小雨ふりてはまた歇む。演出家の需に應じて臺本第二校を刪定す。ウェス・クレイヴン歿。享年七十六。晡刻接骨醫T氏を訪ふ。
秋霖霽れず。NHK總合演藝圖鑑にU字工事の漫才、桂米助の落語禁止法を聽く。市長選擧投票所に徃き現職Y氏に一票を投ず。セキセイインコのシヾミ君が爪の伸びたるを切りてやるに、姑くして全身及び籠の中血まみれになりぬ。思はず深爪したり。慈君籠をベランダにて洗ひ、予は脫脂綿をぬるま湯に浸して顏と足、尾羽の血痕を拭へり。シヾミ君の色は白に紫がゝりし靑の模樣あり、先ごろ飮ませし藥は黃色にて口の周りに黃色い染みあり、本日は鮮血を浴びて赤く染まり、赤靑黃揃ひて恰も信號機の如し。後に樣子を仔細に觀察するに、顏の左半分血まみれになりしは足の出血によらず、兩三日前嘴のつけ根に出來しおできの潰れしによれるなり。三重テレビ淺草お茶の間寄席に三遊亭歌奴の佐野山を聽く。發聲頗佳し。金原亭馬生稽古屋を聽く。この日國會議事堂前にて安全保障法案に反對する示威運動あり。數萬人集まりしといふ。全國各地二百箇所にても大小樣々なる示威運動あり。
秋雨蕭〻、書窓黯澹たり。夜中メ～テレにて錄畫せし活動寫眞インクレディブル・ハルクを看る。愚作なり。DVDにて地中海式人生のレシピを看る。退屈この上なし。
曇天。驟雨沛然たり。Eテレえほん寄席に桂宗助のえんぎかつぎを聽く。慈君と倶にあぐりん村に赴き葡萄梨蕃茄苦瓜茄子など購ふ。家にかへりて小憩の後ヤマト運輸集配所に行きS子N子に食料品を送る。來年二月公演の臺本初稿を飜譯す。晡時地下鐵道にて榮に出で、中電ホールに赴く。第九囘柳家喬太郎獨演會なり。客席滿席。開口一番二つ目柳家喬の字浮世床を語る。徒に長く三十分も語りぬ。喬太郎登塲してマクラに二十五分を費やして後梅津忠兵衞を語る。終幕子々孫々といふ語句を失念する珍事あり。仲入り後喬太郎ふたゝび登塲して牡丹燈籠栗橋宿を語る。お峰が久藏を騙して夫伴藏と酌婦お國の姧通を聞き出す演技、また伴藏が開き直りて怒鳴り散らして後に心を入替へ土下座する演技、幕切れのお峰殺しの簡潔なる演出、いづれも寔に佳し。家にかへれば夜は二更なり。小憇の後いつもの溫泉に徃き露天風呂に一浴す。秋雨終日ふりてはまた歇む。
晴れてやゝ暑し。咖啡所コメダに朝餉をなす。九時半MOVIX三好十番館にてコリン・トレヴォロウ監督の活動寫眞ジュラシック・ワールドを看る。昨夜Ain't It Cool Newsを一閱してスターウォーズ第九作の監督に拔擢せられしを知り、技倆を確認せむと思ひて活動小屋に馳せ參じたるなり。脚本拙劣、コンピューターグラフィックスは旣視感を覺えるのみにて、忘れがたきショット一つとしてなし。凡作なり。ラプトルが群衆を襲ふ塲面にて予はヒッチコックの名作鳥の名高き塲面を腦裏に思ひ浮べるばかりなり。恐龍インドミナスに追はれし兄弟が瀧壺に身を投げて一命をとりとめ、森の癈屋に辿り着きし時には何故にや頭髮も衣類も濡れをらず、兄は弟に燐寸はあるかと尋ね、弟が囊中より燐寸箱を取出すにカタ／＼と乾きたる音して、兄は平然と燐寸を擦り松明に火を燈すなり。この一事を以て見るも脚本の疎漏多きを知るに足るべし。スクリーンサイズの奇妙なるに一驚を喫す。シネマスコープより狹くビスタサイズより若干廣し。二對一の變形サイズなり。晝過家にかへる。戲曲の添刪を終へる。ブレヒト作アンティゴネを讀む。晡時地下鐵道にて上社に出でゝ名東文化小劇塲に徃き、柳家喬太郎三遊亭白鳥林家彦いち三人會を聞く。若干空席あり。三人手にマイクを持ち花道より緞帳前に現れ近況を語り合ひて後、白鳥もう半分を語り始む。背の高き主人はスナフキン、女房はミー、客はムーミンなり。題してメルヘンもう半分なり。次に喬太郎登塲し、ほんとのこといふとを語る。仲入後ふたゝび喬太郎登塲して宋漢を語る。喬太郎は九月六日湯島天神にて催す謝樂祭（舊圓朝まつり）の實行委員長にて繁忙を極め、明日また名古屋にて獨演會あるが故にや、今宵は短き噺二席のみなり。トリの彦いちはお馴染みの長島の滿月を語りたり。九時終演。
朝來雨ふりてはまた歇む。風寒し。倦怠感甚しく何事をもなす能はず。東京かわら版九月號に柳家小滿んの取材記事を讀む。名言多し。
小雨ぽつ／＼ふりて暗き日なり。風肌寒し。中日新聞朝刊にレビー小體型認知症といふ病の記事あり。慢性的倦怠感、頭痛、手の震へ、意識朦朧、低血壓、對人恐怖症など予に當てはまる症狀少なからず、然れど幻視のみ予は體驗せしことあらず。午前驛前の理髮舖に徃く。近くの現金自動預拂機にて偶然慈君に逢ふ。買物に來られしなり。谷川道子先生近著ブレヒト作アンティゴネ（光文社古典新譯文庫）を惠與せらる。午後主治醫を訪ひ診察を請ふ。一昨日會合にてしどろもどろの返答をなして氣鬱增したる旨告げるに、ツムラ黃連解毒湯といふ漢方藥を處方せらる。風雨の聲淙々として溪流のごとし。夜に入りて强風吹き出でゝ颱風十五號の近きを知らしむ。いつもの溫泉に徃き露天風呂に浴す。BS11藝賓館に春風亭百榮のコンビニ强盜、師春風亭榮枝の蜀山人を聽く。蜀山人の狂歌に、神ならば出雲の國に行くべきに目白で開帳谷保の天神とあり。谷保の天神をつゞめてやほてん、轉じて野暮天の語源となりしを知る。三重テレビ淺草お茶の間寄席に金原亭馬玉の無精床、三遊亭鬼丸の新粗忽長屋、柳家喜多八の親子酒を聽く。
くもりて風涼し。アサリ君けふは蟲の居所惡しと見え、好物のレタスをちらつかせても興味を示さず、寢床代はりの鞦韆にとまり、またはシヾミ君の籠の屋上に體を丸めて目をつむり動かざるなり。薔薇の花束の祕密臺本を刪定す。晡時接骨醫T氏を訪ふ。家にかへりてアサリ君に藥を飮ませ體重を測る。二十九グラムなり。食慾進まざる樣子にて心細き限りなり。昨日錄畫し置きたるBS-TBS落語硏究會に五街道雲助の庚申待ち、春風亭一朝の中村仲藏、Eテレ日本の話藝に柳家小三治のお茶汲みを聽く。BS日テレ笑點デラックスに當代金原亭馬生のざるやを聽く。
曇天。モーニングを食さむとて陋屋の裏なる喫茶店に行くに満員にて席なければ驛前のドーナツ屋に朝飯を喫す。地下鐵道にて名古屋驛に出で、新幹線のぞみ號に乘り東へ下る。自由席の車兩さほど混雜せず。東京驛下車、中央線快速に乘換へ吉祥寺に出で、驛前なる吉祥寺シアターに赴く。靜岡藝術劇塲制作部T氏K氏と相識りたり。一時イプセン作、森新太郎演出の芝居人民の敵を看る。簡素なる眞四角の板張り舞臺を客席四方より圍みたり。正目看客席に渡辺保氏の姿見ゆ。四時終演。新宿に出でゝ椿屋珈琲ひがし離れに赴き、薔薇の花束の祕密拙譯臺本につきて森氏と協議す。T氏K氏も同席せられたり。話合ひ三時間に及ぶ。山手線にて品川に出で、新幹線のぞみ號に乘る。家にかへれば夜は三更に近し。
朝の中小雨ふりしが夕刻に至りて晴る。風連日凉し。NHKラヂオ第一眞打ち競演に新山ひでや・やすこの漫才、堺すすむのギター漫談、鈴々舍馬櫻の厩火事を聽く。BS-TBS落語硏究會に柳家喬太郎の孫歸る、春風亭一之輔のめがね泥を聽く。アサリ君好物のオーツ麦を殆食はず。體重二十八グラムに減りぬ。寢臺特急北斗星運行終了す。予が最後に乘りしは二十年前なり。夜初更北の空に花火を揚る響きこゆ。
朝の中雨降りしが須臾にして霽る。Eテレえほん寄席に古今亭志ん五の鈴ヶ森を聽く。倦怠感去らず、臥褥に入りて惰眠を貪る。窗外につく／＼法師の啼くを聞く。昏刻いつもの混堂に徃き一浴す。蟲聲喞〻たり。
朝の中雨盆を覆すが如し。須臾にして小止みとなる。アサリ君を車の助手席に乘せ神領の動物病院に徃く。混雜甚しく一時間半待ちて漸く診察室に呼ばる。アサリ君二週間ぶりにピーと元氣よく囀りたり。藥の效驗あり、暫くはこのまゝ同じ藥を投與するべしと院長A氏の話なり。アサリ君がシヾミ君の籠の屋上に腹這ひになるは不健康の故ならず發情の仕草なるべしとぞ。予大に安堵す。アサリ君滿八歲の老年に及びて情癡なほ靑年の如し。笑ふべく、また大に賀すべきなり。谷崎潤一郎君に話してやりたしと思へど鬼籍に入りて久しければ欲すれど能はず。午下家に歸る。けふも倦怠感甚しく机に倚りがたし。午睡を貪る。蟲聲昨夜に比すれば更に多し。慈君無花果ジャムを作らる。BSフジ落語小僧に新作特輯を聽く。中學一年生苦樂亭淳之助の書いたものがものを言ふは米朝の小噺を自ら飜案し、口跡明瞭人をして感服せしむ。小學三年生大福亭かなとの三成は滑稽なる仕草にて笑はす。指南役春風亭昇太空に願ひをを口演す。
どんより曇りし空雨ともならで暮れたり。倦怠感甚しく何事をもなす能はず。褥中に在りてBS日テレ笑點特大號に三遊亭龍樂の七箇國語リレー落語味噌豆を聽く。西班牙語英語伊太利語佛蘭西語獨逸語葡萄牙語日本語なり。日本語は主人が小僧定吉の名を呼ぶのに用ひたり。
空には白雲多く浮びて風涼し。アサリ君予がサラドの胡瓜を少し啄みて後ハムを貪りたり。肉食系鸚哥と呼ぶべし。榮養食ペレットには興味なきとおぼしく見向きもせず、相變らずオーツ麦ばかり食ふなり。呼吸は正常に復したるやうに見ゆれど二週間前より一度も囀らず、また時折シヾミ君の籠の屋上に腹這ひになりて動かざることあり。けふも園丁來りて庭樹の刈込みをなす。午後いつもの混堂に一浴す。歸宅後下痢。頭痛。三重テレビ淺草お茶の間寄席に柳家さん八の紙入れ、柳家小さんの寢床を聽く。
小雨ふりて蒸〻たり。園丁來りて庭樹の刈込みをなす。咖啡所コメダに朝飯を喫す。先月來敎材制作會社を名乘る出版商の需に應じて原稾をつくる仕事に明け暮れるなり。執筆要項によれば原稾の書式は橫書に統一し、區切符號は讀點（、）の代はりに全角コンマ（，）を用ひ、句點はマル（。）を用ふべしといふ規定あり。予は常日頃より橫書の文章を書く際には縱書に準じて句讀點（、。）を用ふるなり。然れど世に流通する橫書の書物を通覽するに、主に理數系の書物は全角コンマ（，）と全角ピリオド（．）を使ふもの多く、公文書また各種辭典においては全角コンマ（，）と句點（。）の組合せを見ることもまた少なからず。然るに予が平生愛用するATOKの句點モードは句讀點（、。）モードとカンマピリオド（，．）モードの二種を搭載するのみにて、全角コンマ（，）と句點（。）の組合せは選ぶこと能はざるなり。已むを得ず予は先づエディタに句讀點を用ひて文章を書き上げ、その後に讀點を全角コンマに置換して淸書するなり。予思へらく、橫書における區切符號の使ひ分けには截然たる規準なし。午前接骨醫T氏を訪ふ。午後札幌より恙なく歸參せられし慈君を地下鐵道に出迎ふ。慈君は土曜日S子N子甥Dと倶にK叔父K伯母の墓を拜し、羊ヶ丘展望臺に立寄り、S伯母を自宅に訪ね、夜は白石なるアサヒビール園にて成吉思汗料理を食せられたり。日曜日は小樽を觀光せられたり。支那人觀光客踵を接したりといふ。小雨ふりてはまた歇む。札幌土產のとうまんを食す。
空には鱗雲廣がり、赤蜻蛉飛びていかにも秋らしき日なり。風涼し。アサリ君を起こすに今朝はヒッ／＼といふ苦しげなる聲を出さず。藥の效驗なるにや。咖啡所コメダに朝飯を喫す。今朝もほゞ滿席なり。外食を好むは名古屋人の特質なり。筆記型電腦を用ひて執筆す。九時過ぎ家にかへりて鳥籠を掃除す。籠の掃除は每朝慈君が行はるなれど、先週末より札幌に滯在中なれば予が代行す。執筆。二時アットエフエム山下達郎サンデー・ソングブックにファンタスティック・バギーズの Anywhere the Girls Are、デイブ・クラーク・ファイブ の Forever and a Day を聽く。T氏來訪。釣果の鰹と鷄魚を饋らる。ことぶきの湯に一浴す。シルク風呂の湯溫三十四度六分。不感溫度浴をなすにはうつてつけなり。湯浴みの客平生に比して三倍に近し。瀨港線の定食屋に梅と蒸鷄の蕎麦、納豆おくら薯蕷、冷奴を食す。食後ファミリーレストランDに徃き、咖啡四杯飮みつゝ筆記型電腦にて執筆す。六時過ぎ家に歸れば秋の日は早くも傾き宵闇次第に町を包みたり。アサリ君微かなる聲にてヒッ／＼と鳴くゐたり。體重をはかるに三十二グラムなり。Eテレ日本の話藝に三遊亭圓輔の蛇含草を聽く。せい／″＼二十分あらば語れる短き噺なれば定めしマクラを長く語るならむと思ひしが、案の定夏の小噺を二ツ紹介して噺に入りたり。三重テレビ淺草お茶の間寄席に古今亭菊志んのつる、柳家喬太郎のそば淸を聽く。夜早くも蟋蟀の鳴くをきく。
朝の中空は隈なく晴れわたりしが午後雲浮び出でゝ次第にくもる。咖啡所コメダに朝飯を喫す。ボックス席滿席、入口には空席を待つ客二三人あり。カウンター席の端に坐るを得たり。卓子に筆記型電腦を開きて山梨大學の英語入試問題正答の解說を書く。一時間ほどして赤子の泣き叫ぶ聲店内に轟き渡り、喧噪長く居るに堪へず、家にかへる。晝前脫稿す。咖啡を煮て一息つき、岐阜大學の入試問題解說を執筆す。晡刻ザ・めしやに飰す。歸途ファミリーレストランDに立寄り、ふたゝび筆記型電腦を用ゐて脫稿す。喫煙席冷房裝置の風つめたきこと宛ら冷凍庫に在るが如し。こゝもまた長く居ること能はざれば日沒のころ家にかへる。アサリ君に藥を飮ませ體重を計る。三十一グラムなり。
曇天。朝夕の風は涼しくなりしが日盛りには攝氏三十四度の暑さなり。敎材作成。山梨大學の英語入學試驗問題の解說を書く。晡時札幌に行かれる慈君を車にて地下鐵道驛に送る。熊田の小動物專門店リミックスに赴きセキセイ鸚哥用のペレットを購ふ。客多く駐車塲ほゞ滿車なるに自動車次々に到着し、誘導員てんてこ舞ひなり。店員は皆男ばかりにて、何故にや服裝だらしなく、ヅボンを腰パンとやらいふ不格好なる穿き方をする者もあり、擧止せはしなく聲の大きなること恰も安酒塲に居るが如き心地す。歸途ことぶきの湯に一浴す。盂蘭盆の連休中のことゝて湯浴みの客多し。家にかへるや日は早くも沒せむとす。アサリ君に藥を飮ませ體重を計る。三十二グラムなり。昨日より一グラム增えたり。昨日より餌箱にペレットを入れしが啄みたる形跡なし。NHKラヂオ第一にいとうせいこうと森村誠一の戰爭對談を聽く。
霧雨降りて涼味襲ふが如し。早朝アサリ君を携へてJ動物病院に赴き院長A氏の診察を請ふ。九時前に到着するに旣にして患者夥しく待合室滿席なり。犬猫は言ふに及ばず兎や豚鼠らしき小動物を連れたる者もあり。一時間二十分待ちて診察室に呼ばる。厚き布にくるみし籠を診察臺に乘せて布を外すにアサリ君止り木より鞦韆に飛び移りてがた／＼ぶる／＼震へり。アサリ君は就眠する時また體の具合よからざる時は必ず鞦韆に乘るなり。キュッキュッといふ苦しげなる鳴聲は出さず、その聲に合はせて尾羽を上下せしむる動きも見られず、A氏によるに藥の效驗あらはれ呼吸はだいぶ樂になりしといふ。今後十日或は一週間藥の投與をつゞけて樣子を觀察することゝす。予大に安堵せり。アサリ君は生來偏食著しく、稗粟などの榖物は一切食はず、オーツ麦のみ貪るなり。セキセイ鸚哥の平均體重は三十五グラム以上四十グラム以下なれど、アサリ君は纔に三十グラムなり。榮養不足を補ふためオーツ麦に加へてペレットを與へるがよろしかるべしとA氏に勸めらる。近年愛玩動物の餌は犬猫のみならず小鳥もペレットを推奬する由なり。A氏深切にもインコセレクションといふ銘柄のバイタルペレット試供品を讓らる。購入するならば井堀交叉點近くのリミックスといふ小動物專門店がよろしと言はる。井堀は草蘆の目と鼻の先にあり。診察料五百四十圓を拂ひ、十一時前家に歸る。シヾミ君の吠ゆるがごとく鳴く聲玄關扉の外まで聞ゆ。慈君の話に、シヾミ君はアサリ君留守のあひだ氣がゝりなるあまり居ても立つてもゐられず籠の中を暴れ囘り必死に鳴き續けたりといふ。無事に歸宅せしを見て途端におとなしくなりぬ。アサリ君食慾漸く增進せしものとおぼしく、けふはオーツ麦をよく食ひたり。燈刻藥を飮ませ體重を測定するに三十一グラムなり。昨日に較べて一グラム增えたり。更に先週水曜日以來一言も囀らざりしに今宵は遂に少しく喋りたり。健康囘復の兆なるべし。夜に入りて雨ふたゝび濺ぎ來る。
曇天。早朝アサリ君を起こしてやるに微かなる聲にてヒッヒッと鳴くを聞きしが須臾にして鳴き止みたり。けふもシヾミ君の籠の屋根に登りて暫し動かず、目をつむりて腹這ひになりぬ。足の指を觀察するに力入らざるとおぼしく、前の指先のみ柵に引つかけて後ろはだらりとたれ下がりたり。姑くして籠の中に戾りぬ。午下いつものやうにオーツ麦を指につまみて鼻先に差し出してやるに、いくつか啄みたれど、食慾依然として進まざる樣子なり。昨日いつもの混堂に行く途次、車のラヂオにてNHK-FM歌謠スクランブルの西田佐知子特輯を聽き、くれないホテルと初めての街で胸に沁み入りて忘れること能はず。YouTubeにて改めて聞き直す。くれないホテルは筒美京平の作曲編曲ともに絕品。コード進行とサビの幕切れバート・バカラックを髣髴せしむ。
輕陰。日盛りは秋暑なほ熾なれど旦暮の風涼しく、熊蟬の聲も殆聞かず。アサリ君呼吸樂になりしとおぼしく、キュッキュッといふ苦しげなる聲は出さず。病狀好轉せしが如し。敎材作成。昨夜J動物病院の醫師A氏にアサリ君の體重を計るがよろしかるべしと言はれしかば、助言に從ひ體重を測定す。草蘆の裏なるSeriaといふ百圓均一店に赴き手頃なる透明の箱を購ひ來りてアサリ君を中に入れ、キッチンスケールに置きて計るに三十一グラムを示したり。シジミ君は四十四グラムなり。生來瘦せつぽちのアサリ君まことに輕し。BS11藝賓館に三遊亭歌武藏の稻川（關取千兩幟）を聽く。この噺予は圓生の語るを聽きしことあるのみなれば思はぬ拾ひ物を得たる心地す。
蚤起。朝風やゝ凉しくなりぬ。アサリ君病勢依然としてキュッキュッと苦しげに鳴く。抗生劑を投與して四日目を迎へしに效驗なし。咖啡所コメダに徃き朝餉をなす。九時二十分MOVIX三好四番館にてクリストファー・マッカリー監督の活動寫眞ミッション：インポッシブル／ローグ・ネイションを看る。塲内滿席。だれ塲一切なし。ブライアン・デ・パルマ監督の第一作に次ぐ快作なり。午後接骨醫T氏を訪ふ。晡下アサリ君を四辻のK動物病院に連れ行く。待合室にて待つこと一時間ばかり、漸くにして診察室に案内せらる。アサリ君苦しげなる呼吸止まらず。醫師一目見て瘦せましたねと言はる。抗生劑の效驗なき旨告げるに、殘念ながら當院の手に餘るを以て專門醫を紹介しませうとて春日井のJ動物病院を紹介せらる。卽座に筆記型電腦を用ゐて先方に電子郵件を送られ、病勢甚だ險惡なれば一刻も早く行かれるべし、診察時間は當院と同じ午後八時迄の筈なれば今出發すれば十分間に合ふべしといふ。今夕の診察料紹介料は無料の由。鄭重に禮を陳べ、矢も楯もたまらず車を飛ばして春日井に向ふ。信號待ちの合間を利用してPHSより慈君に電子郵件を送り顚末を報告す。圖書館通をひたすら北進すること二十分ばかり、庄内川を渡りてすぐ右手に目指すJ動物病院を見つけたり。時計を見るに七時二十三分なり。日は旣に沒して宵闇いよ／＼濃し。受付孃に事情を說明するに、K病院より送りたる電子郵件は未だ讀まず、午後の診察は七時迄なれば時間外診察料かゝるやもしれず、宜しいですかと言はれ、背に腹はかへられず應諾す。二三十分待ちて診察室に呼ばる。擔當の醫師A氏綿棒にてアサリの糞を採取し、その塲にて顯微鏡を覗き檢査す。細菌は見當たらず。血液檢査を行ひたしと思へど衰弱甚しきを以て今晚は行はず、代りにレントゲン寫眞を撮影す。A氏寫眞を示して曰く、甲狀腺の大きなる腫れは認められず、然れど肥大しゐるやうにも見え、また肺炎の疑ひもあり、兩方の症狀に效く藥を處方しませうと。朝晚二囘投與し、明日も病勢依然たる塲合にはまた受診せられたし、健康恢復の兆あらば木曜か金曜に再受診せられたし、塲合によりては入院の必要あるやも知れずとのことなり。藥を貰ひ八時半家路に就く。九時歸宅。アサリ君本日は大冒險をしたり。
薄晴。NHK總合演藝圖鑑に春風亭百榮のコンビニ强盜を聽く。Eテレ日本の話藝に五街道雲助のもう半分を聽く。アサリ君餌を殆食はず、シヾミ君の籠の屋根に登りて這ひつくばりたり。脚に力の入らざるにや。
炎暑猶盛なり。早朝ロイヤルホームセンターに行きボレー粉を購ふ。朝夕アサリ君に抗生劑を飮ませしところ、キュッ／＼といふ苦しげなる聲やゝ靜まりたり。食慾は衰へず籠より出でゝ遊ぶ活力もあり。夜に入りて涼風頓に生ず。この日立秋。月曜午後一時BSプレミアムにて錄畫し置きたる是枝裕和監督の奇跡を看る。佳作なり。
半陰半晴。暑氣燬くが如し。コメダに朝飯を喫して後T病院を訪ふ。待合室にて讀書一時間二十分ほどして肺のコンピューター斷層撮影を行ふ。作業わづか一分にて終了す。M名譽院長の診察を請ふ。六月の健康診斷にてレントゲン寫眞を撮りし時、右側肺門部に異常陰影の疑ひありと指摘せられしが、M氏の話によれば寧ろ左上部に點在する白き影が氣がゝりなれど、斷層撮影の寫眞を見る限りは特に心配するには及ばずとのことなり。稚きころの肺炎治癒の痕跡らしきもの見ゆる由。市役所保健センターにレントゲン寫眞を返却して家に歸る。セキセイ鸚哥のアサリ君けふもキュッ／＼と鳴きていかにも苦しげなり。見るに忍びず、四辻のK動物病院に連れ行きて診察を乞ふ。醫師聽診器をアサリ君の胸にあてがひて曰く、肺の病なるやも知れず、或は甲狀腺腫の疑ひもあり、いづれにせよ精確なる診斷は專門醫によるレントゲン撮影が必要なりと。今夕は一まづ抗生劑を處方し、朝晚服藥して明夕に到りても病勢衰へざる塲合は小鳥の專門醫を紹介せらるゝといふ。家にかへるやシヾミ君の大きなる鳴き聲に出迎へられたり。シヾミ君は平生アサリ君の樣子を甲斐々々しく見守り、異變あるときは必ず大聲にて鳴くなり。アサリ君は今日まで一度も病院の世話になりしことなし。抑鬱亭の外に出づるも今夕が初めてなり。三重テレビ淺草お茶の間寄席に古今亭菊之丞の片棒、川柳川柳の歌でつゞる昭和歌謠史（ガーコンは演らず）、五街道雲助の持參金を聽く。
曇りて溽蒸殆眠ること能はず。敎材制作會社の需に應じて福島大學の英語入學試驗問題模範解答と解說を書く。茟大に進むを得たり。額に汗して働くは心地よきものなり。H氏函館の名物トラピストクッキー松前漬ほか余が好物のマルセイバターサンドなど餽らる。午後市役所保健センターに赴き昨年と本年の健康診斷の際に撮影せし胸部レントゲン寫眞を借る。燈刻T病院に徃き肺の精密檢査を受けんとせしに、循環器系の專門醫は明日出勤する由なれば明朝出直すことゝす。樂々スクワットを始めて三週間經ち早くも效果現れ、足腰の筋肉强くなり、階段の登り降り頗樂になりぬ。セキセイ鸚哥のアサリ君何故にや體をやゝ小さく丸めてキュッ／＼／＼と細き聲にて繰返し啼く音あたかも鳴砂を蹈むが如く、また知恩院の鶯張廊下を步むがごとし。啼くたびに尾羽を輕く上下するも恠し。
靑空に白雲多く浮びて溽暑退かず。一昨日夕方トモエ算盤のブックストッパー破損せしためアマゾンに注文し、今朝早く屆きたり。痔疾に似たる症狀ありて、Y醫院に赴き診察を請ふ。幸にして痔疾にはあらず、單なる肌荒れなり。市中をちこちにて道路普請の最中なり。敎材制作會社より緊急の仕事依賴あり、宮城敎育大學の英語入學試驗問題模範解答及び解說を書く。阿川弘之歿。享年九十四。
薄く曇りて溽暑昨日に劣らず。苦熱堪難く、輕き頭痛と嘔氣を催す。朝早くより書齋を除濕す。午後主治醫を訪ひ投藥を請ふ。熱中症による頭痛と惡心に備へてツムラ五苓散といふ漢方藥を處方せらる。ことぶきの湯に一浴す。無鹽牛酪を買はむとてアミカに立寄るに乳製品の棚には人造牛酪あるのみ。今年も牛酪は品薄なり。日脚稍短くなれり。BS11藝賓館に三遊亭圓歌の代々會長物語を聽く。
薄く晴れて溽暑さながら溫室に在るが如し。齒科醫T氏を訪ひ齒周疾患檢診を受く。蟲齒一本もなし。理髮舖に立寄りてかへる。Y君近著槪說近代スペイン文化史を惠與せらる。Y君が執筆せられし國民文學活動寫眞鬪牛の章を讀む。晡時接骨醫T氏を訪ふ。家にかへるに雷鳴り驟雨來る。いかにも三伏に似つかはしき天氣なり。
惡夢を見る。薄く曇りて炎熱堪ふべからず。旬日雨なし。NHK總合演藝圖鑑に古今亭文菊の高砂やを聽く。アットエフエム山下達郎のサンデー・ソングブックにシュガーベイブSongs四十周年窮極アナログ盤特輯第二囘放送を聽く。Eテレ日本の話藝に昔昔亭桃太郎のカラオケ病院を聽く。去月十六日BSプレミアムにて錄畫し置きたる山中貞雄の河内山宋俊を看る。ショットと編輯見事なり。夜七時ごろ水道水切となる。四辻の便利店に赴き厠を借る。幸にして九時ごろ水出でたり。
舊六月十七日。晴れて烈日燬くが如し。キヤノンの網站を一閱するに印刷機MP493のWindows10用ドライバー正式公開されたり。Windows7 Home Premium を Windows10 Home に更新することゝす。不慮の事故に備へて先づ EaseUS Todo Backup Free 8.5 を用ひてシステムを複製し外付ハードディスクに保管す。マイクロソフトの網站よりMediaCreationTool.exeを入手して安裝作業を行なふ。二時間ほどして完了す。ウインドウとタイトルバーの背景色いづれも眞つ白にて視認性頗わろし。タイトルバーの色を靑に變へむと個人設定を開き見るに色の設定項目見當たらず。Homeエディションは色を變更すること能はずと見ゆ。さらに何故にやAlt+Tabも效かず。使ひづらきこと甚しければ卽座にWindows7を復元す。加藤武急逝。享年八十六。