシャの演出家ディミトリス・パパイオアノウの『メデイア2』 Medea 2 だったのですが、別の記事によると、パパイアノウの劇団とそのエージェント Tribeca World とのあいだで契約に関する問題が発生、7月16日の開幕まで間に合わなくなり、演劇祭側が急遽エバ・ジェルバブエナに白羽の矢を立てたそうです。
古代ギリシャやローマと何の関係もない作品ではありますが、今回の演劇祭のテーマが〈水〉であることから、『雨』にゴーサインが出た模様。
今週火曜日にカタルーニャ議会で可決された〈映画法〉の続報です。来年1月1日以降カタルーニャで公開される映画の50%はカタルーニャ語で吹替えるか字幕をつけることが義務づけられます。これに対してアメリカのメジャー配給会社がさっそく態度を表明しました――「了解。改正法は遵守しましょう。そのかわり新作映画の公開は数を思い切り減らすよ。数を減らして、吹替えも字幕もつけないよ。カタルーニャ語でもカステーリャ語(標準スペイン語)でも。ぜんぶオリジナル音声(英語)で上映するもんね。『パイレーツ・オブ・カリビアン4』をスペイン語版で観たい人はサラゴサにでも行ってちょうだい」。
ハリウッドの大作・話題作がカタルーニャから撤退すれば映画館は経営が立ちゆかなくなり閉鎖に追い込まれるのは火を見るより明らか。自分で自分の首を絞めるようなものです。
エル・パイスの記事。イェール大学美術館の地下倉庫からベラスケスが描いたと思われる絵『聖母の教育』 La educación de la Virgen が発見されました。発見者はサン・ディエゴ美術館のチーフキュレーター、ジョン・マーシャリ John Marciari。
これまでは17世紀スペイン派の不特定の画家が描いたものとされ、まだベラスケス作と断定されたわけではありませんが、複数の専門家によればほぼ間違いなくベラスケスの筆によるもので、セビーリャ時代に制作されたものとのこと。マーシャリによると1617年前後、ベラスケスの初期だそうです。詳細は美術専門誌 Ars Magazine の次号に掲載されます。
絵のモチーフは聖母マリアの幼少時代、母アンナと父ヨアキムが幼子マリアに読み書きを教えるところで、画面左には静物画のモチーフもあり、上には天使が描かれています。残念なことに上端が25cmにわたって欠けており、左側と下端も少し欠落。
分析に際して参照されるのがエルミタージュ美術館所蔵の『昼食』 El almuerzo。1617年の作品です。闇に浮び上がる静物のタッチは確かにベラスケスっぽいですね。使用されたカンバスもベラスケスが『東方三博士の礼賛』 La Adoración de los Magos や『修道女ヘロニマ・デ・ラ・フエンテ』 La madre Jerónima de la Fuente、『聖イルデフォンソへのカズラ授与』 La imposición de la casulla a San Ildefonso、『エマウスの晩餐』 La cena en Emaús で用いたのと同じものだそうです。
マーシャリの推論では、この絵は1625年にチャールズ・タウンゼントの船会社が所有していた船でアメリカに渡ったらしい。イェール大学の資料にはヘンリー・タウンゼントとレイナム・タウンゼント兄弟が「ムリーリョ風の宗教画で額縁に収められた油絵二点を寄贈した」とあるそうです。この二点のうちの一点が今回発見された『聖母の教育』と考えられます。