今月政権交代したばかりの国民党々首マリアーノ・ラホイ新首相が文化省を教育スポーツ省と合併させました。あらたにできた教育文化スポーツ省(Ministerio de Educación, Cultura y Deporte)の大臣は社会学者のホセ・イグナシオ・ウェルト氏。従来の文化相に相当するのは副大臣(secretario de Estado)のホセ・マリア・リサーリェ氏。金融財政危機のため省庁を「合理化」すべく、真っ先に文化にメスが入ったわけです。
2月9日に開幕する第62回ベルリン国際映画祭のコンペ部門にスペインからアントニオ・チャバリーアス監督の『心の声』 Dictado が出品されます。主人公ダニエルは自殺したばかりの幼なじみが遺した娘フリアを家にひきとることに。妻はフリアに生きる希望を取り戻させるものの、ダニエルはフリアの振舞いを脅威と感じ始め、心の底に封印したはずの恐るべき過去を思い出してしまう――というスリラーだそうです。チャバリーアスは一昨年金熊賞に輝いた『悲しみのミルク』の共同プロデューサーでもあります。
コンペ部門とは別にもう一本スペイン映画、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の『命のスパーク』 La chispa de la vida が特別上映されます。
今年の三月末にアストゥリアス州アビレス市に堂々オープンしたばかりの複合文化施設ニーマイヤーセンターが、あろうことか今月11日をもって閉館の憂き目に遭いました。
金融財政危機の時代に文化予算のカットは当然――州知事フランシスコ・アルバレス=カスコスと彼が所属する地元の政党フォロ・アストゥリアス(Foro Asturias)が、ニーマイヤーセンター財団の予算運営にケチをつけたのが事の発端。財団に占める州政府代表の理事を四名から一人減らして三名にするという財団側の規約改定案に反対し、両者は真っ向対立。ニーマイヤーセンターの建物を財団に譲渡する期限が今月15日で切れるのを最後に、ニーマイヤーセンターは幕を下ろすことになりました。
ケヴィン・スペイシーが『リチャード三世』を上演し、ジェシカ・ラングやパウロ・コエーリョが来場し、エンリケ・モレンテやパコ・デ・ルシアがコンサートを開き、ウディ・アレンがワールドプレミアを行いニューオーリンズ・ジャズ・バンドを率いてライブを開催し、ヨーヨーマが演奏し、バーバラ・ヘンドリックスが歌声を披露したこの施設はわずか半年で消滅。こちらの記事によると今後はアビレス国際文化センター(Centro Cultural Internacional Avilés)という名称で再出発するそうです。なんてこった。
スペイン王立言語アカデミーの新会員に俳優のホセ・ルイス・ゴメスが選ばれました。2009年に作家のフランシスコ・アヤーラが他界して以来空席だった Z の椅子を占めます。
演劇人が会員になった前例としてフェルナンド・フェルナン=ゴメスがいますが、フェルナン=ゴメスが俳優・演出家であると同時に戯曲家でエッセイスト、つまり文人であったのに対し、ゴメスの職業は俳優・演出家なので、言語アカデミー史上初の「文芸作品をもたない会員」になります。
1940年生まれ。1976年、リカルド・フランコ監督作『パスクアル・ドゥアルテの家族』でカンヌ国際映画祭の最優秀主演男優賞。1981年から84年までエスパニョール劇場の芸術監督をつとめ、1995年にラ・アバディーア劇場を設立。近年の仕事で日本人になじみがあるのはアルモドバル監督作『抱擁のかけら』で演じた富豪エルネスト・マルテル役でしょう。