舞台通信

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2015年7月28日(火)

【悲報】カフェ・コメルシアル突如閉店
El último y más amargo café del Comercial

マドリードのビルバオ広場に面する市内最古のカフェ・コメルシアルが昨日突然閉店しました。事前予告もなく閉店記念のイベントもなく、閉ざされたドアには「業務終了のため閉店(Cierre por cese de negocio)」と記された紙が一枚貼ってあるだけというさみしさです。従業員も常連客も閉店の理由は知らされず、憶測が飛び交うばかり。経営者であるイサベル・コントレーラスとマリベル・サラカトーはただ営業続行の意志がないと申し立てただけ。

居心地のよいカフェでした。1887年の開店以来、文学者と映画関係者のテルトゥリアの場として賑わいました。アントニオ・マチャード、カミロ・ホセ・セラ、ブラス・デ・オテーロ、ガブリエル・セラーヤ、フランシスコ・ウンブラルなどの文学者が通い、ルイス・ガルシア・モンテーロ、アルトゥーロ・ペレス=レベルテ、ホアキン・レギーナなど現役作家にも愛されました。ダビ・トゥルエバは2002年の映画『マドリード1987』のワンシーンをここでロケしました。

2015年7月23日(木)

ミゲル・ポベーダ「フランコ政権と結びつけられて過小評価されてきたコプラを擁護する」
Miguel Poveda: «Defiendo la copla, un género muy maltratado y asociado al franquismo»

ミゲル・ポベーダが新作アルバム『自由のためのソネットと詩』 Sonetos y poemas para la libertad を制作し、今夜マドリードのレアル劇場でお披露目します。詩人のルイス・ガルシア・モンテーロとシンガーソングライターのペドロ・ゲラの発案による作品で、ガルシア・モンテーロがアルベルティやネルーダ、ボルヘス、ケベード、ロペ・デ・ベガ、ミゲル・エルナンデスらの詩を選び、ゲラが作曲を手がけました。制作に四年を費やし、ホアキン・サビーナ、アナ・ベレン、ミゲル・リオス、チクエロ、ジュアン・アルベルト・アマルゴースらの協力を仰ぎました。

以下は蛇足ですが、記事の第二段落に引用されたポベーダの談話に見られる cuartado は綴りが間違っており、正しくは coartado です。「制約を受けた(coartado)と感じたことは一度もなくて、若いころから、偏見を持たずに芸術の世界を動き回ったよ」という意味です。

2015年7月12日(日)

【訃報】ハビエル・クラーエ死去 享年七十一
Muere Javier Krahe

マドリード生まれのシンガーソングライター、ハビエル・クラーエが今朝カディスの自宅で心筋梗塞で亡くなりました。七十一歳。ジョルジュ・ブラッサンスとレナード・コーエンの活躍に勇気づけられた人なので、「シンガーソングライター」というよりは「歌う詩人」と称するのがふさわしいかもしれません。たしか1993年初頭だったと思いますが、マドリードのとあるナイトクラブでライブを聴いたことがあります。開始時刻が午前一時頃で、クラーエはすでに酒を何杯もあおったらしく酩酊状態。呂律が回らないのにマイクを離さず歌い、聴衆は大受けでした。あやしい秘密集会の雰囲気は立川談志の「談志ひとり会」に通じるものがありました。

2015年7月5日(日)

ホセ・ルイス・ゴメス「最高の学びは学んだことを忘れること」
José Luis Gómez: «El mejor aprendizaje es desaprender»

毎夏恒例のアルマグロ古典演劇祭が開幕し、ホセ・ルイス・ゴメス(75歳)が第15回コラル・デ・コメディアス賞を受賞しました。「我々俳優には、自分自身を洗練された伝達手段にするという高い目標がある。時には人間の最良の部分を伝えなくてはならないからね」「最高の学びは学んだことを忘れることだよ。自分を空っぽにするのは俳優にとって骨の折れる作業なんだ。伝達者になるという難しい目標を引き受ける前に、まず自分を身ぎれいにするのが大事だ。あとでいろんなものに染まれるようにね。準備に必要なのはたったひとつ、自分を空っぽにすることだ」。すぐれた俳優ならではの見解です。