微雨降りてはまた歇む。餘寒亦嚴し。午前雨の降りそまざるを幸にけふも東山公園テニスセンターにてサーヴを練習す。午下いとうせいこうの日錄を讀み、電氣用品安全法に對する署名運動あるを知る。呼掛け人代表坂本龍一松武秀樹椎名和夫。本年四月より安全確認マークなき音響機器の製造販賣を禁ずる法律にして對象製品は電氣樂器、錄音機器、ラヂオ、テープレコーダー、ビデオデッキなど電源トランスを内藏する製品全てに及ぶといふ。然らば余が愛用のサンスイ社製增幅器、ヤマハ社製チューナー、東芝社製ビデオデッキなども中古屋に賣ること能はざらむ。音樂家の蒙る不利益尠からざるべし。直に署名す。午後春公演の案内狀作成。ジャストシステムよりATOK2006屆きたれば直に大修館名鏡國語辭典と共に安裝す。デニス・ウィーバー歿。享年八十一。新潮新書の累計部數壹千萬部を超ゆ。養老孟司バカの壁四百壹拾萬部、藤原正彦國家の品格八拾壹萬部、養老孟司死の壁七拾萬五千部。去年の書籍賣上十傑をこゝに記す。統計は日販なり。
樋口裕一 | 頭がいい人、惡い人の話し方 | PHP硏究處 |
香峯子抄 | 主婦の友社 | |
山田真哉 | さおだけ屋はなぜ潰れないのか? | 光文社 |
池田大作 | 新、人間革命14 | 聖敎新聞社 |
岡村久道、鈴木正朝 | これだけは知つておきたい個人情報保護 | 日本經濟新聞社 |
Yoshi | もつと、行きたい… | スターツ出版 |
北原保雄編 | 問題な日本語 | 大修館書店 |
續彈!問題な日本語 | ||
大川隆法 | 神祕の法 | 幸福の科學出版 |
中野独人 | 電車男 | 新潮社 |
リリー、フランキー | 東京タワー | 扶桑社 |
晴。北風吹きすさみて寒し。朝食の後執筆四五枚、市立圖書館町立圖書館に本を返卻し東山公園テニスセンターに往きサーヴを練習す。過日拂はざりし駐車塲代五百圓を拂ふ。稻塲町の田地に鶇多く見ゆ。午後ふたゝび執筆。北風歇まず。比律賓先週末より非常事態宣言下にあり。國軍上層部が海兵隊司令官レナート・ミランダ少將を辭任せしめたるに部下が抗議しタギッグ市ボニファシオ基地海兵隊本部を占據す。
風雨甚し。午前執筆。ゼミ卒業生K山さんヴァイオリン發表會の約あれば地下鐵道にて中區役所ホールに往く。第十囘メヌエット・ヴァイオリン・コンサート。卒業生M本さんI原さん來りて在り。第二部と第三部を聽く。出演者はみな素人ゆゑ音樂演奏といふより音を出すに精一杯、金切聲のやうな音さながら首を絞めたる山羊の悲鳴の如し。Kさん巴里の空の下を彈く。最後は六十二名によるシベリウスのフィンランディア、パッヘルベルのカノン合同演奏なり。I原さん七月半ばより海外靑年協力隊員としとて中國に赴く由。風雨薄暮に至りて少しく歇む。六時市立圖書館に立寄るに駐車塲滿車、市民會舘前珍しく雜踏す。千住真理子の演奏會當日なり。みすゞ書房A・W・クロスビーの史上最惡のインフルエンザを讀む。
春風日を追ふに從つていよ/\暖なり。されど梅花の消息を知るによしなし。九時地下鐵道にて名古屋驛に往く。車中向ひの座席に二十歲位の娘あり、CDウォークマンに合せてドラムを叩く稽古をなしゐたり。素人バンドのドラマーなるべし。十時十分新幹線のぞみ號にて東上。好天に惠まれ富士山の巍々堂々たるさま描くが如し。品川下車、山手線にて澁谷に出で半藏門線に乘換へ表參道驛にて降り、フロムファースト通り舊みゆき通りをあゆみて事務處に向ふに心靈通に番號非通知の着信あり。誰ならむやと訝しくかけ直すにCICADAの店員なりき。小島氏旣に店に在りといふ。辻自働車を拾ひ南麻布CICADAに往き小島氏と晝餉をなし商議す。前菜ガルバンゾーディップとミックスグリーンサラダ、メインディッシュ骨付き仔羊のロースト・アンチョビ・ローズマリー風味、デザートのヘーゼルナッツクリームブリュレ、いづれも美味なり。事務處に立寄り五十年代六十年代のビデオを四本借りる。四時一分品川驛より新幹線のぞみ號に乘り、ゴンチヽを聽きながら名古屋にかへる。車中電光ニュースを讀むに世界人口六十五億人を超えたる由。二十年後は七十九億人に達するべしといふ。余が還曆を迎ふる頃には食料品定めて不足するべし。六時半歸宅。
くもりて餘寒料峭たり。午前執筆。山海塾制作O氏の返書を得たり。午後微雨。夕刻トリノ五輪女子フィギュアスケート決勝の錄畫を見る。テレビを見るは今年初てなり。荒川靜香優勝。安藤美姬は失敗聯續十五位に終る。大會前の新聞雜誌テレビなど所謂マスコミの安藤をつけ囘すさまさながら醜聞のタレントを追ふが如し。安藤が氣の毒なり。タレントに對するが如くつけ囘すさま實に厭ふべきものなり。余はテレビを嫌惡する者なり。好む番組は探偵!ナイトスクープやタモリ倶樂部などごく僅かにして、これらも久しく見ず。丸谷才一花火屋の大將綾とりで天の川など讀む。歐洲の鳥インフルエンザ猖獗を極む。佛蘭西東部アン縣にて飼育塲の七面鳥九千羽死せり。
晴れわたりて微風冷ならずいかにも春らしき日なり。昨夜十一時にエバミールとジプレキサを飮みしが二時を過ぐるも眠れず、頓服にドラール15mg錠を飮み漸く眠るを得たり。八時覺むるに頭朦朧とし足どりも怪しげなり。九時心理諮詢、十時主治醫の診察を受く。家にかへるに下腹部に痛みを覺えたれば晝餐はなさず、自働車をグリーンロードに走らせ東山公園テニスセンターに往き壁打ちの練習をなす。訪れるはけふがはじめてなり。平日の午後なる故にや敷地内に人影ほとんどなく深閑たり。利用無料。練習小一時間ばかりにして早やくも發汗瀧の如く膝がく/\震ふ。小憩し、アクエリアスを買はむと自動販賣機に金投入せむとするや嚢中の金僅か百二圓のみ。駐車塲代金五百圓も拂ふこと能はず、受附孃に事情を傳へ次囘精算を約す。歸途接骨院に立寄る。肩すこぶる良し。後頭筋の凝り甚し。
梅花未開かざれど暖氣四月の如し。精神稍恢復したれば午下出でゝ香流川の岸を散策す。二十羽ばかり、潛りてはまた泛ぶ。川中の置石に午睡中の親鳥二三羽ありき。覺えず步を停めて打眺むるなり。放水路を渡らむとするにぽちやりと水に飛込む茶色の陰あり。蛙なり。淸水屋の橋の下に紙袋を提げし男あり、麵麭を千切り投げ土鳩羣をなして啄みゐたり。池田の畑に鶫椋鳥夥し。歸宅して山崎ナオコーラ人のセックスを笑ふな河出書房新社、いとうせいこう奧泉光文藝漫談など讀む。抑鬱亭日乘を執筆しけふで五周年なり。
朝曇りしが次第に晴れわたりて風あたゝかなり。玖馬大使館領事部に申請書を郵送し、三郷やまとの湯露天風呂に一浴す。私立圖書館町立圖書館に立寄りかへる。午後執筆。
終日臥牀に在りて眠を貪るのみ。
終日臥褥に在り。讀書。
心欝々として樂しまず、何事をもなすこと能はざれば東上せず。終日讀書餘事なし。
拂曉午睡より覺む。散髮。烟雨濛々たり。終日讀書。
十時病院に往き藥を乞ふ。圖書館に立寄り歸宅午睡。
晴れし空暮方より雨となる。午前ビースポーツに往きヰルソンのラケットを購ひ、オートテニス塲 GENKI CLUB にて一時間球を打つ。C大學A氏より電子郵件あり。
暴暖。兩三日何の故とも知らず身體の疲勞を覺えること甚しく、朝夕のわかちなく唯うつら/\と眠氣を催し殆支ふること能はざるなり。心倦みつかれて草稾をつくる氣力なし。晝夜共に家を出ず。終日何事をもなさず。唯寐るつ起きつして日をくらし夕餉の時を待つのみ。燈刻午眠より寤むるに雨のしと/\と音もなく降るさま暮春の如し。讀賣新聞を見るに善光寺の僧侶五名と職員四名長野縣一般勞働組合に加入し寺院内に善光寺大勸進分會を結成したる由。一般勞働組合の木繼勇一書記長の談話を讀むに、僧侶は勞働者にあらずと思ひゐたりしかど相談を受けるうちに勞働者なるを納得しぬ云々とあり。軈ては同盟罷業をなすとて隊をなして市中を練り步むを見るに至るべき歟。
活動寫眞 THE 有頂天ホテルを見ることを欲すれど散財を畏れて往かず。臥褥に入りて終日惰眠を貪る。
晴れて日の光うらゝかなれど風猶寒し。九時自働車を走らせ杁ヶ池體育館に往き入會手續きをなさむとするに旣に四十名の募集定員に達し、中には六時に來りて竝びし者もあるを知り呆然爲す處を知らず。幸ひ追加募集あり、入會金五千圓を拂ふ。歸宅して後步みて圖書館に往く。午後疲勞を覺え臥牀に在り。讀書また興なし。午睡昏刻に寤む。滿月皎々。
睡眠藥を飮まずに睡るを得たり。拂曉惡夢より寤むること數次。天氣好晴。日の光明く暖氣そぞろに探梅の興を思はしむ。今日も身心疲勞を感ず。讀書空しく半日を消す。夕刻中京大學豐田學舍に赴く。六號線を東進、八草より國道百五十五線を南下し保見町塚原交叉點を左折、愛知環狀鐵道保見驛を過ぐ。トリノ五輪開幕。建國紀年の日、紀元節の當日なれどいつもの土曜日と異なるところなし。
北風吹きつゞきて寒し。今日も市役處稅務課と町役塲福祉課に往き用事を辨ず。藤が丘驛周邊の櫻竝木植替への最中なり。戰友M氏より電話あり。歡語一時間ばかり。午前藥を飮み忘れたる故にや、晝餉の後物書かむと机に向ひしが何といふ事もなく筆とるに懶く、去年の日誌など讀返して徒に日を送りたり。老懶とは誠にかくの如き生活をいふなるべし。N大學S氏より電子郵件あり。厚情謝するに餘りあり。夕刻三郷やまとの湯に木浴す。初更俄に睡魔に襲はる。搨に臥し忽ち眠る。
快晴。風吹きて寒し。通院日なれば自働車の發動機を始動せしめんとするに蓄電池放電し果てゝかゝらず。昨夕電燈を點しそのまゝにして消し忘れたるやうなり。徒に老耄の至れるを歎ずるのみ。已むことを得ず步みて病院に赴き、九時心理諮詢、十時半主事醫の診察を受く。正午バスに乘りて歸り JAFを呼ぶ。市内を運轉し蓄電池を充電せしめること一時間ばかり。カーラヂオにグラミー賞授賞式生中繼を聽く。U2語部門を制す。年度末の近づきたる故にや、至る處路普請最中なり。森林公園を巡りて平池北を通るに沿道の畑に鶫數多步きゐたり。町役塲に往き市役處より發行の非課稅證明書を示せしに通帳を要すべき趣に付、疲勞を覺えたれば今日は申請せず歸途に就くなり。役塲裏の田圃に鳧の飛來るを見る。季刊誌 at を讀む。
植木にさしこむ朝日の光俄にあかるく、あたり全く春めき來りぬ。鵯の聲に交りて雀の囀りもおのづから勇ましくなれり。午前接骨院に赴き首肩胸の治療を受く。胸の筋肉半分程度柔らかくなれり。原稾執筆。午眠燈刻に寤む。去四日第十三囘讀賣演劇大賞發表さる。
大賞・最優秀演出家賞 | 蜷川幸雄 | 幻に心もそぞろ狂おしのわれら將門 |
メディア | ||
NINAGAWA十二夜 | ||
天保十二年のシェイクスピア | ||
作品賞 | 歌はせたい男たち | 二兎社 |
男優賞 | 浅野和之 | |
女優賞 | 戸田恵子 | |
スタッフ賞 | 金井勇一郎 | |
杉村春子賞 | 井上芳雄 | |
藝術名譽賞 | 唐十郎 | |
選考委員特別賞 | 仲代達矢 |
朝來くもりし空には雲脚の動くを見たれど、霧雨折々降り來りて霽れず。セブンアンドワイに注文せし M・ジンマーマン、M=C・ジンマーマン著カタルーニャの歷史と文化をセブンイレブンに受取る。ガソリンレギュラー壹百貳拾三圓ハイオク壹百參拾四圓。騰貴驚くの外なし。午下縣立大學の元同僚I氏より電子郵件あり。ブックオフに赴き古書二十四册を賣る。賣價九百五拾圓也。夕刻蟹原のデニーズに往きI氏と款語す。會ふは平成十六年八月以來なり。鬪病生活、大學將來計畫、當世學生氣質、世界演劇硏究會のことなど語り合へば日は忽傾かんとす。五時歸宅。雨霽れ空に宵月泛びたり。數日來イスラム諸國のデンマーク排擊運動日に/\增すこと燎原の日の如し。發端はデンマークの日刊紙ユランズ・ポステンに揭載されしモハメッドの諷刺繪といふことなれば檢索するに直に問題の繪十二枚を閱覽することを得たり。諷刺の野卑低劣見るに堪へず。揭載されしは去九月なり。斯くの如き繪を揭ぐるは低俗の證にして愚の骨頂なり。また斯くの如き繪に色めき立つはよほどの閑人なるべし。町田康の告白を讀む。
曇りて風寒し。十時半三好に往きスピルバーグのミュンヘンを看る。二時半歸宅。納戶の本箱を整理す。燈刻小雨降り出でしがやがて雪となりぬ。夕食の後 GyaO にてハクション大魔王を看る。余はアクビ娘をこよなく愛するものなり。
アクビ娘の歌
作詞 丘燈至夫かわい顏して色白で
智惠がまわつて明るくて
笑ひ上戶はいゝけれど
派手ないたずら玉にキズ
あれはどこの子魔法の子
アクビ娘とひとがいう
シュワーシュビードゥバー
アクビ娘はすてきな子男勝りですばやくて
パンチ强くてかっこよく
拔け目ないのはいゝけれど
派手ないたずら玉にキズ
あれはそうだよ魔法の子
アクビ娘のことなのさ
シュワーシュービードゥバー
アクビ娘はすてきな子
昨夜いつの間にふりたるにや雪つもりし上に日の光照り添へたり。寒風吹きやまず砂塵甚し。日曜喫茶室、サンデー・ソングブックを聽くこと例の如し。白樺書房西店に赴き宮沢章夫チェーホフの戰爭古今亭志ん朝世の中ついでに生きてたいを購ふ。夕食後の後金柑湯を飮む。けふは長久手文化の家にて林家正藏柳家花綠二人會ありし日なれどすつかり忘れゐたりき。
快晴。立春。日の光漸く春めきたり。原稾執筆、四五葉書くを得たり。午後疲勞を覺えたれば臥牀に橫りてららら科學の子を讀畢る。内海桂子舊臘東京驛にて階段を下りむとして踏外し四十段轉落、右手首複雜骨折の憂き目に遭ひたるを知る。全身麻醉の手術を受け一週間入院せり。受けた仕事は休まず一本も穴をあけざるといふ。初更NHK-FMにゴンチヽ世界の快適音樂セレクションを聽く。小沢昭一作曲唄のアレ野たれ死に可笑し。
アレ野たれ死に
作詞 永六輔夢なく 金なく 明日なく
ぐうたらするのも 粹なもんだときたもんだとくらァ
赤い夕陽の沈む夜
花の中夭に アレ野たれ死にとくらァ主なく 妻なく 家もなく
生きるといふのは 呑氣なもんだときたもんだとくらァ
赤い夕陽の沈む夜
花の中夭に アレ野たれ死にとくらァ名もなく 職なく やる氣なく
ずっこけいるのも ご○○〔不明〕なもんだときたもんだとくらァ
赤い夕陽の沈む夜
花の中夭に アレ野たれ死にとくらァ
陰晴定まらず。烈風終日砂塵を飛ばす。午前地下鐵道にて櫻山に往き名古屋市博物館に往く。敷地内に日本庭園あり、社會見學の小學生四五十名ほど坐して雜談に興じるさまさながら鳩の羣をみるが如し。三階ギャラリーに登りて水彩協會展を看る。水彩畫三百三十七點、版畫六十八點、その他物故作家の作品を含め計四百點餘りなり。第六十囘記念のゆゑなるべし。作繪の多さに一驚を喫す。Koji さんの水彩畫あり、釣行の餘韻といふ題なり。松田博夫といふ人の街角と題したる繪、歐羅巴の何處の國の風景なるや妙味あり、步みをとめ暫し打ち眺むるなり。。午下買物をなし家にかへる。ベアトリーチェの返書に接す。思はぬ知らせに一驚を喫す。演劇企畫集團樂天團ダーウィン最後のタクシーの招待券を贈り來る。夕刻寢室の牀に永らく置きゐたりし山水のアンプとヤマハのチューナーをラックに收め本箱を整理すれば日は忽ち暮れたり。夕餉に惠方卷を食す。ららら科學の子の續きを讀む。
雨漸く晴れ風なくあたゝかなり。立春の節近づきたる故にや日の光俄に明く暖氣そぞろに探梅の興を思はしむ。朝食の後病院に往き診察を請ふ。倦怠を訴へるも果して病狀なるや藥の副作用なるやを知らず、主治醫も暫くは樣子をみませうと云はる。三郷やまとの湯露天風呂に湯治をなし町役塲に立寄り自立支援醫療費のことにつきて福祉課に問ふ。昨夜申請手續の便覽を幾度か讀み返しかど要領を得ざるりが故なり。女性職員の說明に從ひ市役處往き納稅證明書と診斷書を受取り、今日のうちに手續きをなさむとて午後ふたゝび町役塲福祉課に赴くに、女性職員半ば呆れ顏にて言はるゝに、必要書類は納稅證明書ならず課稅證明書なり、患者票は寫しならず原本を持參するべし、保險證の寫しは表面のみならず裏面も必要なりと。我が粗忽いよ/\救ひがたし。世の中に余の不得手なもの尠からず、就中役處の書類は苦手中の苦手なり。目は字面を追うばかりにして意味を解せず。木偶に均しと云ふべし。矢作俊彦ららら科學の子を讀む。
雨歇まず午後に至つて篠つくが如し。聯日の雨と冷氣とに世間ひつそりとして何の活氣もなし。十時半接骨院に赴き首肩胸腰の治療を受く。机上の草稾に筆秉らむとせしが今日も感興來らず讀書空しく半日を消す。業務用食品卸賣店Aに赴くにN高校の女學生二人店に來りていーですかーと朗らかに問ひかけたり。いゝよーと女店員の荅へるを耳にするや女學生嬉々として店の中央に進み入るなり。何事ならむやと打ち眺むるに女店員は試食用の饂飩を調理中にて女學生の目當はこの饂飩なり。二人は試食の常連客ならむ。予の經驗によれば人生に於て食慾の最も昂進するは高校時代なり。予は不惑を迎へ食慾頓に減退せり。茶碗一杯の飯を持餘すことも稀ならず。去卅日ナムジュン・パイク歿。行年七十三。