曇天。コメダ咖啡店に朝飯を喫す。今朝は珍しく客少し。九枚綴り三千圓の囘數券使ひ切りたれば新たに買求む。縣道田籾線も徃來の車少し。僅に大井橋西交叉點にてやゝ澀滯せしのみ。この交叉點の交通量十年前に比して數倍に增えたるべし。新たにバイパス用の橋を架けるにや、昨年春ごろより橋脚設置工亊始まりしかど、中途半端のまゝ普請は遲々として進まず、時折工亊車兩の出入りするを見ることあれど、亊業は頓挫せしものと見ゆ。一限二限とも通常の授業を行ふ。學生の私語今週は嘘のやうに歇み授業頗る順調に捗るを得たり。六十人にて滿席の敎室は人熅れにて暑し。この日より半袖シャツにて出勤す。午下家にかへりて手紙をしたゝめれば日は忽晡ならむとす。燈ともし頃母上自治會の會合あるを以て車にて市役所に送迎す。役塲西の水田に蛙の鳴くを聞く。運轉席と助手席の窓を開けて聞き耳を立てるに、二三種類の鳴聲交じりたり。
晏起。憂悶すること甚し。記すべき事なし。何事をもなす能はざれば早く寢に就く。
隂。今朝も床を起出づること能はず。漸くのことにて起出づれば十時半なり。午後主治醫を訪ひ胸中を明かす。建設的なる助言を得る。五時ごろ雷雨あり。夜絕食。
目は覺めても身を起こすこと能はず。晏起十一時を過ぐ。半陰半晴。臥蓐に在り。
晴。今は亡きS先生の不快を思ふだに己への不信感に苛まれて生きた心地せず。終日褥中に在り。吉田秀和歿。享年九十八。
輕陰。自責の念に驅らるゝこと甚し。終日困臥。
曇天。一昨日S先生他界せられし旨Nさんより知らせあり。寢耳に水のことゝて心中大に周章狼狽す。余昨年春先生ご夫妻の信賴を失ひ、途方に暮れゐたりしに、突然悲報に接したり。四十年に及ぶ信賴わづか一時間にして潰えたり。とりかへしのつかぬことをしぬ。朝餉の後小雨ふる。午後困臥。
薄く曇りて暑し。コメダ咖啡店にて朝飯を喫することいつもの如し。九時過豐田學舍到着。一限小試驗を行ふ。辭書を持參せざる學生多く、授業遲々として進まず。二限は會話練習をなす。一時半歸家。第十七囘ビエナル・デ・セビーリャに小島章司フラメンコ舞踊團の『ラ・セレスティーナ』招聘參加正式に發表せらる。公演日時九月二十八日午後八時半、劇塲はテアトロ・マエストランサなり。昨二十三日附ラ・バングァルディア紙に小島氏の取材記事を讀む。直後思ひかけず畑中良輔氏の訃報に接す。享年九十。初更三重テレビ淺草お茶間寄席に落語四席を聽く。春風亭一朝初天神、鈴々舍馬風樂屋外傳、春風亭勢朝袈裟御前、柳家喬太郎小町。
輕陰。風絕ゆ。現代戲曲第一作飜譯。何といふわけもなく氣塞ぎて、倦怠感甚しく下半身重し。日課の速步は中止す。裏通の煙草屋に徃き新發賣のマールボロ・ブラック・メンソール・エッジ8を購ふ。マールボロ初のスーパースリム型なり。兩三日前より儉約のためポールモールを吸ひゐたりしが、味よからず、再びマールボロに戾りたり。今曉三時にBS-TBS落語硏究會にて錄畫し置きたる柳家小三治の野ざらしと柳家喬太郎の轉失氣を聽く。
隂。十一時過インターバル速步に出かけむとするに微雨ふり來りし故空しく家にとゞまりぬ。本日より現代戲曲第一作の飜譯を始む。三時いつもの溫泉に徃く。西北の風吹き出で、雨本降りとなる。市立圖書館に立寄りてかへる。
連日薄く曇りて風凉し。今朝七時半ごろ金環日蝕あり。余は八時過に目覺めたり。ロビン・ギブ病歿。享年六十二。三日前ドナ・サマーも鬼籍に入りたり。古典戲曲第五作とりあへず最後まで飜譯し終へたり。添刪すべきところ多し。然れどこのまゝ鹽漬にして、氣分轉換をかねて明日より現代戲曲の飜譯にとりかゝることゝす。黃昏川緣を速步にてあゆむ。
曇りて凉し。飜譯餘事なし。意味不明なる箇所尠からず。大相撲夏塲所千龝樂、稀勢の里把瑠都を土俵際に追ひつめしが上手投げにて敗れ優勝戰線離脫。ともに三敗の栃煌山と旭天鵬による優勝決定戰となりぬ。平幕同士の優勝決定戰は史上初なる由。三十七歲八箇月の巧者旭天鵬叩き込みにて呆氣なく栃煌山を破り、最年長優勝を果す。ジャッキー・チェンこと成龍アクション俳優業引退を表明す。齡旣に五十八を越えたり。余が日本初公開作ドランクモンキー醉拳を活動小屋に見たりしは昭和五十三年、中學生の時なりき。運動能力もさることながら諧謔味あふれる演戲に魅了されたり。以來、蛇拳、クレージーモンキー笑拳、拳精と立續けに見て、聖林デビューの駄作バトルクリーク・ブローにも律儀に附合ひたりき。ブルース・リーがカンフー界に於けるフレッド・アステアならば、ジャッキーはジーン・ケリーなり。椅子上衣など小道具を用いたるアクションは餘人を以て代へ難し。また監督としても奇蹟ミラクルを發表し、こゝに於てもジーン・ケリーに譬ふべきなり。
晴。薰風颯〻たり。夏椿の蕾いつかふくらみたり。セキセイ鸚哥のアサリ君いつものことながらご機嫌麗しく、朝餉の最中にも余と戲るゝこと頻々なり。ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ歿。享年八十六。飜譯日課の如し。けふも筆大に進む。燈ともし頃河畔を步む。十日ぶりのインターバル速步なり。
乍晴乍陰。西北の風吹き狂ひて庭樹轟然たり。戲曲第三幕の飜譯例の如し。午後三時過瀨港線のサークルKに赴き國民健康保險稅を納め、竝びの郵便局より某學會年會費を送金す。三郷ことぶきの湯露天風呂に一浴す。歸途市立圖書館に立寄る。夕刻ふたゝび飜譯。茟大に進む。燈刻T氏來宅、釣果の鷄魚を饋らる。中公クラシックス版コーランⅠを讀む。
輕陰。床より起出でむと試みしが倦怠感甚しく氣分すぐれず。漸くのことにして起出で、コメダ咖啡店に朝飯を喫し、豐田學舍に出勤す。ナンジャモンジャの木の花落盡して新綠滴るが如し。今週より一般動詞の解說を始む。學生全員と個別に西班牙語にて會話したしと思へど、今年度の受講生六十名を超ゆるを以て時間の餘裕なく、已むを得ず二人一組にして會話例文を諳誦せしめ、對話の模擬練習をなさしむ。歸途理髮舖に立寄る。午後戲曲第三幕の飜譯にとりかゝれば夜は忽初更なり。三重テレビ淺草お茶の間寄席に襲名披露興行中の春風亭一之輔があくび指南を聽く。ふざけすぎて感心せず。二更雷雨あり。本年の初夏ほど氣候不順なる時節は罕なるべし。
半陰半晴。朝カルロス・フエンテスの訃あり、一驚を喫す。一昨日エル・パイス紙にて取材記事を讀みたるばかりなり。飜譯餘事なし。とりあへず第二幕を譯出す。心地よからざること殆旬日なり。日課の速步に出かける氣力もなし。午後八時BS日テレの德光和夫のトクセンお寶情報とかいふ番組に柳家小さんの笠碁を聽く。昭和六十一年八月二十四日フジテレビ系花王名人劇塲にて收錄せし高座なり。昨夜九時BSプレミアムにて錄畫せし山田洋次監督の馬鹿まるだしを看る。笑へず。余は馬鹿が戰車でやつてくるを好むなり。
雨。飜譯。午後いつもの溫泉に徃き、露天風呂に一浴して後、主治醫を訪ひ藥を乞ふ。市中の水田ほゞすべて田植終り、稻苗靑くして芝生の如し。晡刻家にかへりて再び飜譯の茟をとる。初更雨やむ。午後三時半にBSプレミアムにて錄畫せし日本の話藝セレクションに三遊亭圓丈の茶金を聽く。臺詞のとちり言淀み頻々、慘澹たる高座なり。午後八時BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に三遊亭窓輝のぞろぞろ、三遊亭萬窓の紀州を聽く。窓輝は二ツ目に毛の生えたる程度なり。萬窓は安心して聽くを得たり。
半陰半晴。飜譯例の如し。夕刻昨日午後三時半よりBSプレミアムにて放送せられし小津安二郎の東京物語を看る。東山千榮子の臨終を暗示する波止塲のショット感動的なり。
天氣牢晴。風始て息む。總合テレビ三遊亭圓歌の演藝圖鑒に三遊亭歌る多が熊の皮を聽く。飜譯日課の如し。解すること能はざる臺詞多し。枕頭桂米朝私の履歷書を讀む。
陰後に晴。兩三日前より旦暮寒氣の凜冽なること彼岸の頃を思はしむ。德利襟のスヱータにジャンパーを羽織りて買物に出づ。烈風けふも吹續きて息まず。飜譯餘亊なし。
氣懈きこと甚し。頭も體も重苦しく頭痛岑々然たり。飜譯苦心慘澹。飜譯は登山に似たり。平坦なる道に安心して步むほどに思ひかけず小石につまづき、身を起こさむと踏ん張るに足を滑らせて膝をすりむくなり。旦暮風冷なり。胃痛。今夜また絕食す。
陰晴定らず。微恙を冒して家を出づ。自動車埃まみれなり。黃砂なるべし。コメダ咖啡店に朝飯を喫して出勤す。授業を終へて外に出づるに東風はげしく庭樹を騷がす。一つ葉たご、通稱ナンジャモンジャの木滿開なり。午後飜譯。茟すゝまざれば姑くにして歇む。初更三重テレビ淺草お茶の間寄席に柳亭市馬が長屋の花見を聽く。心地よからず早く寢に就く。
曇天。飜譯の興至らず怏〻として徒に時間を空費するのみ。午後市立圖書館に行きて後いつもの溫泉に一浴す。夕刻に至りても氣分よからず、靜臥絕食。
晴。午前母上の花粉症療治のため某診療所耳鼻科に徃く。余は同診療所内眼科を受診す。歸途ホームセンター二軒を廻る。午後微恙あり怏々として樂しまず。欝惡化の兆候なり。困臥して、午後一時BSプレミアムにて錄畫せし成瀨巳喜男の浮雲を看る。佛蘭西大統領選擧社會黨フランソワ・オランド辛勝し、十七年ぶりに政權交代す。
雨もよひの空なり。總合テレビ三遊亭圓歌の演藝圖鑒に柳家喜多八のいかけやを聽く。不貞腐れ藝堂に入りたり。十一時前インターバル速步。河畔の水田苗日に/\舒び行けり。微雨に値ふ。晝前T氏來宅、釣果の鷄魚を餽らる。正午を過ぎしころ突如烈風吹起り庭樹騷然たり。直に雨降り來たりしが須臾にして歇む。飜譯日課の如し。解讀すること能はざる臺詞多し。サンデー・ソングブックにプロコル・ハルムの靑い影を聽く。この歌の歌詞何度聽きても意味不明なり。六時半過日沒と同時にふたゝび河岸をあゆむ。十六夜の月屋上に昇るを見る。深紅に染まりて物淒し。つくば市にて龍卷發生、男子中學生落命す。
こどもの日祝日。立夏。十時五分NHKラヂオ第一眞打ち競演に昭和のいる・こいるの漫才、ケーシー高峰の醫學漫談、林家正雀の子は鎹を聽く。十一時過ぎインターバル速步。西南の風嫋〻として暑し。午後飜譯。夕刻榻に臥し、深夜總合テレビにて錄畫し置きたる笑神降臨にU字工事の漫才三題を聽く。末永く活動することを冀ふなり。六時四十一分日沒すると共にふたゝび川緣をあゆむ。東の空に滿月の昇るを見る。いつもより大きく見ゆ。地球に最接近し、他月に比して大きさ一・四倍に增し、スーパームーンと稱せらるゝといふ。十一時三分北電泊原發三號機定期檢査のため發電停止す。國内の原發すべて稼働を止む。
朝の中黑雲天低く埀れこめたりしが午後に及びて靑空廣がりたり。西風吹き狂ひて庭樹轟然たり。みどりの日とかいふ祝日なり。舊天長節なり。戲曲第一幕飜譯。晝前河畔をあゆむ。アベリアの若葉薄綠の金平糖のごとし。對岸にウォーキングの集團西より東へ數珠のごとくあゆむを見る。午後飜譯。日沒するころ再び河畔をあゆむ。暴風やまず。雲間に浮ぶ月皎然たり。幾望の月なり。
雨霽る。日中は薄日さし來りしが次第に黑雲空を覆ひぬ。憲法記念日にて授業は休みなり。十一時過ぎ河畔をあゆむ。西南の風嫋〻たり。戲曲四作目譯了す。譯了とは雖もとりあへず日本語に置換へしのみにて到底鑒賞に堪へず。時間をかけて彫琢するべし。永井永光氏の訃報に接す。荷風先生の養子なり。享年七十九。戲曲五作目の飜譯を始む。晡下橫臥して休憩がてら小津安二郎の活動冩眞お早よう前半を看る。兄弟の愛嬌微笑まし。燈火點ずる頃ふたゝび河畔をあゆむ。西南の風はげしく肌寒し。夕陽燦然たり。枕頭お早よう後半を看る。プラトフホームにての佐田啓二と久我美子の會話感動的なり。
烟雨濛〻。セキセイ鸚哥のシジミ君余の朝飯に胡瓜サラドのあるを認むるや、鳥籠の隙間より嘴を突き出してせがみたれば、箸にて胡瓜をつまみ籠に近づけるに、無我夢中に啄みたり。とりわけ内側の柔らかき部分を好むなり。アサリ君は何故か外側の皮を好むなり。戲曲第三幕の飜譯餘事なし。大團圓を迎へて筆自づと進みたり。晡下榻に臥し、三時半にBSプレミアム日本の話藝セレクションにて錄畫し置きたる三遊亭鳳樂の蒟蒻問答を聽く。初更レイチェル・ワイズ見たさにCBC水曜プレミアシネマにハムナプトラ2を看る。半時ばかりにして眠りに落ちたり。
舊閏三月十一日。未明寐苦しさに睡より覺む。部屋着のまゝ眠りゐたり。昨夜十一時半にBS朝日落語者にて錄畫し置きたる春風亭一之輔の夏どろを聽く。落語への甘え甚しく感心せず。金を拂ひて高座を見たしと思へず。いつか東の空ほのかに空白みかゝりぬ。時計をみるに四時四十八分なり。ふたゝび眠りて七時半床を出づ。曇天。東風吹き狂ふ。昭和の日の振替休日なり。晝前川緣を步む。頭上高く鳧の聲キリヽ、キリヽと耳を打つ。河原鶸の聲ピリヽ、ピリヽと鈴の音のごとし。燕も鳴き出づ。午後飜譯。二時半O市立圖書館に資料を返卻し、ことぶきの湯露天風呂に憇ふ。家にかへりて飜譯。今日も筆進みたり。初更BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に蜃氣樓龍玉の親子酒、隅田川馬石が狸の札を聽く。龍玉は當節稀に見る古風なる味ひの噺家なり。