第30回ゴヤ賞が発表されました。最優秀作品賞はセスク・ガイ監督の『トルーマン』。
部門 | 受賞者/作品 |
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作品賞 | 『トルーマン』Truman |
監督賞 | セスク・ガイ(『トルーマン』) |
新人監督賞 | ダニエル・グスマン(『代償は求めず』A cambio de nada) |
オリジナル脚本賞 | セスク・ガイ、トマス・アラガイ(『トルーマン』) |
脚色賞 | フェルナンド・レオン・デ・アラノア(『完璧な一日』Un día perfecto) |
主演男優賞 | リカルド・ダリン(『トルーマン』) |
主演女優賞 | ナタリア・デ・モリーナ(『天井と食事』Techo y comida) |
助演男優賞 | ハビエル・カマラ(『トルーマン』) |
助演女優賞 | ルイサ・ガバサ(『花嫁』La novia) |
新人男優賞 | マヌエル・ブルケ (『正常な人になるための必要条件』Requisitos para ser una persona normal) |
新人女優賞 | イレーネ・エスコラール(『ベルリンのない秋』Un otoño sin Berlín) |
オリジナル作曲賞 | ルカス・ビダル(『誰も夜を望まない』Nadie quiere la noche) |
オリジナル歌曲賞 | 「雪の椰子 Palmeras en la nieve」(ルカス・ビダル、パブロ・アルボラーン) |
製作監督賞 | アンドレス・サンターナ、マルタ・ミロー(『誰も夜を望まない』) |
撮影賞 | ミゲル・アンヘル・アモエド(『花嫁』) |
編集賞 | ホルヘ・コイラ(『見知らぬ人』El desconocido) |
美術賞 | アントン・ラグーナ(『雪の椰子』) |
衣裳デザイン賞 | クララ・ビルバオ(『誰も夜を望まない』) |
メイクアップ&ヘアスタイル賞 | パブロ・ペローナ、パコ・ロドリゲス、シルビ・インベルト、 |
音響賞 | ダビ・マチャード、ハイメ・フェルナンデス、ナチョ・アレーナス(『見知らぬ人』) |
特殊効果賞 | リュイス・カステイス、リュイス・リベーラ(『秘密諜報員アナクレート』Anacleto: agente secreto) |
長篇アニメーション賞 | 『旗を捕まえろ』Atrapa la bandera(エンリケ・ガト監督) |
長篇ドキュメンタリー賞 | 『塩の夢』Sueños de sal() |
イベロアメリカ映画賞 | 『一族』El clan(パブロ・トラペーロ監督/アルゼンチン) |
ヨーロッパ映画賞 | 『裸足の季節』Mustang(デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督) |
短編賞 | 『ランナー』El corredor(ホセ・ルイス・モンテシーノス監督) |
短篇アニメーション賞 | 『アライク』Alike(ダニエル・マルティネス・ララ&ラファエル・カノ・メンデス監督) |
短篇ドキュメンタリー賞 | 『大地の子どもたち』Hijos de la Tierra(アレックス・オミル・トゥバウ&パッツィ・ウリス・ドメサイン監督) |
名誉ゴヤ賞 | マリアーノ・オソーレス |
没後五百周年を迎えたヒエロニムス・ボスの作品を六年がかりで鑑定してきた調査チームが報告書をまとめました。これまで別人のものとみなされてきた作品がボス本人のものと鑑定され、逆にボスの代表作として知られる二作品が別人によるものと結論づけられました。
まず、ボス作品のお墨付きを得たのはアメリカ合衆国ミズーリ州カンザスシティーのネルソン・アトキンス美術館の倉庫に眠る『聖アントニウスの誘惑』Las tentaciones de San Antonio。記事の上から二枚目の絵です。これまでは弟子の作品であるとみなされ、いちども一般公開されませんでした。
別人の作品であると認定されたのはなんとプラド美術館所蔵の『聖アントニウスの誘惑』Las tentaciones de San Antonio Abadと『愚者の石の除去』La extracción de la piedra de la locura。同じくプラド美術館が所蔵する『七つの大罪と四終』Mesa de los pecados capitalesも別人の作品である疑いがあり、ただし研究チームの中でも意見は一致せず、この点については本年五月に報告を発表する予定だそうです。
以下余談ですが、ボスの姓名――Hieronymus Bosch――をカタカナで表記する場合、どう書くのが妥当なのでしょう。生まれは十五世紀半ばのフランドル(ネーデルランド)なのでオランダ語圏です。本名はJeroen van Akenで、オランダ語の発音を忠実に再現するなら「イェルーン・ファン・アーケン」と書けばほぼ間違いありますまい。Hieronymusは本名のイェルーン(Jeroen)をラテン語で表記したものなので、ラテン語の発音を生かしてカタカナで書けば「ヒエロニムス」です。名字のBoschは生地ス・ヘルトーヘンボス(’s‐Hertogenbosch)に由来するので、オランダ語の地名の発音を生かせば「ボス」となり、名前と合わせて「ヒエロニムス・ボス」と書けばどうやら無難なようです。Boschを「ボッシュ」と書く人もいますが、これはドイツ語の発音なのでフランドルの人の名前としては不適当と言わざるを得ません。
ちなみに各種辞書ではどんな表記が採用されているのか、ざっと見てみると、『世界大百科事典 第二版』『百科事典マイペディア』『大辞林 第三版』『広辞苑 第六版』は「ボス」、『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』と『デジタル大辞泉』は「ボッシュ」。やはり「ボス」が優勢です。一般的に辞書の項目では名字しかとりあげないのでHieronymusのカタカナ表記は残念ながら見当たりません。ウィキペディアは「ヒエロニムス・ボス」で立項し、オランダ語の発音は「イエロニムス・ボス」、ドイツ語の発音は「ヒエローニュムス・ボシュ」であると説明してあります。つまりオランダ人は「イエロニムス・ボス」と呼び、ドイツ人は「ヒエローニュムス・ボシュ」と呼ぶわけです。ではわれわれ日本人はどう呼ぶべきか。やはり最初に述べた理由から「ヒエロニムス・ボス」と呼ぶのがよさそうですね。