あしたアストゥリアス王女賞芸術部門を受賞するヌリア・エスペルが授賞式会場のオビエドで記者会見に臨みました。記事のタイトルは二度選挙を行なった今も無政府状態が続くスペインの政治状況を嘆いた言葉ですが、このインタビューが感動的なのは記事後半の発言です。
1935年生まれのエスペルは81歳。七十年近く舞台に立ち続ける力の源を問われたエスペルは個人的な体験を語りました。「夫のアルマンド・モレーノが亡くなったときは世界が破滅したと思いました。ちょうどエスパニョール劇場でマリア・ヘスス・バルデスと『レニングラード包囲戦』をやっていて、埋葬が済むとすぐ本番を上演するために劇場に駆けつけました。不思議なことに舞台に立つと自分が万全だと感じたんです、幻や亡霊ではなく。娘はわたしに舞台をキャンセルしたいかと言いました。わたしは、可能であれば毎日二公演に増やしてほしいと言いました。舞台はほっと息をつける唯一の場所だったんです……さもなければ入院して寝かしつけてほしいと」。さらにエスペルはうつろな目で言葉を続けたと記者は述べています。「これは褒められることではありません……職業上の習癖というだけではなくて、もっと深い何かです……あの上に、舞台の上に立っているときの自分は自分であって自分ではない、自分であると同時に他人なんです。そして不幸が訪れたときに劇場に行くのは自分ではなく、もうひとりの自分なんです」。
スペインの演技者管理協会(AISGE: Artistas Intérpretes, Sociedad de Gestión)財団が3282人の舞台俳優と舞踊家――全体の39%――に対して行なったアンケートの調査によると、スペインの俳優と舞踊家のうち演技による年収が1万2千ユーロ(約137万円)を越えるのは全体のわずか8.17%。3万ユーロ(約342万円)を稼ぐ人は2.15%で、過半数は年収3千ユーロ(約34万円)未満だそうです。
労働環境は女性のほうが悪く、失業状態にある人は男性よりも6ポイント多く、給与は低く、正式な契約を結ばない仕事も多い。しかも状況は男女をともに年々悪化の一途をたどり、職を得た人が2014年には66%だったのに対して2015年は43%に落ちこみ、一年間の労働日数が30日未満だった人は2002年には30%、2010年には42%だったのに比べて2015年には46%にのぼりました。