薄く曇りて朔風冷なり。レナード・ニモイの訃報あり。午前河岸を步む。輕鴨、鶫、土鳩、白鶺鴒を見る。縣立大同窓會の日なれば午後地下鐵道に乘り名驛に出で、キャッスルプラザホテル四階鳳凰の間に徃く。時恰もH氏退職祝ひの宴始まり、S氏乾杯の音頭をとるところなり。余が縣立大學を退職したるは平成十五年三月なれば嘗ての同僚諸氏に會ふは十二年ぶりなり。各氏に久闊を陳ぶ。K氏頭髮禿上がりでつぷりと肥えて別人の如し。H氏S氏は變りなく壯健に見ゆ。F氏も老いを感ぜしめず。L氏余を見て ¡Qué alegría! と破顏一笑す。P氏と諧語す。八十歲になり腰曲りたれど辯舌は衰へず、感動的なる祝辭を述べられたり。E氏髮型變りしが故にや最初は誰なるやわからざりき。O氏余の白髮を見て、お互に老けましたねと笑ひぬ。卒業生三人と歡語す。Aさん結婚して知多に住めり。K君は橫濱の會社に勤め一女の父となれり。Gさん名東區に住める由。AさんはH氏ゼミ卒業生の代表として短き演舌をなせり。K氏と懇意なるサルサの舞踊家男女二名踊りを披露す。晡下解散。家にかへれば日は旣に沒して東の空に十日頃の月あきらかなり。セキセイ鸚哥のアサリ君シゞミ君めでたく八歲になれり。鸚哥の平均壽命は七年といふが定說なり。されど我が家の兩君は衰へを知らず、大病せし事もなく頗元氣なり。アサリ君は生來發育不全にて風切り羽なければ一度も飛びしことことなけれど好奇心旺盛にて相變らず遊び盛りなり。シゞミ君は壯健そのものにて每日よく飛囘るなり。
曇天。西北の風吹きすさみて餘寒料峭たり。園丁來りて庭樹を剪定す。午前河畔を步す。輕鴨十二三羽いつもの如く川面に浮びたり。土鳩、椋鳥。戲曲Mの試譯を制作部O氏に送る。午後ことぶきの湯に浴す。三重テレビ淺草お茶の間寄席に桂竹丸幕末男傳、神田紫お歌合はせ、三遊亭小遊三幇間腹を聽く。小遊三のみ佳し。
春雨霏〻。西班牙語の戲曲Mの冒頭數枚を試みに飜譯す。某氏が英譯版を用ひて和譯せられし臺本はト書と臺詞が削除せられしところ少なからず。二代目三遊亭圓歌の四段目と首つたけを聽く。
曇りし空午後に至りて折〻薄日さす。午前皮膚科に徃く。午後は休診、木曜も休診なれば混雜さぞかしと思ひしに患者は余のほか僅二人のみ。讀書する遑もなく診察室に呼び入れられたり。正午川端を步む。繡眼兒かと思はるゝつがひの小鳥飛來りて櫻樹の枝にとまる。仔細に見るに眼の緣は白からざるを以て繡眼兒にはあらず。體の上半分は鮮やかなる黃綠色をなすが故鶯にもあらざるべし。仙臺蟲喰なる歟。半月おぼろなり。
薄く曇りて風しづかなり。正午インターバル速步を再開す。去十一月咽喉頭炎に罹りてより中斷しゐたれば川岸を步むはおよそ四箇月ぶりなり。輕鴨十三四羽、雀、鵯、椋鳥を見る。超級市塲S向ひの信用金庫に巡邏車二臺、警吏六七人立ちて何やら不穩なり。ミスタードーナツに立寄りドーナツを六個購ふ。本日まで稅込百圓均一なり。安倍晋三といふ愚物の率ゐる自民黨政府憲法を改惡せむとて虎視眈々たり。飜つて皇室の方々とりわけ天皇陛下と皇太子殿下は憲法護持すべしと絕えず我ら國民に呼びかけ遊ばさる。天子は一昨年傘壽を迎へる折記者會見に臨みて斯く宣ひ給ひき。「戰後連合國軍の占領下にあつた日本は平和と民主主義を守るべき大切なものとして日本國憲法を作りさま/″\な改革を行つて今日の日本を築きました。戰爭で荒癈した國土を立て直し且つ改善していくために當時の我が國の人々の拂つた努力に對し深い感謝の氣持ちを抱いてゐます。また當時の知日派の米國人の協力も忘れてはならないことゝ思ひます」。また皇太子殿下は昨日五十五歲の誕辰を迎へて「我が國は戰爭の慘禍を經て戰後日本國憲法を基礎として築き上げられ平和と繁榮を享受してゐます」と宣ひたり。天子と皇太子は自由主義を標榜し、愛國者を名乘る輩は好戰主義を揭ぐ。何らの皮肉ぞや。晡時主治醫を訪ひ藥を請ふ。三郷の溫泉に立寄りてかへる。BS11藝賓館に柳家小滿んの雁風呂を聽く。畫面下に「番組をインターネットに許諾なく公開することは違法です」と書きたるテロップ表示せらる。枕頭先週火曜BSプレミアムにて錄畫せし張藝謀監督の活動寫眞單騎、千里を走る。を觀る。灰色の海を眺めて佇立む高倉健扮する高田剛一の姿は海邉にて撮影したるものにあらず合成寫眞なるは明らかなり。時折聞ゆる剛一のナレーションは何時誰に向けて語りしものなるや。高田が少年楊楊と山奧に一夜を明かす塲面は月明かりを臺詞にて表すのみにて、畫面の暗がりは日中特殊レンズを用ゐて撮影したるものなるべし。幕切れに刑務所の娛樂室にて李加民が披露する踊りは何らの感興も催さず。
雨は歇みしが空どんよりと曇りて晴れやらず。風あたゝかなり。咖啡所コメダに朝飯を喫す。十時MOVIX三好に徃きクリント・イーストウッド監督の活動寫眞アメリカン・スナイパーを看る。二時間十二分の長尺なれどダレ塲一切なし。編輯見事なり。豫告編ソロモンの僞證、さいはてにて、龍三と七人の子分たち。一時過家にかへる。
小雨ふりてはまた歇む。NHK總合演藝圖鑑にこいる順子の漫才、三遊亭歌武藏猫の皿を聽く。DVDにて河瀬直美監督の活動寫眞萠の朱雀と殯の森を看る。昨夜九時BS朝日サタデーシアターにて錄畫せしゲットスマートを看る。全く笑へず。テレビドラマそれ行けスマートの牧歌的なる可笑しさ皆無なり。諜報員の喜劇はオースティン・パワーズに遙か及ばず。この日錄を書き始めてより本日十四周年を迎へぬ。
曇天。寒からず。午前三時に錄畫せしBS-TBS落語硏究會に柳家權太樓鰍澤を聽く。午下地下鐵道に乘り名古屋驛へ出づ。去四月の消費增稅のため運賃十圓値上りしたり。二時新幹線こだま號に乘り靜岡に行く。乘客數ふるばかりなり。窗外空は一面鈍色をなし太平洋の海面と辨別すること能はず。筆記型電腦を用ゐて執筆。三時過ぎ靜岡に着す。東海道本線に乘換へ東靜岡下車。驛前のグランシップに徃く。藝術局N氏制作部O氏に久闊を陳ぶ。四時靜岡藝術劇塲にて劇團SPACのハムレット初日公演を觀る。滿席。臺詞やゝ聽きとりにくし。長き芝居を一時間四十分に纏めし演出家宮城聰氏の手腕襃むべきなり。終幕フォーティンブラスの語る、悲しみに沈みながらも幸運を抱きしめるといふ臺詞は苦き味はひなり。終演後宮城氏に挨拶す。七時來路を新幹線こだま號に乘りて家にかへれば夜は二更なり。
快晴。けふも風强し。慈君の愛用せらるゝ筆記型電腦の Sleipnir 2 を Sleipnir 4 にバージョンアップす。午前皮膚科に徃き藥を乞ふ。午後ことぶきの湯にて不感溫度浴をなす。燈刻時計屋に赴き昨日電池交換せしめし懷中時計を受けとる。三重テレビ淺草お茶の間寄席に柳家喜多八親子酒、柳家小團治大安賣り、三遊亭金時河豚鍋を聽く。
舊正月朔。日射しはあたゝかなれど西北の風吹きすさみて寒し。咖啡所コメダに朝飯を喫す。十時豐田學舍出勤。十一時受講生三名の追試驗を行ふ。秋學期末の試驗は去月行ひしが、二名は流行性感冒に罹り、一名は鐵道人身事故のため投稿すること能はざりき。正午終了、時を置かず採點を行ふ。一時家にかへる。昨夕ドスパラに注文せし四ギガバイトの内存早くも屆きぬ。筆記型電腦 ThinkPad E145 に增設す。强風騷然たり。昏刻アピタ一階の時計屋に赴き懷中時計の電池交換を依賴す。技術者不在なりとて仕上がりは明日の由。西の空に宵の明星きらめき、東の空に天狼星の光を仰ぐ。
陰後に晴。筆記型電腦 ThinkPad E145 に搭載したる四ギガバイトの内存を八ギガバイトに增設せむと思ひ立ち、アプライドに赴き價格を見る。最も廉價なるものさへ稅拔一枚五千九百八拾圓と思の外高價なり。外國爲替相塲における圓安のためなるべし。家にかへりて價格ドットコムにて探すに送料込四千二百圓の品を見つけたり。時を置かず注文す。先週金曜夜八時BSジャパンシネマクラッシュにて錄畫し置きたる007/サンダーボール作戰を觀る。ショーン・コネリーの色氣に滿ちたる演戲と若山弦藏の美聲を堪能す。
明け方降りし雨は歇みしが空はどんよりと曇りて寒し。朝八時ごろ靑森岩手秋田宮城にて震度四の地震あり。また一時四十五分ごろ靑森にて震度五强、岩手にて震度五弱の地震あり。來週馬德里の王立劇塲にて歌劇版觀客の公演あり。ガルシーア・ロルカの原作戲曲の構成主題粗筋など書きて資料をつくる。けだしK氏の需によれるなり。明後日行ふ追試驗問題を作成す。咖啡を淹れ、S子自製のブラウニー、六花亭マルセイバターサンド、兩口屋是淸のよも山を食す。夕刻より小雨ふたゝび降る。初更ことぶきの湯に徃きシルク風呂に浴す。夜に入りて雨ふりまさりぬ。BS11藝賓館に桂福團治の鼠穴を聽く。この噺は立川談志に敎はりしといふ。
くもりし空午後に至りて隈なく晴れわたりぬ。セキセイ鸚哥のアサリ君シジミ君朝飯のブロッコリーを嬉々として啄む。午前銀行に徃き歸途理髮舖に立寄る。S子自製のブラウニーとバレンタインチョコなどを餽らる。晡時接骨醫T氏を訪ふ。先週氣ぜはしき日々續きて全身の疲れ甚しければ首肩腕を念入りに揉みてくれたり。稅務署確定申告の還付金早くも送來る。申請額すべて認められたり。夕餉に禮文島產鰈のムニエル、糟倍の煮凍り、鱈の子和へを食す。
夜四更目覺めてより再び眠ること能はず。五時起出づ。窗外橫毆りの吹雪なり。部屋に在りて咖啡を淹れ、サンドイッチと餡麵麭を食しながらNHK總合テレビのニュースを見る。釧路根室網走に暴風雪警報發令中。根室にては風速三十メートルの風吹荒れ宛然眞冬の颱風なり。昨夜泊まりし客室乘務員六七人それ/″\辻自働車にて空港に向ふを見る。六時半ホテルGより無料送迎バスに乘り新千歲空港に行く。所要時間僅十分なり。八時十分全日空七〇二便に乘り千歲を發す。滑走路凍結したれば機體は徐行運轉して離陸に二十分ほど費しぬ。機内にて ThinkPad E145 を用ひて執筆。十時十分中部國際空港到着。曇天。風やゝ寒し。港内雜遝甚し。この日は日曜日にて、かつ開港十周年なりとて全國各地の物產市催され、假設舞臺には琉球の人々唄ひ踊りゐたり。スターバックスの咖啡とドーナツを買ひベンチに小憩す。十一時高速バスに乘り、地下鐵道驛前の眼鏡屋に立寄りて家にかへれば正午なり。セキセイ鸚哥のアサリ君シゞミ君ともに無事健やかなり。留守中錄畫し置きたるBS11藝賓館に桂文治味噌藏、三重テレビ淺草お茶の間寄席に古今亭志ん輔風呂敷、三笑亭茶樂たちきりを聽く。夕餉に糟倍の煮つけ、胡瓜魚の鹽燒を食す。味佳し。
昨夜も睡眠劑エバミール1mgを一錠服して睡りたり。寤むれば五時なり。窗外の闇六時頃より白む。風雪吹きてはまた歇む。風寒からず。旅亭を引拂ひ札幌驛に行く。雪いつか霰となり、ロードヒーティングの步道の上をころ/\と轉がるを見る。頭上に雀の數多集まりてピー/\と元氣よく啼く聲聞ゆ。冬枯れの街路樹を見上げるに、誰が設置せしにや巢箱か餌箱のやうなもの幹の根元に二つあり、雀たちは文字通り欣喜雀躍して出入りしゐるなり。快速エアポートに乘り九時半新千歲空港到着。大雪のため二本ある滑走路の中一本の除雪作業始まりぬ。名古屋行き全日空機七〇四便は定刻より四十五分遲れて離陸する豫定なりと港内放送あり。搭乘待合室にて珈琲を啜りつゝ筆記型電腦を用ひて雜文執筆。暴風雪歇む氣配なく、七〇四便は缺航となりぬ。その他の航空機も次々と缺航す。便の振替手續をせむとて保安檢査塲を出でゝ全日空十六番カウンターに赴くに行列の人長蛇をなし、人々蝟集して見る/\中にフロア全體立錐の餘地もなし。窓口に到達するにはかなりの時間を要するべしと思ひ、咄嗟に筆記型電腦を取出し無料Wi-Fiを用ゐて全日空のサイトに接續し空席情報を閱する。幸にして明朝八時發名古屋行きの便のみ空席あり。時を移さず振替手續をなす。序でに千歲驛近くの旅亭を樂天トラベルにて檢索するに空室ある宿はGホテルたゞ一軒にて禁煙ツインルーム僅數部屋のみなり。已むを得ず卽座に豫約す。今週はさっぽろ雪祭あり本日は土曜日なれば空室なきも怪しむに足らず。正午過ぎ快速エアポートに乘り千歲驛に戾り、驛前のファミリーレストランに晝飯を食す。窗外暴風雪やまず。二時前辻自働車を倩ひGホテルに投宿す。胸に硏修生と書きたる札を下げし受付孃けふはバレンタインデーですからと言ひて余にキットカットのチョコレートを手渡せり。ツインルームなれば一人には廣し。珈琲茶漬を無料にて供する。無料按摩椅子に橫はりて首肩背中を揉ましめガラス張りの壁越しに庭を眺む。雪の積もりし冬枯れの木の枝に鶫二羽來りて、小さなる木の實を啄めり。余かつて大學院修士課程に學びし時、室蘭の實家より東京に歸らむとして千歲空港に赴きしに飛行機空席なく、急遽千歲驛前の安宿に一泊せしことありけり。日誌を讀返すに平成三年八月二十日なり。指を屈すれば早や二十四年の昔とはなれり。黃昏ホテル正面の便利店サンクスに徃き夕食を購ふ。宿に戾るに客室乘務員五六人、操縱士二三人宿泊手續をなしゐたり。初更大浴塲の湯につかり疲れを癒やす。
昨夜は疲勞甚しく、睡眠劑エバミール1mg一錠を服して直に睡に落ちたり。五時四十分起床。窗外漆黑の闇なり。六時過ぎ空忽ち白み初めたり。曇天。無風。旅亭一階ランデブーラウンジにてバイキングの朝飯を喫す。臺灣人の團體旅行客多く、玄關前に觀光バス停まりゐて一行宿を後にせむとす。雪祭りが目當ての旅行なるべし。祭は一昨日終了せしかど、昨日も雪像の解體作業を見物して寫眞を撮影する旅行者尠からず。部屋に戾りNHKラヂオ第一放送に高橋源一郎の出演する「すっぴん!」といふ番組を聞く。正式名稱硏究會著正式名稱大百科といふ本を紹介す。ゴリラの正式名はゴリラ・ゴリラ、ゲジゲジはゲジ(蚰蜒)、コンセントは配線用差込み接續器、T字路は丁字路、フランスパンはパン・オ・トラディショネル、ラヂオは放送無線電話といふ由。十時慈父慈君來室。窗外細かき雪しん/\と振り初めたり。倶に地下鐵道南北線に乘り南平岸驛に出で、白石藻岩通の坂道を登りて平岸靈園に赴き管理事務所に用事を辨ず。雨のごとく濕りし粉雪降りしきるも氣溫は攝氏一度ぐらゐとおぼしく寒からず、宛然彼岸の頃を思はしむ。來路を取り地下鐵道にて札幌驛に出づれば日は亭午なり。雪印パーラー二階に小憩し、フルーツパフェを食す。一時旅亭に戾りて荷物整理。今夕の飛行機にて一足早く名古屋に歸らる慈父慈君を札幌驛改札口に送る。途次地下街エスタ生鮮食料品賣塲に立寄り、糟倍、胡瓜魚、鰈などの鮮魚を買ふ。旅亭にかへれば二時なり。粉雪歇まず。燈刻また久樂に徃き白味噌拉麵と餃子を食す。こくのあるスープ味佳し。その風味嘗て江別市大麻に在りし時のことを思出さしめたり。當時町内に味の銀平といふ拉麵屋ありけり。小中學生の頃この店の味噌拉麵がご馳走なりき。美味なること今に忘れず。慈父慈君の乘られし全日空機降雪のため定刻より一時間二十分遲れて新千歲空港を離陸す。夜三更慈君より無事歸宅の知らせあり。
睡より寤めて枕頭の時計を見るに四時なり。昨夜も睡眠劑を服して眠るを得たり。五時床を出でゝ窗外を眺めるに闇夜はまだ明けず西の空に下弦の月あきらかなり。旅亭一階のレストランにバイキングの朝飯を喫す。今朝も客多く、食べ終はる頃には廣き店内滿席となりぬ。部屋に戾りて執筆。十時慈君來室。十一時半叔父Y眞新しき自家用車にて迎へに來られ、未亡人となりし叔母S宅を倶に訪ねる。橫濱より來られし叔母の妹と相識るを得たり。五人揃ひてサンドイッチの晝飯を食す。一時葬儀社〻員來訪。通夜と葬儀の代金を徵收す。これにて一件落着と思ひしに、社員はなぜか歸社せず居坐り、今後あり得べき葬儀のプランを提示して契約を取りつけむとす。叔父Y激昂して社員に曰く、兄の葬儀は昨日終はりしばかりにて我々遺族は未だ心の整理全くつかざるに次の葬式の準備をせよとは何事か、早く死ねと言はむばかりではないかと。社員平身低頭し、淚聲にて非禮を詫びたり。葬儀社の營業員にとりては人の生死も商賣の種に過ぎず。悲しむべし。三時辭去。叔父慈君と余の三人にて札幌珈琲館に憩ひ談笑す。いつか雪しん/\と音もなく降り始めぬ。五時叔父慈君と余を旅亭に送らる。慈君と倶に久樂に徃き拉麵を食し、宿に戾りて明日の計畫を立てる。
昨夜は睡眠劑エバミール1mgを二錠服して眠るを得たり。蚤起。曇天。無風。建國紀念日、札幌雪祭り最終日、叔父S告別式の日なり。動悸を鎭めるため精神安定劑デパスを服し、ホテル一階ランデブーラウンジにてバイキングの朝餉をなす。宿泊客多し。例年三月に訪れる時は臺灣中國の團體客多かれど今朝は中國語の聲を聞かず。九時前辻自働車を倩ひて父上母上と倶にベルコ北円山ホールに赴く。十時告別式。豐源寺住職の讀經の後、一同棺に花を手向けて叔父に今生の別れを告ぐ。余は叔父に頰ずりして、をぢさん有難う、S子N子の分も有難うと淀みなく言ふつもりなりしが、胸にこみ上げるものありて嗚咽を堪へきれず、淚ながらに頰ずりするのが精一杯にて別れの言葉は途切れ/\になりぬ。正午親族一同バスに乘り手稻の山口齋塲へ徃く。平成十八年設立の眞新しき火葬塲にて、館内廣々として靜かなること一流ホテルの如し。正午棺に別れを告ぐ。二階控室にて辨當の晝餐を食す。從妹Mちやんと會ふを得たり。四十年ぶりくらゐなるべし。また從弟Mとも三四十年ぶりの再會を果せり。二人とも幼き頃と同じ眼差しなり。一時十分骨上げを行ふ。收骨室しづまり返ること水を打ちしが如し。ふたゝびバスに乘らむとて外に出づるに、朝より曇りゐたりし空の雲間より突如日の光燦爛として輝き雪景に映ゆ。恰も叔父Sが天へ昇る道しるべなるが如き心地せり。來路を取りて北円山ホールに戾り、最後の讀經を聞き燒香をなす。三時解散。父上母上と辻自働車を倩ひて旅亭に歸る。かくして通夜は和やかに、告別式は嚴かに執り行はれぬ。余は葬儀を終へて窃に思ふことあり。昨年一月末伯母K他界せられしかど、余は平生右肩の上あたりに伯母の氣配を感ずるなり。叔父Sは本日荼毘に付せられしに、余の心の内には今も猶生き續けるなり。二人の肉體はこの世から消え失せしが魂は依然として余の間近に感ぜらる。則ち人は死してなほ死せず。魂は永遠なり。亡き人を思ふ心のある限り人は不死なり。
蚤起。晴。簡素なる朝飯を食し、セキセイ鸚哥のアサリ君シジミ君に四日分の餌をたつぷりやる。念のためデパスを飮む。父上母上と倶に直行バスに乘り中部國際空港へ徃く。九時半全日空機離陸。滿席なり。機内誌翼の王國に堀越千秋氏の表帋繪を眺め、福岡伸一鹿島茂の隨筆を讀む。十一時十分定刻通り新千歲空港に着陸す。氣溫零下六度なれど風なく雲間より折々日の光雪を照らして存外寒からず。JR驛に赴くに苗穗驛の轉轍機より煙發生して十一時三十三分發の快速エアポートは運休となりぬ。幸にして四十八分發の列車に乘るを得たり。定刻より七分遲れて札幌驛に到着す。穩やかなる日和なり。東急百貨店十階の蕎麦屋東家壽樂に登りて父上母上に晝食を馳走す。二時旅亭に荷物を預け、喪服に着替へてベルコ北円山ホールに行く。叔父Sの通夜なり。叔母Sより昨日臨終の顚末を聞く。昨日晝前餘が叔母に電子郵件を送りて木曜に見舞ひに行きますと報告したるを叔母すかさず讀みて、叔父に雄坊が來るよと告げし直後叔父は呼吸困難に陷りそのまゝ眠るやうに事切れ給ひたりといふ。蒲團に橫はりし叔父の顏を拜む。入院中と同じ穩やかなる表情にて、恰も睡に落ちたるが如し。親戚と雜談する中に湯灌の儀始まれり。手桶に入れし湯を叔父の足下から胸までかけるなり。つゞいて納骨の議を行ひたり。五時通夜。祭壇の遺影は莞爾として微笑む寔によき寫眞なり。眞宗大谷派の僧侶讀經す。親族記念撮影の後一同會食す。從姉Yに三十年ぶりに會ひたり。從弟Tに會ふは四十年ぶりくらゐなるべし。九時父上母上と倶に辭去し、タキシを倩ひて旅亭にかへる。
朝來吹雪。午後札幌の叔父Yより慈君に電話あり、叔父S晝過ぎに身罷りし由を告ぐ。余は恰も今週後半見舞ひに徃くつもりなりしが、遂に間に合はず息を引き取られたり。思へば祖母の命日が二月十九日にて祖父は十二月、叔母Kは一月末に天壽を全うしたり。余は酷寒のこの時節を恨むなり。晡時病院に行き藥を請ふ。
朝來微雨。午後に至つて霽る。NHK總合演藝圖鑑に笑福亭鶴光手水廻しを聽く。Eテレ日本の話藝に柳家さん喬夢の酒を聽く。日暮れてふたゝび雨聲を聽く。夕餉に牡蠣豆腐を食す。食後下痢。昨夜九時東海テレビ土曜プロジェクトにて錄畫せし是枝裕和監督の活動寫眞そして父になるを觀る。福山雅治、尾野眞千子、リヽー・フランキー、眞木よう子の演戲合戰を堪能す。
陰晴定らず。風あたゝかなり。昨夕アマゾンに注文せしバッファロー社のDVD驅動器 DVSM-PC58U2V-BKC 早くも今朝屆きたり。ThinkPad E145 に繫ぎてATOK二〇一五を安裝す。NHKラジオ第一眞打ち競演に古今亭志ん輔二番煎じ聽く。北海道むかわ町(舊鵡川町)にての收錄なれば鍋の具に柳葉魚を登塲せしめ、鍋にて煮るには雌よりも雄がよろしと賣店の賣子に聞きたる話を紹介して滿塲の喝采を浴びたり。
快晴。西北の風强し。昨夜眼鏡をかけしまゝ眠りに落ち、朝目覺めるに眼鏡は背中の下敷きとなり、レンズと蔓を結ぶ鎧に龜裂入りて今にも折れんとす。驛前の眼鏡屋に赴き修繕を依賴す。十時半前德島縣牟岐町にて震度五强の地震あり。ジャストシステム社より屆きしATOK二〇一五を桌上型電腦に安裝す。三省堂國語辭典と三省堂類語新辭典を入手したり。豫測變換の性能著しく向上せり。晡時いつもの溫泉に浴す。三重テレビ淺草お茶の間寄席を見る。三遊亭天どん堀の内は手拔きなり。ロケット団の漫才及第點。柳亭市馬掛取美智也は美聲を以て人を醉はしむ。
陰後に晴。兩三日前より風あたゝかく、あたり全く春めき來りぬ。セキセイ鸚哥のアサリ君余が朝餉のポテトサラダを飽かず啄む。慈君すかさず携帶電話を持來りて寫眞を撮影す。ブルーレイにてワールド・ウォーZを觀る。Zとは何の謂なるやと思へばゾンビのことなり。演出凡庸、全く恐怖を感ぜしめず。監督は黒沢清の爪の垢を煎じて飮むべし。それにしても亞米利加人は何故にゾンビを好むにや。
立春。天氣連日限りなく佳し。午後より薄く曇りて滿月おぼろなり。DVDにてフアン・ソラナス監督の活動寫眞アップサイドダウンを觀る。凡作。ブルーレイにて浅野忠信出演のバトルシップを觀る。愚作。去月三十日に錄畫し置きたるBSプレミアムコントの劇場を見る。田中麗奈好演せしかど脚本おもしろからず。通常四作品を放映するところ此度はなぜか三本のみなり。その代り昨年三月に放映せし笹本玲奈の傑作コント鬼敎官再放送せらる。何度看ても出色の出來なり。
節分。快晴の空拭ふが如し。午下三郷の溫泉に浴す。夕餉に自家製惠方卷を食す。BS11藝賓館に桂小南治の蜆賣りを聽く。昨年家賃滯納のため閉塲せし大須演藝塲の最高顧問に林家三平未亡人海老名香葉子就任し、本年九月二十二日再び開塲するといふ。慶賀すべし。
空は隈なく晴れわたりしが西北の風烈しく寒氣骨に徹す。午下咖啡を煮て和菓子屋大吾の爾比久良を食す。H先生の手土產なり。晡時接骨醫T氏を訪ふ。首の裏、腰骨、脛の囘りを揉ましむ。日暮るゝや寒月皎〻たり。
舊十二月十三日。蚤起。睡眠劑エバミールを服して安眠するを得たり。快晴。イスラム國に捕はれたる後藤健二氏殺害の報道に黯然たり。銀座中央通り人影まばらなり。有樂町より山手線にて東京に出づ。九時新幹線のぞみ號發車。朝日富士の白雪に映ゆ。十一時半家にかへる。晡時札幌より戾られし慈君を地下鐵道驛に出迎ふ。叔母K一周忌の話を聞く。留守中錄畫し置きたる落語を聞く。BS-TBS落語硏究會柳家小滿ん奈良名所は東大寺に始まる名所案内のくだりに入りてより語りに惹きこまれぬ。柳亭市馬試し酒は柳家のお家藝を堪能す。柳家權太樓蜘蛛駕籠の樂しさ言ふばかりなし。三重テレビ淺草お茶の間寄席五街道雲助子ほめは前座噺にもかゝはらず一切手拔きなし。柳家小せん新聞記事面白味にやゝ缺けたり。柳家さん喬家見舞の滑稽まことに佳し。BSフジ落語小僧天派亭来々はさァ/\と繰返す語尾耳障りなり。二度目の出演を果たせし六斎亭空念仏眞田小僧見事なり。口跡明瞭、人物の演じ分けも達者にて、人をして膝を乘り出し傾聽せしむるなり。指南役立川生志元犬は下げに工夫あり。Eテレ日本の話藝三遊亭歌司愛宕山平凡。