2012年度のスペイン国家演劇賞をブランカ・ポルティーリョが受賞しました。三十年に及ぶ舞台のキャリアに加えて近年はアルモドバルの『ボルベール〈帰郷〉』や『抱擁のかけら』など映画俳優としても活躍。今年はアルマグロ演劇祭で初演されたカルデロン作『人生は夢』(制作:スペイン国立古典劇団/演出:エレーナ・ピメンタ)で主人公セヒスムンドを演じ話題を一手に集めました。文句なしの受賞です。
今秋マリーア・ゲレーロ劇場(マドリード)の芸術監督に就任したエルネスト・カバジェーロが新シーズンのオープニングに選んだのがスペインの小説家・劇作家ベニート・ペレス・ガルドスの小説『ドニャ・ペルフェクタ』 Doña Perfecta。ガルドスは1876年にこの小説を発表し、二十年後の1896年に自ら戯曲にも仕立て上げたのですが、戯曲版は当時の上演のしきたりに合わせて自己検閲され、重要な場面も数多くカットされました。今回の台本は原作小説をもとにカバジェーロが翻案。「原作小説のほうが自由で雄弁で表現豊か、十九世紀の冗漫なレトリックが少なく、しかもガルドスの時代には無理だったが今日の演劇なら具体化できる倫理的な要素がある。戯曲版は登場人物を特徴づける柔らかい台詞が姿を消し、丸テーブルで話し合うドラマになっているが、小説を読むと人物たちが舞台に出させてくれと大声で叫ぶのが聞こえてくる」とのこと。
カバジェーロの方針はスペイン現代演劇の遺産を国立演劇センターのレパートリーに加えること。現代演劇とは十九世紀後半以降の劇文学で、今後はバリェ=インクランやロルカ、いわゆる〈二十七年世代〉の作家、ミゲル・ミウラ、ハルディエル・ポンセーラなどの作品をとりあげる予定。
記事タイトルの〈憤る青年〉とは、昨今のスペインで失業と緊縮財政と増税に反対し大規模なデモを繰り広げている〈憤る者たち〉 indignados を踏まえています。ガルドスは封建制に対する自由主義の戦いが敗北するのを目の当たりにした。ここにカバジェーロは同時代性を見ています。