晏起旣に午に近し。半陰半晴。西北の風吹き狂ひて寒し。N子と俱に瀨戶市の家具屋ニトリに徃く。父上の湯婆子を蔽ふ布を求めんがためなり。寢具用品賣塲を隈なく探せど適當なるものなし。大晦日なれど家具店また鄰の超級市塲バローも雜遝せず。二時半歸家。咖啡を淹れ茶受けに熱田神宮土產きよめ餠を食す。夕餉に手卷鮓茶碗蒸を食す。門巷寂寞。穩かなる年の暮なり。午後五時BSジャパンにて錄畫せし立川談志の芝濱を聽く。平成十三年十二月二十一日よみうりホールにて收錄されたる高座なり。續けて七時同じくBSジャパンにて錄畫せし今どき落語特別編に春風亭一之輔鈴ヶ森、春風亭昇太長命、三遊亭圓樂そば淸、立川志の輔買ひ物ブギを聽く。
寒雨霏々たり。午前執筆。午後に至りて雨いよ/\烈しく降り增しぬ。夕刻N子を驛に出迎ふ。早朝東京を發し名古屋に來りて熱田神宮に賽し、星が丘テラスにて晝餉をなしたる由なり。夕餉に毛蟹を食す。一ノ藏のひめぜんといふ日本酒を飮む。白葡萄酒が如き味ひなり。N子腹卷を贈らる。
快晴の空雲翳なし。駐車塲屋上より木曾御嶽を望む。旭の光山肌の雪に映じていつもより間近に見ゆ。蜜柑を購はむとて母上と俱にあぐりん村に徃く。店内雜遝甚しく買物客織るが如し。成城石井に赴くに蒲郡產一袋百圓のもの數多あり。廉價驚くの外なし。驛前行人少し。午後執筆。書きながら三代目桂三木助の芝濱を聽く。歲末は芝濱に限るなり。芝濱は三木助に限るなり。いつもの溫泉に徃く。門口に立派なる門松立ちたり。受付にて骰子二個を轉がすに一のゾロ目出でゝ入浴ポイント三倍を得る。何やら新年の幸を豫感せしむるなり。暗雲いつか天を蔽ひ雨來らむとする空合となりぬ。
寒雨烟の如し。年末〆切の原藁遲々として進まず。懊惱甚し。驛前の眼鏡屋に行き理髮舖に立寄りてかへる。仕事納めの日にて驛前雜遝甚し。A交叉點の便利店ローソンいつか癈業して薄汚れたる白き建物のみ殘りぬ。松井秀喜現役引退。
快晴。寒氣骨に徹す。日本未來の黨分裂し、小沢一郎ら十五人が殘りて黨名を生活の黨と改め、現代表嘉田由紀子及び阿部知子の二氏は小沢らに追出されぬ。時事通信の報ずる所によるに嘉田らはみどりの風と連携を模索するべしとぞ。小沢にとりて政治活動は國民生活向上の手段にあらず目的なり。幾望の月皎然たり。
空好く晴れて日の光あかるきに西北の風吹き狂ひて寒し。午後ことぶきの湯に徃く。始てシルク風呂に浴す。湯溫三十八度ぐらゐにて熱からずぬるからず、寔に心地よし。壁の能書をよむに不感溫度浴と稱する由なり。けふの如き露天風呂に寒風吹きすさみて堪難き日には好適なり。ふたゝび濹東綺譚をよむ。寒月皎〻たり。
晴後に陰。古川綠波の前線へ送る夕と題せし聲帶模寫のレコードを某所にて聽く。小杉勇の海軍、德川夢聲の宮本武藏、藤山一郞藤原義江榎本健一の愛馬進軍歌の三本なり。演奏は日蓄管弦樂團、昭和十九年五月ニッチク發賣の由。また某所にて四代目古今亭志ん生の宮戶川、調子しらべを聽く。聲甲高く早口なり。明治末に錄音されしものなるべし。
隂後に晴。S子よりクリスマスの贈物及び自製のブラウニーとクッキー屆く。戲曲Cの草稿遂に成る。濹東綺譚の作家贅言をよむ。夕餉の後今宵も羊羹を作る。携帶音樂再生機にてカシオペアのセッション83ライブ、昭和六十年四月二十七日兩國國技館ライブ、三遊亭圓生のやかんとお化け長屋を聽きつゝ作業す。本日は隱し味の鹽を忘れずに入れ上々の出來映えなり。祖母より母上に、母上より余に傳はりし製法を茲に記して備忘となす。先づ漉餡の製法は下の如し。
餡の練り方は下の如し。
晴れて寒氣やゝ寬なり。天皇陛下誕生日。女道樂の内海英華藝術祭大賞を受賞す。書齋寢室の塵を掃ふ。FM愛知サンデー・ソングブックに年末恆例夫婦放談第一囘を聽く。放送終了後公式網站に新春放談終了の告知揭げられたり。夕餉に自家製ローストビーフ牡蠣のチャウダーを食す。食後羊羹を作る。二年振りなり。寒天三本を溶かし粗目一キログラムと栗の煮汁を足して煮溶かし、昨晚母上が作り置かれたる漉餡を入れて練ること二時間半。iriver の携帶音樂再生機にて山下達郎の Season's Greetings 及び On the Street Corner 第一集、第二集、第三集を聽きつゝ只管練るなり。二更完成して器に流し込み、こぼれたるを味見するに甘さ鮮ならず。隱し味の鹽を入れ忘れしに心附きたり。初日は失敗作となりぬ。明晚は鹽を㤀るゝ可からず。五時半中京テレビにて錄畫せし笑點にスギちゃんといふ藝人の高座を見る。〈ワイルドだろぉ〉といふ決め臺詞本年の流行語大賞を受賞したる由なれど、余がこの藝人を見るはこの日が始てなり。何ら面白みなし。失笑する外なし。九時CBCに第五囘北野演藝館を見る。サンドウィッチマン、ナイツ、U字工事、友近拔群なり。トリのケーシー高峰は下ネタ連發し殆放送されず。
朝の中雨聲蕭條たりしが須臾にして歇む。戲曲Cの改削連日のごとし。久振りにて濹東綺譚を讀む。余は岩波文庫版を愛讀したりしが、昨夏抑鬱亭の模樣替をなせし時より書架を探せど見當たらず、已むを得ず靑空文庫版を讀む。靑空文庫に收錄されたる作品を閱覽するには Google Chrome の靑空縱書きリーダーといふ擴張機能が便利至極なり。午前四時半總合テレビにて錄畫し置きたる日本の話藝に月亭八方が算段の平兵衞を聽く。正月料理の羊羹作りを始めむと臺處に赴くに、母上いつの間にか漉餡を作り置き吳れゐたり。明日余が餡を練ることゝす。舊臘は肋骨を骨折して羊羹を作ること能はざりしなり。
冬至。空どんよりと曇りて寒冷昨の如し。食後皿を洗ふ水の冷なることいかにも冬の日なり。林家彦六の五人廻し、紫檀樓古木、あたま山を聽きながら戲曲Cを改刪す。午後ことぶきの湯に徃き露天風呂に浴す。本日冬至なるを以て生藥風呂は柚湯をたきたり。客意外にも少し。ラジオデイズにて年末恆例放談大瀧詠一的2012第一囘配信を聽く。夜に入りて雨ふり出しぬ。
隂。寒氣骨に徹す。咖啡所コメダに朝飯を喫す。本年最終授業を行ふ。一時半歸家。戲曲C添削。去十六日BSフジにて錄畫し置きたる CASIOPEA 3rd ライブ LIFTOFF 2012 を見る。余はカシオペアが今猶活動しゐるとは知らざりしなり。公式網站によれば本年四月キーボード奏者の向谷実脫退し、代りに大高春美といふ女性加はりて、バンド名も CASIOPEA 3rd と改めし由なり。野呂一生のギター衰へざるは喜ばしき限りなれど、全體的に音丸みを帶びて聞え、往年の鮮烈さは感じられず。定めてキーボード奏者とベース奏者が代りし故なるべし。余は三十年前カシオペアの Mint Jams といふアルバムを愛聽したりき。演奏技術の超絕なること音樂會の生錄音とは到底思へぬ出來映えなり。當時はギター野呂一生、ベース桜井哲夫、ドラム神保彰、キーボード向谷実なりき。
Domino Line / Casiopea
晴天。朔風吹きすさみて寒氣激甚なり。セキセイ鸚哥のシヾミ君病漸く癒えたるが如く、食堂より居間を飛囘るやうになれり。八代目三笑亭可樂がうどん屋、石返し、悋氣の見本、尻餠、二番煎じ、文違ひ、妾馬、巖流島を聽く。
陰天。午後いつもの溫泉に徃き漢方風呂露天風呂に半身浴をなす。歸途主治醫を問ひ診察を乞ふ。古今亭右朝が芝居の喧嘩、竈幽靈、片棒、持參金、たがや、百川を聽く。桂三木助がさんま火事、化物使い、崇德院、道具屋、長短、芝濱を聽く。二更BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館落語協會新眞打特輯。古今亭文菊あくび指南、古今亭志ん馬のめるを聽く。
曇天。溫暖春の如し。辭典の稾を起す。柳家さん喬の柳田格之進、らくだ、初天神、寢床、長短、千兩みかん、掛取萬歲を聽く。數年振りに乾藷を食す。夕刻より雨となる。
西風吹きすさめども空隈なく晴渡り日光のうらゝかなること陽春の如し。衆議院選擧投票日。午後八時〆切と同時に新聞通信社自民壓勝民主大敗を報ず。東北地方太平洋沖地震の被災地たる宮城福島兩縣にても自民大勝す。嘆息する外なし。民主黨に對する失望感の表れなるべし。
晏起。雨はやみしが空晴れず。書窗暗澹薄暮に似たり。戲曲C推敲第一囘終了。夜に入りて雨また灑ぐ。古今亭菊之丞のたちきり、お見立て、幾代餠、幇間腹、寢床を聽く。師匠圓菊の艷つぽさに加へて唸り聲に志ん朝の味ひあり。
天氣牢晴。風絕ゆ。草稿を推敲せむと机に向ひしが何といふ事もなく筆秉るに懶し。午後ことぶきの湯に徃き漢方風呂露天風呂に浴す。三時BSプレミアム日本の話藝セレクションに柳家權太樓が猫の災難を聽く。二更三重テレビ淺草お茶の間寄席。林家正樂の紙切いつ見ても佳し。去七月五日收錄のことゝて挨拶代りが線香花火、看客の注文したる題は金魚掬ひ、七夕、倫敦五輪なり。トリは眞打披露の古今亭志ん陽が子ほめなり。可もなく不可もなし。坪内逍遙が小說神髓を再讀す。夜に入りて雨ふり出しぬ。
小說といひ稗史とだにいへば、いかなる拙劣き物語にても、いかなる鄙俚げなる情史にても、飜案にても、飜譯にても、飜刻にても、新著にても、玉石を問はず、優劣を選ばず、みなおなじさまにもてはやされ、世に行はるゝは妙ならずや。
(小說神髓 小說總論)
快晴。寒氣激甚なり。自家用車の硝子窓悉く凍りぬ。解氷スプレーを用ゆ。咖啡處コメダに朝飯を喫す。今週も客少く閑適よろこぶ可し。午前授業。一限二限とも比較表現を講じ練習を行ふ。一時半歸家。昨日郵便受入凾の中に選擧公報投げ込まれたるを一瞥するに、幸福實現黨なる政黨の惹句目にとまりたり。曰く、防衞力・經濟力・原子力3つの力で日本復活とぞ。正氣の沙汰とも思へず。母體は幸福の科學なる新興宗敎なり。ニコニコ動畫に小三治の大山詣り、死神、不動坊火焰、玉子かけご飯を聽く。
舊十一月朔。快晴の空拭ふが如し。戲曲C改削。晡刻BSプレミアムに小沢昭一の100年インタビューを聽く。獨り舞臺ハーモニカ昭和史につきて語るところを聞くに、野口雨情作詞中山晋平作曲の童謠シャボン玉を好み、屋根まで飛んで壞れて消ゆるシャボン玉は昭和のよき時代の隱喩なるべしと解釋し、氏一人の劇團をしやぼん玉座と名づけたりといふ。
晏起午に近し。晴れたる空に白雲多し。陽光の當たらざる駐車塲に殘雪猶あり。戲曲推敲意の如くならず。無聊甚し。午後いつもの溫泉に徃き生藥風呂と露天風呂に一浴す。先週末より食欲不振なる故にや、體重一キログラム近く減りぬ。二更BS11に柳家喬太郎の擬寳珠を聽く。昨秋よりラヂオCDテレビDVDなどより電腦に取込み來りし落語音源の數いつか千を超ゆ。
晏起。雪紛々たりしが須臾にして歇む。雲間に時折靑空を仰ぐ。雪は屋根にうつすらつもりしが路面は忽解けたり。小沢昭一の訃に接す。享年八十三。ものがたり藝能と社會、私のための藝能野史、新日本の放浪藝など、氏の業績は稱揚せずんばあらざるなり。戲曲Cの添刪に半日を消す。
晴後に陰。NHK總合演藝圖鑑に三遊亭歌る多の三味線漫談、立川志らくが茶の湯を聽く。草稾の添刪餘事なし。昏黑微雨。忽雪となる。
曇天。西北の風吹きすさみて寒氣甚し。セキセイ鸚哥のシヾミ君漸く復調して表情溫和になり、オーツ麦のみならず混合餌も啄むやうになれり。志ん生が怪談阿三の森柳田角之進など聽きつゝ戲曲Cを改刪す。今曉三時BS-TBSにて錄畫せし落語硏究會に柳家花綠平林、柳家權太樓御神酒德利を聽く。二更BSイレブン寄席を見る。去十月廿二日東京芝メルパルクホールにて催されしBS11放送局開業五周年紀念の演藝會なり。柳家小せん鷺捕り、入船亭扇辰目黑のさんま、三遊亭歌武藏支度部屋外傳、林家たい平湯屋番、喬太郎ハンバーグができるまでの五席なり。喬太郎は風邪を冐して高座をつとめたり。
陰晴不定。セキセイ鸚哥の長く伸びたる爪を切る。アサリ君シヾミ君ともに最初は烈しく抵抗すれど直に大人しく余が左手の中に收まれり。感興なけれど勉强して筆を執る。いつもの溫泉に一浴す。夕刻五時過三陸沖にて大地震あり。靑森宮城岩手震度五弱。江別市震度四。尾州にても震度二を記錄す。陋屋は搖れず。
曇天。無風。この冬始て襟卷をまとふ。咖啡處コメダに朝飯を喫す。客今週も少し。一限二限とも直說法點過去形の解說と作文練習を行ふ。授業後黑板を掃除して敎室を去らむとする時、顏に見覺えのある男子學生相談したきことありとて恐懼して余を訪來る。三年前余の授業を受講したるY君なり。來春卒業の前に西班牙を一人旅したしとて、旅行の助言を請ひに來りしなり。歡語半時ばかり。二時家にかへる。戲曲Cの改削を始む。セキセイ鸚哥のシヾミ君一週間程前より體調不良にて、身體を小さく丸め、眼は半ば閉ぢ、混合餌には目もくれずオーツ麦のみ朝から晚まで無我夢中に啄む。年に一二度見らるゝ症狀なり。午後六時頃表通より擴聲器による女の聲四鄰に反響す。何事にやとベランダに出でゝ耳を澄ますに、衆議院選擧の街宣車にて、二候補者の運動員同時に何やら喚くが故、誰が誰なるにや、何處の政黨なるや聽きとること能はざるなり。喧噪誠に厭ふべし。
隂。今朝忽然中村勘三郎の訃報あり。行年五十七。茫然として爲す處を知らず。
雨もよひの空なり。西北の風吹きすさみて寒氣凛冽なること嚴冬の如し。公孫樹の落葉路傍を埋む。草稿をつくらむとせしが感興來らず。午後理髮舖に徃き、ことぶきの湯露天風呂に浴す。主治醫を訪ひ投藥を乞ふ。業務用食料專門店アミカに買物をなし中央圖書館に立寄りてかへる。ニコニコ動畫に圓生の牡丹燈籠を聽く。初更BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に女眞打第一號特輯を聽く。古今亭菊千代の權助提燈は本人も辯解せしとほり不出來。三遊亭歌る多が町内の若い衆は口跡鮮やか男女の演じ分けも巧みにて上出來なり。
快晴の空暮方に至り驟に曇る。無風。午後堤上を步す。八日振りなり。南中したる太陽いと低く、庇帽子被りても日光眼を射て冬至の近きを知らしむ。超級市塲の店先に正月飾りを見る。ニコニコ動畫に圓生の乳房榎を聽く。
曇りて暗き日なり。寒氣甚し。早朝自治會主催の町内塵芥拾ひの行事ありて參加する心づもりなりしが、睡より寤むれば集合時刻より早や一時間近く經ち、已むを得ず參加はとりやめと爲す。正午過より細雨糠の如し。今曉五時過NHK總合テレビにて錄畫し置きたる立川志らくの演藝圖鑑に古今亭菊之丞の死ぬなら今を聽く。圓生の眞景累ヶ淵を聽く。名調子感服する外なし。
舊十月十八日。晴れて西北の風烈しく欅の枯葉宙を舞ふを見る。風邪の氣味去る。正午齒科醫A氏を訪ひ定期檢診を受く。待合室にて Newton 別册地震列島と原發を讀む。昨春の東北地方太平洋沖地震にてマグニチュードが九・〇に達したる原因は未だ不明なる由。日本藝術院新會員に市川團十郎三浦雅士池沢夏樹内定。六代目圓生の文違ひ、文七元結、付き馬、品川心中、百川、目黑のさんま、百年目、唐茄子屋政談、豐竹屋、蛙茶番、小言幸兵衞、汲みたてを聽く。夜に入りて風勢いよ/\强し。今宵より湯湯婆を用ゆ。