2004年8月31日(火)
2005年と2006年の二年間、さまざまな文化事業を協力してやりましょうということ。スペインのカルメン・カルボ文化相とモロッコのモハメッド・アチャアド文化相が調印。タンジェのセルバンテス劇場改修も含まれています。
開幕した第61回ベネチア映画祭はアメリカ尽くしだという記事。オープニングを飾る『ザ・ターミナル』のスピルバーグとトム・ハンクスを始め、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、トム・クルーズ、ニコール・キッドマン、グウィネス・パルトロウ、デンゼル・ワシントンなどハリウッドから多数列席。2001年に『モンスーン・ウェディング』で金獅子賞をとったインドのミラ・ナイールの新作『ヴァニティ・フェア』はアメリカの Focus Features と USA Films の製作。主演はボブ・ホスキンス。イギリスのジョナサン・グレイザーが監督、ジャン=クロード・カリエールが脚本を書いた『バース』 Birth もアメリカ資本。主演は『ドッグヴィル』でも共演したニコール・キッドマンとローレン・バコール。
スペインからはアメナーバルの『沖へ』 Mar adentro が参加。レオナルド・ラミレス監督のアルゼンチン映画 Parapalos がデジタルシネマ部門に出品されています。
今年からディレクターは辣腕マルコ・ミュラー。今年のオマージュはマノエル・デ・オリヴェイラとスタンリー・ドーネン。
舞台の魔術師、ラファエル・アルバレスが演劇界の現況を嘆いています。
まずはカルメン・カルボ文化相を批判。「社会労働党の彼女でさえ演劇の話をしない」。「演劇は保護しなければ。国民党政権では最小限の保護さえなかったが、政権交代した今も変化の兆しがない。大臣は演劇保護法を制定するべき」「どうでもいい人の生き死にばかり放送するテレビで演劇のプロモーションをするべき」。興行主には「演劇文化」がなく「売上のことしか頭にない」。アンダルシーアやバスク、カタルーニャなどの自治州では「自分たちの地域の演劇しか見たがらない」。
9月8日にダリオ・フォの『アッシジのフランチェスコ、神の吟遊詩人』、パトリック・サスキンドの『コントラバス』、フェルナン=ゴメス翻案の『ラサリーリョ・デ・トルメス』の三つのひとり芝居で新シーズンの幕を切って落とします。
来年はドン・キホーテを舞台化する予定。
2004年8月26日(木)
明日開幕。スペイン語圏の作品が目白押し。
コンペ部門はスペインからグラシア・ケレヘータ『エクトル』とカルロス・サウラの『七日目』。アルゼンチンのフアン・ホセ・カンパネッラ『アベリャネーダの月』。コロンビアのセルヒオ・カブレラ『失うのは方法の問題である』。フランス在住のチリ人監督ラウル・ルイスは『野の日々』。審査員にはメキシコの女優ディアナ・ブラチョとスペインのハイメ・カミーノ監督。
コンペ部門以外でもフエルナンダ・モンテネグロの『通りの向こう側』(ブラジル)やアンドレス・ウッドの『マチューカ』(チリ)、アナ・ポリアックの『パラパロス』(アルゼンチン)などを上映。アルゼンチンのフェルナンド・ソラーナス監督のドキュメンタリー『略奪の記録』も上映されます。
さらにイシーアル・ボリャイーンの『ぼくの目をあげる』、ミゲル・アルバラデホ『子犬』、ヘラルド・エレーロ『アルキメデスの王子』など、スペインの新作映画も。
今年のレトロスペクティブはテオ・アンゲロプロスとイザベル・アジャーニ。
マドリードのコンデ・ドゥケ中央パティオで公演中のフリオ・ボッカ。来年サラ・バラスに新作を提供し闘牛場で上演する計画とか。ボッカ率いるバレエ・アルヘンティーノとサラ・バラス舞踊団が共演する予定。
2004年8月25日(水)
10月1日開催の第42回ニューヨーク映画祭はアルモドバルへのオマージュ。新作『バッド・エデュケーション』が上映されます。10月9日(土)午後9時と10日(日)午後2時の二回。
ベルイマン『サラバンド』、エリック・ロメール『トリプル・エージェント』、マイク・リー『ヴェラ・ドレイク』も上映。
2004年8月24日(火)
モンテビデオ旧市街のウルグアイ最大の劇場、ソリース劇場の六年に及んだ修復工事が終わり、9月1日再開。設立は148年前。1975年に国の歴史的建造物に指定されています。コメディア・ナシオナル(国立劇場)とモンテビデオ交響楽団の本拠地。火災でほぼ全壊し、98年12月12日から修復中でした。
まず再開するのは劇場本体、後に付属の舞台劇術博物館と文書館、レストラン、カフェテリアが再開する予定。
2004年8月22日(日)
新ラテンアメリカ映画祭2003グランプリのキューバ映画『スイート・ハバナ』が第十回サラエボ映画祭での上映決定。アルゼンチンのプロデューサー、エリセオ・スビエラが「過去30年で最も重要なキューバ映画」と評した作品。他にアルモドバル『バッド・エデュケーション』、ウルグアイの『ウイスキー』、チリの『B-Happy』も参加。
コンペ部門参加はアルバニア、ブルガリア、クロアチア、マケドニア、スロベニア、セルビア・モンテネグロから九作品。審査委員長はマイク・リー。
アメリカ初のチリ映画祭。『地下鉄』『愛あるセックス』『イースター島のオグとマンパト』『戴冠』の四作品。マイアミ大学ビル・コスフォード・シネマで9月16日から19日まで。
終幕間近のメリダ古典演劇祭のオフのディレクター、エデゥアルド・アセードのインタビュー記事です。期間中多くのバルやホテルやレストランが古代ローマの装飾を施したのは彼のアイデア。「オフ」とは正式プログラム以外の演目のこと。エジンバラ演劇祭におけるフリンジのようなものです。
- ――今年のオフの内容は?メリダへ貢献は?
- オフはローマ劇場の世界の社会への反映そのもの。町中に反映している。芝居に足を運ばない人も含めて。町のあらゆる観光資源をアクチュアルに提供するプロジェクト。オフが目指すのはメリダが古典演劇祭を通じて五感の祝祭になること。上演後も観光できるのが大切。劇場を出たら開いているのはホテルしかないなんてさびしいから。
- ――メリダの夜をダイナミックに演出するということ?
- それもある。大事なことだと思う。世界有数の演劇祭だからフェティバルの周辺にあるものも全部視野に入れないと。観光客は夜もメリダを見たがっている。芝居がハネてすぐ帰宅したいとは思っていない。
- ――過去と較べて今年のオフの特色は?
- 何よりもジョン・レノン通りの5ヶ所のスポットで開催されたこと。他も含めると20ヶ所で催しがある。経営者と無名の市民が参加している。オフが続くためにはこれが重要。興行面ではなく古典文化の普及という点で。
- ――公的補助を受けなかったことによるダメージは?
- オフは民間のイニシアチブに応えなくてはならない。行政が各スポットの活動に口を挟む必要はない。演劇祭振興会が担当するのは公式プログラム。よくやっているが、バルやパブに熱気を伝えるとなると私たちの出番。〔……〕
- ――来年ですが、改善したい点は?
- 町全体を取り込めればいいと思う。一般市民も含めて。スポットの営業時間を広げたり。メリダ市民自身が創り上げるのが大事。観光客だけのための演劇祭だと思われがちだから。
- ――今年で5回目。今後5年の展望は?
- もっと開かれたものにしなくては。もっともっと多くの人が参加する。メリダ全体を壮大なスペクタクルにしたい。
シロアリ被害で修復中だったアルカラ・デ・エナーレスのセルバンテス劇場が昨夜ののミゲル・デリーベス作『我らが祖先の戦争』で十一ヶ月ぶりに再開。
19世紀の建築で、老朽化で基礎が傷みシロアリにも蝕まれ、全面修復しました。アルカラ・デ・エナーレスはセルバンテスの故郷。来年は『ドン・キホーテ』出版四百周年。
2004年8月21日(土)
スペインでゲイ映画が台頭 ニューヨークの映画祭 Un festival neoyorquino refleja el auge del cine gay en España
11日に開幕したニューヨークの映画祭 LaCinemaFe。スペイン語圏の映画限定の映画祭で26作品が参加、うち17がスペイン。今年はゲイ映画特集。
ゲイ作家との結婚を控えた女を描くホアン・ピンサスの『婚礼の日々』。アルゼンチン、コロンビア、メキシコ、ペルー、プエルトリコ、ベネズエラ、アメリカの作品も参加。いずれの国もこの十年でまじめなゲイ映画が急速に増えているとのこと。フランコ・デ・ペニャ『具体的な愛』やハイメ・ウンベルト・エルモシーリョの『アーモンド大使』などコンペ部門に出品されている作品もあります。
2004年8月20日(金)
マドリードのマリーア・ゲレーロ劇場、シーズンの締めくくりはアントニオ・ガラの処女戯曲『エデンの緑園』。今年5月11日に同劇場で上演されたばかり。1963年のカルデロン・デ・ラ・バルカ演劇賞受賞作。演出はふたたびアントニオ・メルセーロ。9月8日から10月31日まで。
スペイン作家協会主催(SGAE)の第13回SAGE演劇賞と第5回児童演劇賞。今年もやりますよという告知です。賞金はどちらも現金6,000ユーロ(約80万円)。協会に加入している作家が対象。
写真は先週エスパニョール劇場で初日を迎えたガルシーア・ロルカ作『ジプシー歌集』の一場面。
2004年8月17日(火)
「スペインで作家と呼べる映画監督はアルモドバルとサウラだけ」というのが見出し。カタルーニャ映画評論家作家協会会長ホセ・エンリケ・モンテルデの発言。モンテルデによるとアルモドバルは「ファスビンダーを軽くした人」で、「ビセンテ・アランダやフェルナンド・トゥルエバはとてもいい監督だが、映画の価値以上のものがない、個性と言えるものはない」とのこと。なんだか抽象的です。
あるカットを見ただけで誰が監督したかがわかる、そんな映画が撮れる人が「作家」ではないだろうか。だとしたら、とても大事な人、いや、いちばん大事な人が抜けています。
2004年8月14日(土)
ジョン・マルコヴィッチがバルセローナで舞台を演出します。ローレンス・オリヴィエ賞作家テリー・ジョンソンの『ヒステリー』。第二次世界大戦直前、若くして気が触れたダリがフロイトを訪れる話。エイベル・フォークが老フロイトを、エンリケ・アルシーデスがダリを演じます。共演はイサベル・セラーノ、リカルド・ボラース。
フロイトのもとを訪ねてきた女性が彼の過去を暴き、フロイトは過去の過ちに苛まれる。続いてダリが現れ、フロイトを師と慕うものの、フロイトはダリを忌避するという内容のようです。
『ヒステリー』は1993年初演。ヨーロッパ、アメリカ、メキシコ、日本、オーストラリアで上演されています。
舞台活動が長いマルコヴィッチがスペインで演出するのは初めて。9月14日から11月7日までビクトリア劇場。以後国内巡演。
グラナダ大学エレーナ・トーレスの研究によると、ファリャは舞台音楽のみならず映画製作も手がけようとしていたようです。
作品は『ペドロ親方の人形芝居』。未完に終わった『アトランタィダ』を作曲していた頃同時並行して三年かけて準備していたものの資金繰りがつかず見果てぬ夢に終わったそうです。
2004年8月13日(金)
アリシア・アロンソ率いるキューバ国立バレエが秋のハバナ国際バレエフェスティバルで新作を発表。サルバドール・ダリや小説家アレホ・カルペンティエールの記憶に捧げる作品だそうです。10月28日から11月6日まで。
2004年8月12日(木)
ブエノスアイレスのコロン劇場が改修工事のため2006年9月1日から2008年5月25日まで閉鎖。舞台機構が古くて場面転換が遅く、製作できないオペラがあるため。世界屈指の音響を損なわないためにオーケストラボックスと客席の勾配には手をつけないとのこと。
2004年8月10日(火)
アルゼンチン映画アカデミーが9日発足。
会長はノルマ・アレアンドロ。役員会メンバーはプロデューサーのパブロ・ボッシ、バプロ・ロビート、監督のダニエル・ブルマン、マルセロ・ピニェイロ、ルイス・プエンソ、パブロ・トラペーロ、俳優のセシリア・ロス、レオナルド・スバラリア、撮影監督フェリス・モンティ、衣装デザイナーのメルセデス・アルファンシンなど。会員は420名。
アメリカのアカデミー賞、スペインのゴヤ賞にあたる賞も創設する予定。名称は未定。
2004年8月8日(日)
スペインはヨーロッパ第四位の映画鑑賞国。スペイン作家協会の『舞台音楽視聴覚年鑑2004年』によると、2003年にスペイン人が買った映画鑑賞券はひとりあたり3.18枚。ルクセンブルグ、アイルランド、アイスランドに次いで四番目。
4,7ユーロ(640円)という安さも要因とのこと。ポルトガルは3,7ユーロ(500円)。高いのはノルウェーとスウェーデンで8ユーロ(1,090円)、アイスランドが8,3ユーロ(1,130円)、スイスが9,4ユーロ(1,280円)。
市場に占めるスペイン映画の割合は15.8パーセント。興行成績一位は『モルタデーロとフィレモンの大冒険』で2300万ユーロ(31億円)。二位は『パイレーツ・オブ・カリビアン』、三位は『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』。
2004年8月5日(木)
スペイン隨一の名編集者パブロ・G・デル・アモ死去。77歳。
オーソン・ウェルズの『秘められた過去』(日本未公開)の編集の最終段階に関わったのちにプロデューサー、エリーアス・ケレヘータと組んでスペイン映画の名作の数々を手がけました。フェルナンド・フェルナン=ゴメス『行き先のない旅』 El viaje a ninguna parte、カルロス・サウラ『狩り』 La caza、『歌姫カルメーラ』 ¡Ay, Carmela!、ビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』、ピラール・ミロ『意地の悪い女』 El perro del hortelano など。
国民映画賞を受賞している唯一の編集者でスペイン映画アカデミーの創立メンバーでした。
エスパニョール劇場の新芸術監督マリオ・ガス。『オレスティア』バレンシア・サグント公演前の記者会見。俳優と演出家、脚本家、映画監督の顔をもつガスは、演出するのもされるのも「好き。しばらく片方をやらずにいるとやりたくなる」。新生エスパニョール劇場のプログラムは「すべて独自製作」。
1946年パラグアイ生まれ。
わたしにとって俳優はアンタッチャブル―――『蜂の巣』『ベルナルダ・アルバの家』など、文芸作品の映画化を得意とするマリオ・カムスの述懐。カンタブリア大学夏期講座にて。
『蜂の巣』のキャスティングは「すごかった」。マリー・カリーリョにホセ・ルイス・ロペス・バスケス、アグスティン・ゴンサレス、フランシスコ・ラバルなど演劇界のビッグネームが勢揃い、計46人。六週間かかった撮影は「もっと続けばいいのにと思った」。好んで撮ったのは50年代の作家。イグナシオ・アルデコアやミゲル・デリーベス。
「プロデューサーはオリジナル脚本より原作の映画化を好む」そうです。文芸作品の映画化は「映画版」であって「原作と同じである必要はない」、なぜなら「語りのスタイルが異なるから原作に忠実であろうとすればいろいろ変える必要がある」。
『クーロ・ヒメネス』『フォルトゥナータとハシンタ』などのテレビドラマについて。女優で歌手のアナ・ベレンはチェコスロバキアではドラマ女優として通っているとか。
2004年8月3日(火)
第41回バリャドード大学映画講座。基調講演をした映画監督でマドリード映画学校長のフェルナンド・メンデス・レイテいわく、「アルモドバルは映画のポストモダンの代表者」。んなこたあ十年以上前にポール・ジュリアン・スミスが言ってます。それは措いといて、『トーク・トゥ・ハー』と新作『バッド・エデュケーション』 La mala educación を観て「アメリカのフィルム・ノワールとメロドラマの影響が色濃い」とのこと。
アルカラ・デ・エナーレスのセルバンテス劇場。去年10月20日の「ごあいさつ」で触れたとおり、シロアリにやられて閉鎖されていました。修復工事がようやく終了、今月20日にオープン。経費は75万ユーロ(約1億円)。