微雨降りてはまた歇む。風寒し。セキセイ鸚哥のアサリ君余の箸に乘り、余が左手に持ちたる自家製雜榖麵麭の耳を飽かずして囓る。午後主治醫を訪ひ診察を乞ふ。倦怠感を訴へるにドグマチールとウインタミン少しく增量せらる。夜初更溫泉。時恰も店員健美泉の生藥を藥湯の浴槽に投入せんとする所なり。BS11ようこそ藝賓館に古今亭菊之丞柳家喬太郎二人會を聽く。菊之丞幇間腹、喬太郎いしの二席なり。菊之丞は去月藝術選奬文部科學大臣賞新人賞を受賞し、NHK藤井彩子アナウンサーと再婚せしばかりなり。菊之丞が落語と親しむ機緣となりしは中學生の時數學敎師が落語硏究會を設立せしことなりといふ。後に菊之丞の擔任となり、道德の時間には每囘菊之丞に落語を演ぜしめ、然も每囘異なる演目を語らしめたる由。ネタの數當時旣に四十に及び、芝濱も語りし由なり。
晴後に陰。昭和の日、舊天長節なり。午後坡上を步す。南風嫋〻たり。市中の田疇にて田植始まる。牧伸二丸子橋より多摩川に入水す。享年七十八。
空は隈なく晴渡りしが西風强く稍肌寒し。午後綠陰步道をあゆむ。雀、鵯、燕、土鳩、雉鳩、白鶺鴒、河原鶸、椋鳥を見る。黃昏Ｔ氏來訪。泉州名物水茄子糠漬を饋らる。
隂後に晴。北風烈し。本年の春ほど寒き年は罕なり。午後インターバル速步。河畔の杜鵑花滿開となる。昨夜十時BSプレミアムにて錄畫し置きたるコントの劇塲を看る。シンデレラ及第點。さむらいは笑へず。籠城の諧謔よし。井上ひさしに通ずる逆轉劇なり。決鬪は失笑を禁じ得ず。出演者三宅裕司（演出）、小倉久寛、小野武彦、池田成志、沢口靖子。作者はシンデレラと決鬪が吉井三奈子、さむらいと籠城が吉高寿男なり。
隂。南風强く雲脚穩ならず。肌寒し。午後所用ありて豐田學舍に赴く。小雨ふり來る。保見驛交叉點の先より突然澀滯す。何事にやと思ひ保見町抱六交叉點に抵るに、サークルK駐車塲入口に初老の男橫臥して身動きせず、コンビニの店員付き添ひ、橫に原動機付自轉車倒れゐたり。傍に靑色の乘用車あり、背廣をきたる二十代後半と覺しき運轉手立ちすくみて携帶電話にて誰かと話し中なり。衝突事故なり。大學駐車塲に車を停め敎員控室に赴かんとするや疾風急に起り、忽橫毆りの雨となる。宛ら颱風に遭ひたるが如し。所用を濟ませてふたゝびサークルK前を過ぎるに救急車二臺來りて在り。理髮舖に立寄りてかへる。夜初更溫泉。風冷なり。三遊亭萬窓と柳家三三のリレー落語怪談乳房榎を聽く。
雨後の空おだやかに晴る。旦暮肌寒し。咖啡所コメダに朝餉を喫す。九時過豐田學舍に赴く。一限二限とも喫茶店にて咖啡を注文する會話の練習を行ふ。七十六名に及ぶ受講生を相手に外國語初級の授業を行ふは至難の業なるを痛感す。二三十名ならば各人を相手に會話の練習を行うこと容易なり。然るに八十名近くに達するを以て、已むを得ず學生同士二人一組にして會話文を諳誦せしむ。忽喧騷甚しく疲勞す。歸途靴屋に立寄り防水スプレーを購ふ。一時半歸家。小憩の後河岸を步む。五日ぶりなり。花蘇芳の盛は過ぎて花水木滿開なり。夕刻執筆。草稾三篇を編輯員に交附す。
昨日の疲勞出でしにや睡より覺むれば旣に午に近し。風雨瀟〻。竟日執筆。
隂。無風。華岡靑洲の妻を讀終へたり。執筆。午下溫泉。夕刻假眠。晡下驛前某店にて夕餉を喫し、地下鐵道にて榮に出で、ナディアパーク十二階アートピアホールに赴く。七時シティボーイズミックス公演西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備をを看る。滿席。二階席三列十三番に坐る。二階席なれど舞臺は豫想以上に近し。大竹まこと、きたろう、斉木しげる、中村有志、いとうせいこうの五氏に戌井昭人、笠木泉客演す。作演出宮沢章夫。これ以上は望むべからざる布陣なり。充實のコント二時間の芝居は瞬く間に過ぎたり。笠木泉の演技を見るは平成七年の遊園地再生事業團公演知覺の庭以來十八年ぶりなり。カーテンコールに宮沢章夫登塲し、いとうせいこう氏の新作小說想像ラジオ三島由紀夫賞の候補となりし旨を報告す。二更家にかへる。三更BSフジ落語小僧第三囘放送にほおずき亭ぱあるの正月丁稚を聽く。語り口の適確さは言ふに及ばず、着物のきこなし好く、立居振舞ひしとやかにて、目と耳を愉しましむ。四歲の頃より日本舞踊を習ひ始めたる由なり。小學五年生なり。つゞきて池田家大吉の宿替へを聽く。中學二年生なり。夜半雨。
天氣好晴なれど風やゝ肌寒し。頭痛。倦怠感。有吉佐和子が華岡靑洲の妻をよむ。夜初更BS日テレ笑點デラックスにあした順子・ひろしの漫才を聽く。平成十年九月廿日放送の囘なり。最盛期極上の漫才を堪能す。
娘の幸福について語るとき母親は何ものも怖れない。
人を造るに百年の大計を以てす。
母になつた喜びは、何物をも征服した勝利感に似てゐる。
惡夢をみる。けふも寒きこと晚冬のごとし。午後二時FM愛知サンデー・ソングブックに珍盤奇盤特輯を聽く。ロス・プリモスのラブユー貧乏ボーカル編及び臺詞編に聞き惚れる。同時刻に錄畫せしＥテレ日本の話藝に桂南光が櫻の宮を聽く。余は南光の嗄れ聲を生理的に受けつけず。たゞ耳に不快なるのみ。午前五時過に錄畫し置きたるNHK總合桂文枝の演藝圖鑑に春風亭一之輔が蝦蟇の油を聽く。香具師の口上に御用とお急ぎでない方はゆつくりと見ておいでと言ふべきところ、御用とお急ぎの方はゆつくりと見ておいでと言ひ間違へたり。この日寒風を恐れて終日門を出でず。古井由吉の杳子を讀む。
人間であるといふことは、立つて步くことなんだなあ。
自らの命を斷とうとする人間は、男にしても女にしても、その時、年齡といふものを洗ひ流されて、老人とも未成年ともつかない蒼白さにつゝまれる……。
自然つて奴はよつぽど道化た露惡家だよ。
人間とは立つて步くもの。
あゝ、美しい。今があたしの頂點みたい。
雨もよひの空なり。無風。寒し。廚房の螢光燈切れしかば母上とエイデンに行きて購ふ。倂せてオーディオテクニカ社製カナル型イヤホンを買ふ。父上母上がテレビの音聲を聞くのに用ゐるなり。父母の日々使はれるソニー製ラヂオ ICF801 もまた故障せしかばラヂオ受信機賣塲を見物す。賣價六千九百八拾圓なり。パナソニック製 RF-2400A-S は五千九百八拾圓なり。歸途清水屋に立寄り家電賣塲をみる。ツインバードといふ會社のラヂオ AV-J125W 賣價壹萬貳千八百圓。余が十年來愛用するソニーの携帶ラヂオ ICF-9 は貳千九百八拾圓なり。午下家にかへりて價格コムを調べるに、ソニーの ICF801 は五千壹百參拾四圓、パナソニック RF-2400A-S は四千五百五拾參圓、ツインバード AV-J125W は八千七百壹拾圓にて、いづれも三割程度安し。ソニーの ICF-9 に至りては半値以下の壹千參百七拾圓なり。余は小賣店を應援したき心はあれど、かくも値段に差のあるを見れば背に腹は代へられぬなり。午後三島由紀夫の潮騷を讀む。夜に入りて雨來る。
ぢつと坐つてゐるだけなのに、はげしい勞働の際にしか見られない變化が起つてくるのは、氣味がわるい。
惡意は善意ほど遠路を行くことはできない。
男は氣力や。氣力があればえゝのや。
晴。昨日とは打つて變はつて風寒し。喉の奧俄にむず痒し。風邪の兆候なるべし。母上愛用の筆記型電腦 NEC LaVie G PC-GL16MLCG3 の OS を XP より Windows 7 に變更す。作業は一時間足らずにして無事完了せり。然れど内臟の擴聲器より音聲聞えず。タスクトレイを見るに擴聲器のアイコンに赤き×印あり。マウスポインタを乘せるにオーディオ出力デバイスがインストールされていませんの表示現る。デバイスマネージャに據ればサウンドデバイスは正常に動作中なり。念のため BIOS を更新せしかど症狀治せず。惡戰苦鬪すること一時間ばかり。NECの網站を閱するに、Windows 7 へのアップグレードは平成二十一年四月以降に發賣されたる Vista 搭載機種に限りて動作を保證する由にて、それ以前の機種に關しては動作を保證せず、また必要不可缺なるドライバ類の提供もせざるといふ。母上の筆記型電腦を購ひしは平成十八年七月なり。故に症狀を改善する方策のなきを知り得たり。音聲以外に特段の問題はなし。夜に入りても寒風吹き歇まず。初更溫泉。天頂に片割れ月あきらかなり。
蚤起。薄く晴れて暖氣初夏の如し。咖啡所コメダに朝餉を喫す。客少なく居心地よし。午前授業を行ふ。余の擔當は一限及び二限の二組なり。それ／″＼氏名の五十音順に從ひてクラス分けをなすに、例年一限の學生は野性的にて二限の受講生は文明的なるをその特徵とす。然るに本年度は何故にや一限の學生が文明的にて二限が野性的なり。受講人數は前者七十六人、後者五十六人なり。人數の多き組が大人しく、少なき組が却つて喧騷なり。西班牙語の挨拶を練習し、名詞の性と數及び冠詞の使ひ分けを講ず。一時半歸家。咖啡を煮て自家製カップケーキを食して後河畔を步む。
薄晴。遽に薄暑を催す。午後主治醫を訪ひ藥を乞ふ。歸途千代田に立寄り靴二足を購ふ。夜初更溫泉。不感溫度浴の心地よさ言ふばかりなし。BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館にハッピー寄席同窓會第一囘を聽く。桃月庵白酒ざるや、三遊亭丈二リサイクル課長の二席なり。十一時BSフジ落語小僧第二囘放送をみる。九歲の小林亭竜之介得意の一目上がりを披露す。素直なる語り口に人物の演じ分けも巧みにして司會者三宅裕司また柳家喬太郎も客席にて爆笑す。余も呵呵大笑せり。途中咳込みて噺を中斷せし折、すみませんねえと客に詫びるその口調いかにも噺家然として見事なり。器大きく將來を囑望せずんばあらず。桜家尋エモンはつるを語りたり。中學一年生にして旣に色氣あり。喬太郎擬寳珠を演ず。
薄く曇りて春風漸く暖なり。午後堤上を步む。三國連太郎の訃に接す。享年九十。余が三國氏と言葉をかはす機會に惠まれしは平成四年正月新橋演舞塲に於てなり。指を屈すれば二十年あまりのむかしとはなりぬ。少年が如き瞳の美しさ今に忘れ得ず。
南風烈しく雲脚穩ならず。曉明五時十五分NHK總合にて錄畫し置きたる桂文枝の演藝圖鑑に林家彦いちの反對俥を聽く。午後インターバル速步。香流川の淺瀨に烏の行水するを見る。羽を水にくゞらせて身を震はせること五六囘。俚諺に烏の行水といふなれど實際に觀察してみれば存外入念なり。午後二時Ｅテレにて錄畫せし日本の話藝に桂文治のお血脈を聽く。Windows 7 に於ける Firefox と flash player の相性頗る惡く、必ずクラッシュするなり。互聯網にて解決策を知り得たり。C:\Windows\System32\Macromed\Flash 内の mms.cfg といふファイルに下記の一文を付記すればよし。
ProtectedMode=0
空は隈なく晴渡りて强き陽射しに日傘さす女も見ゆるほどなれど、西風依然として冷なること彼岸の頃を思はしむ。拂曉淡路島にて地震あり。震度六弱。十八年前兵庫縣南部地震の餘震なるにや、東南海地震の前兆なるにや。午後河畔をあゆむ。花蘇芳滿開なり。杜鵑花ひらく。
寒冷前日に劣らず。雨もよひの空なり。門前の欅いつの間にか若葉靑々と茂りたり。深夜一時頃Ｅテレにて錄畫し置きたるナイツの言ひ間違ひで覺える日本史を聽く。今宵の題材は紫式部なり。午後坡上を步す。椋鳥の大群に遭ふ。桂小南の夢八、菜刀息子、いかけや、河豚鍋、尻餠、運廻しを聽く。心倦みつかれしが小南のはんなりとした語りを聞けば忽淸涼の思ひをなさしむ。夜初更溫泉。纎月低く鄰家の屋上に懸かれるを見る。
舊三月初一。陰後に晴。肌寒し。門前の山櫻花ひらく。午後速步。赤飯を炊き鯛を燒きて父上の誕辰を賀す。
天氣牢晴。春風嫋〻。春の好日は氣が滅入るのみ。好天恨めしきばかりなり。精神また明瞭ならず。落語も威勢よき語りは耳にうるさきばかりにて頭が受付けず、三遊亭圓遊或は入船亭扇橋など穩やかなる聲のみ選びて聞くなり。夜初更溫泉。午後八時BS11ようこそ藝賓館に柳家喬太郎の子ほめを聽く。竹の子は生れながらに重ね着て育つにつけて裸にぞなるといふ下げは初て聞きたり。つゞけて昭和のいる・こいるの漫才を聽く。のいるこいるといふ藝名は師匠獅子てんや・瀨戶わんやを乘越える（のりこえる）といふ願ひを込めて名づけし由なり。
春風駘蕩。午後河畔を步す。桂吉朝の子ほめ、そつてん芝居、河豚鍋、深山隱れを聽く。吉朝といひ志ん五といひ逸材は何故に早逝するや。サラ・モンティエル歿。享年八十五。マーガレット・サッチャー歿。享年八十七。
隂。强風吹きすさみて俄に寒し。折〻微雨あり。拂曉錄畫したるNHK總合桂文枝の演藝圖鑑に古今亭菊之丞の元犬を聽く。余は五代目志ん生の輕妙洒脫なる元犬をこよなく愛するなり。この噺弟子の圓菊を經て孫弟子菊之丞に受繼がれぬ。抃喜措く能はざるなり。午後二時Ｅテレ日本の話藝に五街道雲助の淀五郎を聽く。本日より放送日時變りて金曜午後九時半なりしを日曜午後二時となす。晝夜とも家に在り。ビガス・ルナ歿。享年六十七。
朝來細雨蕭〻たり。拂曉BS-TBSにて錄畫せし落語硏究會に春風亭一朝の淀五郎、五街道雲助の身投げ屋を聽く。倦怠感甚しく何亊をもなす能はず。爆彈低氣壓とかいふもの接近中なりとて列島嚴戒態勢なれど抑鬱亭界隈は暴風雨の氣配なし。空は雨雲に蔽はれしが雨は霽れて風も絕えたり。終日門を出でず。
春日麗朗たり。午後堤上を步す。葉櫻を愛づ。四季櫻雪柳の花は悉く散り盡しぬ。夜初更溫泉。三遊亭圓遊の浮世床、地獄巡り、野ざらしを聽く。
天氣牢晴。風絕ゆ。氣鬱なり。花咲く季節には必ず精神鬱怏として樂しまず。午後インターバル速步。けふも燕の飛ぶを見る。
曇りて風强し。薄き日影折々窗に映ず。Ｏ市圖書館に行く。稻葉町の田に鳧の低く飛ぶを見る。歸路市營癈品囘收所エコハウスに立寄り中古のMD錄再機を處分す。午後堤上を步む。烈風に衞生組合の庭樹騷然たり。柳亭市馬の締め込み、厄拂ひ、藪醫者を聽く。
眠より寤むれば午後二時に近し。倦怠感去らず。雨もよひの空なり。主治醫を訪ひ藥を乞ふ。理髮舖に立寄りてかへるや細雨蕭〻として降り來りぬ。晚間ことぶきの湯に行く。開業二周年紀念なりとて入浴料通常五百圓のところ三百九十圓となす。囘數券より廉價なり。それが故にや客いつもより多し。BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に三遊亭萬橘がバブー指南、三遊亭小圓朝が長屋の花見を聽く。この日新裝歌舞伎座𣏕落しなり。
舊二月廿一日。晏起午に近し。薄く曇りて風靜なり。午後眼科に赴きアレルギー性結膜炎の藥を請ふ。けやき通滿開の雪柳言ふばかりなし。家にかへりて後河岸を步す。西風肌寒し。けふも川鵜を見る。今春始めて燕の飛ぶを見る。尾の短きところより察するに雌なるべし。岸邊の櫻花先週滿開となりてより氣溫やゝ低き日つゞきたれば未だ散り初めず。夜初更BS日テレ笑點デラックスに夢路いとし・喜味こいしの漫才を聽く。平成十年八月九日の高座にて演題は初めてのATMなるべし。