晴。母上を伴ひホームセンターに赴き突張り棚を物色す。歸路愛知學院大學に立寄る。構内の躑躅一般開放の折込みチラシ屆きたるを以てなり。然れど花はわづかに咲き初めしばかりなり。抑鬱亭の附近に比すれば風まだ寒きが故なるべし。家の近所の植込みを撮影す。赤白桃の色愛すべし。腹痛みて心地すぐれず。困臥半日。この日歌舞伎座閉塲す。
天氣牢晴。風なく靜なる日なり。昭和の日とて黃金週間初日なり。午前の授業なきを幸に眠を貪り疲勞を休む。蓐中ラヂオに船村徹が歌ふ別れの一本杉を聽く。絕品なり。心氣欝々昨の如し。夜に入りて西北の風吹き出でゝ街路樹をうごかす。
風陰濕なりしが幸にして雨に値はず。講義室を急遽變更し團十郎富十郎菊五郎の勸進帳、玉三郎の京鹿子娘道成寺それ/″\前半を賞鑒す。針の筵に坐るが如き心地せり。この日歌舞伎座にて御名殘四月大歌舞伎千龝樂。建替へ工事のため三年閉塲せらる。東天低く深紅の滿月血に染まりたるが如し。
昨夜七時半過に橫臥して忽睡眠曉明に至る。講義準備せねばならねど心氣怏々として何事をもなすこと能はず。机に凭ることさへ堪へ難し。寐つ起きつして日を暮す。
薄曇の空模樣旣に梅雨の如し。朝飯の後三好に赴きティム・バートン監督の立體映畫アリス・イン・ワンダーランド Alice in Wonderland を看る。美術驚くの外なし。バートンは映像の評判高き人なれど、對話の演出もまた見事なり。余はジョニー・デップ扮するマッド・ハンターとミラ・ワシコウスカ演じるアリスの對話に聽惚れたり。アブソレムのアラン・リックマン、チェシャ猫のスティーヴン・フライ、ジャバウォッキーのクリストファー・リーいづれも佳し。スティーヴン・フライの仕事に接するはケネス・ブラナー監督ピーターズ・フレンド以來なり。終演後立體眼鏡を外すに輕き眩暈を覺ゆ。家に歸りてプログラムを一讀するにマトリックスへの言及なし。夕刻疲勞して橫臥忽華胥に遊ぶ。
晴。南風吹きて暖なり。FM愛知サンデー・ソングブックに TOKYO FM 開局四十周年紀念五大アーティスト特輯を聽く。ビーチボーイズ We'll Run Away、Surf's Up、ヤング・ラスカルズ Good Lovin'、Rainy Day、ジェームズ・ブラウン Get It Together Part 1、I Cried、アイズリー・ブラザーズ It's a Disco Night、スモーキー・ロビンソン Get Out of Town。原稾の腹案あれど何故か感興來らず。筆を秉らむとすれど能はず。枕頭敎育テレビETV特輯本土に問う普天間移設問題の根底を見る。大田昌秀の取材記なり。大田氏健兒之塔を訪れ沖繩戰を囘顧して曰く、兵卒中には精神錯亂し、爾來六十有餘年家より外に出ること能はざる者尠からずと。琉球語には可哀相に相當する人を見下す言葉存在せず、人に苦痛を與へては自分の心が落ちつかないといふ言葉のあるばかり。目取真俊のヤマトンチュー批判苛烈を極む。大田氏の物腰穩か卻て烈しき憤りを傳ふ。
晴れたる空に白雲多し。西北の風吹きあれて鯉幟の支柱も撓むばかり。兩三日水をやり忘れし八手の葉くたりと萎れて哀れなり。待たせたねと聲かけて水をやれば正午過忽生氣とりもどし溌剌たる若葉を廣げたり。三省堂デイリーコンサイス西和和西辭典を送來る。雲散じて夕陽明媚なり。
輕陰。風寒きこと嚴冬の如し。毛絲のセーターを羽織る。筆とるも感興索然たり。Y氏ボラーニョの飜譯野生の探偵たちを惠贈せらる。枕頭中京テレビ金曜ロードショーに三池崇史の活動寫眞ヤッターマンを看る。配役衣裳仕草美術いづれもアニメの世界を見事に再現し大に感心すべきなれど、肝腎の臺詞たび/\間延びして笑へず。惜しむべきことなり。冷氣甚しければ毛布を擁す。
朝來雨車軸を流すが如し。學生諸氏大雨を冒して授業に來る。一限二限とも初めて會話練習を行ふ。學生の表情パッと明く輝き、敎室内俄に活氣づきたり。ことほど午下家にかへり午飯するに、アサリ君籠の屋根をとこ/\步み來りて余の鼻先眉頭髮を突きて遊ぶ。昨夕は歸宅晚く、今朝は早々に家を出でしかば、ほゞ丸一日遊び相手をすること能はざりしを以てなり。氣溫昨日攝氏二十四度に昇りしが今日は十四度なり。寒暖の激變驚く可し。DVDに歌舞伎二三作を鑒賞す。
晴天。南風吹きつゞきて暑し。地下鐡に乘るや忽睡眠を催し、寤むれば名古屋驛停車塲發車寸前なり。慌てゝ下車す。新幹線車内にてもうたゝ寢し、正午過講師控室に着く。資料を閱する中男子學生の訪問を受く。余を相手に西班牙語の會話練習を行ひたしといふ。斯くの如き申出は大歡迎なれば、倶に外に出でゝ、余は烟草を喫しつゝ、音樂映畫のことなど趣味について語り合ふこと二十分ばかり。三限接續法現在形を練習す。四限中世近代の上演形態を講義す。授業後女子學生とSPACのドン・フアン公演につきて歡語。自動販賣機の在處を敎はり、スポーツ飮料を購ひ咽喉を潤す。疲勞甚し。新幹線車内にて執筆少々。名古屋驛改札口に四十ばかりなる婦人袖無の洋服にて足早に步きゐたり。寔に暑き一日なりきと思ひて家路に就くに、門前に石燒芋賣りの輕トラックありて、のろ/\と走ること牛の如く、擴聲器の賣聲耳を聾せんばかりなり。夏の如き日に燒芋を賣り步くとは何故にや。フアン・アントニオ・サマランチ元國際オリンピック委員會會長の訃報あり。
春雨晚晴。午後主治醫を訪ひ診察を乞ふ。講義準備に半日を消す。
欅竝木の新綠日に日に佳し。草稾のつゞきを書かむとせしが感興來らず、一枚をも書き得ずして已む。氣分轉換を兼ね自動車を運轉しホームセンターに赴きセキセイ鸚哥の餌を購ふ。四月に入りてより氣分すぐれず。每年の例なり。このY氏新著を惠贈せらる。
異例の寒氣漸く去る。不可思議なる氣候なり。ベランダの八手若葉いつしか大きく育ちぬ。アイビーの小さき若葉光澤つや/\と輝けり。作文添削餘事なし。丸二日を費やしぬ。
晏起例の如し。快晴。西北の風吹きすさみて寒し。躑躅の花さき初めぬ。執筆二三枚。作文添削。枕頭敎育テレビにスコラ坂本龍一音樂の學校バッハ編第三囘通奏低音を見る。
くもりて午後より雨となる。寒冷冬の如し。晝餉に握飯と煮物を食し始むるや、アサリ君目聰く卓子をとこ/\步み來りて、余の箸先より大根人參を旨さうに啄む。何故か昆布には怖れをなして近づかず。煮物に目のなきセキセイ鸚哥とはまことに奇妙奇天烈なり。食後烟草を購はむとて傘をさし外に出づるや頭上に鳧の鳴くを聞く。夕刻鳥籠を覗き見るに、アサリ君鏡の前に立ちて首を大きく上下に動かし、嚥下したるオーツ麦を吐出したり。兩三日前にも同じ光景を觀察せしかば、定めし鏡像を雌鳥或は雛と信じて給餌を試みゐたるべし。秀丸エディタにて zen-coding を實現せしむるマクロを發見す。頗る重寳なり。この日村上春樹新著1Q84第三卷發賣。夜半十二時都心の書店に人々長蛇の列をなすさまテレビに見る。
風冷なること初冬の如し。トヨタ博物館の櫻花未だ半分散らず。學生頻りに寒い寒いと呟く。一日置きに冬と春交互に訪れるが如き心地す。本年の春ほど氣候不順なる時節は罕なるべし。一昨日文化審議會國語分科會の漢字小委員會開催され、改定常用漢字表に碍の字採用されず。國家による漢字廢止の思想いつまで續くにや。
晏起。十時半新幹線ひかり號にて靜岡に出で、東海道線に乘換へ草薙に至る。坂道を步みて靜岡縣立大學に赴く。途次富士の峰を望む。名古屋は寒風吹きすさみゐたりしが、靜岡は風なく天氣牢晴なり。敎務課に立寄り挨拶し、午後初授業を行ふ。三限四限とも學生諸氏明朗快活なり。歸りの新幹線のぞみ號乘客尠し。車中 ideapad にて執筆する中早くも名古屋に着けり。
一度目覺めてまた眠を貪ること例の如し。二たび寤めれば午過なり。南風吹きて暖なり。倦怠と緊張に苛まる。食慾減じて晚食味無し。黃昏に至り黑雲俄に天を蔽ひ驟雨屡來る。蒸暑きこと甚し。マウスコンピューター社 iriver N15 JEWEL 早くも送來る。カナル型イヤホンの密閉感心地よく、音質思ひの外に良し。但しイヤホンは本體組込み式にて一度斷線すれば交換すること能はず。またファイル轉送ソフト iriver plus 3 は何故か視窓7に非對應なり。數年もてば御の字と云ふべし。□□□のアルバム everyday is a symphony と加藤敏樹働く人のメンタルヘルス・ミュージックを聽く。
春雨霏々たり。胃痛頭痛去らず。第五十四囘岸田國士戲曲賞授賞式の中繼をUSTREAMに看る。審査員宮沢章夫平田オリザ倶に井上ひさしの不在を歎く。コーシこと□□□の三浦康嗣登塲し樂曲00:00:00をピアノで演奏す。睡眠劑を服し寢に就く。
午近くまで起き出づること能はず。先週より氣分次第によろしからず。終日唯ぼんやりと時を過すのみ。每年櫻花の時節は憂悶すること甚し。活力日に從つて消滅し行くが如き心地す。斯くの如き日に井上ひさしの訃に接せり。吉里吉里人の言葉遊び人をして爆笑窒息せしめたり。てんぷくトリオのコントを蒐集したる講談社文庫井上ひさし笑劇全集は正にコントの敎科書なり。遲筆堂に傑作戲曲數多ある中余はきらめく星座をこよなく愛す。晚間チョコレートを求めて便利店に徃く。視線終始足元に落ち、眼下の步道鼻先に觸れるが如く感ぜられ、小人になりたるが如き心地せり。これ鬱の症候なり。歸途微雨に値ふ。
晴れて暑きこと六月の如し。本年立春の後折々暴暖夏の如き日あり。何の故なるやを知らず。連載の草稾をつくらむとせしが頭痛胃痛下痢を催し執筆しがたき故、埒もなき事書きて纔に責を塞ぐ。鯛鹽燒を以て父上の喜壽を賀す。五年間愛用せし iriver 社製 MP3播放器 iFP-899SEの液晶畫面ドット拔け著しく文字を識別すること困難になりたれば、新製品をネットで物色す。動畫再生には興味あらず、FM受信と豫約錄音、音聲錄音機能を備へた商品を探すに、iriver ブランドの N15 JEWEL を見つけたり。iriver いつしかマウスコンピューター社傘下のブランドになれり。デジタル機器業者の榮枯盛衰目まぐるしきものあり。
起きて顏洗へば正午なり。春風嫋々。八手の若葉一時に開きたり。町内の民家に早くも鯉幟の泳ぐを見る。苦手な電話會談を行ふ。胃痛少しく痊ゆ。自民黨を離黨せし平沼赳夫新黨をつくり、黨名たちあがれ日本なりといふ。立枯れ日本と聞誤りぬ。滑稽至極と云ふべし。ポッドキャストにて大竹まことゴールデンラジオのオープニングを聽く。室井佑月初登塲。每月の連載原稾二十本抱へ、曾ては六十本ありし由。
蚤起。中京大學始業。一限二限ともに西班牙語の槪說を行ひ、アルファベットと發音を敎ふ。板書せむとチョークを摑み右腕を上げるや肩に痛み走りて肩より上に上げること容易ならず。これが四十肩といふものならむ歟。紙片を配布し西班牙語を選びし理由を書かしむ。銀河といふ名前の男子學生あり。ぎんがと讀むにや。平成の世に入りて新生兒の命名奇妙奇天烈なるもの多し。なかには宇宙と書きてそらと讀ましむるものもあるといふ。八號館例年に比して學生の數夥しく、授業前後の廊下立錐の餘地なし、エレベーターホールに行くこと能はず、四階より步みて一階講師室に降りる。講師控室もまた敎員大勢をり雜沓す。一時歸宅。輕き頭痛を覺ゆ。
正午過まで眠りつゞけたり。氣分重し。風呂に入る氣力もなし。電話かけねばと思へどかける勇氣なし。電話はかけるも受けるも大の苦手なり。殆恐怖症といへり。睡眠劑エバミール一錠服して寢に就きしが眠ること能はず、一錠追加し、更にレンドルミンを服して漸く眠るを得たり。
晏起晝に近し。疲勞と睡魔體の芯よりじわ/\と湧き出づるなり。暴暖初夏の如し。午後病院に行き診察を乞ふ。アナフラニール、ソラナックス、レメロン、エバミール、ロキソニン、漢方藥變らず。精神科は患者尠きこといつもの如くなれど藥局前に整理番號の點燈を待つ者なぜか常よりも多し。新年度に入りたる故にや。池畔の櫻花を看る。滿開の花未散るに至らず正に見頃なり。晚間舞踊批評家I先生より電話あり。
曇りて風なし。兩三日前より睡魔に襲はるゝこと晝夜殆ど時を擇ばず。早稻田大學古典籍總合データベースに服部南郭が寐隱辯を讀む。枕上何とはなしにテレビをつけるにNHKにてかぶき者の實錄風ドラマ放送せられ一驚を喫す。タイムスクープハンターとかいふ番組なり。開卷劈頭テロップに1656年3月24日と出でしが、當時は陰曆なれば明曆二年二月二十九日ならむ。醜名を赤鷹組といふ町人奴三人衆の一夜を再現す。天鵞絨に烏の羽根を纒ひし恰好奇矯なる趣あり。町人奴の巢窟を襲ふ塲面迫力あり。手持ちカメラによる長囘しなか/\の臨塲感を釀し出したり。撮影地日光江戶村。
春風駘蕩。門前の櫻花爛漫たり。天氣漫步するによし。午下鴨田川を步む。輕鴨二三羽。そばに小鴨なるや茶色の頭に黑き目元の鴨二三羽憩ひゐたり。燕川面を徃き來して器用に水を飮む。家にかへるにシジミ君聲を限りに啼きて余を呼ぶ。混合餌オーツ麦グリーンフードボレー粉飮水に不足なし。何事ならむと籠の扉を開けるに忽ち出でゝアサリ君の籠の上にとまれり。午前の開放時間常よりも短かりしを以て開扉の催促をなしゐたるなり。コロンビア國ボゴタ市にて開催中のイベロアメリカ演劇祭、SPAC王女メデイア好評の由、文藝部横山義志氏執筆の公式ブログに讀めり。字幕に觀客時折笑ひ、劇的アイロニー傳はりたりとぞ。喜悅限りなし。
晏起午に近し。疲勞甚し。今朝見し夢のなかにても疲勞のあまり流し臺に椅子寄せ坐して皿を洗ふほどなりき。强風昨の如し。書くべき手紙かけるべき電話少なからずあれど懶し。今週末は休養に專念することゝす。日暮强風歇む。初更叔母Sより電話あり。伯母K新居を訪問し安堵せられし由。腦内メーカーの解說をなす。この日西班牙テレビ放送完全デジタル化移行。
空は晴れたれど午後に至りて强風吹起り、窗外の欅竝木を騷がす。晏起十時半。アサリ君余より先にテーブルを步きサラダのアスパラガスと蕃茄を啄む。シジミ君も出で來りてアサリ君の鄰に竝び見樣見眞似して啄めり。午後電力會社社員來宅、電氣メーターを交換す。千葉市にて朝の中より風速三十三メートルの强風吹きすさみ鐵道地下鐵運休の由。軆重軆組成計を試む。體脂肪率體格指標基礎代謝自動的に算出せらる。體年齡と實年齡の差一歲と判明せり。枕頭テレビをザッピングするにテレビ愛知にてたけしのニッポンのミカタといふ番組ありて、六十四五歲とおぼしき厚化粧の女、一人で死ねるのは自由なんです、生きてゐるうちが全て、死んだ後のことなんかどうでもいゝなどゝ豪語せり。SSSといふ孤獨死支援團體の代表なる由。死後の種々雜多なる手續きに關してはいざときノートとかいふ帳面に資產連絡先など事細かに記し、これを發見せし者必ずこゝに書きたる順序に從ひ事を運ぶべしと注意書を添ふ。この女自らの意志でこの世に生れたるにや。好き勝手に暮し、死後に於てさへ他人に我儘を押しつけ恬然として愧ぢる所なし。自分勝手の極滑稽なるものなり。野垂死の覺悟なきおひとりさまの爲すことほど勝手次第なるはなし。
陰曆二月十七日。朝來くもりし空には雲脚の動くを見たれど、霧雨折々降り來りて霽れず。晝餉に鷄麵を食ふにアサリ君トコ/\步み來りて箸の上また丼の緣に乘り興味津々たり。執筆半日。散髮。夕餉に毛蟹を食す。體重を量るに先週より一キログラム肥えぬ。初更多次元中繼DOMMUNE×□□□02演奏撮影會を視聽す。ドミューンスタジオにて宮沢章夫いとうせいこう阿部和重の特別鼎談虛構について。肝心要の部分を聞逃しぬ。澀谷クラブクアトロにて□□□ライブ。最後の樂曲00:00:00の時報午後9時19分をお知らせしますと卽時なり。DOMMUNEの高音質驚くの外なし。テレビは早晚過去の遺物となるべし。