陰天。東南の風嫋〻たり。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。ケキョ/\といふ鶯語を聞く。水田に中鷺二羽見ゆ。敎室内暑ければ窓を開け放ち、ジャケットを脫ぎてシャツ一枚にて講義を行ふ。午後家にかへる。晚餐にパエーリャを料理す。思の外薄味になりぬ。食後S子と惠庭大麻の思ひ出、甥RとDのことなど諧語に時の移るを忘る。
昭和の日舊天長節なり。正午河岸を步す。輕鴨二羽。下川原橋の下に龜の甲羅干しするを見る。午後地下鐵道驛にS子を出迎ふ。夕餉に楤の芽の天麩羅を食す。
曇りて暑し。谷桃子歿。享年九十四。正午河畔を步む。兩三日輕鴨の姿を見ず。杜鵑花滿開となりぬ。午後ことぶきの湯露天風呂に浴す。BS11藝賓館に林家木久藏の幇間腹と桂春蝶の紙入れを聽く。雙方ともサゲに工夫あり。木久藏はマクラの今やすつかりご立派といふ惹句にをかしみあり。
晴。南風吹きて暑きこと六月の如し。咖啡所コメダに朝飯を喫す。午前MOVIX三好六番館にて北野武監督が龍三と七人の子分たちを看る。期待外れなり。館内滿席。午後接骨醫T氏を訪ふ。夜初更川端を步す。九日頃の月あきらかなり。
天氣牢晴。薰風涼爽。NHK總合演藝圖鑑にホンキートンクの漫才、瀧川鯉昇が茶の湯を聽く。午前川緣を步む。午後市議會議員選擧投票。今朝三時に錄畫せしBS-TBS落語硏究會に古今亭菊之丞の夢金、立川生志のあたま山を聽く。
薄晴。無風。あたゝかなり。十一時半新幹線ひかり號に乘り名古屋驛停車塲を發し靜岡に赴く。一時靜岡藝術劇塲にてSPACのメフィストと呼ばれた男を看る。劇塲内部上手側三分の一を取拂ひてすべて看客席となし、下手側三分の二を演技空となす。我ら看客は舞臺と客席の兩方を眞橫から見物する仕組なり。ナチスが政權を握りし一九三三年の國立劇塲にてハムレットを演じる演出家の苦惱の物語なり。全體主義の擡頭と公共性の輕視は當節の我が國そのものなり。長臺詞多く看客の忍耐を要する作品なり。四時十五分終演。五時新幹線ひかり號にて靜岡を發す。家にかへれば正に七時なり。午前三時に錄畫し置きたるBS-TBS落語硏究會に柳家さん喬のお若伊之助を聽く。
輕陰。無風。倦怠何事をもなす能はず。朝飯の後困臥三時間。午後ことぶきの湯に浴す。三重テレビ淺草お茶の間寄席を看る。桂幸丸の健康診斷は愚にもつかぬ漫談なれば聞き流し、瀧川鯉昇が宿屋の富を堪能す。
倦怠感甚しく床を出づるにさへ難儀す。晴後に陰。薄暑旣に初夏の如し。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。挨拶を練習し、主格人稱代名詞と名詞の複數形及び ser 動詞の活用を講ず。午後家にかへる。近鄰に早くも鯉幟を立てる家あり。晡時疲勞して一睡。BSフジ落語小僧に京西亭つづ吉の掛取り、林家きく坊の道具屋を聽く。指南役古今亭志ん輔豐竹屋を演ず。
隂。西南の風强し。正午川端を步す。川鵜一羽、輕鴨三羽。倦怠困臥二時間ばかり。夕餉に獨活の酢味噌和へを食す。BS日テレ笑點特大號に鈴々舍馬るこの大安賣りを聽く。
晴。後に陰。西南の風烈し。頃日倦怠感甚しく、目覺めてより床を出づるまで一時間半かゝるなり。H氏より電子郵件あり。火災に遇ひて目下被災者住宅に假住まひ中なる由。令閨愛犬ともに無事と知りひとまづ安堵せり。正午川岸を步す。輕鴨三羽。午後主治醫を訪ひ投藥を乞ふ。燈刻ことぶきの湯露天風呂に浴す。BS11藝賓館に柳家喬太郎の粗忽長屋、ナイツの漫才スポーツ大好きを聽く。山田宏一蓮實重彥著トリュフォー最後のインタビューを讀む。
風雨瀟〻たり。いかにも榖雨に似つかはし。午後雨の晴れ間を窺ひ接骨醫T氏を訪ふ。歸途理髮舖に立寄る。店舖上の住宅にて昨日曉明失火せしといふ。七階の外壁黑く燒け焦げたるを見る。執筆の興至らず怏〻として徒に時間を空費す。
舊三月朔。細雨輕寒。市議會議員選擧の候補者二三名門前或は陋屋裏にて演舌をなす。喧噪厭ふべし。NHK總合演藝圖鑑に金原亭世之介の宮戶川を聽く。午後雨の霽るゝを待ち川の畔を步む。北風雨氣を含みて冷なり。釣人二人。燕。けふは輕鴨の姿見えず。Eテレ日本の話藝に桂吉弥の愛宕山を聽く。師匠吉朝を蹈襲する語りなり。暗雲散ぜず終日暗し。
薄く晴れてあたゝかし。薰風爽颯。ベランダ八ツ手の若葉靑々として幼兒の掌のごとし。NHKラヂオ第一眞打ち競演に古今亭寿輔のお見立てを聽く。正午速步日課のごとし。輕鴨二羽。川鵜一羽水面を滑るやうに飛び行くを見る。杜鵑花ひらく。『ボヴァリー夫人』論讀了。誤字脫字衍字夥し。カモミール社現代スペイン演劇選集IIを送來る。
陰晴定らず。風强し。Eテレえほん寄席に柳家さん喬のねずみを聽く。午前眼科に徃く。午後ことぶきの湯露天風呂に浴す。『ボヴァリー夫人』論第十章運動と物質を讀む。スター・ウォーズ第七部フォースの目覺め第二豫告編公開せらる。
曇りて風なし。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。鶯語をきく。西班牙語による挨拶各種、主格人稱代名詞、ser單數形の活用、人を表す名詞の特徵を講義す。別れの挨拶アディオス(Adiós)は神のご加護のあらんことを願ふ文句にて、英語のグッドバイ(Good-bye ← God-bye)もまた同じ願ひをこめたる文句なるを解說す。市役所東鄰にミニストップ開店す。パチンコ店の西鄰にはカレーのチャンピオンといふ店開業せり。一時半家にかへる。小憩の後河畔を步す。輕鴨四羽。『ボヴァリー夫人』論の第八章虛構と表象をよむ。セキセイ鸚哥のアサリ君耳を聾せんばかりの聲をはりあげて鳴きぬ。病勢頓に衰へやうやく健康恢復したり。喜ぶべし。三重テレビ淺草お茶の間寄席に柳家蝠丸の死ぬなら今、東京ボーイズの音曲漫才、三遊亭笑遊のやかんを聽く。
淫雨始て霽る。雲の斷間より折〻靑空現る。セキセイ鸚哥のアサリ君目覺めるや否や皮を剝きたる混合餌と好物のオーツ麦を盛んに食ひたり。食慾增進しつゝあるは喜ぶべきことなり。然れど健やかなる時には每朝番犬の吠ゆるが如く、耳を聾せんばかりに啼くを常となすに、小聲にて二三語呟くばかりにて、未だ元氣に囀ずるには至らず。視線もどこか曇りて疲勞の色見ゆ。正午速步。西南の風强し。岸邉の叢に輕鴨一羽、水かさの增したる川中の石に二羽。河原鶸、燕、椋鳥、白鶺鴒、雀。『ボヴァリー夫人』論の第六章塵埃と頭髮、第七章類似と齟齬をよむ。
霖雨霏〻たり。『ボヴァリー夫人』論第四章小說と物語、第五章華奢と頑丈をよむ。書き損じ散見せらる。以下に列擧す。午後ことぶきの湯に浴す。花水木の花咲く。BS11藝賓館に柳家喬之助の寄合酒を聽く。語り口ぞんざいにて感心せず。柳亭左龍の鰻屋を聽く。安心して樂しめたり。
頁 | 誤 | 正 |
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二一七 | 一八四七年と一八四八年の二冬続けてルーアンで、毎晚、週に三回(原文のまま)ぼくとブイエの二人でいろいろシナリオを書いたことがあります | 一八四七年と一八四八年の二冬続けてルーアンで、毎晚、週に三回(原文のまま)ぼくとブイエの二人でいろいろセナリオを書いたことがあります |
二一八 | 携えて来た『ボヴァリー』のシナリオも大して練れそうにありません | 携えて来た『ボヴァリー』のセナリオも大して練れそうにありません |
二六〇 | 「自由間接文体」であることは誰の目に明らかである | 「自由間接文体」であることは誰の目にも明らかである |
二六一~二六二 | だが、ここでの「しかし」にそのような「対立」の機能を担っているようには見えない | だが、ここでの「しかし」はそのような「対立」の機能を担っているようには見えない |
二八五 | 他方はすでに身をまかせてしまった百戦錬磨のロドルフとあいびき | 他方はすでに身をまかせてしまった百戦錬磨のロドルフとのあいびき |
二九八 | 実際、おずおずとその思いを口する彼の言葉に耳を傾けながら | 実際、おずおずとその思いを口にする彼の言葉に耳を傾けながら |
三一四 | 遠近法的なパースペクティヴにおさまることなのない | 遠近法的なパースペクティヴにおさまることのない |
三一七 | ふたりはいつしか手を握り合つていた | ふたりはいつしか手を握り合っていた |
三一九 | 仕事着を着てりんごの木の下にただずむ | 仕事着を着てりんごの木の下にたたずむ |
陰雨空濛。咖啡所コメダに朝飯を喫す。惡天候ゆゑ客は少なかるべしと思ひしに、駐車塲はほゞ滿車にて店内ボックス席も滿席なればカウンターに坐る。十時四十分MOVIX三好一番館にてゴンサレス・イニャリトゥ監督の活動寫眞バードマンあるいは(無知がもたらす豫期せぬ奇跡)を觀る。スクリーンサイズはビスタビジョンなり。冒頭と終幕前の火球飛來のシーンを除きて全篇をシークエンスショットにて撮影する技法はヒッチコックのロープを思はせ、扉や通路の暗がりを用ひてショットとショットを繫ぐ作法もヒッチコックと同じなり。然れど被寫體はどれひとつとして魅力なく、あたかもエマニュエル・ルベツキが撮影に用ゐる寫眞機が主人公なるが如き作品なり。豫告篇驅込み女と驅出し男、ラン・オールナイト、フォーカス、龍三と七人の子分たち、ハンガーゲームFINALレジスタンス。一時半歸家。晡刻接骨醫T氏を訪ふ。『ボヴァリー夫人』論第三章署名と交通を讀む。
曇りて風なし。アサリ君サラドの胡瓜を盛んに食ふ。たゞし病勢依然としてひとことも囀らず。NHK總合演藝圖鑑に春風亭朝也のやかんなめを聽く。正午葉櫻の下を步む。堤上に椋鳥の交尾するを見る。河原鶸、燕、白鶺鴒、雀。Eテレ日本の話藝に柳亭市馬が花見の仇討を聽く。『ボヴァリー夫人』論第二章懇願と報酬を讀む。八十一頁に「肝心」と書きしに百十八頁には「肝腎」と書きてあり。電腦の日本語入力FEPの漢字變換に賴りすぎしためなるべし。百二十五頁の「指摘を参照にしつつ提案している」の「に」は衍字なり。
積雨新晴。久しぶりに靑空を仰ぐ。アサリ君依然としてひとことも啼かず眠りどほしなり。纔にオーツ麦數粒喰ふ。昨夜も少し喰ひたり。病やゝ快方に向ふなるべし。正午坡上を步む。輕鴨一羽。十月櫻の花悉く落つ。染井吉野は葉櫻なり。蓮實重彥著『ボヴァリー夫人』論第一章散文と歷史を讀む。八十五頁の蝕知は触知の誤りなるべし。黃昏アサリ君オーツ麥を盛んに喰ひたり。シジミ君はアサリ君の病狀がよほど心配の樣子にて、嚥下したる餌を戾して給餌をなす。
空どんよりと曇りて暗し。セキセイ鸚哥のアサリ君けふも具合よからず。體を毬のやうに丸めて眼を閉ぢ、好物のオーツ麦は啄めどぽろ/\とこぼして一粒も喰はず。咖啡所コメダに朝飯を喫す。十時MOVIX三好六番館にてシネマ歌舞伎野田版鼠小僧を看る。平成十五年八月歌舞伎座の公演を收錄せしものなり。余は當時戲曲を讀みて冒頭の劇中劇に血湧き肉躍る思ひをなしたりき。この日初めて野田の演出する舞臺映像を見て、十二年前に讀みし時を上囘る興奮を覺えぬ。勘九郎橋之助三津五郎のよきはもちろんのこと、中村福助のお高まことに佳し。江戶の芝居小屋の猥雜さかくの如くなるべしと思ふなり。雨ふりだしぬ。一時歸家。晡時ことぶきの湯に浴す。稻葉町の田に鳧一羽を見る。南榮町交叉點の尾張旭商店といふ居酒屋いつか癈業し、一刻堂なる拉麵屋出店準備中なり。圖書館に立寄りて後レストラン某亭に入り蓮實重彥著『ボヴァリー夫人』論序章を讀む。昏暮家にかへる。雨やまず。
隂。風寒し。新年度始業日なり。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。受講人數去年に較べて大幅に減り一限五十一人、二限四十六人。語學敎育は少人數に限るなり。發音の練習を行ふ。學生諸氏みな快活にて發聲威勢よく、發音も上手なり。一時過ぎ歸家。セキセイ鸚哥のアサリ君兩三日前より珍しく不調。毛の拔けかはる時節なるが故なる歟。大好物のオーツ麦を食べず、ひとことも啼かず、體は丸く縮こまりて、頭を背に乘せ日がな一日晝寢を貪るなり。晡時堤上を步す。輕鴨二羽、川鵜一羽。
床より起出でむとするに倦怠感甚しく體を動かすこと容易ならず。午前霧雨。終日何事をもなす能はず。悲しむべし。
朝霧雨。寒きこと晚冬のごとし。正午いつものやうに川緣を步す。輕鴨六羽。うち三羽は雛鳥なり。燕夥し。晡時主治醫を訪ひ投藥を請ふ。鬱の症狀惡化したればドグマチール九十ミリグラムを百二十ミリグラムに增量せらる。アナフラニール、ソラナックス、レメロン、ウインタミン變らず。歸途ことぶきの湯に立寄る。BS11藝賓館に古今亭志ん輔の子は鎹を聽く。
雨もよひの空晴れやらず。無風。生暖かし。正午川邉を步す。花の絨毯を踏む。輕鴨三羽。晡刻接骨醫T氏を訪ふ。網站のスタイルシート手直しに半日を消す。
清明。春雨蕭〻として歇まず。NHK總合演藝圖鑑に柳家喬太郎の壽司屋水滸傳を聽く。ジャストシステム直營網站にてATOK用明鏡國語辭典第二版ダウンロード版を購ふ。定價五千百八十四圓なれど會員割引とポイント三千點を適用せしめて代金千六百六十六圓にて買ふを得たり。第二版は旣にカシオの電子辭書 EX-word XD-U7500 に搭載したるを所有するなれど、執筆の便宜を思へばATOK用の版は不可缺なり。Eテレ日本の話藝に三遊亭圓歌が坊主の遊びを聽く。
花曇の空なり。風濕氣を含みてなまあたゝかし。NHKラヂオ第一眞打ち競演に桃月庵白酒の代脈を聽く。午後川端を步む。堤上に輕鴨二羽頭を背に埋め晝寢するを見る。晡時NHK總合桂米朝追悼番組に軒づけと住吉駕籠を聽く。軒づけは昭和五十七年十一月五日東西師弟競演、住吉駕籠は平成十三年七月二十一日日本の話藝の高座なり。米朝の戒名を知りたしといふ者あり。葬儀は去三月二十五日吹田市千里會館に神式にて營まれ、佛式の戒名にあたる諡は中川清大人之命なり。夜に入りて雨ふる。この夜皆旣月蝕すれど雨天に阻まれて拜めず。
菜種梅雨の空晴れやらず。マノエル・デ・オリヴェイラ歿。行年百六。午前霧雨の晴れ間を窺ひ川緣を步す。輕鴨六羽、燕二羽、河原鶸、椋鳥、白鶺鴒、雉鳩、土鳩、雀。午後ことぶきの湯露天風呂に浴す。浴後雨ふりまされり。Eテレえほん寄席に柳家喬太郎の花見酒を聽く。三重テレビ淺草お茶の間寄席に古今亭志ん丸の幇間腹、柳家權太樓の佃祭を聽く。
空どんよりと曇りて風肌寒し。正午速步。輕鴨二羽。高野山開創千二百年紀念の大法會始まる。壇上伽藍の中門に橫綱白鵬日馬富士土俵入りして地固めを行ふ。金堂の本尊藥師如來像公開せらる。午後事務所の需に應じて某氏の詩を飜譯す。
舊二月十三日。朝來春雨空濛。午後雨の晴れ間を窺ひ川端を步む。輕鴨五羽。雉鳩、土鳩、白鶺鴒。らじる★らじるにて春の選拔高校野球決勝、東海第四對敦賀氣比戰の實況中繼を聞く。東海第四善戰空しく一對三にて惜敗す。晡時霧雨また降り初む。公式網站の樣式表を改善す。