晴天。セキセイ鸚哥のアサリ君余の箸に乘りては食麵麭を喰ふこと頻なり。NHK總合演藝圖鑑に古今亭菊丸の人形買ひを聽く。午前川岸を步む。乾きたる南風强し。輕鴨一羽。午下地下鐵道に乘り上社下車、名東文化小劇塲にて柳家さん喬柳家權太樓二人會を聽く。滿席。さん喬の弟子柳家小太郎お菊の皿にて座を和ます。權太樓の一席目は定めし輕き噺と思ひしに意外にも井戶の茶碗を語れり。さん喬その心意氣を受けて心眼を丹精こめて語りぬ。余は八代目桂文樂の心眼を錄音にて聽きしことあるのみなれば思はぬ拾ひ物を得たる心地す。休憩の後さん喬ちりとてちん、權太樓くしやみ講釋。さん喬は人情噺の名手としての評判高き噺家なれど、余は棒鱈やちりとてちんなどの滑稽噺を好むなり。落語は滑稽噺だよと云ひし古今亭志ん朝の言葉も思ひ合はせらる。
晴後に陰。NHKラヂオ第一キャンパス寄席に柳家三語樓の眞田小僧を聽く。小笠原諸島にて震度五强の地震あり。午後倦怠感甚しく睡を貪る。
曇天。今いくよ胃癌にて急逝。行年六十七。若井小づえ・みどり、海原千里・万里、春やすこ・けいこなど女の漫才コンビは長續きせざるもの多きに、今いくよ・くるよの兩人には四十年近く樂しませて貰ひぬ。口之永良部島新岳噴火。午前河畔を步す。輕鴨二羽。燕、椋鳥、土鳩。ぽつ/\と微雨あり。氣溫は攝氏二十四度ぐらゐなりしが風濕氣を帶びてやゝ蒸暑し。午後ことぶきの湯に徃く。露天風呂の岩盤に橫はりて汗を流す。稻葉町の水田に小鷺二羽見ゆ。宮川左近ショーの暁照雄咽頭癌にて死去。行年七十八。背筋をピンと伸ばして三味線の速彈きを披露し、なんでこんなに上手いんやろと呟く高座姿の美しさ今に忘れず。
曇りて涼し。コメダに一服す。食慾進まざれば咖啡一杯を啜るのみ。九時出勤。鶯語に出迎へらる。小試驗を行ひし後動詞 tomar を用ゐる會話を訓練す。黃昏川邊を步む。椋鳥、燕、鵯、蝙蝠。
晴れていよ/\暑し。午前速步。西風連日颯颯たり。午後倦怠困臥。照ノ富士大關に昇進す。印度猛烈なる熱波に襲はる。アンドラプラデシュ、テランガナ兩州においては氣溫攝氏五十度近くに昇るといふ。
快晴。西風爽かなり。階前夏椿の蕾ふくらみたり。午前川緣を步す。輕鴨一羽。河原鶸、椋鳥、雉鳩、土鳩、雀。午後主治醫を訪ひ藥を乞ふ。ことぶきの湯に立寄り露天風呂に浴す。草蘆鄰のドラッグストア牛乳一本百四十八圓(稅込百五十九圓)にて販賣するに、二本目以降は百六十八圓(稅込百八十一圓)とるやうになりぬ。この日日本氣象協會の記錄によると我が町の氣溫攝氏三十一度に昇りしが、吹き通ふ風の涼しさに書室に孤坐して筆硯に親しめば暑さを感じず。BS11藝賓館に林家種平のとんぼがへり、林家源平が蝦蟇の油を聽く。半輪の月あきらかなり。
曇りて涼し。午前川端を步む。中洲に輕鴨一羽憩ふを見る。東京かわら版五百號紀念特大號屆く。午後接骨醫T氏を訪ふ。去廿一日BSプレミアムにて錄畫せし溝口健二の近松物語を看る。宮川一夫の撮影奇蹟的といふ外なし。照明の纎細さ當今の活動寫眞には望むべくもあらず。
鱗雲のたなびくさま秋空の如し。NHK總合演藝圖鑑に三遊亭圓輔の强情灸を聽く。午前河岸を步す。綠蔭淸風愛すべし。輕鴨三羽。鵜一羽。Eテレ日本の話藝に春風亭昇太が茶の湯を聽く。大相撲夏塲所千秋樂關脇照ノ富士初優勝。去十四日BSプレミアムにて錄畫し置きたる伊藤大輔の辨天小僧を看る。
曇天。無風。午前三時に錄畫し置きたるBS-TBS落語硏究會に桂米朝が厄拂ひと京の茶漬を聽く。絕品なり。午前速步。鵜一羽川の面を滑るが如く飛び行くを見る。扇田昭彦歿。行年七十四。
陰後に晴。午前河畔を步む。涼風爽颯たり。輕鴨二羽。午下ことぶきの湯露天風呂に浴す。三重テレビ淺草お茶の間寄席に柳家はん治の粗忽長屋、柳家小菊の粹曲、古今亭菊之丞の紙入れを聽く。林家正樂の紙切りいつ見ても佳し。北海道より饋られしアスパラガスを食す。
晴。朝の中風冷なり。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。動詞現在形規則活用の練習と不定語否定語を解說す。昨年度より用ゐる敎科書は未だ形容詞を習はぬ中に alguno と ninguno の說明をせしめ、動詞 hay も未習のまゝ問題文に頻出す。この敎科書は初學者にとりてあまりにも不親切なれば學生諸氏が氣の毒なり。午下地下鐵道驛前にて戰友I君と落ち合ひ、ふたゝびコメダに徃き談笑す。黃昏蕎麦屋安江に晚餐をなす。I君十割蕎麦をいたく氣に入り、蕎麦切り一枚を追加注文しぬ。昏刻新幹線にて博多にかへるI君を地下鐵驛に見送る。西の空に纎月鎌の如し。BSフジ落語小僧を見る。ほおずき亭ほっぺが王子の狐は小學二年生にもかゝはらず口跡鮮やかにて人物の演じ分けも達者、人をして感服せしむ。姉の中學一年生ほおずき亭ぱある河豚鍋を演ず。舞臺度胸よし。指南役桂吉坊池田の猪買ひを口演す。
晴。正午速步。輕鴨四羽。木陰を吹き渡る風の心地よさえも言はれず。三時地下鐵驛に戰友I君を出迎ふ。今朝沼津にて後縱靱帶骨化症といふ難病の診察を受けしところ、術後の經過頗順調にて、もはや首のコルセットは不要となり杖も使はずに步くを得たり。咖啡所コメダに談笑す。燈刻梅の花にて晚餐をなす。諧語二更に至る。夜風思の外寒し。
陰後に晴。朝の中風濕氣を帶びて冷なり。正午河岸を步す。輕鴨一羽。雉鳩、椋鳥、白鶺鴒、燕、土鳩。土手上に秋櫻の如き黃色の花數多咲けるを見る。莖は長く花瓣の中央は橙色なり。互聯網にて調べるに大錦鷄菊といふ花なるやうなり。北亞米利加原產の花にて、近年急速に繁茂し在來の植物を脅かすを以て特定外來生物に指定されたる由。午下ことぶきの湯露天風呂に浴す。この混堂大相撲開催中は豪風勝手に應援團と稱して豪風が白星をあげし翌日は入浴客にスタンプ一個を進呈するなり。稻葉町にてやうやく田植始まる。水田の光景を眺めて余大に安堵せり。この田圃は町中にありて鷺や鳧の集ふ貴重なる土地なり。BS11藝賓館に落語藝術協會新眞打の噺を聽く。三笑亭夢丸あたま山、三笑亭小夢かつぎや、春風亭小柳新聞記事の三席なり。おもしろからず。
隂。昨日大阪都構想の是非をめぐる住民投票あり、僅差にて反對派上囘り無事否決されたり。正午坡上を步む。濕氣を帶びたる西南の風强く存外ひやゝかなり。晡時接骨醫T氏を訪ひ首裏を揉ましむ。gooニュースの意匠改惡せらる。智能手機の小さなる畫面に最適化せしめたるを以て記事見出しの數激減し、桌上型電腦の廣き畫面にて閱覽すれば情報量著しく減りぬ。余は Yahoo!ニュースが同じく意匠を改惡せし時より gooニュースを代替物として愛用し來れり。時代の趨勢と諦めるより外なし。
晴後に陰。NHK總合演藝圖鑑に三遊亭白鳥のナースコールを聽く。午前堤上を步む。川をわたる風の凉しさ言はむ方なし。護床を設置する工事は終はりしとおぼしくショベルカーと土囊、川中の杭悉く撤去されぬ。Eテレ日本の話藝に桂南光の火焰太鼓を聽く。父上來室、筆記型電腦が遂に動かなくなりぬといふ。電源を入れてみるに、初めてコンピューターを使用するための準備をしていますといふ表示現れて一驚を喫す。父上は譯もわからぬまゝ電腦を弄りて工塲出荷狀態に戾りぬ。已むを得ずアカウントを作成してログインし、舊きアカウントを探すも見當たらず。設定はすべて初期化されぬ。Windows Live メールを安裝す。
夜來の雨十時ごろ霽る。風濕氣を帶びて冷なり。NHKラヂオ第一眞打ち競演に三遊亭天どんのたらちね、三遊亭金馬の試し酒を聽く。午下假眠。晡時地下鐵道にて名驛に出で、新幹線こだま號に乘り名古屋驛停車塲を發す。車内中高年の女多し。黃昏靜岡驛下車。辻自働車を倩ひ駿府城公園に赴く。七時SPACの野外劇マハーバーラタ~ナラ王の冒險~を看る。舞臺は丸き客席をぐるりと取り圍む高き囘廊をなす。椅子席四列目の中央に坐るを得たり。滿席。演奏家八名ばかり登塲。微かなるグロッケンの音に打樂器の音加はるや、正面奧なる暗き木立に照明あたりて隊列の人影映る。隊列は背後より現れしスピーカー達なり。駱駝の隊商を指人形にて演じ、四頭の象は巨大な鼻のみかたどり、馬や車も白き板一枚を用ひて宛ら影繪を見るが如し。木津潤平による空間構成卓拔。久保田梓美の臺本また佳し。ベージュがゝりし白に統一したる高橋佳代の衣裳見事。長時間坐せしまゝ語り通しのスピーカー阿部一德氏を演奏タイムの最中に立たせ、體をほぐせしめ、茶を喫せしむるなど宮城聰氏の演出餘裕綽々たり。九時終演。步みて靜岡驛に徃く。十時新幹線こだま號に乘り名古屋に向ふ。乘客一割に滿たず。家にかへれば將に夜半十二時なり。
輕陰。昨日にまさりて更に暑し。Eテレえほん寄席に柳亭左龍の豆やを聽く。午前母上を伴ひ古戰塲傍のロイヤルホームセンターを見物す。大和ハウスが今春開店せしばかりの店なり。品揃へ思の外豐富。セキセイ鸚哥の餌遊び道具なども商ふ。園藝店にて白きベゴニア六鉢を購ふ。氣溫攝氏二十八度に昇る。午下ことぶきの湯に浴す。歸途稻葉町を過るに田疇は一面土のまゝにて、田植を終へたるは僅二枚なり。
晏起。快晴。暴に暑し。市中到る處新綠賞すべし。顏を洗ふ遑もあらず倉皇として車を運轉す。水田の上空に鳧數羽銳き聲にて鳴くを聞く。九時過豐田學舍出勤。眼前の梢に山雀一羽來りてツゝピー/\/\と頻に囀り余を出迎ふ。敎科書第四課を終へる。學生諸君靜にまじめに勉强す。午下家にかへる。演劇選集第三卷校正。直に監修者に返送す。ヤマト運輸集配所に赴きS子にアスパラガスを饋る。空次第に曇る。市役所前の寒暑計攝氏二十七度に昇る。政府臨時閣議を開きて安全保障關連法案を閣議決定す。夕刻安倍晋三首相記者會見を開きて、戰爭法案などゝいふレッテル貼りは全くの誤りなり、日本が亞米利加の戰爭に卷きこまれるやうなことは絕對にありませんと放言したり。我が國が七十年の長きにわたりて平和を享受したりし所以は、憲法九條に基づきあらゆる武力を放棄し、自衞隊員が國内外で外國人を一人も殺害せざりし所にあり。然るに安倍は同盟軍たる亞米利加軍への武力攻擊を我が國への攻擊とみなして武力を行使すると斷言しぬ。戰爭への加擔は明かなり。安倍は噓八百を竝べて恬然として愧ぢず。余呆然として言ふところを知らず。
天氣好晴。セキセイ鸚哥のアサリ、シゞミ兩君余がサラドの胡瓜を嬉々として啄む。アサリ君は余の塗箸に乘りて先端を舐めること頻なり。午下理髮舖に徃く。歸途ことぶきの湯露天風呂に浴す。去金曜夜BSフジにて錄畫し置きたるヒッチコックの名畫ダイヤルMを廻せ!を觀る。
暗雲の南より北にゆるやかに流れ行くさま颱風六號の近きを知らしむ。正午より雨ふる。佐々木先生のスペイン文化入門を讀む。颱風襲來、風はやみしが雨車軸を流すがごとし。晡時Nバスと地下鐵道を乘繼ぎて榮に出づ。六時半中電ホールにて柳家三三桂吉弥二人會を聽く。滿席。先づ桂米輝阿彌陀池を語る。丁寧なる口調にて口跡よし。吉弥登塲し、米朝の内弟子として四年修行せし時の思ひ出を語る。米朝はほかの内弟子二人に輕業の稽古をつけしが吉弥は傍らにて聞きしのみにて稽古させてもらへず。ある時吉弥が米朝に稽古をつけて下さいと懇願するに、おまへは傍で聞いてたからできるやろ、もうやつてよろしと許可をくれたりといふ。米朝に稽古をつけてもろたのかもろてへんのかわからない輕業をやりますと言ひて語り始めたり。小拍子と扇子を使ひて笑ひを誘ふ。三三登塲、開口一番本日は足下のお惡いところをわざ/\遠くからお越し下さつたのはわたしですと言ひて爆笑せしむ。茄子娘を語りたり。余は入船亭扇橋以外にこの噺を聞くは初めてなれば喜び限りなし。十分間休憩の後ふたゝび三三登塲し、噺家の紋を說明をして後提燈屋を語る。坊主が美女を抱締めるくだりにて聽衆をして固唾を呑ましめ、その後に爆笑せしむる呼吸見事なり。トリは吉弥の百年目なり。九時終演し、外に出づるに風雨やみたり。夜二更家にかへる。
蚤起。この度の札幌滯在中は幸にして一度も睡眠劑を服さずに眠るを得たり。晴れてあたゝかし。一階レストランにバイキングの朝食を喫す。八時半快速エアポートに乘り札幌驛停車塲を發す。乘客の多くは新札幌への通勤客なり。九時新千歲空港到着。十時半全日空機にて千歲を發す。乘客僅に三十人くらゐなり。窗外御嶽山を眼下に望む。正午過中部國際空港着陸。風强く思の外肌寒し。四階のテラスに小憩す。高速バスに乘りて家にかへれば正に三時なり。佐々木孝先生近著スペイン文化入門を惠贈せらる。留守中錄畫し置きたる落語五席を聽く。Eテレえほん寄席の桂文生本膳、NHK總合演藝圖鑑の三遊亭笑遊ん廻し、Eテレ日本の話藝の林家木久扇昭和藝能史、三重テレビ淺草お茶の間寄席の三遊亭遊雀藥違ひと桂歌春拔け雀なり。
蚤起。昨夜も睡眠劑を飮まず。乍晴乍陰。一階レストランにバイキングの朝餉をなす。四丁目プラザ前より市電に乘りて叔母S宅に赴く。九時過從姉Y賃貸自動車を運轉して合流す。本年二月に身罷りし叔父Sを追悼する小旅行に出かける。行き先は嘗て叔父が訪れし支笏湖周邉なり。先づ里塚靈園に徃き花を購ひ叔父の墓前に供ふ。塋域寂然たり。國道四百五十三號線を南下し眞駒内を拔け、石山綠地に立寄る。サンクといふ彫刻家集團が意匠を凝らせし石のオブジェ散在す。國道を南下し、イチャンコッペ山を超えると眼下に懷かしき支笏湖の風景廣がりぬ。十二時半支笏湖溫泉到着。白線鐵橋といふ橋を渡る。橋より臨む湖面は鮮やかなる靑綠色を呈す。對岸の綠道に細き筍生えてあり。蕗はまだ若葉なり。持參せし握り飯と賣店にて購ひし揚げ芋をベンチにて食せんとせしかど湖風あまりにも冷なれば自動車の中に暖をとりて晝飯を食ふ。觀光客多からず。食後すぐ南の國民休暇村に徃き、キムンモラップ山麓なる野鳥の森を散策す。菫の花可憐なり。北に紋別嶽を臨む。施設一階ラウンジに立寄り咖啡を喫す。夕方國道四百五十三號線を北上し、右折して百十七號線を東進、白扇の瀧を臨む。瀧の落差はさほどにあらざれどラルマナイ川の幅は思の外廣く、間近より見下ろすに扇狀に廣がりて落ちる水の音轟然として腹に響きたり。水は限りなく淸し。東鄰にラルマナイの瀧あり。白扇の瀧より細し。その先には三段の瀧といふものありしが駐車塲なきが故素通りし、下流の漁川ダムを見物す。見物人僅二三人なり。惠庭市街に入る手前なるえこりん村といふ牧塲に立寄る。羊あまた放牧されゐたり。敷地内の花の牧塲といふ園藝店に入り、叔母蕗蕨など購はる。十年前に開業せし由。余が惠庭に住せしは昭和四十九年頃なれば早や四十年も昔とはなれり。國道四十六號線と三十六號線を走り札幌市内に入れば日は暮れむとす。叔母S燒肉を食べたしとのことにて燈刻從姉Yの案内にて味覺園北大北口店に飰す。七時半過北三條西一丁目創成川の畔にて余は車を下り叔母從姉と別る。旅亭にかへれば八時なり。この日訪れし觀光地はすべて叔父Sが三十年ほど前に訪れし土地なり。
四時半覺醒。幸にして睡眠劑を服さずに眠るを得たり。半陰半晴。一階レストランにてバイキングの朝食を喫す。支那人團體客押寄せ混雜甚し。NHKラヂオ第一眞打ち競演に柳家花綠の眞田小僧を聽く。心地よからず。被を擁して臥すこと二時間。午下いしかりライナーに乘り札幌驛停車塲を發す。三輛編成。大麻驛下車。つゝみ橋を渡り高町に徃きT家の舊宅を見る。表札なく人の住む氣配なし。近鄰チューリップ滿開なり。再びつゝみ橋を渡りて驛前に戾り、えぽあホール(大麻公民館)に徃きハイツセンター創立四十五周年紀念行事に參列す。創立者ミセス瀬川、現校長辰口志保さんに久闊を陳ぶ。第一部はジョイ・イングリッシュ・アカデミー學院長兼小樽商科大學特任敎授の浦島久氏による講演なり。第二部は桂かい枝の英語落語動物園を聽く。聽衆大勢。余がハイツセンター・イングリッシュ・スクールに學びしは四十年近く前のことなり。個人主宰による英會話敎室が半世紀近くもの長きにわたりて存續し得たるは偏に創立者瀬川夫妻竝びに後繼者辰口氏の人德によれるなり。
快晴。東南の風强く遽に薄暑を催す。午前川端を步む。發汗忽ち襯衣を霑す。三時半空港バスに乘り中部國際空港に赴く。大久田東交叉點のオールドスパゲティーファクトリー跡地に便利店ローソンと囘轉鮨屋スシロー出店せり。空港内スターバックスにて小憩す。五時半過全日空機に乘り常滑を發す。乘客僅三十人くらゐなり。機内番組の全日空寄席に立川志の輔の新作落語スマチュウを聽く。去二月二十八日曼谷にて收錄せし高座なり。七時半新千歲空港着陸。快速エアポートに乘り札幌驛に出づ。思ひかけず雨に遇ふ。街上の群衆のうち傘を携へるもの數ふるばかりなり。旅亭に荷を解き、久樂に徃き白味噌拉麵を食す。
曇りて風なし。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。門内アイスアリーナ橫の一つ葉たご(通稱ナンジャモンジャの木)の白き花盛りなり。會話の練習をして後冠詞の解說をなす。午下家にかへる。晡下川岸を步む。燕囀ること頻なり。
隂。無風。立夏。憲法紀念日振替休日。倦怠疲勞。午後被を擁して伏し、志ん生の元犬、お初德兵衞を聽きながら睡を貪る。燈ともし頃河畔を步す。この日小島章司氏高野山開創千二百年を紀念して金剛峯寺壇上伽藍金堂にてフラメンコ奉納公演を行ふ。
快晴。薰風颯〻たり。祭日。端午の節句を祝して粽と柏餠を食す。粽は主に西日本、柏餠は東日本にて食するなり。東西の境に位置する名古屋にて兩方を食するは地理上いかにも似つかはしといふべし。端午に柏餠を食する由來は柏の枯葉が新芽の萠出づるまで落ちざることにちなみ、子孫繁榮を願ふためなり。然るに余は今日に至るまで粽を食ふ風習の何故なるを知らざりき。デジタル大辭泉を繙くに、中國戰國時代楚の詩人屈原が懷王に仕へて活躍せしかど讒言により頃襄王に追放せられ、放浪の果てに石を抱きて汨羅江に入水し、その姉が命日の五月五日に餠を投じて死を弔ひし故事に由來するといふ。また百科事典マイペディアによれば、粽は古來支那に於て水神への捧げ物なりしを、屈原の故事と結びつきて命日に鎭魂のため供物とされし由なり。屈原の死したるは紀元前三世紀のことなれば、この風習には二千三百年の歷史あるらし。午後いつもの混堂に徃く。水田の苗靑〻として目を喜ばしむ。BS11藝賓館に笑福亭鶴光が善惡雙葉の松を聽く。喬太郎白髮を黑々と染めたり。
陰雨冥〻たり。みどりの日。昨日錄畫せしEテレ日本の話藝に當代柳家小さんの一人酒盛を聽く。滑稽噺にもかゝはらず滑稽味なし。晡時困臥。晝夜とも家に在り。
曇りて涼し。憲法紀念日。NHK總合演藝圖鑑に橘家文左衞門の桃太郞を聽く。無料見物人の中一際甲高き聲にてけたゝましく笑ふ女あり。耳障りこの上なし。マイヤ・プリセツカヤの訃報に接す。享年八十九。余かつてプリセツカヤの通譯をせしことありけり。舞姬が藝術監督を務めし西班牙國立バレエ團 Ballet del Teatro Lírico Nacional de España 來日公演の時なれば平成二年のことゝ記憶するなり。瀕死の白鳥を踊る舞姬を舞臺袖にて鑑賞したりき。三時半新幹線ひかり號に乘り名古屋驛停車塲を發す。車中執筆。靜岡にて下車、東海道線に乘換へ東靜岡に出で、無料チャーターバスに乘り靜岡舞臺藝術公園の野外劇塲有度に赴く。八列目中央に坐るを得たり。前列に大澤真幸氏坐りゐたり。日は將に暮れむとして山の冷氣暮秋の如し。幸にして看客席に三人用の大きなる毛布の用意あり。六時唐十郎原作宮城聰演出によるSPAC公演ふたりの女平成版を看る。アオイと六条の二役に扮するたきいみきさんの演戲を堪能す。宮城氏端役を演じて看客大喜びなり。七時四十分終演。無料乘合自働車、東海道線、新幹線を乘繼ぎて名古屋に戾る。地下鐵道驛より小雨に遇ふ。家にかへれば夜は旣に三更なり。
薄晴。木の芽日に/\舒び行けり。NHKラヂオ第一眞打ち競演に三遊亭好樂の替り目を聽く。古今亭志ん朝に敎はりし噺なりとて、銚子の替り目でございますのサゲまで語りぬ。晝餉に三輪冷や麦を食す。午下S子を地下鐵道驛に見送る。手紙二通したゝむ。昏刻速步。河上に蝙蝠の飛交ふを見る。幾望の月佳し。去月晦日BSプレミアムにて錄畫せし溝口健二の雨月物語を看る。上田秋成の原作淺茅が宿と蛇性の婬をよむ。
舊三月十三日。薄く晴れて暑し。S子と慈君東部丘陵線リニアモーターカーに乘り愛知縣陶磁美術館に赴かる。かつては陶磁資料館といふ名稱なりしかど一昨年六月に改稱せられし由なり。午前川端を步む。衞生組合前にショベルカー一臺あり、白き護床ブロックを川床に設置中なり。水禽の姿は見るべくもあらず。家にかへりて小憩の後ことぶきの湯に行き露天風呂に浴す。午下歸家。二時半S子慈君歸宅せらる。頭痛。假眠一時間。晡下父上を交へ四人揃ひて庄中町のかつ雅に徃き味噌カツを食す。豚ヒレ肉風味に乏し。余がこの店に通ひしは平成十年頃なれば十六七年前のことなり。少しく繁盛すると見れば忽品質をわろくして不正の利を貪るは日本人の通弊なり。悲しむべし。