昨夜は四更に到れども眠ること能はず、睡眠劑エバミールを三錠服して僅に睡を得たり。蚤起。薄晴。午前外出。黃昏家にかへる。滿月おぼろにかすみて昇るを見る。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて三遊亭天どんの粗忽長屋、橘家藏之助の猫と電車、三遊亭歌笑の松山鏡を聽く。
快晴の空雲翳なし。NHK-FMセッション二〇一八に山口真文クインテットと広瀬未来の演奏を聽く。テナー・サックス山口真文、ギター東海林由孝、洋琴奥村美里、ベース小牧良平、ドラムス小松伸之、トランペット広瀬未来。
午後いつもの溫泉に徃き露天風呂に浴し受付孃と立談す。染井吉野早くも葉櫻となれり。幾望の月皎皎たり。夜二更MOVIX三好五番館に赴きジャウマ・コレット=セラ監督リーアム・ニーソン主演の活動寫眞トレイン・ミッションを看る。凡作なり。
薄く晴れて風なく靜なる日なり。欅の新芽萌出づ。NHK-FM邦樂のひとゝきにて常磐津兼豊他が薪荷雪間の市川新山姥を聽く。BS日テレ笑點特大號にて活動寫眞辯士坂本頼光が伊藤大輔の血煙高田馬塲を語るを聞く。狀況說明と人物の臺詞は聲の調子を以て語り分け、押しつけがましさ微塵もなく、伴淳三郞の聲音もさらりと眞似て嫌味なし。看客が銀幕を見る邪魔をせぬ、耳に快き話術なり。NHK-FM浪曲十八番にて真山隼人が鳥羽の戀塚袈裟と盛遠を聽く。曲師沢村さくら。午後川端を步す。白木蓮の花悉く落つ。輕鴨二羽。椋鳥、鵯、土鳩、雉鳩、雀。平成二十九年度花形演藝大賞發表せらる。大賞笑福亭たま、金賞江戸家小猫三遊亭萬橘ストレート松浦菊地まどか、銀賞桂福丸桂佐ん吉鈴々舎馬るこ雷門小助六。
春日麗朗。午後川岸を步す。椋の木の新芽萌出づ。櫻花滿開となれり。繡眼兒四五羽藪よりぱつと飛出づ。
陰。無風。アサリ君シヾミ君ハムと燒麵麭を食ふ。アサリ君は余の眉毛や瞼を嘴にて優しくマッサージす。NHK-FM邦樂のひとゝき連日選拔高校野球大會中繼のため放送休止せらる。河岸を步す。この春初て燕の飛來るを見る。輕鴨二羽。椋鳥、鵯、土鳩、雀。櫻花七分咲。午後いつもの溫泉に徃き露天風呂に浴す。歸途主治醫を問ひ藥を乞ふ。病院敷地に燕五六羽飛交ふ。文化放送サンキュータツオと澀谷らくご最終囘にて林家きく麿の創作落語暴そば族と雷門小助六の拔け雀を聽く。
薄晴。春日井の動物病院に徃きシヾミ君の藥を乞ふ。高田文夫のラジオビバリー昼ズに玉川太福客演す。武春が創作せし玉川太福のテーマを一節唸りたり。太福が浪曲の世界に入りて驚きしことは演臺を覆ふ布の正式名稱がテーブル掛なること、師匠福太郎一門は稽古より飮み會の時間が長きこと、浪曲には譜面なきことなりといふ。先週叔母Sより贈られし千秋庵の山親爺を數十年ぶりに食す。三四十年前は堅きこといかにも煎餠らしかりしに今久振りにて此を食すに齒ごたへ思の外柔らかくクッキーの如し。思ふに購買者の好み變り行くに合せて食感を變へたるなるべし。TOKYO FM落語千金にて立川談笑の百年目を聽く。午後河畔を步す。春風駘蕩。櫻花五分咲。梅の花悉く落つ。鶯語をきく。BS12ミッドナイトよせ太郎にて立川がじらのテレヴィジオン、入船亭遊京の金明竹、瀧川鯉津の禁酒番屋、桂宮治の權助芝居、桂伸三の古着買ひ、林家なな子が大師の杵、立川がじらの牛ほめ、瀧川鯉津が犬の目を聽く。
天氣晴朗。無風。BS-TBS落語硏究會にて柳家小三治のお化け長屋を聽く。小三治マクラにて語るに當人は雜誌などの取材を受ける際落語家と紹介せらるゝを好まず噺家と訂正するなり。同業者は元來噺家と稱せしものなるべし。然るに落語家といふ呼稱の起源は知らずとぞ。余が知る限り、暉峻康隆著落語の年輪大正・昭和・資料篇(河出文庫)によれば落し咄をラクゴと音讀し始めしは明治十年代の東京なり。その原因は文明開化による漢語濫用なり。落語家といふ呼稱の最も古き用例は日本國語大辭典第二版によれば寺門靜軒の江戶繁昌記なり。ラヂオNIKKEI第一寄席あぷり阿佐ヶ谷あにめ座寄席にて瀧川鯉橋の百年目を聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて桂ざこばの笠碁を聽く。平成二十八年正月三十日梅田藝術劇塲シアター・ドラマシティにて催されし第百十四囘上方落語をきく會夜の部の口演なり。アットエフエム山下達郎サンデー・ソングブックに雜誌BRUTUS特輯號紀念第三囘放送を聽く。
綠陰步道をあゆむ。この春始て鶯の啼くを聞く。櫻花三分咲。輕鴨二羽。暴暖五月の如し。氣溫攝氏十九度に昇る。半袖シャツを着たる男二三人見ゆ。夕餉の後慈君とデコポンを食しつゝ大相撲春塲所千秋樂テレビ中繼を見る。結びの一番鶴竜對豪榮道は物言ひがつき、取直しの一番髙安が勝ちたり。鶴竜手加減したるやうに見ゆ。昨日優勝を決めたるが故なるべし。ラヂオ關西内海英華のラヂ關寄席にて笑福亭銀瓶が井戶の茶碗を聽く。去月五日道頓堀角座に於る口演なり。TBSらんまんラヂオ寄席にてすず風にやん子金魚の漫才私たちの夢の家、ペペ桜井の漫談旅とギターと人生と、柳家權太樓の家見舞を聽く。
天氣牢晴。微風嫋嫋。昨日催されし京都市立藝術大學卒業式に於る鷲田清一學長の式辭を讀む。贈與と返禮の義務を巡るこれらの言葉を以て門出を祝はるゝ學生諸氏は幸せなり。河畔を步す。山茶花白木蓮の花半ば落つ。雪柳連翹滿開なり。余は春の花の中雪柳をこよなく愛するなり。東京新聞に柳貞子の訃報あり。享年八十六。BS-TBS落語硏究會にて柳家小滿んの夢金、柳亭左龍が羽織の遊びを聽く。小滿んはサゲにて睾丸に言及せず。STVラヂオSTVホール名人會傑作選最終囘にて立川談志の木乃伊取りを聽く。平成四年五月十四日第二百二十三囘STVホール名人會の口演なり。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて春風亭百榮の桃太郞、五明樓玉の輔が辰巳の辻占、林家しん平の元犬を聽く。BS朝日お笑ひ演藝館にて母心の漫才を聽く。
快晴。風寒し。ニッポン放送高田文夫のラジオビバリー昼ズを聞く。先頃鬼籍に入りし立川左談次が昨年九月同番組に出演せられし時の聲を流したり。高田が思出したる左談次の俳句、五月雨や庭を見てゐる足の裏。コーヒーを瀹て札幌土產の冨士屋とうまんと六花亭マルセイバターサンドを食す。門前の櫻花一分咲。午後いつもの溫泉に徃きシルク風呂に不感溫度浴をなす。
曇天。氣溫攝氏二度。今朝も旅亭のレストランにバイキングの朝餉をなす。客少く居心地よし。地下街アピアの冨士屋にてとうまんを購ふ。快速エアポートに乘り札幌驛停車塲を發す。車窓に雪景の白樺林を眺む。余は白樺の雪景色を見るとき故郷にかへり來りしを實感するなり。十一時過AIR DO全日空共同運航便に乘り新千歲空港を發す。志ん生の文違ひ、粗忽長屋、あくび指南など聽く。一時過中部國際空港着陸。常滑の氣溫攝氏十四度。高速バスと路線バスを乘繼ぎて家にかへれば三時なり。風思の外冷なり。市中櫻花ひらく。アサリ君シヾミ君ともに壯健なり。慈君と柑橘甘平を食しつゝ大相撲春塲所テレビ中繼を見る。結びの一番鶴竜對栃ノ心、栃ノ心すぐさま左の上手をとり鶴竜手も足も出ず一敗を喫す。明日以降の取組樂しみなり。NHK-FM浪曲十八番にて二代目京山幸枝司が谷風の儀心を聽く。曲師藤初雪。文化放送サンキュータツオと澀谷らくごにて瀧川鯉八が都のジローと古今亭文菊の百川を聽く。昨夜錄畫し置きたるBS11柳家喬太郎のイレブン寄席最終囘にて喬太郎の殘酷な饅頭こはいとカマ手本忠臣藏を聽く。
春分の日。快晴の空拭ふが如し。旅亭のレストランにバイキングの朝食をなす。支那人團體宿泊客にて雜遝すること甚し。NHK-FM邦樂のひとゝき琵琶篇にて吉永鶴奏が春の宴と清川嵐舟の彰義隊を聽きつゝ芝居日本語字幕を推敲す。札幌驛西口の土產物屋四季彩館に徃きマルセイバターサンドを購ふ。氣溫零度なれど風なく寒氣嚴しからず。大倉山の雪溪春の日に映ゆ。黃昏久樂に飰す。
反陰半晴。車道に雪積りぬ。旅亭一階のレストランにバイキングの朝食をなす。支那人団体客おらず。閑適よろこぶ可し。AFP通信によるにウーバー社の自動運轉車通行の女を轢き殺したりと云ふ。今後も犧牲者增えるべし。芝居の字幕を作る。NHK-FM邦樂のひとゝき小唄篇にて篠登喜の梅川、はや告ぐる、せかれ、蓼胡満和の一枚繪、ぬれてしつぽり、浪花の色町、吉川明貴子川竹、昔は昔、逢ひたさに、春日とよ紅葉の笠森おせん、あの花がを聽く。正午字幕第一稾成る。午睡一時間。晡刻時計臺通より大通を拔けて四丁目プラザ前停車塲より市電に乘りて叔母S宅に赴く。款語。燈ともし頃叔父Y自動車を運轉して來りて海鮮料理を馳走したしとて二條市塲の大磯といふ店に徃く。六時過店に入るに店主らしき男迎へ出でゝ告げるに六時閉店なり、二號店開業して以來當店の營業時間變りたりといふ。叔父は然らばとて余等を中央卸賣市塲に案内し、若駒といふ壽司屋にて晚餐を馳走せらる。余は海鮮若駒丼を食す。味佳し。客は余等のほか女一人のみ。閑適よろこぶ可し。談笑時の移るを㤀る。食後叔父再び車を運轉して叔母を家に送りて後余を旅亭に送らる。九時にならむとす。雪ふりてはまた歇む。スポニチに立川左談次の訃報あり。享年六十七。永らく食道癌の治療を續けられしかばこの日が來るのは覺悟しゐたり。
微雨。無風。NHK-FM邦樂のひとゝき吟詠篇にて池田菖黎が春の野に、桂林莊雜詠諸生に示すその三、松葉水章の野に生ふる、壇の浦を過ぐ、八代光晃子の郷に囘つて偶書す、金陵の圖、辻栄水の竹里館、江畔獨步花を尋ぬ、廣瀨光詔子の漫述、夜直、安藤聖楓の幽居卽事を聽く。午後いつもの溫泉に浴す。龜屋芳廣に立寄り菓子を購ふ。市役所通りのパチンコ屋チャンピオン跡はadvanceとやらいふ中古車販賣店になりたり。ぼち/\長屋前庭の櫻早くも滿開なり。染井吉野とは別種なる歟。黃昏高速バスに乘り中部國際空港に徃く。乘客數ふるばかりなり。車體は日野自動車の新型と見えエンジンの音低く座席も足許もゆとりあり心地よし。雨は歇む氣配もなし。七時半飛行機離陸す。乘客二割程度。機内ラヂオの全日空寄席に桂宮治のたらちねと柳亭市馬の味噌藏を聽く。昨年十月二十一日東京イヽノホールにて收錄されし口演なり。九時新千歲空港着陸。雪なし。快速エアポートに乘る。旅客乘客尠し。夜の旅は空港も鐵道驛も旅客雜遝せず快適なり。車窓より眺むる千歲の町は殘雪點々たるのみ。惠庭北廣島も殘雪殆なし。札幌驛にて下車し旅亭に荷を置きて久樂に飰す。
天氣牢晴。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて三代目三遊亭金馬の子ほめを聽く。昭和三十一年十二月十六日文化放送お笑ひあけぼの亭金馬獨演會の口演なり。ラヂオNIKKEI第一寄席あぷり阿佐ヶ谷あにめ座寄席にて當代春風亭柳橋が長屋の花見を聽く。TBCラヂオ魅知國寄席にて桂宮治の道灌を聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて初代桂春團治のちりとてちんと馬の田樂を聽く。いづれもSP盤なり。午下乘合自働車と地下鐵道を乘繼ぎて大須演藝塲に赴く。三遊亭歌武藏獨演會なり。五列目中央の座席にすわる。二時開演。獨演會と稱すれど實質は一門會にて番組表には伊織歌太郞歌武藏の順に名を連ねしが開口一番歌武藏登塲するを見て一驚を喫す。恐らく一番弟子歌太郎の到着遲るゝが故なるべし。一席目は十八番の支度部屋外傳なり。日本相撲協會の内幕など寄席といふ惡所ならでは聞かれぬ話に聽衆大喜びなり。二番弟子伊織登塲して牛ほめを語る。言葉をぞんざいにせず徒に聲を張上げず耳に心地よし。歌武藏二席目は壺算を語る。兄貴分が買物上手の祕訣を說きて聞かせるところ說得力あり。仲入後歌太郎登塲して片棒を語る。トリの歌武藏登塲してマクラにて語るに自らの獨演會にて三席語るは噺家人生において僅に二度目なり、同じ噺家が三度も登塲するのは好ましからず、本日は都合上萬已むを得ずお耳を汚すなりとぞ。三席目はお菊の皿なり。元力士の體格を生かしてお菊が幽靈の造形に工夫を凝らし聽衆を大に笑はしむ。余も歌武藏の滑稽話を三つ聞き得て大いなる滿足を覺えたり。黃昏家にかへる。Eテレ日本の話藝にて笑福亭鶴笑のパペット落語あたま山を聽く。ラヂオ關西内海英華のラヂ關寄席にて笑福亭緣が犬の目、笑福亭呂竹の江戶荒物を聽く。去月五日道頓堀角座の口演なり。緣の無闇に甲高き聲に思はず耳を蔽ふ。TBSらんまんラヂオ寄席にて神田松之丞の鼓ヶ瀧、母心の漫才岩下志麻さんが好きすぎて、入船亭扇遊が夢の酒を聽く。中京テレビ笑點にて中川家の漫才を聽く。BS12ミッドナイト寄席ゴールデン最終囘にて桂宮治の元犬と子別れを聽く。TOKYO FM落語千金にて立川談笑の掘ってみた作ってみたを聽く。
快晴の空一點の雲なし。NHK關西發ラヂオ深夜便にて林家染雀の辻󠄀裏茶屋を聽く。三味線の入谷和女は桂あやめの姉なる由、解說者くまざわあかねの談なり。NHKラヂオ第一眞打競演にて宮田陽昇の漫才天才少年、ケーシー高峰の醫事漫談、古今亭菊丸の天狗裁きを聽く。ケーシー登塲するや豐見城市の聽衆大歡聲をあげ指笛を鳴らす。NHK-FM邦樂百番淸元篇にて清元美寿太夫ほかの長生、傀儡師を聽く。午下河畔を步す。日の光はうらゝかなるに川風存外寒し。連翹雪柳半ば花咲く。梅の花はいつか盛を過ぎたり。白鶺鴒、椋鳥、鵯。輕鴨の姿を見ず。STVラヂオにて立川談志の三軒長屋を聽く。平成三年四月十五日第二百十囘STVホール名人會の口演なり。語りの迫力壓倒的なり。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて三遊亭遊雀の宗論、三笑亭茶樂の紙入れ、桂枝太郞のユキヤナギを聽く。遊雀愉快この上なし。
春雨空濛。昨日とは打つて變はつて風冷なり。セキセイ鸚哥のアサリ君シヾミ君朝餉のブロッコリーと燒麵麭を食ひて倦むことなし。食後アサリ君は余の眉毛と瞼のあたりを嘴にて優しく撫でさすりこれまた倦むことなし。NHK-FM邦樂ジョッキーにて市丸の小唄春風がを聽きつゝ字幕を作成す。既に半分譯出するを得たり。墨西哥人ならでは臺詞多し。午後ことぶきの湯に徃きシルク風呂に不感溫度浴をなす。受付孃と歡談いつもの如し。ロイヤルホームセンターに立寄りセキセイ鸚哥の餌とカナリアシードを購ひてかへる。雨は歇みしが空晴れず。兩三日前より兩眼に痒みを覺ゆ。花粉症なるべし。一昨年處方されしパタノール點眼劑をさす。NHK-FM萩原健太のポップス・クロニクル最終囘一九九〇年代篇を聽く。
夜二更MOVIX三好十番館に赴きリー・アンクリッチとエイドリアン・モリーナ共同監督の漫畫映畫リメンバー・ミー(Coco)を看る。モリーナとマシュー・オルドリッチの脚本秀逸。繪よし編輯よし音樂よし唄よし。トイ・ストーリー以來ピクサー社が制作する活動寫眞はいづれ劣らず良質なり。同時上映アナと雪の女王/家族の思ひ出も佳作なり。
春暖人に佳なり。山川草木一つとして春の到來を喜ばざるものなきが如し。字幕制作二日目。渡邊守章譯ジュネ作女中たち(白水社)を適宜參照す。午前綠陰步道をあゆむ。忽ち發汗襯衣を霑す。白木蓮の花一時に滿開となる。午後髮を理す。字幕作りの樂しさ云はむ方なし。余はつく/″\芝居を好むなり。NHKラヂオ第一放送に大相撲春塲所中繼を聞きつゝ作業を行ふ。NHK-FM萩原健太のポップス・クロニクル第四囘一九八〇年代篇を聽く。
昨夜錄畫し置きたるBS11柳家喬太郎のイレブン寄席にて桂きん枝が看板のピン、四代桂春團治のまめだを聽く。
薄晴。風死す。暴暖四月の如し。事務所の需によりエウロパ・スール揭載の舞臺評を飜譯す。NHK-FM邦樂のひとゝき河東節篇にて山彦恭子ほかの廓八景、十寸見東裕ほかの弓始を聽く。スティーブン・ホーキング博士の訃報に接す。行年七十六。午後T氏の需に應じて墨西哥人女優二人芝居の日本語字幕作成を始む。公演の樣子はビデオ映像にて鑑賞したり。頗興味深し。NHK-FM萩原健太のポップス・クロニクル第三囘一九七〇年代篇を聽く。
天気牢晴。風なし。アントニオ・カルロス・ジョビンのCorcovadoを腦内連續再生しつゝ川邊を步す。白木蓮の花ひらく。梅の花八分咲。櫻樹の枝に尉鶲の雄が囀る聲恰も歌劇のアリアの如し。白鶺鴒、椋鳥、鵯、雀。今朝も輕鴨には逢へず。NHK-FM邦樂のひとゝきにて今藤政子ほかの長唄賤機帶を聽く。BS12ミッドナイトよせ太郎にて柳家蝠よしの金明竹、林家なな子の轉失氣、桂伸三の續・壽限無、入船亭遊京の中國漫遊記を聽く。午後ことぶきの湯に徃きこの春始て露天風呂に浴す。黃昏NHK-FM萩原健太のポップス・クロニクル第二囘一九六〇年代篇を聽く。
空澄みわたりて拭ふが如し。春日井の動物病院に赴きシヾミ君の藥を請ふ。カーラヂオのNHK-FM邦樂のひとゝきにて富山清仁の地唄關寺小町と箏演奏家上村和香能の松風を聽きつゝかへる。午後川緣を步す。けふは輕鴨に逢はず。川鵜一羽川面に浮びてゆら/\川下に下るを見る。繡眼兒二羽。日脚頓に長くなり六時を過ても昏黑とはならざるなり。燈刻NHK-FM萩原健太のポップス・クロニクル初囘放送を聽く。主題は一九五〇年代の亞米利加と日本の大衆音樂なり。曲目を爰に記し置く。
輕陰。春風依然として暖ならず。東日本大震災七周年の日なり。避難生活者七萬三千人。NHK總合林家正藏の演藝圖鑑にて堺すすむの漫談と正藏の鼓ヶ瀧を聽く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて入船亭扇橋の茄子娘を聽く。昭和五十八年九月三十日日比谷藝術座東寶名人會の口演なり。ラヂオNIKKEI第一寄席あぷり阿佐ヶ谷あにめ座寄席にて三遊亭春馬の花筏を聽く。TBCラヂオ魅知國寄席にて瀧川鯉朝の崇德院を聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて古今亭志ん生のふたなりを聽く。昭和三十四年十一月二日ABCホール第十四囘上方落語をきく會の口演なり。午後川岸を步す。雪柳の花ひらく。輕鴨四羽。繡眼兒、雉鳩、土鳩、鵯、雀。アットエフエム山下達郎サンデー・ソングブックに東日本大震災七周年特別番組を聽く。
Eテレ日本の話藝にて林家木久扇の鮑のしを聽く。鮑と海女を言ひ間違へること數次に及ぶ。大相撲春塲所開幕。日本相撲協會の網站によるに十兩筆頭に番付を下げし豪風安美錦を叩き込みて白星發進。晡時ラヂオ關西内海英華のラヂ關寄席にて笑福亭喬樂の寄合酒と桂一蝶の一文笛を聽く。いづれも本年正月十五日道頓堀角座に於る口演なり。TBSらんまんラヂオ寄席にて五代目柳亭痴樂のちりとてちんと崇德院を聽く。BS12ミッドナイト寄席ゴールデンにて三遊亭伊織の眞田小僧、三遊亭ふう丈の第2ボタン、柳亭市童の藪醫者を聽く。
空晴れわたりて一點の雲なし。風は冬の名殘を含みて甚冷なり。東京下町大空襲七十三周年の日なり。NHKラヂオ第一眞打競演にて母心の漫才歌舞伎が好きすぎて、柳家紫文の三味線漫談長谷川平藏、柳家小さんの寢床を聽く。小さんのつまらなさ救ふべき道なし。NHK-FM邦樂百番長唄篇にて杵屋勝之弥ほかの二人椀久と俄獅子(部分)を聽く。午後川端を步す。輕鴨四羽。STVラヂオにて立川談志の黃金餠を聽く。昭和六十二年六月十五日第百六十四囘STVホール名人會の口演なり。麻布木蓮寺に至る道中言立ての後志ん生と圓生の言立てを眞似たり。三重テレビ淺草お茶の間寄席にてロケット団の漫才、林家きく麿の陳寶軒、春風亭一朝の蛙茶番を聽く。
曇天。昨夜錄畫し置きたるNHK總合超入門落語THE MOVIEにて三遊亭兼好の親子酒と柳家喬太郎が初音の鼓を聽く。NHK-FMセッション二〇一八に池田篤カルテット緑川英徳土井徳浩の演奏を聽く。アルトサックス池田篤土井徳浩、洋琴熊谷ヤスマサ、ベース池尻洋史、濱田省吾。
雨もよひの空なり。藝術選奬發表。宮城聰黒沢清金井美恵子石川さゆり入船亭扇遊文部科學大臣賞、桃月庵白酒文部科學大臣新人賞を受賞す。午前ことぶきの湯に徃き湯溫三十四度のシルク風呂に不感溫度浴をなす。春雨烟のごとし。瀨港線ユニクロ跡地にドラッグスギヤマ出店す。カーラヂオのNHK-FM浪曲十八番にて東家一太郞が野狐三次大井川の義侠を聽きつゝかへる。父上流行感冒に罹りて臥牀に在り。スターバックスのさくらドーナツを食し咖啡を啜る。午下乘合自働車と地下鐵道を乘繼ぎて大須演藝塲に赴く。二代立花家橘之助襲名披露興行なり。一階席滿席なれば二階席二列目の座椅子にすわる。舞臺下手と上手に花籠色とり/\の帶また酒樽飾られたり。二時半開演。スーダラ節の出囃子に乘せて三遊亭歌る多の弟子なる二つ目三遊亭美るく登塲し開口一番轉失氣を語る。二番手は地元名古屋を據點に活動する漫才師アンダーポイントなり。三番手三遊亭歌武藏支度部屋外傳を語る。二十一歲の鏡味仙成の太神樂は寄席ならではの藝なり。仲入り前柳家さん喬十八番の天狗裁きを語る。仲入り後下手より歌武藏橘之助歌司さん喬竝びて口上を陳ぶ。膝がはり三遊亭歌司小言念佛を語る。トリの三遊亭小圓歌改め立花家橘之助登塲す。去十一月に始まりし襲名披露興行の顚末など語りて後三味線の二上りを說明して八代目桂文樂が出囃子野崎の送り、古今亭志ん朝の老松、五代目柳家小さんが序の舞を奏し、浮世節たぬきを歌ふ。寄席ならではの肩肘張らぬ藝の連續に余は大いなる滿足を覺えたり。來路を取りて家にかへれば正に六時なり。雨ふりまされり。アサリ君シヾミ君余のかへるを待てり。
演者 | 演目 |
---|---|
三遊亭美るく | 轉失氣 |
アンダーポイント | 漫才 |
三遊亭歌武藏 | 支度部屋外傳 |
鏡味仙成 | 太神樂 |
柳家さん喬 | 天狗裁き |
仲入り | |
口上 | |
三遊亭歌司 | 小言念佛 |
立花家橘之助 | 浮世節 |
曇天。風しづかなり。NHK-FM邦樂のひとゝきにて淸元十六夜を聽く。浄瑠璃清元梅寿太夫清元清美太夫清元成美太夫、三味線清元紫葉清元美三郎、上調子清元美十郎。事務所の需に應じてヘレス・デ・ラ・フロンテーラの日刊紙に揭載されし批評を飜譯す。ホットケーキを食し咖啡を啜る。午後堤上を步む。輕鴨四羽。梅花七分咲。シヾミ君本復。一日中囀りてやまず。
空澄みわたれど西北の風吹きすさみて春寒なほ料峭たり。坡上を步す。輕鴨一羽。NHK-FM邦樂のひとゝきにて松永忠次郎杵屋巳之助杵屋喜三助の長唄鷺娘を聽く。K氏西班牙土產のハモン・セラーノを饋らる。午後いつもの溫泉に浴す。文化放送サンキュータツオと澀谷らくごにて新企畫玉川太福の週刊浪曲ニュースと入船亭扇里の穴どろを聽く。太福の浪曲は今朝大阪にて收錄せしばかりにて曲師は沢村さくらなり。
春雨霏霏たり。NHKラヂオ深夜便話藝百選にて一龍齋貞山の谷風情け相撲を聽く。辻一弘ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男にて第九十囘アカデミー賞メーキャップ・ヘアスタイリング賞を受賞す。NHK-FM邦樂のひとゝき箏曲篇にて山勢麻衣子の宮鶯曲、新宮順子の玉川を聽く。アカデミー賞作品賞は豫想通りギジェルモ・デル・トロ監督のシェイプ・オブ・ウォーターなり。BS12ミッドナイトよせ太郎にて柳家蝠よしの本膳、三遊亭ふう丈の同窓會、三遊亭伊織が啞の釣、柳亭市童の天災を聽く。夜に入るも雨歇まず。ひまわりテレビ漫才大行進にて母心の漫才を聽く。二更MOVIX三好一番館に赴きシェイプ・オブ・ウォーターを看る。秀作。パンズ・ラビリンスとの共通點多し。看客數ふるばかりなり。家にかへれば正に十二時なり。STVラヂオにて三遊亭小遊三の寢床を聽く。音源は先月二十日開局五十五周年を紀念して催されしSTVラジオ寄席三遊亭小遊三林家たい平二人會なり。
陰。無風。NHK總合林家正藏の演藝圖鑑にて桂文之助のつるを聽く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて柳家金語樓の漫談乘物さまざまを聽く。岩波書店編輯員猿山直美さん出演せらる。猿山さんは廣辭苑第七版の醫學生命科學分野を擔當せられたり。ラヂオNIKKEI第一寄席あぷり阿佐ヶ谷あにめ座寄席にて三笑亭夢丸の時そばを聽く。TBCラヂオ魅知國寄席にて三遊亭遊馬の小間物屋政談を聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて五代目桂文枝がたばこの火を聽く。小文枝を名乘りし時の音源にて昭和五十三年六月二十九日大阪髙島屋ホール第六十二囘上方落語をきく會の口演なり。コーヒーを瀹て兩口屋是淸のよも山、旅まくら、志なの路を食す。午下川緣を步す。春日麗朗、俄に薄暑を催す。氣溫攝氏十八度。輕鴨四羽。アットエフエム山下達郎サンデー・ソングブックに雜誌BRUTUS特輯を聽く。曲目を爰に記し置く。
Eテレ日本の話藝にて柳亭小燕枝の萬金丹を聽く。柳家の御家藝を堪能す。NHKラヂオ第一上方演藝會にてプリマ旦那とテンダラーの漫才を聽く。ラヂオ關西内海英華のラヂ關寄席にて笑福亭松五の餠屋問答と桂梅團治の祝のしを聽く。いづれも本年正月十五日道頓堀角座の口演なり。TBSらんまんラヂオ寄席にてナイツの漫才オラ、こんなネタ、いやだ!、ぴろきの漫談、柳家さん喬の初天神を聽く。夜二更MOVIX三好十番館に赴き惡評芬芬たるクリント・イーストウッド監督の活動寫眞15時17分、パリ行きを看る。ドロシー・ブリスカルの脚本拙劣、噂に違はぬ駄作なり。看客十人前後。カーラヂオのNHK-FMセッション二〇一八に池田篤カルテットと緑川英徳土井徳浩が演奏するBread and Soupを聽きつゝかへる。TOKYO FM落語千金にて立川談笑の山號寺號を聽く。
晴後に陰。NHK總合超入門落語THE MOVIE再放送に柳亭市馬の堪忍袋を聽く。スポーツ報知の記事によるに三遊亭好樂が弟子好の助三代目林家九藏襲名の話は海老名家の承諾得られず、好の助のまゝ眞打昇進するといふ。NHKラヂオ第一眞打競演にてコント山口君と竹田君のコント竹田君の常識非常識、堺すすむのギター漫談、柳家喬太郎の紙入れを聽く。NHK-FM邦樂百番箏特輯にて岸辺美千賀杉本禧代賀の熊野、中能島弘子亀山香能井口法能の鶴壽千歲と岡康砧(手事の一部)を聽く。節句の菱餠櫻餠を食す。午下川端を步す。梅の花五分咲。輕鴨十三羽。土鳩、雉鳩、椋鳥、雀。明朝の文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートに岩波書店廣辭苑第七版編輯員の我が畏友猿山直美さん出演せらるゝといふ。STVラヂオにて談志の權助提燈を聽く。音源は昭和五十三年四月十日第五十四囘STVホール名人會なり。六時よりニッポン放送ビートたけしのオールナイトニッポンを聞く。たけし平成の次の元號は森友或は加計にすべしといふ。呵々大笑す。柳田國男國語と敎育續きを讀む。原因と結果につきて曰く、
歷史敎育と近世史につきて曰く、明治の時代に明治の歴史を教えないのは、これは止むを得ないが、大正になっても昭和になっても、その歴史を教えない。だから、ものには原因があり、それから人間の行為にはよかろうと思ってやった事が悪くもなり、見込み違いにもなる事があって、多くは知識の欠乏の結果ではあるが、とにかく選択を誤れば悪い方にも行くという、原因と結果というものの教育が出来ない。だから我々の体験している事を書いた本はないにしても、説明の仕方さえ十分ならば、今は昔ではないという事と、今あるものの悪い事の中には、過去の失敗があるという事、もしくは今あるものの中には過去の成功があるという事がわかるはずで、これを教えないでは歴史と言った所で始まらない。
柳田国男「国史教育について」
初出『心』昭和二十九年八月號
また日本人の歷史を貫く動機につきて曰く、私はこの間から、歴史教育は近世史を教えなければしようがない。ただ日本は二千何百年続いているといったような事ばかりに力を入れたり、昔は偉い人があったという事だけを教えるのでは駄目だ。最近の我々のこの苦しい世相の原因は何かを教えなければ国史教育にはならないという事を、頻りに言っているが、なかなか思うように行かない。
柳田国男「国史教育について」
初出『心』昭和二十九年八月號
大体私等は非常にいい意味の保守党だが、多くの普通人は保守を恐れている。すぐ逆コースと言われる事で恐れている。大きな物語でも、たとえばホーマーの「イリヤッド」でも、一つの強い主流がある。モティーフがある。文芸作品には殊にそのモティーフがあるが、歴史にもそれは確かにあって、不幸な話だが、日本人の歴史の中を貫いている最大のモティーフは何かというと、「恐れ」だと思う。今でこそ世界に冠たるなどと言っているが、あまりに自然の圧迫が強いし、周囲に大きな進んだ国があって、朝鮮だって、今でこそばかにしているが、以前は日本の先輩でもあり、その脇には立派な国が沢山ある。滅びはしなかったが、襲われた経験は度々ある。
柳田国男「国史教育について」
初出『心』昭和二十九年八月號
この夜十六夜の月あきらかなり。
隂。空は晴れて澄みわたりしに西北の風吹きすさみて餘寒なほ料峭たり。昨夜錄畫し置きたるNHK總合超入門落語THE MOVIEにて春風亭一之輔がふだんの袴と柳亭市馬の堪忍袋を聽く。市馬が噺の途中西表島付近の緊急地震速報發令され番組中斷せらる。朝日新聞の記事によるに財務省近畿財務局管財部門森友學園關聯文書を改竄したりといふ。邪道人の頤を解かしむ。午前齒科醫A氏を訪ひ三箇月に一度の檢診を受く。異常なし。齒垢齒石を除去す。午後いつもの溫泉に徃き湯溫三十四度三分のシルク風呂に不感溫度浴をなす。柳田國男国語と教育(河出書房新社、二〇一五年)を讀む。至言多し。たとへば言葉の濫用につきて語るところ次の如し。
當今の世に於て一日に一ぺん以上情報といふ言葉を聞かぬ日はなし。また敎育の目的につきて曰く、よく笑いながら話をするのだが、一日に一ぺん以上文化という言葉を聞かない日はないくらいだけれども、それでも文化とは何ですかと聞かれると、よく答えることができない。どういうものを文化と心得たら、一番青年のためになるかということを考えたことがないのです。
自由などというのもそうでしょう。たいへん盛んに濫用されるけれども、しかし自由は人に対してどのくらい加減をすべきものであるか、たとえば昔のように、共同の相互の援助ということ、もしくは他人を愛するということを条件にしての自由であるということを説く機会が少しもないのです。
柳田国男「国語の進むべき道」
初出『教室の窓』昭和三十年十月號
或は歷史敎育につきて曰く、最後にもう一つ、この教科書〔註。『くにのあゆみ』〕の利用者にすすめたいことは、生徒達の発する純なる疑問を集大成、整理して、この次の編纂への基礎材料とする仕事である。先生は全智全能の如く信じている生徒に「それはまだ解らぬ、それは先生も知らぬ」と白状することは、かなり結城を要するであろうが、知らぬを知らぬといい、率直なる疑問を提出する人の一人でも多くなることが、学問成長の第一歩にほかならない。生徒達は彼等にふさわしい数々の疑問を持っているのであるから、これらの質問を各校毎に何年間か集めて、その統計を作製し、今回のこの、初期の実験の恩恵を後世に譲ることとしたい。「つまらぬ事をきくな」等と、自然、率直な成長の芽生を押えつけて誤魔化さずに「それは大変いい質問だが、まだ専門の学者も解っていないのだから、君達が大人になって研究するといいね」という風に育てて行きたい。教育の真の目的は、よき疑問を起させるにあるといっても過言ではなく、国民生活の要求の上に立たぬ史学は、有害無益なる遊びの学に過ぎない。
柳田国男「歴史教育の使命」
初出『毎日新聞』昭和二十一年十月二十八日
従来は、外国史同様、自分の国の歴史を、まるで縁のない遠いものの如く感じさせて来たが、歴史の結末は、自分と国との関係、幽かなものと国との関係になければならず、最後を太平洋戦争においたのは一時凌ぎに過ぎないであろう。更に進んで、個々人と世界との関係を教える学問は、歴史教育以外にないことに思いを到すべきである。現在のものが決して最上のものではないという断定は、学問の未来に希望を持つことなのであり、決して悲しむべきことではない。
柳田国男「歴史教育の使命」
初出『毎日新聞』昭和二十一年十月二十八日
舊正月十四日。夜中雷雨あり。未明死の發作に襲はれ自らの金切り聲に驚きて睡より覺む。七年ぶりなり。隂。NHK-FM浪曲十八番にてイエス玉川の靑龍刀權次第二話を聽く。曲師玉川みね子。午後川岸を步す。未明の雨に川の水は黃土色に濁りぬ。西北の風烈し。放水路のそばに川鵜一羽。輕鴨二羽。笑福亭鶴瓶松本白鸚山中伸弥NHK放送文化賞に選ばる。去月二十六日に放送せられしSTVラヂオ開局五十五周年紀念寄席に林家たい平が井戶の茶碗を聽く。音源は同月二十日敎育文化會館に於る小遊三たい平二人會なり。黃昏雨ふる。