マドリード市内の成人向け映画館の記事です。取材を受けたのはドゥーケ・デ・アルバ通りのアルバ座(Alba)。わたくしも80年代と90年代に何度か行きました。
記事によると入場料は6.5ユーロ(約815円)で通常の映画と同じ。創業は1986年。わたくしが初めてマドリードを訪れたのがこの年でした。オープンしたばかりだったとは露知らず。
スペインで成人向け映画館が生まれたのは1982年。ずいぶん遅いですが、なにしろフランコ独裁政権が四十年も続いたので。当時は「S指定」という呼称。それが今の「X指定」になったのは1980年半ば。セックス、エログロが大ブームになったいわゆる〈モビーダ・マドリレーニャ〉の時代で、マドリード市内だけで15軒を数えたそうです。今はスペイン全国でわずか8軒しかありません(アンダルシアとカナリア諸島とバレアレス諸島に1軒、バレンシアとマドリードに3軒)。マドリードで今も頑張っている3軒はアルバ座とポスタス座(ポスタス通り)、そしてセルバンテス座(コレデーラ・バハ・デ・サン・パブロ通り)。
文化省によると、ネットやDVDに押されながらも、観客数は年間二万人、売上げは50万ユーロ(約6272万円)以上。アルバ座は客席数200で、毎日150人から270人が利用。ポスタス座は客席数75と少なく、一日の利用者は100人前後。ホモのハッテン場で、座席に坐って暗闇に目が慣れた頃にはもう隣の席に男が来て、「(口で)やってやろうか」だの何だのと声をかけ、あるいは一物を見せつけられる。これもわたくし体験しました。
記者はアルバ座で観客の老人にインタビューしてます。男の話では、アルバ座はいろんな客が大勢出入りするから必ずいい相手が見つかる。ポスタス座は常連客ばかり。セルバンテス座はだらしない。
成人向け映画館の黄金時代は〈モビーダ・マドリレーニャ〉と呼ばれた80年代前半。今は閉館されたカレタス座は大人気で女性客も多かったそうです。ポルノ映画の名作『ディープ・スロート』が公開されたのはアルバ座で、こちらも大盛況。当時はチップを払うと男の一物を手で処理してくれる専門の女がいたそうです。パヒリェーリャ(pajillera=オナニーを手伝う女)というんだそうな。
記者はアルバ座の客席を出て階段を上り、ある部屋に入ります。椅子とテレビがあるだけ。客が二人座って話をしており、ここでもインタビュー。この部屋は特に何をするわけでもなく、ただ休むのに使うそうで、思う存分オナニーしたい人は二階席、通称天井桟敷(gallinero)へ。もっと過激なことをやりたい者はトイレへ。客層は中高年。ただし女性の一人客は一度も見たことがなく、アメリカのように売春婦だらけという光景は全くなし。
というわけで、わたくしが二十年近く前に見た光景は今も健在だとわかり、何かほっとしました。(ほっとしてどうする?)
バルセロナに本社がある女性向け情報サイトで見つけた記事なんですが、ピープル誌が最近「映画史上もっとも美しい女優10人」というリストを発表したそうで。ピープル誌は「最もセクシーな俳優」とかの企画をよくやるから、またかって感じで、本当にどうでもいい話題。ところがベスト10にスペイン人が入っているからびっくり。ランキングをご紹介しますと――
10位のカルメン・セビージャがスペイン人です。1930年生まれで、フランコ時代のスペイン映画で重宝された女優さん。女優さんっていうより、歌って踊れる芸能人って感じ。往事は確かに愛くるしくて「スペインの恋人」と呼ばれたのも事実ですが、しかしグレース・ケリーやリタ・ヘイワースと肩を並べる存在か?と、実に不思議。
で、思ったのですが、これ、きっとアメリカのピープル誌ではなくピープル誌スペイン版の記事なんでしょうね。試しにスペイン版のピープル誌のサイトで調べてみましたが該当する記事はなし。米ピープル誌のサイトにもなし。ということは紙媒体の雑誌に載ったのでしょう。どんな基準で選定しているのか知りませんが、かなりご高齢の人たちが投票したのだろうなあ。
余談ですが、8位のシャーリーズ・セロン Charlize Theron。名字はどう発音するのか、前から気になってたんですが、去年謎が解けました。本人は「トロン」と発音してます。アメリカの人気トーク番組「エレン・デジェネレス・ショウ」にゲスト出演したときの映像を YouTube で見つけまして、デジェネレスが名字の正しい発音を尋ねてるんです。「セロン」ではなく、はっきり「トロン」と発音してました。