細雨糠の如し。風寒し。窓邊に赤腹一羽來る。
曇りて風なし。ラヂオ關西大爆笑ラヂ關寄席最終囘にて笑福亭三喬の道具屋を聽く。昨年十月二十九日大阪松竹座にて催されし三喬三昧の高座なり。川岸を步す。今朝も男兒釣絲を垂る。櫻樹の梢に鶯頻に鳴く。步みを止めて見上げる老婦人あり。輕鴨五羽。鶫、椋鳥、雉鳩、白鶺鴒、鵯。NHK-FM浪曲十八番にて京山幸枝若の大石と垣見佐内を聽く。午下理髮舖に徃く。
曇天。ラヂオ關西おはやうラヂ關演藝最終囘にてコンチェルトと酒井くにおとおるの漫才を聽く。NHK-FM邦樂のひとゝき再放送にて味見純の長唄春秋と都鳥を聽く。川端を步す。河原鶸の鳴く聲鈴の如し。梅花悉く落つ。輕鴨八羽。NHK-FM邦樂のひとゝき現代邦樂特輯にて石井由希子の海鳴り、玉木宏樹のジャワリ、伊福部昭の日本狂詩曲を聽く。
快晴。邦樂のひとゝき再放送にて藤本昭子の地唄殘月と森田柊山の尺八峰の月を聽く。坡上を步す。川風冷なり。釣絲を垂れる男兒あり。尉鶲。輕鴨五羽。雪柳滿開。ニッポン放送ラヂオビバリー晝ズに柄本明出演す。志村けんと俱に長年演じる藝者コントは成瀨巳喜男の活動寫眞晚菊に着想を得て柄本が發案せしといふ。收錄の際稽古は殆行はずいきなり撮影を始め、緊張すること甚しといふ。東京乾電池の劇團名の由來を語りて曰く、自由劇塲在籍當時西口會館ビル屋上にビアガーデンありき。ベンガルが副業として働きギターを奏して醉客に唄を歌はしめゐたりしところ、演劇人ならばこの假設舞臺にて何か演物を披露したまへと主催者に勸められたり。チャンバラトリオなどのコント隆盛の折から柄本らはコントを演じることゝなしたれど集團名なかりき。東京の語を冒頭に揭げるべしと決めたれど妙案浮ばず。或時主催者が東京乾電池といふ名を提案し、柄本には語呂面白く聞こえ劇團名として採用するに至れりといふ。午後いつもの溫泉に浴す。
晴れたる空に白雲多く浮びて西北の風强し。川岸を步す。鶯語を聞く。輕鴨六羽。繡眼兒一羽。Eテレ日本の話藝にて寶井琴櫻の壺坂靈驗記を聽く。
細雨蕭蕭たり。BS-TBS落語硏究會にて桂文治の位牌屋と古今亭志ん輔の三枚起請を聽く。余は志ん輔の擧措口調につひぞ馴染めず。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて六代目三升家小勝の壺算を聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて五代目笑福亭松鶴の口合根問を聽く。客なきスタヂオにて錄音せしSPレコード盤なり。RSKラヂオサンデー落語にて桂吉弥の風うどんを聽く。昨年八月十五日サンケイホールブリーゼにて催されし米朝一門會の高座なり。番組アナウンサアが吉弥の畧歷を紹介するを聞くに小學生時代は兒童會會長、中學校にては生徒會長をつとめ吹奏樂團に所屬し團長としてフレンチホルンを奏したり。高校時代は蹴球に明け暮れ平成十四年日韓共催世界杯に際しては神戶ウィングスタジアムにて奉仕活動を行ひ產經新聞夕刊紙上短評記事を書きたり。一年間豫備校に通ひて神戶大學に入り落語硏究會主催の新入生歡迎落語會を觀覽して入部、勸誘せし人は一歲年上の現夫人なりしといふ。落硏時代の高座名はフレンチホルンに因みて甲家樂破なり。後に部長をつとめたり。桂吉朝に弟子入りを志願せしが斷られ、猶も樂屋に通ひ詰めて身支度の手傳ひをするうち見習ひとして認められ、平成六年十一月入門を許されたり。入門後一箇月にして早くも高座にあがりぬ。NHK-FM日曜喫茶室最終囘を聽く。常連客安野光雅池内紀轡田隆史荻野アンナ集ひて番組を囘顧す。轡田氏憧れのハワイ航路を替歌にしてはかま滿緖と番組に惜別の情を示す。余は昭和五十二年四月十日に放送始まりし當初より好みてこの番組を聞きたりき。日曜の晝下り咖啡を啜りつゝ各界紳士淑女の雜談に耳を傾けゝり。二時アットエフエム山下達郎サンデー・ソングブックを聽く。來週はチャック・ベリー追悼特輯を組み主要歌曲をノンストップにて放送するといふ。NHK總合テレビにて大相撲三月塲所千秋樂を見物す。手負ひの稀勢の里右腕一本にて照ノ富士を二番續けて倒し逆轉優勝を果しぬ。大阪府立體育館内割れんばかりの喝采に包まれたり。TBSらんまんラヂオ寄席本年度最終囘にてナイツの漫才私は誰、ねづゝちの漫談たくさんうまいこと、昔昔亭桃太郎のお見合ひ中を聽く。雨夜に入りていよ/\ふりまさりぬ。
曇天。湯婆子を用ゐずに眠るを得たり。BS-TBS落語硏究會にて入船亭扇辰が三井の大黑を聽く。河畔を步す。風連日寒し。白木蓮滿開。輕鴨九羽。NHK-FM邦樂百番にてNHK邦樂技能者育成會同窓會が演奏する二種の三絃の爲のソナタ〔藤井凡大作曲〕、和樂器のための三重奏曲〔小山清茂作曲〕、山陰民謠による組曲〔牧野由多可作曲〕を聽く。東京かわら版四月號に桃月庵白酒の取材記事を讀む。晡時T氏來訪。釣果の鰺を饋らる。TBSラヂオ話話話藝最終囘にて春風亭一之輔の初天神を聽く。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて昔昔亭桃太郎の勘定板と山遊亭金太郎の死神を聽く。
晴。西北の風吹き荒れて寒きこと晚冬の如し。坡上を步す。鶯語を聞く。たど/\しき鳴聲なり。梅花ほゞ落盡しぬ。繡眼兒五六羽、輕鴨六羽。午後ことぶきの湯に浴す。强風終日息まず。此日セキセイ鸚哥のアサリ君余の指先にとまること頻なり。
曇りて暗し。ラヂオ關西ラヂ關寄席にて森乃福郎が算段の平兵衞を聽く。NHKラヂオ第一にて籠池泰典の參議院豫算委員會證人喚問中繼を聞く。安倍昭惠を通じて安倍晉三より寄付金百萬圓を受取りたりと證言す。川緣を步す。輕鴨六羽。北風甚冷なり。書齋底冷えして未だオイルヒーターを手放せず。午後困臥。
薄晴。ラヂオ關西おはやうラヂ關演藝にてチキチキジョニーと三吾美ユルの漫才を聽く。堤上を步す。北風吹きて寒し。輕鴨三羽。川の中程に潛望鏡の如き川鵜の頸突出でゝ直に羽ばたき水面を嘗めるが如く川下へ飛去れり。NHK-FM邦樂のひとゝき琵琶特輯にて辻山錦篁の船辨慶と吉永鶴奏の城山を聽く。BS日テレ笑點特大號にて手賀沼ジュンの囘文演歌とジャイアントジャイアンの漫才を聞く。
春雨瀟瀟たり。NHK-FM邦樂のひとゝき端唄特輯にて新水千豐の粹な浮世、有明、佃流し、さいこどん節、日本橋栄華が紀伊の國、靑柳、運動甚句、新橋千代菊が草の芽、白酒、きんらい節を聽く。午後いつもの溫泉に浴す。歸途主治醫を訪ひ藥を請ふ。BS日テレ笑點火曜なつかし版にて横山ホットブラザーズの歌謠漫才〔二〇〇七年三月四日〕とだいたひかるの漫談〔同年同月十一日〕を聽く。
春分。薄く曇りて風なく靜なる日なり。川端を步す。輕鴨七羽、繡眼兒一羽。NHK-FM邦樂のひとゝき吟詠特輯にて大木岳扇が春の夜のと鍾山卽事、清水錦洲の春雨のと親を夢む、菊野櫻山の春行して興を寄すと芙蓉樓にて辛漸を送る、大澤雅翠の偶成と石鎚山、藤原光伶子の事に感ずと山中幽人と對酌す、宇井修光の寧樂懷古を聽く。朝日新聞に高橋源一郎の大學論を讀む。敎師は何も敎へること能はず、學ぶ者は自ら學ぶ外なし、大學は社會と一體化するべからず、社會の主流とは異なる選擇肢を示すべしとの主張余も大に首肯するなり。午後ペポニに赴きセキセイ鸚哥のペレットを購ふ。買物客多し。セキセイ鸚哥大量入荷。一羽二千九百八十圓のところ特價千九百八十圓にて販賣中との貼紙あり。夜七時アットエフエム民放ラヂオ百一局特別番組WE LOVE RADIO!にて山下達郎と星野源の放談を聞く。達郎は幼き頃ラヂオにて專ら浪曲落語映畫音樂を聽きたりき。星野源はTBSのコサキンDEワ~オなり。星野が選びし思ひ出の曲は阪神オマリー選手が歌ふ六甲颪、達郎はP盤アワーにて聽きしヤング・ラスカルズのGood Lovin'なり。BS11柳家喬太郎のイレブン寄席にて桂米助の野球寢床、U字工事の漫才、三遊亭小遊三の金は廻るを聽く。
輕陰。北風吹きて寒し。チャック・ベリー歿。行年九十。NHK總合演藝圖鑑にて中川家の漫才と林家正藏の新聞記事を聽く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて春風亭柳昇の結婚式風景を聽く。昭和五十六年十月十九日日比谷藝術座にて收錄せし高座なり。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて桂小春團治が日本の奇祭を聽く。RSKラヂオサンデー落語にて桂米朝の鹿政談を聽く。本日命日。平成十七年七月十七日サンケイホールの高座なり。つゞけて桂歌之助の道具屋を聽く。川岸を步す。今朝も鶯語を聞く。輕鴨六羽、繡眼兒一羽、尉鶲の雌一羽、鶫、白鶺鴒、椋鳥、河原鶸、鴉、雀。Eテレ日本の話藝にて桂雀三郎の三十石を聽く。中京テレビ笑點にてケーシー高峰の醫學漫談を聽く。大喜利の好樂昇太が司會になりてより初て座布團十枚を獲たり。TBSらんまんラジオ寄席にて古今亭文菊が馬のす、母心の漫才カブキーランド、入船亭扇遊の人形買ひを聽く。嬉しき顏付なり。文菊の口調ところ/″\志ん朝を想起せしむ。母心の歌舞伎ネタいつ聞きても樂し。
晴後に陰。風やゝ冷なり。NHKラヂオ第一眞打競演におぼんこぼんの漫才、柳家紫文の三味線漫談、金原亭馬生の死神を聽く。死神の呪文はアジャラカモクレンエヌエッチケーなり。川の畔を步す。雪柳の花ひらく。藪に鶯と繡眼兒見ゆ。輕鴨五羽。NHK-FM邦樂百番にて砂崎知子が嵯峨の秋〔菊末勾當作曲〕、秋の初風〔宮城道雄作曲〕、祭の太鼓〔宮城道雄作曲〕、富士讚歌〔砂崎知子作詞作曲〕を聽く。規則正しき律動合唱の和音いかにも西洋的なり。TBSラヂオ話話話藝にて林家つる子のスライダー課長を聽く。銀杏亭魚折が創作せし新作落語なり。つる子の低き聲耳に快し。BS朝日お笑ひ演藝館にてねづゝちの漫談と松村邦洋の物眞似を聽く。
快晴。彼岸の入なれど朝風寒し。NHK-FMセッション二〇〇七にて谷口英治NEWカルテットの演奏を聽く。クラリネット谷口英治、ピアノ田窪寛之、ベース楠井五月、ドラムス岡田朋之。
川邊を步す。白木蓮の花咲き櫻の蕾もふくらみたり。櫻樹の枝に頭は茶色羽は灰色の小鳥一羽見ゆ。大きさは鵯くらゐなり。一目見て白腹なるべしと思ひしかど白腹は頭灰色羽茶色なれば色違ひなり。鶫なる歟。輕鴨八羽。椋鳥、鵯、土鳩、雀は數ふるに遑なし。午後ことぶきの湯に浴す。
曇天。旅亭のレストランにて朝飯を喫す。支那人團體客去りて漸く穩やかに食事をなし得たり。冷たき朝風肌に心地よし。快速エアポートに乘り札幌驛停車塲を發す。車窓より開拓百年紀念塔を望む。九時半新千歲空港に着す。AIR DOと全日空の共同運航便に乘る。乘客九割ぐらゐなり。音樂を聽きながらうつら/\するほどに中部國際空港に着陸す。天氣牢晴。風思の外寒し。高速バスと路線バスを乘繼ぎて家にかへれば三時なり。ラヂオ關西ラヂ關寄席にて桂福車のねずみを聽く。BS日テレ笑點月曜なつかし版にて綾小路きみまろの漫談〔平成十四年十一月十七日放送〕と大木こだまひゞきの漫才〔同年同月二十四日放送〕を聽く。BS11柳家喬太郎のイレブン寄席にて三遊亭天どんの反對俥、ナイツの漫才、春風亭一之輔が加賀の千代を聽く。BS12ミッドナイト寄席にて三遊亭樂大の間拔け泥、一龍斎貞弥が仙臺の鬼夫婦、昔昔亭A太郎の面會を聽く。
薄晴。日の光はうらゝかなれど寒風骨に徹す。旅亭一階のレストランにてバイキングの朝飯を喫す。今朝も客多し。大半は支那人なり。NHK-FMクラシックカフェにてデュリュフレ作曲レクイエム作品九番を聽く。メゾ・ソプラノはテレサ・ベルガンサ、バリトンはジョゼ・ファン・ダム、オルガンはフィリップ・コルボ、コロンヌ管弦樂團と合唱團、指揮ミシェル・コルボ。續けてフランク作曲交響曲ニ短調を聽く。佛蘭西國立放送管弦樂團、指揮ジャン・マルティノン。ラヂオ關西おはやうラジ關演藝を聞く。ナオユキの漫談駄目なをつさんと草臥れたるスナックマヽの觀察記錄目のつけ所よし。ミヤ蝶美蝶子の漫才師匠ミヤコ蝶々の話藝髣髴たり。邦樂のひとゝきにて一中節邯鄲を聽く。淨瑠璃宇治はる宇治きぬ宇治はん、三味線宇治をと宇治とく宇治し乃。札幌驛地下の冨士屋に徃きとうまんを購ひ、驛西口の四季彩館にてマルセイバターサンドとわかさいもを買ふ。ツイッターにて高橋源一郎による敎育敕語現代語譯を讀む。
はい、天皇です。よろしく。ぼくがふだん考えていることをいまから言うのでしっかり聞いてください。もともとこの国は、ぼくたち天皇家の祖先が作ったものなんです。知ってました? とにかく、ぼくたちの祖先は代々、みんな実に立派で素晴らしい徳の持ち主ばかりでしたね。きみたち国民は、いま、そのパーフェクトに素晴らしいぼくたち天皇家の臣下であるわけです。そこのところを忘れてはいけませんよ。その上で言いますけど、きみたち国民は、長い間、臣下としては主君に忠誠を尽くし、子どもとしては親に孝行をしてきたわけです。その点に関しては、一人の例外もなくね。その歴史こそ、この国の根本であり、素晴らしいところなんですよ。そういうわけですから、教育の原理もそこに置かなきゃなりません。きみたち天皇家の臣下である国民は、それを前提にした上で、父母を敬い、兄弟は仲良くし、夫婦は喧嘩しないこと。そして、友だちは信じ合い、何をするにも慎み深く、博愛精神を持ち、勉強し、仕事のやり方を習い、そのことによって智能をさらに上の段階に押し上げ、徳と才能をさらに立派なものにし、なにより、公共の利益と社会の為になることを第一に考えるような人間にならなくちゃなりません。もちろんのことだけれど、ぼくが制定した憲法を大切にして、法律をやぶるようなことは絶対しちゃいけません。よろしいですか。さて、その上で、いったん何かが起こったら、いや、はっきりいうと、戦争が起こったりしたら、勇気を持ち、公のために奉仕してください。というか、永遠に続くぼくたち天皇家を護るために戦争に行ってください。それが正義であり「人としての正しい道」なんです。そのことは、きみたちが、ただ単にぼくの忠実な臣下であることを証明するだけでなく、きみたちの祖先が同じように忠誠を誓っていたことを讃えることにもなるんです。いままで述べたことはどれも、ぼくたち天皇家の偉大な祖先が残してくれた素晴らしい教訓であり、その子孫であるぼくも臣下であるきみたち国民も、共に守っていかなければならないことであり、あらゆる時代を通じ、世界中どこに行っても通用する、絶対に間違いの無い「真理」なんです。そういうわけで、ぼくも、きみたち天皇家の臣下である国民も、そのことを決して忘れず、みんな心を一つにして、そのことを実践していこうじゃありませんか。以上! 明治二十三年十月三十日 天皇
隂。無風。寒氣甚しからず。旅亭一階のレストランにてバイキングの朝餉を喫す。支那人宿泊客夥しく雜遝す。NHK-FM邦樂のひとゝきにて杵屋佐之隆の長唄伊勢參宮と末廣がりを聽きつゝ執筆す。晡時四丁目プラザ前より市電白き新型車輌に乘りて叔母S宅に赴く。款語二時間半。燈刻叔父Y來りて叔父の運轉する車にて南一條西一丁目札幌シャンテ四階に徃き梅の花にて晚餐をなす。諧語時の移るを㤀る。旅亭にかへれば夜は三更にならむとす。
空どんよりと曇りて暗し。NHKラヂオ深夜便話藝百選にて三遊亭笑遊が强飯の女郞買ひを聽く。九時半高速乘合自働車に乘りて中部國際空港に徃く。四階飮食店街の木製ベンチに小憩す。正午全日空七〇七便離陸。乘客少なく三割程度なり。機内誌翼の王國表紙の意匠西本志帆といふ人に變りぬ。前任の堀越千秋さん昨秋鬼籍に入りて今はこの世になし。悲しむべし。ラヂオの全日空寄席にて三遊亭遊馬の牛ほめと瀧川鯉昇の蕎麦處ベートーベンを聽く。昨年十月三十日イヽノホールにて收錄せし高座なり。二時新千歲空港着陸。空は穩やかに晴れて雪多し。快速エアポートに乘りて千歲を發す。惠庭より北廣島にかけて廣がる雪原と白樺を見るにつけ余は故郷に歸り來たる心地するなり。三時前札幌驛停車塲に着す。旅亭に荷を解く。急を要する原稾執筆の依賴あり。直に茟を執る。迂闊にもドグマチールとウインタミン持參し忘れたり。アナフラニールとソラナックス、レメロンは携へ來りしかば大事には至らざるべし。老耄の至れるを歎ずるのみ。
隂。NHK總合林家正藏の演藝圖鑑にてハマカーンの漫才と立川生志の反對俥を聽く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて古今亭志ん生が狸の鯉を聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて月亭文都がユキさまの拔け穴を聽く。北野勇作が創作せし眞田幸村愛好家をめぐる新作落語なり。河畔を步す。薄く晴れて暖かなり。輕鴨一羽。RSKラヂオサンデー落語にて桂米團治の親子茶屋を聽く。晡時乘合自働車と地下鐵道を乘繼ぎて榮に出で愛知縣藝術劇塲地下二階なる稽古室に赴く。三遊亭歌武藏獨演會なり。獨演會とは銘打てどこの催しは每年客演の噺家二名を招くなり。開口一番スーダラ節の出囃子に乘りて三遊亭美るく登塲す。三遊亭歌る多の弟子なり。徒に長きマクラの後シンデレラ傳說を語る。三遊亭白鳥の新作落語なり。歌武藏一席目はマクラもそこ/\に大工調べを語る。與太郞の間拔けぶりと棟梁の啖呵を堪能す。笑福亭仁昇三人無筆を語る。余はこの噺を聽くは今夕が初てなり。中入後歌武藏試し酒を語る。久造一杯目の吞みぶり人をして呵々大笑せしむ。巨漢の歌武藏ならではの演技なり。噺を終へて高座を降りても拍手鳴りやまず。七時前家にかへる。Eテレ日本の話藝にて柳亭市馬が粗忽の使者を聽く。十八番なり。TBSラヂオらんまんラヂオ寄席にておぼんこぼんの漫才、ケーシー高峰の醫學漫談、桂歌春の强情灸を聽く。
空は澄みわたりたれど朔風吹きすさみて寒さ甚し。辛卯の震災六周年なり。坡上を步す。今年始めて鶯の鳴くを聞く。輕鴨九羽、山雀、白鶺鴒、土鳩。NHKラヂオ第一眞打競演にチャーリーカンパニーのコント勿體ない、エド山口のギター漫談カラオケ歌唱法、三遊亭遊雀の堪忍袋を聽く。收錄地福岡縣中間市は遊雀祖父の故郷なりといふ。梅干と澤庵漬を巡る夫婦喧嘩描くが如し。遊雀の滑稽噺は安心して聽けるなり。NHK-FM邦樂百番にて豊竹咲太夫が義太夫一谷嫩軍記脇ヶ濱寶引の段を聽く。三味線鶴澤燕三。電腦にて用ゐる音樂再生機f4b24を癈して十一年ぶりにてfoobar2000に變更す。けだし周波數特性加工調整が便利なるが故なり。TBSラヂオ話話話藝にて柳家わさびのぞろぞろを聽く。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて春風亭柳太郎の怪談家族、神田京子の講談カルメン、三笑亭夢太朗の佐野山を聽く。BS朝日お笑ひ演藝館にてハマカーン、テンダラー、宮川大助花子、ニッチェ、タイムマシーン3號の漫才を聽く。幾望の月皎然たり。
曇天。北風强く眞冬の如し。NHKラヂオ第一すつぴん!にて高橋源一郎が源ちやんのゲンダイ國語を聞く。橋本治著百人一首がよくわかる紹介せらる。
ちはやふる神代も聞かず龍田川からくれなゐに水くゝるとは
ミラクルな神代にもない龍田川こんな眞っ赤に水を染めるか逢ふことの絕えてしなくはなかゝに人をも身をも恨みざらまし
セックスがこの世になければ絶対にこんなにイラ/\しないだらうさ忘れじの行く末までは難ければ今日を限りの命ともがな
忘れないいつ/\までもは嘘だから今日で終はりの命にしたい恨みわびほさぬ袖だにあるものを戀に朽ちなむ名こそ惜しけれ
恨み泣き乾かぬ袖はまだいゝの戀に負けてくわたしがやなの夜もすがら物思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり
一晩中悶える夜は暗いままベッドの向こうに無情があるわ玉の緖よ絕えなば絕えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする
ネックレス切れてもいゝのよこのまゝぢや心もそのうちはじけて消えさう忘れじの行く末までは難ければ今日を限りの命ともがな
スポーツニッポンの記事によるに土屋アンナ出演舞臺中止損害賠償訴訟にて勝訴確定す。祝福せずんばあらず。堤上を步す。輕鴨三羽、背黑鶺鴒一羽。岸邊に譜面臺を据えアコーディオンを奏する女あり。家にかへるや驟雨灑ぎ來りしが須臾にして霽る。午後ことぶきの湯に浴す。歸途紳士服店に立寄り腰帶を購ふ。
薄く曇りて寒氣依然たり。ラヂオ關西ラヂ關寄席にて笑福亭遊喬の尻餠を聽く。川の畔を步す。輕鴨五羽。NHK-FM邦樂のひとゝきにて房前智光作五代目天中軒雲月が浪曲若き日の小村壽太郞を聽く。曲師沢村豊子。午後髮を理す。
半陰半晴。寒氣嚴冬の如し。ラヂオ關西おはやうラヂ關演藝にてアルミカンと海原はるかかなたの漫才を聽く。週刊讀書人ウェブにて日本批評大全刊行紀念柄谷行人と渡部直己の對談を讀む。近世日本文學の起源に關する柄谷の論考興味深し。國木田獨步以前の文學は中世古代文學に非ず近世文學にして、海外卽ち中國の文學が移入され上田秋成らが反應して生れたるなり。日本の近世文學は中國の白話小說と格鬪して生れたり。本居宣長が大和心として持上る源氏物語は日本獨自のものには非ず。紫式部は司馬遷を愛讀し、史記の如き歷史を書かむと欲したりけり。漢語は一切用ゐざれど司馬遷の心持に凭つて執筆したりき。河畔を步す。輕鴨七羽、繡眼兒。NHK-FM邦樂のひとゝきにて淸元お染を聽く。淨瑠璃清元延志寿子清元延明寿清元延志佐枝、三味線清元延志佐清元延亜希郎、上調子清元延志佐典。BS12ミッドナイト寄席に春風亭一藏が猫と金魚、初音家佐吉の無精床、笑福亭羽光の私小說落語靑春篇二を聽く。一藏は上つ調子の擧措粗忽者の番頭と寅の造形に似つかはし。佐吉は長く伸ばしたる揉上げにリーゼントの髮型異樣なれど語りは實直なり。羽光はいかにも鶴光の弟子らしき艷笑噺を淡々と語りて妙味あり。
曇天。北風吹きて餘寒料峭たり。午前川岸を步す。輕鴨六羽、百舌のつがひ。白腹。NHK-FM邦樂のひとゝきにて長唄鷺娘を聽く。唄杵屋長四郎杵屋佐喜杵屋喜三郎、三味線杵屋巳太郎今藤龍市郎杵屋巳佐。精選版日本國語大辭典第二版にて鷺娘を閱するに作曲者の氏名に誤記を二つ見つけたり。辭書には杵屋忠次とあれど正しくは杵屋忠次郎なり。また富士田吉次は冨士田吉次の誤りなり。午後いつもの溫泉に浴す。疎雨。歸途主治醫を訪ひ藥を乞ふ。雨は見る/\中に吹雪となりぬ。
隂。書窓黯澹たり。腦内ジュークボックスにてマイケル・ジャクソンのDon't Stop 'Til You Get Enough、Rock with You、Working Day and Night、Get on the Floor、Off the Wallを再生しつゝ川岸を步むこと日課の如し。川鵜一羽川面を撫でるが如く川下より川上へ飛び行くを見る。輕鴨二十三羽。背黑鶺鴒、白鶺鴒、椋鳥、雉鳩、土鳩、鵯、雀。NHK-FM邦樂のひとゝきにて今井勉の地唄今小町と箏曲山櫻を聽く。午後ことぶきの湯に浴す。歸途カーラヂオのNHK-FMクラシックカフェにてリヽー・ラスキーヌとマリエル・ノルマンが演奏するペトリーニ作曲の竪琴二重奏曲第二番を聽く。BS12出張!ミッドナイト寄席にて雷門音助ののめる、三遊亭とむの都々逸親子、林家たこ平の狸札を聽く。一月の再放送なり。
薄晴。NHK總合林家正藏の演藝圖鑑にて三遊亭笑遊が蝦蟇の油を聽く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて六代目三升家小勝の彌次郞を聽く。昭和三十九年九月四日TBSラヂオ落語名人會の音源なり。サンケイスポーツの記事によるに十五日放送のフジテレビ志村けんのだいじようぶだあ特番にてザ・ドリフターズの四人揃ひてコント三篇を披露すると云ふ。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて桂あやめが新作落語後妻業のお千代を聽く。二月八日朝日生命ホールにて收錄せし新世紀落語の會の高座なり。あやめは同世代の女の生態を描かしむれば右に出る者なし。RSKラヂオサンデー落語にて桂鹽鯛の試し酒を聽く。冒頭にてアナウンサアが畧歷を紹介するを聞くに鹽鯛は明治初期の噺家桂文團治の綽名なりしが後に正式に鹽鯛を名乘る噺家現れて明治大正の名跡となれり。當代は四代目なり。落語家になりたしとて大學を中退し昭和五十二年正月桂朝丸(現桂ざこば)に入門す。入門はすんなりとは決まらず。當初米朝に入門を申出でしに住込の弟子多かりし故に斷られ、枝雀の門を叩きしが米朝同樣弟子旣にありしを以て斷られぬ。當時ラヂオ番組の司會を務めゐたりし朝丸を放送局にて出待ちして弟子入りを志願したれど朝丸當時弱冠二十九歲の若さにて斷られたり。然りとて噺家になる夢は諦めきれず朝丸に懇願せしところ朝丸米朝に相談し、米朝これを聞きて朝丸の弟子やけど稽古はわしがつけてやると鶴の一聲を發してめでたく朝丸の弟子となりたり。午前川邊を步す。輕鴨十羽。尉鶲の牝一羽。先週聞きそびれしアットエフエム山下達郎サンデー・ソングブック珍盤奇盤特輯をラジコタイムフリーにて聞く。曲目を茲に記し置く。
赤く赤くハートが / ザ・レンジャーズ
太陽に抱かれたい / ジョニー広瀬
The Dock of the Bay / ボルテイジ
The Okeh Laughing Record / Unknown Artists
山下氏の談にアローン・アゲインとスターウォーズのテーマにて太鼓を叩くは村上ポンタ秀一なりといふ。これらの樂曲は作詞家も歌手も大眞面目に制作したり。眞面目なるが故に人をして捧腹絕倒せしむるなり。アットエフエムに本日のサンデー・ソングブックかまやつひろし追悼特輯を聽く。ロックンロール系の選曲なり。
Eテレ日本の話藝にて瀧川鯉昇が茶の湯を聽く。豆腐屋鳶頭手習ひの師匠三人の引越騷動に時間を割きたり。NHKラヂオ第一上方演藝會にてプラスマイナスと酒井くにおとおるの漫才を聽く。二時頃よりTweetDeck突如ログインすること能はず。已むを得ずウインドウズ版Janetterを用ゐてタイムラインを閱覽す。晡下TweetDeck復舊せり。TBSラヂオらんまんラヂオ寄席にてU字工事の漫才燒鳥、江戶家小猫の動物物眞似、三遊亭遊雀が熊の皮を聽く。半月朦朧たり。
陰後に晴。無風。NHKラヂオ第一眞打競演に東京太ゆめ子の漫才、大瀬ゆめじの漫談、瀧川鯉昇の千早振るを聽く。鯉昇の千早振るは南千住のスナックにて女にふられし關取が蒙古に歸り家業の豆腐屋に精を出すなり。水くゞるとはのとはは豆腐の蒙古語訛りといふ。午前堤上を步す。河原鶸の鳴く聲鈴のごとし。輕鴨十二羽。NHK-FM邦樂百番にて千代田檢校作曲藤井千代賀唄三絃の竹生島と五月雨、友渕のりえ唄琴遠妻のと三絃サンショノセイ節考を聽く。TBSラヂオ話話話藝にて笑福亭べ瓶が新作落語讀書の時間を聽く。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて東生亭世樂が看板のピン、桂文治の時そばを聽く。文治マクラにて二階席に文京區立第九中學校の生徒見物に來て居り蕎麦の噺を注文されしかばとて時そばを語りぬ。
快晴。日の光はうらゝかなるに西北の風烈しく餘寒なほ嚴し。タモリ日本放送協會放送文化賞を受賞す。午前川端を步す。放水路の河口に小鷺一羽小魚を狙ふ。輕鴨六羽。繡眼兒二羽。尉鶲の牡川原より飛來りて道路に立ちぴょこ/\とお辭儀す。午後カーラヂオのNHK-FM歌謠スクランブルにて忌野清志郎&2・3'Sパヽの手の歌、浜田省吾I am a father、Superfly愛をこめて花束をを聽きつゝことぶきの湯に徃きシルク風呂にて不感溫度浴をなす。烈風終日歇まず。此日雛祭なり。夕餉に鰻入りちらし壽司と蛤の吸物を食す。六日頃の月あきらかなり。
春雨空濛。かまやつひろし歿。行年七八。ゴロワーズを吸つたことがあるかいを聽きて追悼す。
舊二月四日。曇天。無風。ラヂオ關西おはやうラヂ關演藝にてパンドラと横山たかしひろしの漫才を聽く。午前河岸を步す。輕鴨十二羽、繡眼兒三羽、河原鶸、椋鳥、鵯、土鳩。正午齒科醫A氏を訪ひ定期檢診を受く。途次尉鶲の牡一羽眼前を飛びたり。NHK-FM邦樂のひとゝきにて竹本越京の義太夫傾城戀飛脚~新口村の段~を聽く。夕刻より雨ふる。晡下乘合自働車に乘り驛に出で料理屋に飰す。地下鐵道に乘りて榮に出でゝ中電ホールに赴く。柳家三三桂吉弥ふたり會なり。開口一番吉弥の弟子桂弥太郎轉失氣を語りて塲内の雰圍氣を溫める。吉弥一席目は米朝の作りし噺を聞いて貰ひますと挨拶して一文笛を語りぬ。余はこの噺を生の高座にて聽くは今宵が始めてなれば嬉しさ限りなし。三三登塲して一禮し、吉弥は傳家の寶刀を拔きたり、今夕はこれにてお開きにしてもよかるべしと云ひて一席目高砂やを語る。中入後三三雛祭の出囃子に合せて登塲し講釋ネタの魚屋本多を語る。余は寶井琴梅の魚屋本多出生談を聽きしことあるのみなればこれまた欣喜に堪へず。トリの吉弥靑菜を語る。地下鐵道と乘合自働車を乘繼ぎて家にかへれば夜は二更なり。