午前平常授業。休講にせむと欲したれど氣力振絞りて敎壇に立つ。車の天井布剝がれ落ちたり。夕刻I君より電話あり、院長面談延期したりといふ。
晴。執筆斷念す。母上の話に札幌のS叔父呂律囘らず左半身麻痺といふ。
曇り。無風。終日臥褥に在り。
陰。今日も書けず、鬱々として日を暮らす。河瀬直美殯の森カンヌ映畫祭グランプリを獲得したり。ZARDの歌手坂井泉入院病棟にて轉落死す。享年四十。松岡利勝農相自殺。
晴天。風强し。筆全く進まず。シンガーの足踏みミシンを粗大ごみに出す。昭和三十九年頃の品なり。骨董品としても實用品としても中途半端なれば廢棄處分する外なし。白鵬上手出し投げで朝靑龍を破り全勝優勝を果す。橫綱昇進確定なり。
快晴。W君I病院に入院。余も金あらば入院したき心地す。白鵬千代大海を下し優勝。橫綱朝靑龍は琴歐洲に上手投げで土俵を轉がさる。夕食の後アサリとシジミの爪を切る。迂闊にもシジミの足先の血管を切り鮮血細く流れたり。
雨車軸を流すが如し。原稾書けず。久振りに大相撲テレビ中繼を看る。白鵬が琴光喜を寄り切り唯一人全勝。魁皇右の上手出し投げで朝靑龍を土俵に轉がす。
暑きこと昨日の如し。午前平常授業。午後病院に徃きカウンセリングを受く。惡夢の分析に疲勞すること甚し。理髮舖に立寄りてかへる。夕刻I君に電話かけ病狀を訊ねるに聲を出すのも精一杯の樣子なり。醫者の勸めにより一箇月の休職屆を提出したりといふ。余は入院を强く勸む。大庭みな子歿。享年七十六。
薄く晴れて暑し。名古屋攝氏三十一度に昇る。腹候佳ならず、終日眠を貪る。頭も體も使ひ物にならず。熊井啓歿。享年七十六。
原稾今日も書けず。セキセイ鸚哥と戲れる。何故にや、シジミは上の止り木より下の止り木に飛移ること能はず。幾度となく試みるも躊躇し壁を傳ひて降りる。勇氣凜々として飛ぶこともあれど必ず手前に落下するなり。下から上へは巧みに飛移るなり。夕刻W君より電話あり、土曜日に入院すると云ふを聞き安堵す。
快晴。南風薄暑を催す。筆進まざること殆旬日なり。口内炎痛し。
晴れて西風强し。カーマホームセンターに徃きセキセイ鸚哥の餌を購ふ。初めて粟穗を買ひ籠に入れしがアサリもシジミも興味示さず。終日つげ義春を讀む。
ヘリコプターの音絕ゆ。中日新聞の見出しをみるに大林容疑者投稾し逮捕されたりといふ。讀書執筆意の如くならず。腹候亦可ならず。
午前五時過に目覺めて起出でるに今日もヘリコプターの音聞ゆ。曇り。ネットのニュースをみるに大林容疑者依然として籠城中なり。朝の中より下腹痛し。燈刻雨。塩沢トキ歿。享年七十九。
平常授業。驟雨篠突くが如し。歸宅して机に凭るに、五時ごろ空低く頻にヘリコプターの徃來する聲をきく。町内にて拳銃を持ちたる男家族を人質にとり自宅に籠城中といふ。男は元山口組系暴力團員大林久人、人質は内緣の妻と報じられしが後に元妻と訂正さる。警官一名腹を擊たれ庭先に仰向けに倒れゐたりしが九時前に救助さる。機動隊員一名射殺さる。昨今拳銃發砲事件多かれど町内にて發生するとは夢寐にも思はざりき。
薄く晴れてまた曇る。筆とるも感興來らず。氣分を轉換せしめんと三郷やまとの湯露天風呂に浴す。マッチョをぢさん來りて在り。市中の商舖次々と看板を替へゆくなり。三郷交叉點の料亭魚傳廢業せしとおぼしく取壞しの最中なり。余が縣立大學に着任せし時同僚諸氏による歡迎會の催されたりしはこの店なりき。北本地ヶ原町のオートテニス塲 GENKI CLUB はいつしか跡形もなく更地と化しぬ。漫畫喫茶「はるにれ」は華の瘉といふ女性專門の岩盤溫浴店となれり。午眠より寤むけば日は旣に晡なり。
薄く晴れて風强し。ペルー人ハビエルより電子郵件あり。ハビエルとは二十年前馬德里にて相識りしなり。余の氏名を Google にて檢索し網站を探し當たりといふ。米サンフランシスコ近郊サンマテオのコミュニティー・カレッジに勤むる由。空谷の跫音とはこの事なり。
輕陰。參議院にて國民投票法案可決され成立す。正式名稱は日本國憲法の改正手續に關する法律なり。推進派の狙ひが產軍複合體の實現に外ならざるはいとうせいこうの言を俟たず。
母の日なれば何かしたき心地すれど妙案浮ばず、詮方なく食後皿を洗ふ。
惡夢に襲はる。終日何事をも爲すこと能はず。倦怠感少しく輕減す。三月來の怠さはドグマチールの過剩攝取が原因ならむか。民族藝術學會といふ學會入會案内を送來る。この日初めてシジミ予の鼻や唇を嘴で觸れたり。
晴。朝來烈風。文机に棚を設へる。午眠三時間。アサリとシジミと戲れること日課の如し。シジミの鼻の色日に/\白みゆくなり。雌ならむか。アサリは靑みを帶び雄のやうなり。N社編輯者より電子郵件あり、締切今月末に延ぶ。カイエ・デュ・シネマ西班牙語版創刊さる。
陰晴定らず。疲勞甚しければビタミン劑を飮み大學に向ふ。平常授業。二限の最中烈しい雷雨あり。キャンパスのなんじゃもんじゃの木(ヒトツバタゴ)の花まさに盛なり。午後主治醫を訪ひ夢分析を受く。舊臘より服用しゐたりしドグマチールの處方畢る。倦怠感と疲勞の原因は藥の過剩攝取にあるや否や。夕餉の後聯載原稾を漸く書き得たり。熊本市慈惠病院に赤ちやんポスト設置さる。棄兒增るべし。
輕陰。攝氏三十一度五分。夏椿の蕾稍ふくらみたり。階前の欅春になりても芽吹かず、枯れしものと思ひゐたりしに、この日庭を眺る折からふと其の枝を見るにいつしか新芽に覆はれたり。筆今日も進まず。世上頻にガソリン價格の騰貴を傳ふ。ハイオク一リットル百三十七圓より百四十三圓になれり。今村仁司歿享年六十五。
晴れて氣溫攝氏二十九度に上る。七月の如し。書齋のヴェランダに出でゝ煙草を喫し、眼前の屋根より陽炎ゆら/\とたちのぼるを見る。筆とるも感興來らざること例の如し。疲勞倦怠感甚し。
晴天。薰風習々たり。ノースリーブ又は半袖の婦女子多し。F叔母より還曆内祝の皿屆く。從弟D君夫妻の經營する陶房ななかまどの品なり。佛蘭西大統領選擧決選投票あり、右派のニコラ・サルコジ選出さる。社會黨セゴレーヌ・ロワイヤルの敗北悲しむべし。
雨。母上とN子の手を借り居間と書齋の模樣替へに半日を消す。予は整理整頓が大の苦手なり。一年半前に舊抑鬱亭を引拂ひ實家に越して以來、荷解きせず放置したる本函山をなしゐたり。今日一日で大方の整理畢りたり。母上とN子に頭上がらず。夕刻疲勞困憊し午眠すること半時間ばかり。N子予の風呂嫌ひを稱して「汚ギャル」と呼ぶ。北村和夫歿享年八十。
五時覺醒。六時起出でゝ机に凭る。原稾漸く數枚書くを得たり。鳥籠の覆ひを恐る/\捲るに鸚哥アサリとシジミ二羽とも旣に起て止り木より降りゐたり。南のヴェランダに出で、煙草を喫す。遊步の人、犬を散步せしむる人多し。野球の制服を着て素振りに餘念なき少年あり。少年團の一員なるべし。晴れて薄暑を催す。夕刻竹の山に徃き農園レストランびーんずといふ店に夕餉をなす。ビュッフェ式の店にして有機栽培の野菜料理が賣物なり。鄰の金澤漁港直賣市塲を冷かすに閉店間際にて殘り物一切合切を買はしむ。アカガレイ、ホッケ、鰯の干物を大きな函一杯購ふ。締めて僅か千圓也。カーマホームセンター向ひの喫茶店に一茶す。舊家の藏を改築したるやうな造りなり。店名は明樂時運と書いてアラジンと讀ましむ。無茶といふ外なし。
溽暑甚しく日の光暑中の如し。名古屋市内攝氏二十七度に昇る。今日も筆進まず。夕刻藤が丘驛にN子を迎ふ。半袖姿の遊步者多し。夕食後N子が意匠したりしコロンバンのバタークリームケーキを食す。
新綠日に/\よし。原稾一枚も書き得ず。横山ノック歿享年七十五。數日來頭痛と耳鳴りに呻吟す。エバミール 2mgを飮み寢に就くこと昨の如し。
くもりて折々雨ふる。今年は燕の姿尠し。夕餉に鰹のたゝきと冷奴、空豆を食ふ。NHK-FMに「今日は一日映畫音樂三昧」を聽く。前島秀国とよべる解說者あり、音樂をかけず我が物顏で自慢話に明け暮れるばかりの田舍漢なり。肩書のオーディオ・ヴィジュアル・ライターとは抑も何の謂ぞや。
雨ふりてはまた歇む。枕上雨聲をきいて眠を貪ること終日。新聞紙をみるに、新宿歌舞伎町にて自由と生存のメーデー催さる。參加者はフリーター、日雇ひ派遣勞働者、障碍者、ホームレス、生活保護受給者など四百二十人なり。呼聲以下の如し。
最低賃金千五百圓よこせ
過勞死から逃げろ
住む塲處をよこせ
生きさせろ
大阪東住吉區長居公園にても明るいビンボー★メーデーなるデモ行進あり。世の噂をきくに本日より名古屋市内タキシ全面禁煙となる由。