舞台通信

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2008年8月22日(金)

マドリード生まれの監督が東京で撮影 全編日本語  Un director de cine madrileño rueda en Tokio una película en japonés

スペインの若手監督ダニエル・ラビン Daniel Lavín が東京で映画を撮影したというニュースです。日本で映画を撮ったスペイン人監督は恐らく彼が初めて。しかもこれが監督デビュー作。

ラビン(1977年マドリード生まれ)は大学卒業後「人生には冒険が必要」と一念発起、2006年から東京の門前仲町に在住。奥さんは日本人。記事を書いたパブロ・アモール記者とはメッセンジャーを使ってインタビューに応じました。

タイトルは『アクロバット』 Acrobats。6人の、どこにでもいる普通の東京市民が日々直面する問題を描いた作品だそうで、出演者は日本人、全編日本語で撮影。主演は松尾純

松尾さんはラビンについて「彼のアプローチは日本人監督と全然違う。自分も俳優の一人であるかのように演出するんだ。それに色の扱い方が並外れていて、すっかり虜になった。日本の監督では見たことがない特殊な魔法があるよ」とのこと。この取材中、松本さんはバイク事故で入院中だったそうです。

予算は約1万2千ユーロ(約193万円)。これでカメラを買い撮影チームとポストプロダクションの支払いに充てた。撮影は六ヶ月。事前準備からサントラの録音が終わるまで一年半かかったそうです。

後は公開をどうするか。低予算のインディペンデント作品なので、まずは釜山(韓国)やヒホン(スペイン)などの映画祭に出品することから始め、それから商業ベースではない形で、例えばスペイン国営セルバンテス文化センター(東京)やアジア会館(マドリード)などで公開し、DVDやネット配信も考えているとのこと。

記事のいちばん下、グレーの部分は、演出するにあたって言葉の障壁をどう克服したのか、日本人俳優はみんな同じに見えなかったか、などのいささか陳腐な質問。ダニエル・ラビンはこう応えています。

「僕の日本語は大したことないけど、六人の俳優のうち三人は英語がかなりうまくてラッキーだった。残りの三人には演出助手のララがいてくれた。三カ国語を話せるんだ」
「僕は俳優にあれこれ指図してめまいを起こさせるタイプじゃないし、何かを伝える手段は言葉だけじゃないと思う。演出では視線や仕草の方がもっと多くのことを示唆できるんだ」
「日本人の区別がつくかどうかって、それは彼らも同じ。僕たちを区別するのに彼らも苦労するんだ。一般論として、西洋人といえばアメリカ人だと日本人は思ってる。一番影響力がある西洋の国だからね。でも、これは常套句だよ。僕は今まで二人の日本人の区別がつかなかったことなんて一度もないよ」