昨年10月13日の記事なので旧聞に属しますが、闘牛の監督官庁がこれまでの内務省から文化省に変更されます。闘牛士ホセ・マリーア・マンサナーレス(息子)を団長とする闘牛士代表団が内務省を訪れアルフレード・ペレス・ルバルカーバ内務相と面会し、大臣は「全面的に賛成」の意を表し、「短期間のうちに」移管手続きを行うと確約。「これで私たちはアルティスタ(芸術家)とみなされる。闘牛界への支援が増え普及が促進されると思う。私たちの所属先は文化省だ」とマンサナーレスはご満悦。代表団の他のメンバーは闘牛士エンリケ・ポンセ、エル・フリ、カイェターノ・リベーラ・オルドニェス、エル・シド、アレハンドロ・タラバンテ、ミゲル・アンヘル・ペレーラ、弁護士ハビエル・アラウース・デ・ロブレス、闘牛飼育組合委員長カルロス・ヌニェス。代表団はこれに先立つ9月30日に文化省を訪問しアンヘレス・ゴンサレス=シンデ大臣との会合を行いましたが、なぜか公式訪問の扱いを受けられなかったとか。管轄が文化省に移っても各地の興業は地方自治体が行うので、闘牛禁止法案が可決されたカタルーニャでの闘牛復活を働きかけるのは難しいようです。
スポーツ的な要素と同時に興業であり見世物であり宗教的儀式の面も持つ〈国技〉であるという点において、日本の相撲に酷似する闘牛。相撲の監督官庁は文部科学省(文化庁の上部組織)。いよいよ闘牛も相撲に似てきました。
スペインのアカデミー賞、第25回ゴヤ賞が発表されました。カタルーニャ映画『黒パン』 Pa negre の一人勝ちです。
部門 | 作品 |
---|---|
作品賞 | 黒パン Pa negre |
監督賞 | アグスティ・ビリャロンガ(Pa negre) |
主演男優賞 | ハビエル・バルデム(Biutiful) |
主演女優賞 | ノラ・ナーバス(Pa negre) |
助演男優賞 | カラ・エレハルデ(También la lluvia) |
助演女優賞 | ライア・マルイ(Pa negre) |
新人男優賞 | フランセスク・コロメール(Pa negre) |
新人女優賞 | マリーナ・コーマス(Pa negre) |
新人監督賞 | ダビ・ピニーリョス(ボナペティ Bon Apetit) |
製作監督賞 | クリスティーナ・スマーラガ(También la lluvia) |
撮影賞 | アントニオ・リエストラ(Pa negre) |
オリジナル脚本賞 | クリス・スパーリング(Buried) |
脚色賞 | アグスティ・ビリャロンガ(Pa negre) |
美術賞 | アナ・アルバルゴンサレス(Pa negreアゴラ) |
編集賞 | ロドリーゴ・コルテス(Buried) |
オリジナル作曲賞 | アルベルト・イグレシアス(También la lluvia) |
オリジナル歌曲賞 | ホルヘ・ドレスレル "Que el soneto nos tome por sorpresa" (ロペ Lope) |
衣装デザイン賞 | タティアーナ・ヘルナンデス(Lope) |
音響賞 | U・ガライ、M・オルツ、J・ムニョス(Buried) |
メイクアップ&ヘアスタイル賞 | J・ケグラス、P・ロドリゲス、N・サンチェス(Balada triste de trompeta) |
特殊効果賞 | R・アバーデス、F・ピケル(Balada triste de trompeta) |
長編アニメーション賞 | チコとリタ Chico y Rita (フェルナンド・トゥルエバ、ハビエル・マリスカル、A・エランド) |
長編ドキュメンタリー賞 | 自転車、スプーン、りんご Bicicleta, cuchara, manzana(カルラス・ボシュ) |
短篇映画賞 | ボタンの箱 Una caja de botones (マリア・レイェス・アリアス) |
短篇ドキュメンタリー賞 | ある田舎の映画館の記録 Memorias de un cine de provincias (ラモン・マルガレート) |
短篇アニメーション賞 | 魔女 La bruxa (ペドロ・ソリース) |
イスパノアメリカ映画賞 | 魚の命 La vida de los peces (マティーアス・ビセ/チリ) |
ヨーロッパ映画賞 | 英国王のスピーチ |
名誉ゴヤ賞 | マリオ・カムス |
ロルカが遺した未完の戯曲『題名のないコメディア』 Comedia sin título を翻案した『コメディアと夢』 Comedia y sueño がグラナダで上演されます。
『題名のないコメディア』の舞台設定は1936年。市街では革命が勃発。マドリードの劇場でシェイクスピア作『真夏の夜の夢』の幕が上がるのを観客がが待っていると、演出家が突然上演中止を発表、そして演劇と現実、詩と人生の関係について省察するよう観客を挑発するというストーリー。
原作では『真夏の夜の夢』が単なる参照枠として言及されるにとどまりますが、『コメディアと夢』はロルカの遺稿と『真夏の夜の夢』のテキストを全て盛り込みました。演出はフアン・カルロス・コラサ。フェデリコ・ガルシーア・ロルカ財団の女声を受け、劇団テアトロ・デル・エストゥディオ(Teatro del Estudio)がグラナダのカハ・グラナダ・イシドーロ・マイケス劇場で昨夜初演。
もともとはグラナダに開館予定のフェデリコ・ガルシーア・ロルカ・センター(Centro Federico García Lorca)オープニング記念公演として企画されたのですが、種々の事情で建設計画が頓挫、開館の目処が立たず、今回の上演となった次第。
スペイン紙エル・パイスの記事ですが、元ネタは英紙ガーディアン。
先月ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館でバレエ・リュス結成百周年記念展覧会『ディアギレフとバレエ・リュスの黄金時代 1909-1929』が幕を下ろした直後のこと。ブリティッシュ・パテのオンライン・サイトで公開されていた被写体・日時ともに不明の動画を見直した〈ロンドン・バレエ愛好会〉のメンバー、スーザン・イーストウッドが、「これはバレエ・リュスではないか」と思い至りました。展覧会を企画した学芸員ジェーン・プリッチャードが映像を確認したところ、間違いなくバレエ・リュス。場所はスイスのモントルーで毎年開催される「ナルシス祭(水仙祭」、時期は1928年6月。
ご覧の通り、舞台は野外の仮設ステージ。プリッチャードによるとプリンシパルはセルジュ・リファール。作品はミハイル・フォーキン振付『レ・シルフィード』の一場面。ディアギレフは「映画はまだまだ未熟な芸術」だとして録画を忌避していたので、観客の誰かが隠し撮りしたか、あるいは、発見された約二分間のフィルム(118秒)はブリティッシュ・パテが派遣したカメラマンが撮影した可能性があるとのこと。
上述の展覧会『ディアギレフとバレエ・リュスの黄金時代 1909-1929』は今年の10月からスペインを巡演します。主催はカシャ・フォルム。まず10月から来年1月までバルセロナのカシャ・フォルム本部、続いて2012年2月から6月までマドリードのプラド遊歩道(パセオ・デル・プラド)にあるカシャ・フォルム・マドリードで開催。
アカデミー賞恒例の候補者昼餐会(ノミニーズ・ランチョン)に出席したハビエル・バルデム。対象作はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督『ビューティフル』 Biutiful。確かにスペイン語での演技でノミネートされるのは並大抵ではないでしょう。初めて主演男優賞にノミネートされたのがスペイン語の『夜になるまえに』(2000年)、オスカー助演男優賞を獲得したのは英語で演じた『ノーカントリー』(2007年)。今作がアメリカで高い評価を得た背景にはジュリア・ロバーツ、ショーン・ペン、マイケル・マンといった同僚たちの後押しがあったと告白しています。
こちらの記事にある通り、今年のバルデムはスペインのゴヤ賞、米アカデミー賞、英国アカデミー賞(BAFTA)でそれぞれ主演男優賞候補。ペネロペ・クルスとのあいだに第一子となる長男が生まれたばかり。幸先のいいスタートです。
〈最高の舞台を手ごろな価格で観客に〉をモットーに、マドリードの芸術サークル(Círculo de Bellas Artes)が第1回CBA連続上演会 Ciculo de escena を開催します。2月8日から5月21日まで、会場は芸術サークルのフェルナンド・デ・ローハス劇場。
第1回は現代劇の代表作を特集。チェーホフ、ハロルド・ピンター、アラバール、ストリンドベリ、ベケット。オープニングを飾るのはテアトロ・コルサリオ(Teatro Corsalio)による戦慄的な『咆哮』 Aullidos。セックスとバイオレンス満載のアダルトオンリーな人形劇。もともと残酷さに満ちた童話『眠れる森の美女』のエッセンスを回復する試みで、王子が美女を目覚めさせるのはキスではなく性交渉。「オリジナルの童話ではまさにこれが真相」だと、劇団のヘスス・ペニャはブルーノ・ベッテルハイム著『昔話の魔力』を参照して裏付けをとったそうです。2月8日から13日まで。
3月10日から12日までは劇団テアトロ・デル・ノルテ(Teatro del Norte)による『ワーニャ、現実と欲望』。チェーホフの『ワーニャ伯父さん』にルイス・セルヌーダの詩をミックス。3月22日~27日は演劇集団〈開かれた織物〉(Tejido abierto)による『開かれた織物-ベケットの織物』 Tejido abierto-tejido Beckett。4月5日~10日はハロルド・ピンターの『恋人』。4月15日~23日はストリンドベリの『債鬼』。4月26日~5月1日は劇団ラユエラ(Rayuela)によるチェーホフ『桜の園』。ラストは演劇集団テアトロデセルカ(Teatrodecerca)によるフェルナンド・アラバール『ファンドとリス』 Fando y Lis。
カタルーニャの劇作家ジョゼップ・マリア・フロタッツがビルバオのアリアーガ劇場に再登場。アリアーガ劇場とエスパニョール劇場(マドリード)の共同制作による『ボーマルシェ』 Beaumarchais を演出・主演。2月13日(日)まで。
原作は1950年にサシャ・ギトリが発表した同名の戯曲。ギトリは友人のオーソン・ウェルズを主役に舞台化を考えていたものの、ウェルズの撮影スケジュールのため延期され、結局舞台化されないままギトリは他界。1995年にエドゥアール・モリナロがファブリス・ルキーニ主演で映画化(『ボーマルシェ/フィガロの誕生』)。舞台ではこれまで一度も上演されなかったこの作品をフロタッツが遂に舞台化。ただし原作に少し手を加え、フロタッツはギトリ本人を演じ、そのギトリがボーマルシェを演じるという劇中劇の構造にしました。
三十人の俳優が68人の人物に扮し、当時の衣裳80着を披露。衣裳デザインは映画『シラノ・ド・ベルジュラック』でオスカーを獲得したフランカ・スカルチアピーノ。彼女は1992年初演、95年再演のヌリア・エスペル演出、坂東玉三郎主演『エリザベス』(銀座セゾン劇場)の衣裳を手がけた人です。
今月10日から開催される第61回ベルリン国際映画祭コンペ部門の16作品が発表されました。スペイン語圏からは二作。
邦題(仮訳) | 原題 | 監督 | 国 |
---|---|---|---|
トリノの馬 | A Torinoi Lo (The Turin Horse) | Béla Tarr | ハンガリー=仏=独=スイス=米 |
エル・プレミオ | El Premio | パウラ・マルコビッチ | メキシコ=仏=ポーランド=独 |
別離: ナデールとシミン | Jodaeiye Nader az Simin (A Separation) | アスガー・ファルハディ | イラン |
夜の物語 | Les contes de la nuit (Tales of the night) | ミッシェル・オスロ | 仏 |
マージン・コール | Margin Call | J.C.チャンダー | 米 |
愛してる、愛してない | Saranghanda | イ・ユンギ | 韓国 |
睡眠病 | Schlafkrankheit (Sleeping Sickness) | ウルリッヒ・ケーラー | 独=仏=オランダ |
血の容赦 | The Forgiveness of Blood | ジョシュア・マーストン | 米=アルバニア=デンマーク=伊 |
不思議な世界 | Un mundo misterioso | ロドリーゴ・モレーノ | アルゼンチン=独=ウルグアイ |
無害な土曜日 | V Subbotu | アレクサンドル・ミンダーゼ | 露=独=ウクライナ |
我々の偉大な絶望 | Bizim Büyük Caresizligimiz (Our Gran Despair) | Seyfi Teoman | トルコ=独=オランダ |
コリオレイナス | Coriolanus | レイフ・ファインズ | 英 |
オデム | Odem (Lipstikka) | ジョナサン・サガール | イスラエル=英 |
未来 | The Future | ミランダ・ジュライ | 独=米 |
我々でなければ誰? | Wer wenn nicht wir (If not us, who) | アンドレス・ファイエル | 独 |
空に叫ぶ | Yelling to the Sky | ヴィクトリア・マホーニー | 米 |