健康診斷の日なれば蚤く起出づ。曇りて暑し。慈君を伴ひ自動車を運轉して保健センターに赴く。檢査は三十分ばかりにして全て終り、いざ家に歸らむと短パンのポケットを探るに自動車の鍵なし。大いに困却し建物内の一階より三階まで隈なく探るも見當らず、職員にも尋ねしが遺失物の屆出なしといふ。已むを得ず自動車は駐車塲に放置し、名鐵バスに乘りて家にかへる。家内に保管し置きたる豫備の鍵を持ち、Nバスに乘りて再び保健センターに往き、自動車を運轉してかへる。午下センター女性職員より電話あり、紛失せし鍵見つかりましたといふ。安堵し、三度センターに赴きて無事鍵を受取る。老耄憐むべし。歸途農協に立寄り三河安城產の和泉手延冷麥を贖ふ。晡時接骨醫T氏を訪ふ。火ともし頃川淵を步す。この日集團的自衞權の行使容認に反對する市民一萬人首相官邸前に集ひて大規模なる示威運動を行ふ。
蚤起。陰晴定りなし。斎藤晴彦急逝。享年七十三。午前川邊を步す。石の上に龜三匹甲羅干しするを見る。輕鴨四羽。グリフウィキにて斷腸亭日乘の漢字を檢索す。この日午後二時過新宿驛南口の橫斷橋にて初老の男集團的自衞權の行使容認を目論む安倍政權に抗議して燒身自殺を試む。
雨もよひの空なり。正午川緣を步す。輕鴨四羽、川鵜一羽、龜一匹。この日S子の誕辰なり。創元社の米朝落語全集增補改訂版完結と同時に米朝師の妻絹子さん急死す。享年八十八。
舊六月朔。曇天。凉風颯〻。午前川端を步す。輕鴨の親鳥六羽、雛三四羽。燕。けふも江戶繁昌記を讀む。晡時溫泉。湯浴みの客多し。
晴後に陰。咖啡所コメダに朝飯を喫す。豐田學舍に到着するや鶯語を聞く。午前授業。敎室内溽蒸發汗、忽ち襯衣を霑す。午後江戶繁昌記を讀むこと例の如し。
昧爽に睡より寤む。蓐中に在りて蹴球世界杯日本對哥倫比亞戰を看る。例によりて攻めあぐね一對四の大敗を喫す。正午川岸を步す。輕鴨三羽、龜一匹。午後江戶繁昌記を讀む。午前二時頃錄畫せし東海テレビ扇町寄席に桂文三の食通夜、桂南光のちりとてちんを聽く。
陰後に晴。江戶繁昌記を讀む。晡時接骨醫T氏を訪ふ。日暮河畔を步す。釣竿を携へたる親子何やら餌のやうなものを川に投入れたり。窺ひ見るに輕鴨の雛十一羽親鳥に從ひて浮びたり。雛を目擊し得たるは五月八日以來なり。皆大きく育ちて雛と親鳥の中間ぐらゐに育ちぬ。我が喜び限りなし。初更ことぶきの湯に往き露天風呂に浴す。BS11藝賓館に金原亭馬生の茶金を聽く。
乍陰乍晴。午前坡上を步す。輕鴨五羽。龜三匹。精神明瞭ならず。寐つ起きつして日を暮らすのみ。
夜來の雨午に到らずして霽る。氣鬱痊えず。晡時堤上を步す。風濕氣を含みて冷なること昨日の如し。輕鴨三羽。一箇月ぶりに父上母上と夕餉を倶にす。深町幸男歿。享年八十三。
夏至。陰天。風濕氣を含みて冷なり。拂曉錄畫せしBS-TBS落語硏究會に柳家小三治のお茶汲みを聽く。正午綠陰步道を步す。輕鴨一羽天高く飛ぶを見る。樹陰に紫陽花を賞す。寺門靜軒江戶繁昌記を讀むこと日課の如し。幕末頃に山鯨と稱して猪、鹿、兎、水狗、毛狗、子路、九尾羊などを滋養强壯のため食ひたるを知る。夜雨ふる。
八時覺醒。乍陰乍晴。BS1にて蹴球世界杯日本對希臘戰の後半を見る。相手選手一人退塲處分を受けしかど日本は攻めあぐねて零對零の引分けに終りぬ。午前川岸を步す。輕鴨二羽。空氣甚だ乾燥して風心地よし。家にかへりてジェリー・ゴフィンの訃報に接す。享年七十五。晡時ことぶきの湯に往き露天風呂に浴す。稻葉町の水田に小鷺、鳧各一羽を見る。凌霄花今を盛りと咲誇りたり。
睡より寤めて時計を見るに深夜一時なり。ふたゝび眠りて七時起出づ。久振りに旭日を拜む。goo ニュースを一瞥するに蹴球世界杯西班牙對智利の試合は零對二にて西班牙完敗、一次リーグ敗退を報ず。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。學生諸氏と活動寫眞パンズ・ラビリンス後半を看る。薄暮綠陰步道を步す。この日フアン・カルロス一世退位、フェリペ六世卽位す。
細雨糠の如し。書窓黯澹薄暮に似たり。終日江戶繁昌記を讀む。黃昏困臥、そのまゝ睡より覺めず。
曇天。無風。梅雨に入りてより卻て雨なし。窗外河原鶸の聲鈴を振るが如し。午前氣溫の高からざる中に川邊を步す。晡時いつもの溫泉に徃き露天風呂に浴す。歸途圖書館に立寄る。BS11藝賓館に春風亭百榮のキッス硏究會、橘家文左衞門の馬のすを聽く。
半陰半晴。暑し。江戶繁昌記の篦頭舖を讀む。午後接骨醫T氏を訪ふ。二週間ぶりなり。歸途理髮舖に立寄る。American Top 40 の DJ ケイシー・ケイサム歿。享年八十二。晡下困臥。
十時NHK總合に蹴球世界杯日本初戰、科特迪瓦戰を看る。現地伯剌西爾は今日も雨なり。前半本田鮮やかに先制點を挙げしが後半は守勢に囘り、英雄ドログバ途中出塲したる直後、瞬く中に逆轉され一對二にて敗北しぬ。正午川緣を步す。輕鴨二羽。梅の實熟して落つ。BSフジ落語小僧に盲目の門司港亭小もじが代書屋、日向家ひかるが厩火事、柳家權太樓が黃金の大黑を聽く。Eテレ日本の話藝に桂福團治の鼠穴を聽く。心理描寫心に深く沁みたり。
雲多く陰晴定りなし。風强し。エル・パイス紙の一面記事を見るに Un descalabro mundial の見出しを揭げたり。蹴球世界杯西班牙和蘭陀を相手に一對五の大敗を喫す。正午川端を步す。江戶繁昌記を讀むこと日課の如し。混堂の描寫精緻にして諧謔の妙味あり。早く寢に就く。
惡夢を見ること連夜の如し。曇天。西風强し。午後綠陰步道を步む。放水路より川鵜一羽飛立つを見る。晡下ことぶきの湯に徃き露天風呂に浴す。立てたる石を枕に岩盤に寢そべりて汗を流す。初更東の空に赤き滿月の昇るを見る。蹴球世界杯伯剌西爾大會開幕す。初戰伯剌西爾對克羅地亞、三對一にて伯剌西爾勝利。江戶繁昌記の火塲を讀む。火消人足の勇み足、町奉行の塲違ひなる威儀、野次馬の能天氣なる冗談、火事塲の光景眼前に現るの思あらしむ。讀み畢りて適 Ain't It Cool News を一瞥するに、大友克洋が新作短篇映畫火要鎭の豫告篇あり。江戶の火事に取材する作品なり。
鈍色の空なり。朝飯を食さむとて咖啡所コメダに赴くに本日休業の看板を出したり。已むを得ず近所なるべらといふ喫茶店に入る。三方の壁に西洋繪畫を隙間なく掛け、床には燭臺やら噴水やらごて/\と竝べて居心地わろし。天井より冷房裝置の空氣流出で甚だ冷なるを覺えしめ長居すること能はず。九時前豐田學舍に徃く。學生諸氏と活動寫眞パンズ・ラビリンスの前半を鑑賞す。一時半歸家。江戶繁昌記を讀む。晡下困臥一時間ばかり。黃昏川岸を步す。北の空に電光閃き遠雷ひゞく。晚涼水の如し。雲いつか散じて星出づ。幾望の月皎然たり。
空どんよりと曇りて書窗黯澹たり。十時半ごろ雨しと/\降來る。江戶繁昌記を繙讀す。小雨歇みてはまた降る。
惡夢を見る。雨もよひの空なり。早朝戶野目より電話あり、大叔父身罷りしといふ。行年九十七八なるべし。正午河畔を步む。南風强し。精神明瞭ならず。午後主治醫を訪ひ藥を乞ふ。水田に鳧の遠近相應じて啼くを聞く。晡下いつもの溫泉に浴す。舊抑鬱亭界隈を車にて走るに田中といふ布團店いつか癈業し吳服屋となれり先週新裝開店せしアミカに立寄り買物をなす。BS11藝賓館に三遊亭丈二がカフカの虛無僧、三遊亭白鳥がシンデレラ傳說を聽く。
陰晴定らず。朝風凉しきこと連日のごとし。正午坡上を步す。川鵜の水面を蹴りて飛立つを見る。頓挫せし戲曲飜譯のことにつきて監修者と商議し解決策を得る。
半陰半晴。窗外の八ツ手に水をやり書室睡房の塵を掃ふ。NHK總合演藝圖鑑に柳亭市馬が蝦蟇の油を聽く。Eテレ日本の話藝に春風亭小柳枝のねずみを聽く。暮方堤上を步す。電線に椋鳥の大群とまりて囀れり。ヒッチコックの鳥を想起せしむ。南風强し。十一日頃の月雲間に浮ぶ。
陰天。微風濕氣を含みて冷なり。朝飯を食しながら蹴球强化試合日本對贊比亞戰を看る。格下相手に苦戰し四對三にて辛勝す。ヤマト運輸集配所に赴きN子に自家製ジャムなど食料品一凾を送る。歸途便利店に立寄り住民稅を納む。晡時川邊を步す。橋下の小岩に龜一匹あり、旁に川鵜一羽水中に濳りては小魚を漁る。懊惱去らず。
蚤起。曇天。午前ホームセンターに赴きセキセイ鸚哥の混合餌と止り木を購ふ。十一時ごろ家にかへるに大雨沛然たり。一時間ばかりにして歇む。午後雨の晴れ間を窺ひ川緣を步す。濁流岸に溢れむとす。氣懈く頭重苦しく困臥。晡下ことぶきの湯露天風呂に浴す。三重テレビ淺草お茶の間寄席に三遊亭歌る多の初天神、桃月菴白酒の平林、三遊亭歌之介の笑ひが一番を聽く。
蚤起。黑雲天を蔽ふ。咖啡所コメダに朝飯を喫す。午前授業。時刻の表現を講ず。一限終了直後雨沛然として灑ぎ來りしが須臾にして霽る。午後寺門靜軒の江戶繁昌記を讀む。晡時困臥。燈ともし頃雷雨。小止みの後雨車軸を流す如し。半時あまりにして歇む。
雨もよひの空なり。風濕氣を帶びて冷なり。尾州入梅。午下川端を步す。飜譯の感興來らず、茟を秉らむとすれども能はず。懊惱甚し。晡時困臥。
蚤起。朝風爽なり。慈君余が書齋の椅子の座面古びて内なるスポンジ露出するを見て、座面を覆ふ布を繕はる。西班牙國王フアン・カルロス一世退位を表明、長男フェリペ六世に讓位す。午下川岸を步す。南岸の雜草悉く刈取らる。南風强し。家にかへりて小憩の後アルペンに赴き半袖シャツを購ふ。ことぶきの湯露天風呂に浴す。歸途圖書館に立寄る。成島柳北の柳橋新誌を讀む。
蚤起。輕陰。朝風凉し。階前の夏椿一時に花ひらく。午前齒科醫A氏を訪ひ定期檢診を受く。午後接骨醫T氏を訪ふ。
舊五月四日。薄く晴れて炎暑土用中の如し。寒暖計正午攝氏三十二度に昇るを見る。階前なる夏椿の花一輪ひらく。NHK總合演藝圖鑑に春風亭一朝の湯屋番を聽く。嵯峨の屋お室の畧歷を精選版日本國語大辭典にて調べるに東京出身とあり。氏の生年は維新前の文久三年なれば江戶と稱するが正しかるべし。更に廣辭苑及び大辭林によれば下總の人なる由。またヒッチコックの項目には代表作として北北西に進路をとれとあり。これまた北北西に進路を取れの誤りなり。天下の日國にも誤記少からずあるなるべし。晚涼を俟ちて夜初更河畔を步す。河上に蝙蝠の舞ふを見、牛蛙の鳴くを聞く。纎月鎌の如し。