舞台通信

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2008年4月5日(土)

ボラウと言葉に取り入れられた映画  Borau y el cine hecho palabra

ホセ・ルイス・ボラウがエッセイ集『我らが言語における映画』を執筆中というニュース、下で触れましたが、映画で有名になったフレーズやスペイン語に取れ入れられた言葉に面白いものがあります。
Siempre nos quedará París
『カサブランカ』のボガートのセリフ。日本語字幕は「君と幸せだったパリの想い出があるさ」だったかな。
La cargaste, Burt Lancaster
誰かがヘマをしたときの地口。カルガステとランカステル(バート・ランカスター)で韻を踏んでます。
¡Más madera, es la guerra!
「もっと木をくれ、戦争だ!」。マルクス兄弟『マルクスの二挺拳銃』で、機関車の客車を壊して釜にくべながら走るシーン。
¡Y también dos huevos duros!
マルクス兄弟『オペラは踊る』でいちばん有名な、船室が大勢の人でぎゅうぎゅう詰めになシーンでのグルーチョの台詞。「あとゆで玉子を二つ!」。スペイン語字幕はミゲル・ミウラ。
Nadie es perfecto
『お熱いのがお好き』のラストでジョー・ブラウンがジャック・レモンに放つ傑作セリフ。Nobody is perfect。
Rebeca
『レベッカ』でジョーン・フォンテーンが着たことから、薄手のカーディガンをスペイン語ではレベーカと言います。
Hombres machos
マチョ macho は「オス・男」とい意味ですが、ボラウによると1940年代まではもっぱら動物に対して使われていた言葉だそうです。人間に対して使われるようになったのは当時メキシコ映画がスペインで流行ったのがきっかけ。
bocata
スペイン版サンドイッチはボカディーリョ bocadillo と言い、口語でボカータと言いますが、これはスペインでロケしたイタリア人俳優やスタッフがイタリア語風に呼んで生まれたとのこと。これは知らなかった!

ホセ・ルイス・ボラウとホセ・マリア・メリーノ、王立言語アカデミー会員に  Con Borau y Merino el cine vuelve a la Real Academia y el relato corto se hace grande

俳優・映画監督・脚本家・劇作家のフェルナンド・フェルナン=ゴメンが物故してから空席だった王立言語アカデミーの「B」の席を、同じく映画監督・脚本家のホセ・ルイス・ボラウが占めることに決定しました。推薦したのはアントニオ・フェルナンデス・アルバ(建築家)とエミリオ・リェドー(思想家)、アントニオ・ミンゴーテ(漫画家・作家)。また、クラウディオ・ギリェン亡き後空席だった「m」の席は作家ホセ・マリア・メリーノに決定。推薦者はルイス・マテオ・ディエス(作家)、アルトゥーロ・ペレス=レベルテ(作家)、アルバロ・ポンボ(作家・詩人)。

ホセ・ルイス・ボラウは現スペイン作家編集者協会(SGAE)の会長。かねてから「王立言語アカデミー会員に映画脚本家を加えるべし」とラサロ・カレテール元アカデミー会長に進言し、先日亡くなったラファエル・アスコーナを推したものの、生来謙虚なアスコーナは辞退、結果的にフェルナンド・フェルナン=ゴメンが会員になった経緯があります。目下四百ページからなるエッセイ集『我らの言語における映画』 El cine en nuestro lenguaje を仕上げ中。そんな「映画にとって問題なのは脚本家のギャラが低すぎること。扱いも低く、作家として認められていない」と嘆くボラウ。ボラウにとって完璧な脚本はビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』。

ボラウは自身が監督した Río abajo (1984)でオーソン・ウェルズを演出する話があったとか。フェルナンド・レイの代役としてマフィアを演じてほしく、ウェルズに電話をかけたところ彼も資金難で困窮しており、チャンスだったが、当時ウェルズの契約を仕切っていたのが「タスカ王子」とかいう人物で、「15万ドル用意できますか。それだけあれば脚本も読まずにやりましょう」と言われた。しかしボラウは100ドルすらなく、諦めたそうです。

ホセ・マリア・メリーノは1941年ラ・コルーニャ生まれ。短篇小説家、というよりも物語の語り部として有名。アストゥリアスやレオンでは、女たちが針仕事などの夜なべをしながらお話を語り合う filandón という伝統があり、これをルイス・マテオ・ディエスらとともに復活させた功績があります。師と崇める作家はクラリン、モーパッサン、チェーホフ、ピオ・バローハ、バリェ・インクラン、フリオ・コルタサール、ボルヘスなど。

2008年4月4日(金)

カルデロン『不名誉の絵師』、百年ぶりに上演 Compañía Nacional de Teatro Clásico

カルデロン・デ・ラ・バルカの『不名誉の絵師』 El pintor de su deshonra が百年ぶりにスペインで上演中です。スペイン国立古典劇場(CNTC)の定期公演で、ところはパボン劇場。3月29日から5月25日まで。演出エドゥアルド・バスコ、脚本ラファエル・ペレス・シエラ。

この他、来年にかけてのラインナップは、カルデロン『白き手に危害なし』 Las manos blancas no ofenden、ロペ・デ・ベガ『ベリーサの勇敢』 Las bizarrías de Belisa、『シドのロマンセ』 Romances del Cid、ロペ・デ・ベガ『サン・フアンの夜』 La noche de San Juan、ロハス・ソリーリャ『国王のほかは容赦せず』 Del Rey abajo, ninguno、ギリェン・デ・カストロ『愚かな物好き』 El curioso impertinente、ティルソ・デ・モリーナ『緑ズボンのドン・ヒル』 Don Gil de las calzas verdes の七作品。

ミュージカル・ブーム  Pasión por el musical

『シカゴ』のロブ・マーシャルが『ナイン』を映画化します。主演はペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、『エディット・ピアフ』のマリオン・コティヤール。2002年のブロードウェイ版『ナイン』で主演したアントニオ・バンデラスは出演せず。

スペインでは愛称“ペ”で知られるペネロペ。ハビエルとはウディ・アレンの『ヴィッキー・クリスティーナ・バルセロナ』で共演したばかり。しかもアルモドバルの『ボルベール 《帰郷》』でソフィア・ローレンを髣髴させるメイクで頑張った彼女がローレンと共演です。ペ、乗ってます。

記事は『ムーラン・ルージュ』『シカゴ』『スウィーニー・トッド』と続くハリウッドのミュージカル・ブームを伝えるもので、メリル・ストリープとピアース・ブロスナンが『マンマ・ミーア!』 Mamma mia!、ビヨンセとエイドリアン・ブロディが『キャデラック・レコーズ』 Cadillac Records に出演するそうです。

『神経衰弱ぎりぎりの女たち』二十周年  "Mujeres al borde de un ataque de nervios" cumple 20 años

アルモドバルの名が世界に知れ渡るきっかけになった『神経衰弱ギリギリのおんなたち』が二十周年を迎え、3日(木)、マドリードの映画館シネサ・プロジェクシオネスで記念式典が開かれました。アルモドバルと主演のカルメン・マウラ、フェルナンド・ギリェン、ローレス・レオン、ロッシ・デ・パルマ、ギリェルモ・モンテシーノス、アンヘル・デ・アンドレス、チュス・ランプレアーベが出席。アントニオ・バンデラスは残念ながら撮影中で欠席。

二十周年を記念して再びスペインで上映予定。ただし日時は未定。ブロードウェイでミュージカル化の話も去年出ています。

カルメン・マウラ、『テトロ』に抜擢  Carmen Maura actuará en Tetro

今週アルゼンチンで撮影が始まったばかりのコッポラの新作『テトロ』。主人公テトロ(ヴィンセント・ギャロ)の助言者をハビエル・バルデムが演じる予定でしたが、コッポラは「脚本を何度も読み返して、この役は女の方が好奇心をそそる」と判断。急遽白羽の矢が立ったのが、なんとカルメン・マウラ。共演者はマリベル・ベルドゥ、ロドリーゴ・デ・ラ・セルナとソフィア・ガラ・カスティリオーネ、レティシア・ブレディセ、シルビア・ペレス。

コッポラの製作会社ゾエトロープによると、バルデムは事情を快く承諾、いずれコッポラと一緒に仕事をしようと円満に話は進んだそうです。

しかしコッポラの映画でカルメン・マウラを見られるとは。よくスケジュールが合ったもんだ。