睡よりさむれば午後一時なり。曇天。風俄に寒し。疲勞倦怠甚しく机に凭りがたし。久振りにていなやのきしころを食したしと思ひて燈刻店に赴くに本日休業の看板あり。空しく家にかへりスパゲティを茹でる。夜初更父上母上を地下鐵道驛に迎ふ。東京も寒氣甚しかりし由なり。三遊亭歌武藏の大安賣り、たばこの火、親子酒を聽く。
空漸く晴れて久振りに日の光を見る。雀の聲も自づから樂しげに聞ゆ。楡家の人びとを讀み終りぬ。原稿四篇を草して編輯員に交附す。午後インターバル速步。市中の櫻花一時に滿開となれり。川鵜の川面を滑るが如く飛ぶを見る。河畔遊步道に行樂の人々櫻を撮影す。寫眞機を用ゐる者わづか一名、他はおしなべて携帶電話またはスマートフォンを用ゆ。
鈍色の空けふも晴れず。楡家の人びと第二部讀了。午後インターバル速步。西南の風嫋々たり。河畔の櫻花九分咲。歸宅して第三部をよむ。夜初更溫泉。藥湯に身を沈めるや店員來りて健美泉の生藥抽出液を將に投入せんとす。風次第に吹きつのりて浴後の肌に心地よし。深夜十二時NHK-FM大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳 Part3 最終囘を聽く。
今日も空晴れやらず。北杜夫が楡家の人びと第一部讀了。午後母上を耳鼻科に連れ行く。花粉症治療のためなり。けやき通の沿道に滿開の雪柳蜿々と續きて的歷たり。夕刻T氏來訪。釣果の鰺を餽らる。夜初更インターバル速步。十七夜の月紅に染まりて何やら物凄し。深夜十二時NHK-FMに大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳 Part3 第四夜を聽く。今宵はキング・レコード特輯なり。
隂。北杜夫が楡家の人びとを讀む。午後インターバル速步。衞生組合の櫻花八分咲なり。綠陰步道の櫻五分咲き。滿開の雪柳を愛づ。四季櫻の花また滿開となれり。河原鶸の囀り耳に心地よし。夜細雨絲の如し。讀書深更に及ぶ。深夜十二時NHK-FMに大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳 Part3 第三夜を聽く。今宵はフィラデルフィア特輯なり。フランキー・アブァロン初期の音癡ぶり滑稽人の頤を解かしむ。名曲ヴィーナスの成功はピーター・デアンジェリスの編曲に負ふところ多きを知り得たり。
花曇りの空なり。風寒し。眠よりさむれば旣に午を過ぐ。讀書。晡時河畔を步む。雪柳滿開。梅の花悉く散り盡しぬ。白木蓮の花半ば落つ。夕餉の後溫泉。十五夜の月雲に蔽はれて朦朧たり。初更BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に柳家喬之助の短命、柳亭左龍の宮戶川を聽く。深夜十二時NHK-FMに大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳 Part3 第二夜を聽く。紀ノ川を讀終へれば夜は早くも四更を過ぎたり。
眠りより寤むれば午後一時半なり。薄晴。欅の若葉赤子の產毛の如し。雲次第に散ず。執筆。晡時インターバル速步。八日振に再開したるなり。日の光うらゝかなれど西北の風强く肌寒し。綠陰步道の櫻花いつか二分咲なり。早咲の花は五分程度咲けり。白木蓮の花散り初む。烈風砂塵を捲く。孤燈の下に有吉佐和子が紀ノ川をよむ。深夜十二時NHK-FMに大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳 Part3 を聽く。
起出づれば日は將に亭午なり。薄晴。月寒あんぱんを食す。何故にや草蘆近くの超級市塲Sにて時々商ふなり。大相撲三月塲所千龝樂結びの一番に白鵬對日馬富士の橫綱對決を看る。見應へある好一番なり。白鵬全勝優勝を果す。中野重治が梨の花を讀み畢りぬ。
晏起連日のごとし。曇りて風絕ゆ。餘寒なほ料峭。筑摩書房中野重治全集第六卷梨の花をよむ。十二日頃の月あきらかなり。
晏起午に近し。快晴の空次第に曇る。中央公論社刊日本の文學第五十九卷に石坂洋次郎の若い人を讀む。夜初更溫泉。微雨あり。入浴中錄畫し置きたる三重テレビ淺草お茶の間寄席に瀧川鯉昇の千早振る、宮田陽・昇の漫才、古今亭菊之丞の天狗裁きを聽く。結構なる顏付けなり。
素朴的な性の牽引は父と娘の關係においてさへ白極光のやうに美しい。
眞實は單純素直な言葉で表現されることを喜びます。
自然には意志だけあつて倫理がない。
精神のある成熟した狀態は、一個の單語の響きで容易に一個の華麗な世界をつくり上げる。
眞實とは多人數の約束だ、承認だ、裸の眞實なんてあり得ない。
適當に飮食し充分寢足りた肉體から派生する思ひつきは、瘦せ衰へて刻苦硏鑽の餘に築き上げられた思想體系よりもはるかに健全なことが多いものだ。
極度の窮乏は性の意識を希薄にする。
人と人とが結びつくのに弱い面からしてはならない、明るい强い面から入らねばならない。
素手でガラスをぶち破らうとする者は自分の手を血にまみれさせる覺悟をせねばならぬ。
大義さへもなければ人間は風船玉のやうに浮はついたものになつてしまふ。
食べることゝ繁殖することの前には百千の理屈もけし飛んでしまふのだ。
遲々として進むんです、たゆまず進むんです。タンクのごとく、野戰砲のごとく。
女を愛するといふことはより深く人生を愛するといふことだ。
空は隈なく晴渡りしが西北の風烈しく春寒料峭たり。図書館に徃き資料を借る。寺近くの公園に雪柳の花咲けり。雪柳は春の草木の中余の最も好むものなり。石坂洋次郎の若い人を讀む。
春分。雨もよひの空なり。古今亭志ん五の落語十一席を聽く。錦の袈裟、付き馬、孝行糖、時そば、井戶の茶碗、幇間腹、風呂敷、拔け雀、干物箱、浮世床、無精床なり。この逸材も三年前鬼籍に入りぬ。二時過より雨ふり出して寒し。
薄晴。寤めれば目の痒み堪難し。點眼劑を用ゆ。階前夏椿の新芽舒ぶ。午後主治醫を訪ひ藥を請ふ。夜初更溫泉。天空高く半輪の月朦朧たり。入浴中錄畫し置きたるBS11ようこそ藝賓館に三遊亭圓歌一門會をみる。三遊亭歌奴の掛取り、三遊亭小圓歌の三味線漫談を聽く。小圓歌は往年の噺家の出囃子を彈奏す。小さん序の舞、文樂野崎、志ん生一丁入りの三曲なり。枕頭岡ノ谷一夫著さえずり言語起源論をよむ。
晝前より小雨。東南の風强し。次第に降り增りて風雨となる。スポーツ報知の網站にWBC準決勝日本對プエルトリコ戰の速報をみる。日本零對三にて敗退す。AutoHotkey_L のスクリプトを整理す。MP3 タグ編輯軟件を田吾作より Ttageditor に乘換へる。
天氣牢晴。彼岸の入。午後インターバル速步。西南の風强し。綠陰步道の四季櫻七分咲。椋鳥、雉鳩、土鳩、河原鶸を見る。書齋と寢室の塵を拂ふ。大相撲テレヴィ觀戰。大阪府立體育會館の看客關脇豪榮道に聲援をなす。その聲に鼓舞されしにや大關稀勢の里を寄切る。前頭豐ノ島橫綱日馬富士に相撲をとらせず完勝す。今朝十一時ひまわり12チャンネルにて錄畫せし落語特番春笑四人の會を見る。先月廿二日岐阜商工會議所大ホールにて收錄されたる高座なり。トリの桂文華八五郞坊主なか/\良し。五代目桂文枝の弟子なる由。夜九時BSフジにて落語小僧といふ新番組始まる。素人落語家の紹介番組にて席亭三宅裕司、今宵の指南役は春風亭昇太なり。開口一番は中學一年生秋月亭大誠光のちりとてちんなり。本格的なる藝風に一驚を喫す。つゞいて中學三年生桃くい亭ぼんぼりのだくだくなり。最後に昇太が力士の春を披露す。
天氣連日限りなく好し。午前河畔をインターバル速步にてあゆむ。西南の風嫋々たり。三時過二囘目の速步を行ふ。疾風砂塵を捲く。白木蓮の低木にシモクレンと書きたる札あり。札の掛け違ひなるべし。三遊亭圓遊の七福神、松竹梅、野ざらし、地獄巡り、權助提燈、堀の内、味噌藏を聽く。
快晴。目の痒み堪難ければ眼科に徃き藥を請ふ。案の定アレルギー性結膜炎なり。午後坡上を步す。綠陰步道の白木蓮花ひらく。初更三重テレビ淺草お茶の間寄席に春風亭小柳枝の替り目を聽く。二更Eテレ日本の話藝に笑福亭福笑の桃太郞を聽き呵呵大笑す。春風亭柳橋が粗忽の釘、春風亭柳枝が宮戶川、ずつこけ、山號寺號、子ほめ、三遊亭圓遊が浮世床、三遊亭圓生が看板のピン、猫定を聽く。
晴れて日の光はうらゝかなれど西北の風烈しく餘寒料峭たり。亞爾然丁のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ新敎皇に選出せらる。敎皇名につきて讀賣新聞、每日新聞、時事通信、共同通信、東京新聞、ロイター、AFPはフランチェスコ、朝日新聞とNHKはフランシスコと報ず。午後溫泉。梅花馥郁たり。志ん生の名人長二、化物使い、六尺棒、ぼんぼんうた、義眼を聽く。
朝より小雨ふりてあたゝかなり。路上の雪解けて泥濘甚し。ホテル一階レストランに朝餉をなす。今朝も客少なし。十時宿を去り札幌驛地下エスタの大食品街に徃き宗八鰈鱈など購ふ。開店間もなき時刻にもかゝはらず地下街は買物客織るが如し。十一時過快速エアポートに乘り新千歲空港に行く。出發ロビーの北海道本舖に立寄り鹽雲丹のほか千秋庵ノースマンわかさいもなど買ふ。一時全日空機離陸。乘客六割程度なり。機中筆記型電腦を用ひて公演資料を作成し、携帶音樂再生機にて三遊亭圓生の紫檀樓古木をふたゝび聽く。疲れ出でしにや、うつら/\する中に中部國際空港に着陸す。折よく高速バス發車せむとするところなり。家にかへれば日は晡なり。玄關扉を開けるやセキセイ鸚哥のアサリ君嬉々として啼き母上と余を迎ふ。雨模樣の空にて南風生暖かし。櫻の蕾一昨日に比して大きく膨らみたり。尾州の冬は遂に去り春來りぬ。直に雨ふり來れり。一昨日留守錄したるBS日テレ笑點デラックスに桂歌丸の後生鰻を聽く。また昨夜八時BS11にて錄畫し置きたるようこそ藝賓館に柳家喬太郎の提燈屋を聽く。夜二更雨霽る。
舊曆二月初一。陰天。無風。寒からず。ホテル一階のレストランにバイキングの朝餉をなす。客少なし。部屋に戾りて公演資料をつくる。母上は編物に餘念なし。午下余ひとり札幌驛より區間快速石狩ライナーに乘り大麻に出づ。驛前の超級市塲ラルズを見物す。町の積雪二メートル近くに達し、堤橋の欄干は雪に埋もれてその片鱗さへ窺へず。雪を蹈みて步むこと二十分ばかり。N先生を訪ふ。程なくしてH氏も訪ひ來らる。歡語時の移るを忘る。晡下辭去。タキシ自働車にて大麻驛に行き、函館本線、南北線、市電を乘繼ぎ某病院に叔父Sを見舞ふ。母上旣に來りて在り、叔父Yと談笑中なり。叔父Yは須臾にして夜勤先の篠路に徃かる。母上と叔母Sの家に行き三人にて夕餉の膳を圍む。ホテルにかへれば二更なり。藝術選奬文部科學大臣賞發表。川村毅、夏八木勲、小川洋子、多和田葉子、柳家さん喬。文部科學大臣新人賞に古今亭菊之丞。
空好く晴れしが西風烈しく寒し。午前公演資料作成。午下母上と俱に高速バスに乘り中部國際空港に徃く。搭乘口にて憩ひゐたるに、本日東日本大震災二周年なれば地震發生時刻の午後二時四十六分より一分間默禱せられたしとの港内アナウンスあり。丁度その時刻には全日空機に乘込む最中なり。二時五十分離陸。空席存外多し。機中三遊亭圓生の鰍澤、やかん、紫檀樓古木、古今亭志ん生の岸柳島を聽く。四時半新千歲空港に着陸するに一面の雪景色、滑走路にも雪堆く積りて機體は徐行せざるを得ず、十五分ほどかゝりて漸く停止す。空は穩やかに晴れ風なく寒氣甚しからず。快速エアポートに乘り札幌驛に向ふ。空港周邉の國道も路肩に積雪甚しく、車窓より往來の車を見るに車體の下半分は雪に隱れて見えざるほどなり。惠庭島松は積雪人の背丈を超ゆ。明かるかりし空は夕日沒して忽暗くなり街燈點ず。五時四十分札幌驛到着。南口驛前の交叉點の步道も積雪人の背丈に達す。橫斷步道の入口は左右に雪山迫りていと狹くなり人の往來容易ならず。昨日來の暴風雪は歇みて氣溫もやゝ高くなりし故にや路面の氷は少しく解けゐたり。ホテルの部屋に荷を置き、近くの拉麵屋に夕餉をなす。食後ホテルにかへりK伯母に電話をかける。公演資料作成。
曇天。强風餘寒を送る。午下雨ふり來りしが須臾にして歇む。黃昏空隈なく晴渡りしが風歇まず。山口昌男歿。享年八十一。桂文朝の山崎屋、手紙無筆、肥甁など聽く。
晴れて好き日なり。無風。午後河畔を步す。四季櫻の花日に/\開く。六月公演の資料作成を始む。夕餉にポパイスパゲティを作る。四代目三遊亭圓遊の浮世床、地獄巡り、野ざらし、味噌藏、粗忽の釘を聽く。
輕陰。無風。暴暖頭痛を催さしむ。午下インターバル速步。河原の低木に四十雀三羽あり。橋を渡りて綠陰步道をあゆむに、灌木の枝に山雀一羽を見る。欣喜措く能はず。突如目に痒みを覺ゆ。花粉症なる歟。理髮舖に徃きて後溫泉に憩ふ。YouTube に小林亭竜之介の一目上がりを聽く。
薄く晴れし空午後に及びて曇る。MP3 Quality Modifier を用ひて落語音源を壓縮す。携帶再生機に入れて嵩張らず、桌上型電腦にて聽くに惡しからざる音質にせむため 64kb/s、22050Hz に統一す。午後インターバル速步。西南の風嫋々たり。電線に河原鶸の囀る聲鈴の如し。白梅星の如し。振興橋袂の土手に椋鳥と雀の群仲睦まじく餌を漁るを見る。黃昏小島氏と電話にて商議す。蝶花樓馬樂が應擧の幽靈を聽く。
天氣牢晴。西南の風嫋々たり。ベネズエラ・ボリバル共和國ウゴ・チャベス大統領死去。享年五十八。午後香流川の坡上をインターバル速步にてあゆむ。桂米朝が近眼の煮賣屋、馬のす、質屋庫、まめだ、田樂食ひ、二階借りなど聽く。枕上平山秀幸監督の活動寫眞やじきた道中てれすこを看る。舊臘十日BSプレミアムにて中村勘三郎追悼番組として放映されしものなり。余は勘三郎急逝の報に意氣沮喪してこの日まで追悼番組を見る氣にさへなりざりしなり。勘三郎の彌次郎兵衞よりも喜多八柄本明の熱演、また小泉今日子のお喜乃に感心す。材料の落語はてれすこ、野ざらし、狸賽の三席なり。狸賽の話に博打の壺の中にて狸が童の姿をして賽の目を考へる塲面あるは不可解なり。壺中においては狸の姿のまゝがよろしかるべし。起請に騙されてお喜乃に詰め寄る男衆の中に柳家三三あり。
快晴。春一番なるにや西風烈し。午前執筆。午後主治醫を訪ひ藥を請ふ。夜初更溫泉。生藥風呂に漢方抽出液を投入する頃合ひを見計らひて徃く。强風いつか歇みてあたゝかし。三代目三遊亭金馬の山崎屋、佃祭、萬病圓を聽く。八時BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に近藤志げるのアコーディオン漫談を聽く。本名は近藤成にて、志の字は立川談志より讓られし藝名なり。談志より贈られしものなりとて、懷より近藤成立川談志連名の名刺を取出して披露す。野口雨情が童謠赤い靴幻の五番を聞き得たり。
快晴の空雲翳なし。午前齒科醫A氏を訪ひ定期檢診を受く。執筆。原稿九篇を編輯員M氏に交附す。午後ふたゝび執筆。M氏の助言大に參考となる。
空は好く晴れしが北風吹きつゞきて寒冷眞冬のごとし。執筆。ニコニコ動畫に桂歌丸の小烏丸を聽く。
陰晴不定。强風終日吹き歇まず。春寒料峭たり。拂曉BS-TBSにて錄畫せし落語硏究會に柳家喜多八の鼠穴、柳家一琴の松山鏡を聽く。
舊正月廿日。春雨空濛。書窓黯澹たり。確定申告の還付金早くも振込まる。午後溫泉。下校の兒童ら傘のいと鮮やかなること紫陽花のごとし。