快晴の空風寒し。午前授業。復習に徹す。一限のSさん二限のY君先々週オーストラリアにて開催されし世界アルティメットクラブチーム選手權大會に日本代表として參加したり。女子六位、男子十三位なりとぞ。女子は大健鬪といふべし。學生課に懷中時計の紛失屆を提出す。家に財布を置忘れぬ。家にかへるに疲勞して何事をも爲す能はず。木下順二歿、行年九十二。実相寺昭雄歿、行年六十九。
半陰半晴。原稾漸く進む。晝餐に牡蠣雜炊を食す。懷中時計を紛失す。最後に見たりしは十八日補講の時なり。
暖氣十月小春の日の如し。北海道土產のマルセイバターサンドと山親爺を食す。
天候猶恢復せず時々小雨あり。風生暖かなり。晝食後千秋庵のスノーマンを食す。昔日に比して薄くなりたるやうな心地す。日本演劇敎會O氏より飜譯依賴あり。
身心ともに疲勞し讀書興なし。終日困臥、何事をもすること能はず。父上札幌より歸宅せらる。彼の地は雪薄く積もれど日中は溶ける由。六時夕餉。七時半疲勞甚しく就寢。
曇天。無風。中京大學豐田キャンパスに行き補講第二囘を行ふ。敷地内の楓の紅葉血に染めたるが如し。練習問題の後アレハンドロ・アメナーバル監督がオープン・ユア・アイズの後半を學生と倶に看る。講師控室にて英國人講師の知遇を得る。午後疲勞し眠る。
惡夢に苛まれる。筆の進まぬところへまた原稾依賴あり。フィリップ・ノワレ歿。享年七十六。
どんよりと曇りし空雨ともならで暮れたり。父上札幌に所用あり、車に乘せ地下鐵道驛に送る。筆一向に進まぬこと聯日の如し。灰谷健次郎歿。享年七十二。この日勤勞感謝の日。
曇天。通院日なれば病院に徃き藥を乞ふ。診察思ひの外早く終りたれば、クリント・イーストウッド監督が父親たちの星條旗を看んとてMOVIX三好に赴くに、二階トイザらス入口に長蛇の列あり。何事ならむやとエスカレーターより打眺めるに、任天堂のゲーム機 Wii の豫約受付なりき。三階MOVIXは客輻輳せざりしかど二番劇塲に入るや客多く一驚を喫す。平日初囘千二百圓也。父親たちの星條旗はミリオンダラー・ベイビーに劣らぬ傑作なり。暗淚度々禁じがたし。イーストウッドはアメリカ活動寫眞界最大の作家なり。ロバート・アルトマン歿。享年八十一。
快晴。筋肉痛痊えず。眠い。原稾腹案二三に上れり。されど何故か感興來らず、筆を秉らむとすれども能はず。懊惱甚し。余は時々文筆の生涯を一變し、今少し無意味なる歲月を送るにしかずと思ふなり。創作の興至るを俟たむが爲、徒に平素憂悶の日を送るは、さながらお茶挽藝者の來らざる客を待つが如し。齋藤茂太歿。享年九十。
霧雨。筋肉痛甚し。一時メディカルクリニックにてカウンセリングを受く。大いに進展あり、また課題も多し。雨霽る。何故にや夕刻突如としてかつぱえびせんを無性に欲し、直にドラッグストアに徃きて一袋求む。百圓なり。子供の頃に比して風味增したり。
曇りて午後より雨となる。午前テニス敎室に參加す。幸にして雨に値はず。試合形式の練習に愉悅を覺ゆ。漸く足手纏ひを脫したる心地す。
曇りて風なし。寒氣見に沁むばかりなり。中京大學に徃き補講第一囘を行う。出席者は三分の一ほどなり。授業後半アレハンドロ・アメナーバルの活動寫眞オープン・ユア・アイズを看る。グラウンド楓の紅葉描くが如し。
乍晴乍陰。風絕えたり。朝食の卓子より窗外の紅葉を眺む。洗濯し地下鐵道にて伏見に出で鶴舞線に乘換へ丸ノ内下車、あゆみて愛知縣圖書館に徃く。八年ぶりなり。靑土社の本二册借りる。地下鐵道車内にてユリイカ宮沢章夫特集號を讀む。日暮れてより風寒し。今年初めてオイルヒーターを出す。仲谷昇歿。享年七十七。
曇りて風寒きこと嚴冬の如し。午前授業。一限を終へ板書を消すに二限のHさん早くも來りて最前列に座り、先生からだの調子よくないんですか、みんなで心配してたんですと予の健康を憂へる。有難きかな。控へ室に戾らむとするに、次の時間もよろしくお願ひしますと挨拶さる。キャンパスの霜葉甚だ佳し。歸途白樺書房に徃き太田光・中沢新一の憲法九條を世界遺產にとユリイカ宮沢章夫特集號を購ひ理髮舖に立寄る。對談本一息に讀む。良書。久振りに鳩サブレを食す。美味なり。
入校豫定日を迎へ氣力少しく恢復せむとするが如し。朝の中より執筆。夕刻午睡。。納戶よりオイルヒーターを出す。この夜珍しく眠れずエバミール1mgを二錠飮む。
プログラムの稾を起さむと思ひしが氣力消耗何事をもなすこと能はず。悲しむべし。元フォークダンスDE成小坂の村田渚急死。三十五歲。蜘蛛膜下出血の疑いありといふ。この夜何を食せしにや記憶になし。
心地爽かならず。机に凭りしが筆進まず。終日病牀に呻吟す。家を出ず終日眠を貪ることを得るは、人生無上の幸福にあらずや。是畢竟家に恆產あるがためと思へば、予は年と共にいよ/\父上の恩澤に感泣せざるを得ざるなり。
朝の中より烈風吹き續きて落葉空に舞う。原稾進捗せず。机にも倚りがたく讀むべき書册とてもなければ入りて臥す。華胥にあそぶこと例の如し。
終日藥を服して伏す。ジャック・パランス歿。享年八十七。
晴。寄稾文飜譯年表作成ともに進まず。終日臥牀に在りて白川靜字書を作るを讀む。字通を買はむと欲すれど貳萬參千圓といふ高價にして購ひ難し。小學館日本國語大辭典第二版も求めむと欲すれど貳拾貳萬五百圓にして手も足も出ず。はらたいら歿。肝不全。享年六十三。十二三年前より更年期障碍を患ひゐたり。
今日も晴渡りてそよとの風もなし。午前授業。不首尾に終り自己嫌惡甚し。敎務課に赴き補講の手續きをなす。午後飜譯。
新晴の空拭ふが如し。九時あゆみて病院に徃き藥を乞ふ。先週の不調を訴へるにふたゝびドグマチール處方さる。保險證を忘れ、待合室にて讀まむと欲せし白川靜の本も家に忘れたりき。徒に老耄の至れるを嘆ずるのみ。待合室より窓外の芝生を眺むるに白鶺鴒の番羽繕ひに餘念なし。午後L. P. の原稾飜譯を始む。文章の息長く、譯出に苦勞すること甚し。二時疲勞して眠る。
朝の中より風烈しく時雨あり。欅の葉急に色づきたり。町立圖書館に徃き二十世紀年表數册を借りる。烈風終日歇まず。小學館決定版20世紀年表をみるに肉じやがの由來あり。海軍舞鶴鎭守府の東郷平八郞が英國留學中に食したるじやが芋料理を想ひ、部下に調理を命じ、誕生したりしものが肉じやがなりといふ。明治三十四年の話とぞ。巷間お袋の味とやらの筆頭なれど余は一度たりともお袋の味と思ひしことなし。元を辿れば英國料理なるを初めて知る。午後プログラム原稾執筆。文机の電球切れたれば寒風を冒してS藥局に徃き二個購ふ。いかにも立冬らしき日なり。この日より冬の外套を着る。
くもりて時々小雨あり。午後カウンセリングを受く。余の思考行動はゼロか百か、つねに兩極端なるが癖なりと指摘さる。内山田洋歿。享年七十。
陰。テニス敎室B集團に參加す。中野氏の知遇を得る。年齡七十に垂んとするやうに見ゆ。ダブルス試合にて初めて勝利す。午後執筆。
ベアトリーチェの返書を得たり。朗報あり。來年三月が樂しみなり。ポール・モーリア歿。享年八十一。
何事をもなす氣力なし。終日臥褥に在り。岩波文庫の渡辺守章譯クローデル繻子の靴每日出版文化賞受賞。イチロー六年聯續ゴールドグラブ賞受賞。偉業といふ外なし。
鬱甚しければ授業を休講とす。終日困臥。永沢光雄歿。肝障害。享年四十七。
舊曆九月十一日。晴。腰重きこと甚し。午眠半日。白川靜歿。行年九十六。