朝來大雨沛然たり。NHK-FM邦樂ジョッキーにて尺八奏者辻本好美の下り葉を聽く。午後雨小止みしたればいつもの溫泉に徃き露天風呂に浴す。
空どんよりと曇りて暗し。コメダにて小倉トーストと咖啡の朝飯を喫す。縣道五十八號線貝津町鐵炮迫三辻にてコンクリートミキサー車橫轉する事故ありて保見驛前よりのろ/\運轉なり。天高く雲雀の囀るを聞く。幸にして學生の遲刻者なし。敎科書第七課を終へる。Mi fuerte es...といふ文を用いて學生各自の特技を紹介せしむ。溽蒸甚しく發汗襯衣を霑す。午下家にかへる。NHK-FM浪曲十八番にて京山小圓孃の浪曲改心亭を聽く。昨夜錄畫し置きたるBS日テレ笑點特大號にてだるま食堂のコントを看て春風亭昇也の寄合酒を聽く。昇也は間のとりかた佳し。夕餉に三河安城產冷麦を食す。
細雨蕭蕭たり。午前福祉センターに赴き用事を辨ず。NHK-FM邦樂のひとゝき琵琶特輯にて川村旭芳の五條橋と大藪旭晶の盆栽樹を聽きつゝ讀書。この夏始て空豆枇杷櫻桃を食す。
陰天。風濕氣を帶びて冷なり。川岸を步す。川鵜一羽水面を嘗めるが如く川下より川上へ飛ぶを見る。綠陰步道の下に輕鴨の親鳥と子五羽、放水路の河口に親鳥と子七羽見ゆ。鴨の羣れより程よき距離を保ちて燕一羽蝶が花びらにとまるが如く水面に接しつゝ舞ひ飛ぶ。NHK-FM邦樂のひとゝき端唄特輯にて藤本秀晃美の淺草詣り、櫻見よとて、高砂、さい/\節、若宮三千世の推量節、大津繪新口村、戀のよみうり、浮かれさのさ、花季利恵の花は靑葉に、いざや、安珍、新土佐節を聽く。午後いつもの溫泉に徃き露天風呂に浴す。市中紫陽花の色くすみて鮮ならず。今夏雨の甚少きが故にや、或は氣溫著しく低きがためにや。歸途A幼稚園の南なりし曾て農耕馬の厩ありしところを訪ねる。厩舍も農家も姿を消し一面廣大なる水田となりぬ。家にかへりて讀書夕刻に至る。BS日テレ笑點火曜なつかし版にて大木こだまひゞきの漫才、イエス玉川の漫談を聽く。それ/″\平成十九年七月二十九日と八月五日放送の囘なり。
鱗雲天を覆ひてさながら秋空の如し。斯くも早朝福祉センターに赴き健康診斷を受く。身丈五尺九寸七分、體重十七貫八百九十三匁、血壓上九十六、下六十五。NHK-FM邦樂のひとゝき吟詠特輯にて伊藤契麗の雨そゝぐ、涼州詞、浅田聖謙の山にして、後夜佛法僧鳥を聞く、八代光晃子が銷夏の詩、海南行、中武玲星の餘生、春日山懷古、辻本水晴が望湖樓醉書、靑葉の笛、長山國嶺が一の谷懷古を聽く。ニッポン放送高田文夫のラヂオビバリー晝ズを聽く。高田氏市川海老藏が妻小林麻央の訃報マスメディアを賑はせる理由を解さぬ若人に懇切丁寧に說きたり。海老藏は將來團十郎を襲ふべき人にて團十郎とは江戶時代以來日本一の好男子の代名詞なれば當今のジャニーズ事務所所屬藝人百萬人合はせてもかなはぬ存在なり。その奧方が他界したるは一大事なり。當節の若者その價値を知らず。歌舞伎にては例へば看板の一枚目に座長高田文夫の名を書き、二枚目の板には海老藏と書き、三番目にはビートたけしと書く。從つて二枚目は美男子、三枚目は滑稽人の謂なり、云々。午下インターバル速步を再開し河畔を步す。先月十日咽頭炎を患ひて以來一箇月半ぶりなり。ガードレールまはりの雜草悉く刈りとられて步みやすし。下川原橋下の中州に小さなる龜一匹甲羅干をなせり。放水路の河口に輕鴨の親二羽子五羽。燕、土鳩、鵯、雀。午後讀書。BS日テレ笑點月曜なつかし版にて今いくよくるよと中川家の漫才を聽く。平成十五年五月四日と十一日の高座なり。
朝七時ごろ地震あり。尾州震度三、長野縣南部震度五强。陰雲天を蔽ひ始て黴雨らしき空合なり。BS-TBS落語硏究會にて柳家喬太郎の宋漢、柳亭市馬が花見の仇討を聽く。喬太郎の噺はわづかに橘家圓喬の速記が殘るばかりにて當世誰も語らぬ他愛なきバレ噺なれど最後まで面白く聞かしむるは喬太郎が話術のなせる業なり。市馬は芝居と唄達者にて決して力演せず明るく輕く語りて佳し。NHK總合桂文珍の演藝圖鑑にて春風亭一之輔のかぼちや屋を聽く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて三代目三遊亭金馬の藏前駕籠を聽く。昭和三十八年十月十五日ニッポン放送演藝倶樂部の音源なり。TBCラヂオ魅知國寄席にて桂小南治が鰻の幇間を聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて桂文三のうどん屋を聽く。去一月二十一日梅田藝術劇塲シアター・ドラマシティ第百十五囘上方落語をきく會晝の部の高座なり。無闇矢鱈に甲高き聲に思はず耳を覆ひぬ。東京かわら版七月號に立川左談次の取材記事を讀む。Eテレ日本の話藝にて一龍斎貞心の講談東玉と伯圓を聽く。NHKラヂオ第一上方演藝會にてチキチキジョニーとWヤングの漫才を聽く。ラジオ關西内海英華のラジ關寄席にて笑福亭呂好の鐵砲勇助を聽く。中京テレビ笑點にて母心の歌舞伎漫才を聽く。
曇天。BS-TBS落語硏究會にて柳家小滿んの髮結新三・下を聽く。長兵衞が新三を說得する條にて二人の上下逆になりしがすぐさま元通りになりぬ。瑕釁と云ふべし。小滿んは過度なる寫實主義を排し淡々と語るがゆゑに卻つて無賴漢が身持の惡さを浮彫りにす。NHKラヂオ第一キャンパス寄席にてインディアンスの漫才、ラバーガールのコント、立川志ら乃の時そばを聽く。NHK-FM邦樂百番にて米川文子が楓の花、老妓抄を聽く。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて三遊亭遊雀の一目上り、柳家蝠丸の寢床を聽く。蝠丸は二十數年ぶりにこの噺を語る由にて、旦那が機嫌を直す條なくサゲもまた風變りなり。
薄く曇りて寒し。スポーツ報知の記事によるに三遊亭圓樂落語藝術協會に客員として加入するといふ。NHK-FM邦樂ジョッキーにて市丸の端唄茄子とかぼちやを聽く。午後いつもの溫泉に徃く。水田に小鷺三羽、鳧一羽。水田近くの民家に阿武松部屋の幟あり。大相撲名古屋塲所の稽古塲なるべし。
曇天。朝風冷なること彼岸の頃を思はしむ。コメダにて朝飯を喫す。八時四十分豐田學舍に赴く。鶯の囀りに出迎へらる。先週に引續きギジェルモ・デル・トロ監督の活動寫眞パンズ・ラビリンス後半を鑑賞す。上映後受講生全員に感想文を書かしむ。皆長文を書きてくれたり。脚本、俳優の演技、音聲と音樂の效果、美術、特殊メイクいづれも高き評價を得る。正視に耐へない殘酷なる描寫の怖さに淚流れて止まらずと答へし女子學生あり。中京大學スポーツ科學部には純朴なる學生多し。歸途ロイヤルホームセンターに立寄りセキセイ鸚哥の餌とカナリアシードを購ふ。NHK-FM浪曲十八番にて春野美恵子が湯島の白梅お蔦と主稅を聽く。昨夜錄畫し置きたるBS11柳家喬太郎のイレブン寄席にて三遊亭遊馬の蛙茶番、新山ひでややすこの漫才、瀧川鯉昇が粗忽の釘を聽く。遊馬は褌を締忘れし建具屋の半公が往來にて下半身を露出する塲面までを語りてサゲには至らず。鯉昇の噺は箒の代りにロザリオをかけるなり。
風雨瀟瀟たり。夏至とは名ばかりに寒きこと秋の如し。葡萄牙と西班牙熱波襲來し氣溫連日攝氏四十度を超ゆ。巴基斯擔は五十四度に達すといふ。余曾て馬德里に遊學せし時攝氏四十三度を實驗せしことありけり。日向は暑氣酷烈なりしが彼の地は空氣甚乾燥したるを以て日蔭に日光を避ければ涼風水の如く體感氣溫は十度ぐらゐ下がりたり。昭和六十一年八月の事なり。指を屈すれば三十年の昔とはなれり。NHK-FM邦樂のひとゝきにて岡本宮之助の新内おしゆん傳兵衞浮名繪草紙を聽く。三重愛知土砂災害の臨時報道に放送二度中斷せらる。終日讀書。雨は夕刻に歇みしが陰雲散ぜず。
蚤起。曇天。旦暮風の冷なること夏至の時節とも思はれず。セキセイ鸚哥のアサリ君余の朝餉に興味津津、好物のブロッコリーとハムを食ひ、紅茶のカップによぢ登らんとし、ヨーグルトの皿にも嘴をつけむとす。アサリ君は食の冒險家なり。NHK-FM邦樂のひとゝきにて鳥羽屋三右衛門の長唄橋辨慶、猿舞を聽く。午後いつもの溫泉に徃き露天風呂に浴して後シルク風呂に半身浴をなす。歸途主治醫を問ひ藥を乞ふ。岩作の水田に鳧悠々と飛びてキィ/\と頻に啼くを聞く。强風吹出づ。BS日テレ笑點火曜なつかし版にて六代柳家小さんの無精床を聽く。平成十九年七月二十二日の高座にて僅六分なり。
晴。讀賣新聞にて青山七恵による松浦理英子が新作小說最愛の子どもの書評を讀む。「愛し甲斐のある世界を想像力によって立ち現そうと」といふ文言に一驚を喫す。立ち現すなどいふは日本語の語彙に存在せず。NHK-FM邦樂のひとゝきにて佐藤紀久子が地唄茶の湯音頭、井口法能の石山源氏(上)を聽く。午下髮を理す。桌上型電腦ThinkCentre M58のWindows Defenderを用いて初て硬盤のフルスキャンを實行す。CPUはIntel Core 2 Duo E7500、メモリ四ギガバイトなり。作業に五六時間を要すべしと見積もりしに僅二時間にて完了したり。餘計なる軟件一つとしてなきがゆゑなるべし。始て夏らしき暑さになりぬ。燈ともし頃風の鎭まるを待ちてこの夏始て空氣調節器を用ひ除濕す。夏といふ季節名には謎あり。高島俊男著漢字と日本語(講談社現代新書)によれば支那の春秋時代頃までは季節の名稱は春と秋のみにて、一年また歲月を春秋と呼び、年代記も春秋と云ひたり。その後一年を四季に分けるやうになりしが、春と秋とのあひだの暑い季節を何故に夏と呼びしにや定かならずといふ。元來夏の字は漢や唐に類する王朝名といふよりは中國人といふ意味なりしやうにて、中原すなはち現在の河南省あたりに住する人々が自らを周邊諸族と區別して夏と自稱せしといふ。夏には大きいといふ意味あり。周邊諸族より背丈高かりしがゆゑとの說もあり。從つて植物の丈が高くなる季節なるが故に夏と呼びたりと唱へる說もあれど牽强附會の感ありとは高島先生の解說なり。手許の大修館書店新漢語林にて夏の解字を讀むに、冠や面をつけし人の頭の象形にて、兩手兩足を動かして雅やかに舞ふ夏祭のさまより夏の季節を表し、夏の季節の盛んなるさまより轉じて大きいの意、大いなる國、中國の意をも表すとの說明あり。餘りにも粗雜なる論理といふべし。白川靜先生の字通を繙くに、夏の字は舞冠を被り儀容を整へて舞ふ人の形にて、夏を中國の意に用いる例は春秋時代の金文にあり、季節名に用いる例は春秋時代以後にありといふ。詮ずるに夏は始め中國を指し、後に季節をも指すに至りしがその理由は不明のやうなり。BS日テレ笑點月曜なつかし版にて国本武春の浪曲巖流島うた繪卷を聽く。平成十五年四月二十七日の高座なり。ロック音樂を流し自ら三味線を奏して語りたり。
雨もよひの空なり。NHK總合桂文珍の演藝圖鑑にて林家三平の紀州を聽く。相變らず滑舌惡し。擽りのみにて笑はしむるは御家藝といふべし。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて三遊亭圓歌の授業中を聽く。昭和五十七年十一月二十六日日比谷藝術座東寶名人會第九百六十六囘の高座なり。TBCラヂオ魅知國寄席にて三遊亭金遊が宿屋の仇討を聽く。發聲も語りも頗賴りなけれどこれまた寄席藝人の味はひなり。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて桂南天の代書を聽く。本年一月二十一日梅田藝術劇塲シアター・ドラマシティ第百十五囘上方落語をきく會晝の部の音源なり。アットエフエム山下達郎サンデー・ソングブックにて山下氏演奏會特集を聽く。昨年九月十日EX THEATER ROPPONGIにて催されし難波弘之鍵盤活動四十周年紀念演奏會に於るサテンの夜心に沁みぬ。Eテレ日本の話藝にて桂南光の拔け雀を聽く。サゲは京の天狗山の大杉ぢや、天狗になるなといふことぢやなり。NHKラヂオ第一上方演藝會にてアインシュタインと大木こだまひゞきの漫才を聽く。黃昏微雨ぽつり/\ふる。每日新聞の輿論調査によるに安倍内閣支持率三割六分、不支持率四割四分の由。事の次第はさておき新聞各紙報道機關は世論と書きてヨロンと讀ましむ。これ甚亂暴なり。ヨロンは輿論と書くべし。世論は本來セイロンと讀むべき語なれど、當用漢字なるもの制定されたるを機に操觚者ども世の字を輿のかはりに用い始めたり。當用漢字また現今の常用漢字いづれも社會に於る漢字使用の目安を示すのみにて何ら强制せられるべきものにはあらざるに、操觚者は官廳の訓示に唯唯諾諾と從ふなり。滑稽の至りと謂ふべし。BS12ミッドナイト寄席ゴールデンにて林家木りんの金明竹、三遊亭わん丈のプロポーズを聽く。TOKYO FM落語千金にて春風亭ぴっかり☆の思ひ出預金を聽く。
輕陰。關西發ラヂオ深夜便にて桂小春團治の斷捨離ウォーズを聽く。セキセイ鸚哥のアサリ君シヾミ君朝餉サラドのハムとレタスをもり/\食ふ。朝日新聞に山田洋次と女優のんの對談を讀む。余もまた良質の喜劇映畫を待望する者なり。下妻物語以來大に笑ひ大に泣きし作品なし。NHKラヂオ第一眞打競演にてチャーリーカンパニーのコントあの手この手、ペヽ桜井のギター漫談、入船亭扇遊のお見立てを聽く。NHK-FM邦樂百番にて宇治紫文が一中節松の羽衣、家櫻傾城姿を聽く。余は此まで一中節に心を動かされしことなかりしにこの日初て宇治紫文の唄を聞き哀切しみ/″\と胸に迫りぬ。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて春風亭百榮が生徒の作文、山遊亭金太郎のたらちね、桂小南治の鼻ねじを聽く。BS朝日お笑ひ演藝館にて亜空亜SHINの變面を見る。
薄く晴れて涼風昨日の如し。NHK-FM邦樂ジョッキーにて常磐津千東勢太夫の常磐津夕月船頭を聽く。日本ペンクラブ共謀罪强行採決抗議の聲明を發表す。午下ことぶきの湯に徃き露天風呂に浴す。歸途ヤマト運輸に立寄りS子N子に慈君自製の紫蘇ジュースを送る。空隈なく晴れわたりぬ。
蚤起。快晴。Yahoo!ニュースに日本テレビの參議院本會議共謀罪法案採決生中繼を見る。山本太郎牛步の後怒りの叫びをあげ澀々反對票を投ず。本日の授業は待望の映畫鑑賞會なり。この夏初て半袖シャツを着る。コメダにて朝飯を喫す。九時前豐田學舍に着す。講師控室に赴かんとするに擔當職員M氏黑き日傘をさして現れお早うございますと挨拶せらる。樹木の梢に不如歸の囀りを聞く。二十一號館五十五番敎塲にてギジェルモ・デル・トロ監督の活動寫眞パンズ・ラビリンス前半を鑑賞す。初めの中はスマートフォンに夢中の學生數名ありしかど竹節蟲が妖精に變化しパンが登塲するに至りて學生諸氏固唾を飮みてスクリーンを見つめたり。ビダル大尉が容疑者の顏面を罎にて毆殺する塲面、また山の洞穴に隱れゐるゲリラの壞疽を起したる脚を醫師フェレイロが弓鋸にて切斷する塲面にては思はず目を背ける者尠からず。軍事獨裁政權と反政府ゲリラの戰鬪を描く作品を鑑賞する今朝恰も國會にて治安維持法可決せらる。前半を見終へて白紙を配布し感想を書かしむ。皆長文を書きてくれたり。午下家にかへる。NHK-FM邦樂のひとゝきにて玉川太福の浪曲靑龍刀權次爆裂お玉を聽く。昨夜錄畫し置きたるBS11柳家喬太郎のイレブン寄席にて林家染雀の腕食ひ、桂あやめが妙齡女子の微妙なところ、二人が藝者に扮する姉樣キングスの音曲漫才を聽く。派手なる化粧かけあひの間合唄のとぼけたる味ひいつもながら樂し。自民公明兩黨の惡政と度重なる天災により身心衰弱しつゝある余の心を慰め得るは偏に寄席演藝なり。落語は人間の愚かさ滑稽さを抉り出し、噺家は亂世の最中といへども平然として泰平の世に在るが如く滑稽風刺に腐心するなり。これにつけて思ひ返さるゝは小沢昭一の述懷なり。
敗戦というのは、私たちの人生における最大のショックでした。それまで黒と教えられてきたものが白になってしまって、みんな精神的にぐらつくわけです。
でも、落語の世界だけは変わらなかった。今の上野の鈴本演芸場の前の焼け跡に、ほんの二十人ばかりしか入れないような葦簀張の仮設の鈴本ができまして、そこに通っていると、戦前とまったく変わらない。軍国主義の時代から、落語という土管をくぐって、戦後にすんなり入っていけたような気がします。落語のおかげで、挫折感みたいなものなしに、戦後を生きることができた。これも落語の恩ですね。
小沢昭一「寄席と私」『小沢昭一がめぐる寄席の世界』
ちくま文庫、2008年、p. 5-6
日本氣象協會の網站を閱するに尾州今月七日頃入梅せしといふ。然れどその後は雨らしき雨ふらず。この日强風終日歇まず。
快晴。電腦三臺にWindows Updateを適用せしむ。父上の印刷機インクカートリッジを交換す。NHK-FM邦樂のひとゝきにて清元延初磨の明烏を聽く。午下自動車修理工N氏を訪ひ自家用車の名義を變更す。夕餉に北海道產蜆の味噌汁を食す。大なること淺蜊かと思はるゝほどなり。福島みずほのツイートによるに與黨自民黨參議院法務委員會に於て共謀罪法案を採決せず本會議にて强行採決するといふ。立憲主義危殆に瀕す。
天氣好晴。去八日尾州入梅せしと思ひしかどその後雨なく、吹通ふ風の涼しさ夏とも思はれず。NHK-FM邦樂のひとゝきにて杵屋利光の長唄五段目角兵衞獅子と七段目お輕を聽く。午後いつもの溫泉に浴す。受付孃と立談。黴雨の時節には朝刊の新聞紙に降水確率八割以上と記載されし日はもれなくスタンプ一個進呈する由なれど本年は未だ梅雨入りせず氣象報道によるに空梅雨の虞れあり。歸途エコハウスに立寄り父上の筆記型電腦ThinkPad R40eを廢棄す。久振りにて坂本龍一の音樂圖鑑完璧盤を聽く。
陰晴定らず。涼風の心地よさ言はむ方なし。NHKラヂオ深夜便話藝百選にて三遊亭萬橘の雛鍔、古今亭志ん陽が疝氣の蟲を聽く。萬橘は擽り餘りにも多きがゆゑサゲ弱くなりぬ。NHK-FM邦樂のひとゝき箏曲特輯にて山路みほの手事、鈴木璋子の櫻狩を聽きつゝ大學受驗敎材を作成す。父上十數年使ひ古したる筆記型電腦ThinkPad R40eを處分したしといふ。筐體よりハードディスクを引拔き六角棒スパナを用ゐて周圍の螺子を外しディスクを剝出しにして金槌を以て叩けば盤面硝子の如く粉微塵となりぬ。元沖繩縣知事大田昌秀歿。行年九十二。TOKYO FM落語千金のポッドキャストにて立川談笑の火焰太鼓、崇德院、お神酒德利、猫の皿、火事息子、春風亭昇々のインドで暮らそう!、井戶端會議、春風亭ぴっかり☆のカブと株を聽く。
曇天。涼風颯颯たり。NHK總合演藝圖鑑にて桂文枝の宿題を聽く。創作意欲一向に衰へず噺の水準常に高きを保つは驚くの外なし。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートにて春風亭柳昇が課長の犬を聽く。平成四年十一月二十日日比谷藝術座東寶名人會の音源なり。TBCラヂオ魅知國寄席にて立川談幸の鹿政談を聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて桂吉弥が地獄八景亡者の戲れ後篇を聽く。RSKラヂオサンデー落語最終囘にて桂米朝の膽つぶしを聽く。平成六年八月三十一日サンケイホール米朝一門會の高座なり。山下達郎サンデー・ソングブックにてワーナー・ソフト・ロック・ナゲッツ特輯第二囘を聽きつゝ大分大學受驗敎材を作成す。
Eテレ日本の話藝にて三遊亭圓窓のつるを聽く。サゲは隱居の首が長くなるなり。NHKラヂオ第一上方演藝會にてタージンの漫才、酒井くにおとおるの漫才を聽く。ラジオ關西内海英華のラジ關寄席にて桂小春團治が鴻池の犬を聽く。BS12ミッドナイト寄席ゴールデンにて林家つる子のスライダー課長、一龍齋貞鏡の山内一豐、桂竹千代が五重の答を聽く。つる子は聲の良さ際立ちて口調絕妙なり。師匠當代正藏より餘程才能豐かといふべし。貞鏡は生一本の端正なる語り口好まし。竹千代は突飛なる發想人の意表を突きて面白かれど語り口の拙きを憾む。精進すべし。また五重の答といふ題名は奇を衒ひすぎなり。耳に聞きても意味不明にて字面もわかりにくし。婚活パーティー或は見合などに改題するがよかるべし。
蚤起。薄く曇りて風なし。昨日は深夜東京より歸參せらる父上母上を自働車にて地下鐵驛に出迎へる約束をなせしに、余は燈刻ひとり夕餉を濟ませて食後の抗鬱藥(アナフラニール、アルプラゾラム、スルピリド、ウインタミン、レメロン)を服し、寢臺に橫りて先月三十一日BSプレミアムにて錄畫せしスピルバーグ監督の活動寫眞續・激突!カージャックを見始めるや不覺にも忽眠りに落ちたり。抗鬱藥レメロンに强き催眠作用あるがゆゑなり。ふと目覺めれば午前六時なり。父上母上は昨夜三更步みて歸宅せられたる由。母上に詫びを入れるや眠れてよかつたぢやないと卻つて祝福されたり。昨夕は小平靈園を訪ね、東京驛に鄰接する大丸百貨店のつばめにてS子N子と會食し、父上は大丸にて杖を購はれたり。NHKラヂオ第一眞打競演にて東京ボーイズの音曲漫才、ケーシー高峰の醫事漫談、橘家圓太郎の化物使ひを聽きつゝ長崎大學英語入試問題の模範解答と解說を作成す。NHK-FM邦樂百番にて杵屋東成の長唄讀上問答入り勸進帳を聽く。三重テレビ淺草お茶の間寄席にて春風亭鹿の子の鹿政談、カントリーズの漫才、三笑亭茶樂の寢床を聽く。BS朝日お笑ひ演藝館にて浅越ゴエの報道アナウンサアコント、ぴろきの漫談、ピンクの電話のコント、尼神インターのコントを聽く。ピンクの電話は目出度く結成三十周年を迎へ、テレビ番組にてネタを披露するは平成十九年四月二十二日笑點に出演して以來十年振りなるに、長尺のコント一分の隙もなく緩急巧みなり。
蚤起。薄く晴れて風絕え靜なる日なり。涼しき空に棚引く鰯雲さながら秋空の如し。NHK-FM邦樂ジョッキーにて上村和歌子が地唄霧の雨を聽きつゝ香川大學英語入試問題の正答及び解說を執筆す。午後いつもの溫泉に浴す。稻塲町の水田に小鷺と鳧を見る。
蚤起。陰雨午に到りて歇みしが雨雲なほ去らず。風寒し。今年の夏ほど寒き年は罕なり。コメダにて朝飯に小倉トーストを食す。九時前出勤。敎科書第五課時刻の表現を練習す。余の授業に於ては映像敎材を使はざれど來週は趣を變へて西班牙の活動寫眞パンズ・ラビリンスを鑑賞したく思ふなり、皆さんは如何思し召すやと水を向けるに學生諸氏拍手喝采し歡迎してくれたり。歸途農業協同組合に立寄り三河安城產冷麦を購ふ。NHK-FM浪曲十八番にて東家若燕の忠治八百屋を聽く。曲師水乃金魚。鳥取大學の英語入試問題模範解答と解說を執筆す。夕刻暗雲散じて靑空現る。
風雨。朝風冷なり。昨日九州山口縣入梅せしといふ。尾州も梅雨入りしたるべし。午前市役所福祉課に赴き自立支援醫療受給者證更新の手續をなす。歸途齒科醫A氏を訪ひ前齒に詰物を裝塡せしむ。午下家にかへりてNHK-FM邦樂のひとゝきに竹本越孝の義太夫生寫朝顏話宿屋の段を聽く。書窓黯澹晝もなほ黃昏の如し。南青山紅谷の羊羹と虎屋の紅茶入羊羹を食す。今月三日午前零時十五分BSプレミアムにて錄畫し置きたるジャン・ルノワール監督の活動寫眞ゲームの規則を看る。細雨夜に入るも歇まず。
曇天。風連日凉し。NHK-FM邦樂のひとゝきにて吉住小代君の長唄江島生島を聽く。德川家繼が奧女中江島との情事の廉にて三宅島に流されし歌舞伎役者生島新五郞が狂ほしく江島を思ふ唄なり。午後いつもの溫泉に徃き露天風呂に浴す。歸途主治醫を訪ひ診察を乞ふ。鰯雲の棚引くさま宛ら秋空のごとし。燈刻昨日開院せしばかりの皮膚科に徃き治療を請ふ。待合室にて待つこと二時間半、診察僅一分。
快晴。朝風冷なり。NHKラヂオ深夜便話藝百選にて桂文雀の權兵衞狸、立川左平次が寫眞の仇討を聽く。番組解說者柳家さん喬は入船亭扇橋に權兵衞狸を敎はりたりといふ。NHK-FM箏曲特輯にて平塚芳朗が雲の峰と平野春海の石橋を聽きつゝ愛媛大學英語入試問題の正答と解說を執筆す。午下理髮舖に徃く。二十歲ぐらゐと思しき金髮の白人靑年二人あり。理髮師との談話を聞くにマンチェスターより來りし英國人大學生なり。家にかへりて再び敎材を作成す。フアン・ゴイティソロ歿。行年八十六。慈君この夏初て紫蘇ジュースを作らる。
晴。風强し。兩三日涼しさ秋の如し。NHK總合桂文枝の演藝圖鑑にてなすなかにしの漫才と蜃氣樓龍玉の强情灸を聽く。文化放送志の輔ラジオ落語DEデートにて三代目三遊亭金馬の萬病圓を聽く。昭和三十六年三月一日ニッポン放送お樂しみ演藝會の音源なり。TBCラヂオ魅知國寄席にて六華亭遊花のぞろぞろを聽く。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭にて桂吉弥の地獄八景亡者の戲れ中篇を聽く。RSKラヂオサンデー落語にて桂枝雀の皿屋敷を聽く。平成四年七月一八日サンケイホールにて催されし米朝一門會の高座なり。昨夜錄畫し置きたる三重テレビ淺草お茶の間寄席にて三遊亭遊雀の堪忍袋、古今亭今輔の雜學刑事、昔昔亭桃太郎の結婚相談所を聽く。遊雀は夫婦喧嘩の顚末に終始し堪忍袋には觸れざりしがマクラも噺も大に笑はしむ。今輔はクイズ番組に出演せしことある自身の雜學を生かす新作なり。アットエフエム山下達郎サンデー・ソングブックにてワーナー・ソフト・ロック・ナゲッツ特輯第一囘を聽く。曲目を茲に記し置く。
Eテレ日本の話藝にて桂文治のやかんなめを聽く。マクラの談に先代文治は終生越中褌を愛用せしといふ。可内が主人たる武士を旦那樣と呼ぶを聞きて余は首を傾げぬ。武家の下郞果して主人を旦那と呼ぶや否や。ラジオ關西内海英華のラジ關寄席にて桂福也の阿彌陀池と笑福亭喬樂の花色木綿を聽く。喬樂のマクラ徒に長し。
薄晴。NHKラヂオ第一眞打競演にて三遊亭小圓歌の三味線漫談と鈴々舍馬櫻が宿屋の仇討を聽きつゝ山口大學英語入試問題の模範解答及び解說を執筆す。NHK-FM邦樂百番にて福田栄香が地唄儘の川、八段の調、笹の露を聽く。午下乘合自働車と地下鐵道を乘繼ぎて上社に徃き名東文化小劇塲に赴く。柳家さん喬柳家權太樓二人會なり。座席十列八番。ほゞ滿席。開口一番柳家花綠の弟子にて去年二つ目になりし柳家圭花狸の鯉を語る。權太樓一席目はさぞかし輕き噺にて客の窺ふべしと思ひしにいきなり十八番猫の災難を語る。さん喬一席目は時節にふさはしき船德を語りたり。精妙なる語り口に四萬六千日の炎熱を感ぜしむ。仲入後さん喬二席目は短命なり。權太樓登塲しマクラにて曰くさん喬は今宵池袋演藝塲の主任なるを以て東京にとんぼ返りするといふ。さらに曰く本日此までの三席は酒と若旦那と鸚鵡返しのネタなりしかば四席目は他のネタを選ぶが筋なれど、けふは通例を破りて若旦那を出します、けふは若旦那特輯ですと云ひてたちきりを語り始む。權太樓は爆笑派といふ宣傳惹句がつきものなれど人情噺思はず人をして膝を乘出さしむ。藝者の名は小絲ならずお久なり。余は八代目三笑亭可樂の靜謐なるたちきりを好むなれば若旦那と女將の演技やゝ大袈裟に感じたり。然れど過剩演技は權太樓の持味といふべし。塲内水を打ちしがごとく靜まり余も固唾を飮みて噺に聞入りたり。サゲを言ひ終へるや滿塲拍手喝采に包まれぬ。家にかへれば正に五時なり。
曇りて風涼し。慈君のはなしに未明雷雨の音聞えたりといふ。NHK-FM邦樂ジョッキーにて芳村伊十郎の長唄五郞時致を聽きつゝ秋田大學英語受驗敎材を作成す。正午齒科醫A氏を訪ひ定期檢診を受く。午下ヤマト運輸に赴きN子に食品一箱を送り、ことぶきの湯に立寄りて露天風呂に浴す。家にかへりて熊本大學の敎材を作る。風終日烈し。
舊五月七日。昨宵降始めし雨は拂曉歇みしかど暗雲天を閉ざして早くも梅雨空の如し。咖啡所コメダにて朝飯を喫す。九時前出勤。授業前半は所有詞前置形と後置形を講じ、後半は余が作成せし西班牙料理店の獻立表を配布して學生諸氏客となり余は給仕人を演じて獻立注文の仕方を練習す。無論料理は出さゞるに學生一同入念に獻立を選ぶさま寔に愛らし。溽蒸たへがたく汗吹出でゝ肌を流るゝこと瀧の如し。午下家にかへる。NHK-FM浪曲十八番にて玉川福助の天保水滸傳鹿島の棒祭りを聽く。曲師佐藤貴美江。この日郵便料金値上。端書五十二圓を六十二圓、封書六十二圓を八十二圓となす。