陰雲四散し快晴の碧空を仰得たり。朝飯の後農協グリーンセンターに赴き買出しをなす。雨の翌日は無花果安く入荷さるゝと聞きたれど、午近かりし故にや僅か三個、而も廉價ならず。慈梨(ツーリー)を買ふ。あぐりん村に足を伸ばすに日曜日の人出夥し。此處もまた入荷せざるにや、或は早朝に賣切れとなりしにや、無花果は見當らず。芝生のパラソルに凉を納め白桃アイスクリームを食ふ。歸途エッソに立寄り給油。三圓割引券を用ひて百七十二圓を百六十九圓となす。
朝來淫雨濛々、空暗きこと黃昏の如し。
惡夢より寤む。雨やうやく霽る。昨夜來の雨水雨樋をつたひ音を立てゝ落ゆくなり。倦怠甚し。筆とる氣力なく午眠燈刻に至る。敎務課より電話あり、追試驗延期さる。Y氏より電子郵件(メール)あり、S氏の訃報に接す。日暮れて雲行きをだやかならず。
朝の中薄く晴れしが晝過てより雷鳴りて雨ぽつ/\と降り來るや直に豪雨盆を覆すが如し。役塲に國民健康保險料を納め、久振にて溫泉に一浴して後病院に徃き主治醫の診察とカウンセリングを請ふ。思考鈍磨し、先生の質問にまともに荅へられず。抗鬱劑アナフラニール一日百五ミリグラムに增量さる。病院を出づるにいつか雨霽れ雲間より日射して暑し。家にかへり鬱々として寢臺に夜を迎ふ。晚間また雨となる。
曇りて蒸暑し。午前依賴原稾を添刪す。午後氣鬱甚しく眠を貪る。
陰晴不定。連載の稾を脫す。新聞に深浦加奈子病歿の記事あり。享年四十八なりと云。
朝の中微雨。門前に若き母親集ひて立話するを見る。夏休み終りたると見え學童園兒の姿多し。午下ホームセンターにセキセイ鸚哥の餌を購ひて後三好に徃きクリストファー・ノーラン監督の活動冩眞ダークナイト The Dark Knight を看る。ティム・バートン版の諧謔の妙味なく、唯只大眞面目なり。二時間半の長尺に睡眠を催すこと幾囘なるを知らず。IMDbにて史上三位の格付されたるは實に不可解の亊といふべし。晡下家にかへり連載の藁を起す。
雨霽る。輕陰。秋冷窓紗を侵す。窓の外に白鶺鴒(はくせきれい)の步むを見る。晝飯を食ひ名古屋驛にて新幹線のぞみ號に乘り京都に徃く。構内の Café Plaire に一茶、烟草を喫し、地下鐵道烏山線に乘換へ丸太町の停車塲に下車して北に步む。右手に京都御苑、左手にチューダー樣式の邸宅あり。表札をみるに大丸ヴィラ、舊下山正太郞邸なり。芝居會塲はその先のザ・パレスサイド・ホテルなりき。二階に上るや劇團らせん舘の嶋田三朗、市川ケイ、とりのかなの三氏受付に在り。互に契濶を陳ぶ。會塲の廣間グランデに入る。中高年女性の客多し。三時劇團らせん舘公演、多和田葉子作、出島――日本の中のヨーロッパ都市を看る。昨冬早稻田大斈で看たりし緋文字ベルリンに似たり。四時半終演。受付に別れてふたゝび地下鐵道にて京都驛に出で新幹線のぞみ號の切符を購ふに、係員曰く、熱海近邊大雨のため名古屋より東は運轉を見合はせてゐます、定刻通り發車しますが名古屋の手前で時間調整をするかも知れませんと。先月小島氏と京都に向ひたる日の亊を思ひ出しぬ。あの日は米原驛にて飛降り自殺あり、二時間以上車内に閉込められたり。不吉な豫感あり。五時二十三分定刻通り發車せしかど、直に車掌の車内放送あり、靜岡で一時間に四十ミリを越す雨が降りつゞいてゐるため小田原と熱海の間で運轉を見合はせてをります、時間調整のため米原驛に停車いたします、お急ぎのところ大變ご迷惑をおかけいたしますとぞ。去月の二の舞かと天を呪ひたき心地す。されど米原に停車するや一分も經たぬ中出發せり。幸にして五時半過ぎ運轉再開したる由。六時過ぎ名古屋驛着。プラトフホームの人溢れんばかり、新幹線乘換窓口前に行列の人長蛇をなせり。七時歸家。夕餉を食し書齋のヴェランダに出でゝ烟草を喫するに花火を打揚る響まぢかに聞ゆ。みれば北北東の空なり。舊抑鬱亭の東、矢田川岸なるべし。矢田川の花火大會は愛知萬博前年に廢止されたる筈なり。いつ復活せしにや。
細雨霏々。秋冷彼岸の頃に似たり。終日門を出でず。窗外鵯(ひよどり)が靑蟲を銜へて步むを見る。濕疹殆痊ゆ。
西風颯颯。晝の中より秋風肌寒きばかりなり。舊稾を刪定す。晝飯を食ひ眠氣を催して橫臥、いつか華胥に遊べり。蟲聲喞々。
西風吹きつゞきて冷氣暮秋の如し。早起して西班牙の新聞紙に墜落事故の續報を讀む。乘員乘客百七十二人中死者百五十三人に及ぶ。生存者僅十九人、うち重傷數名。エル・ムンド紙の再現動畫をみるに、離陸して十メートル浮上するや左の發動機より發火、傾きし機躰を右に戾すも忽ち草原に墜落炎上、機躰は大破せり。現塲冩眞淒慘を極めて見るに堪へず。驅け付けたる救急隊員の第一聲は機躰は何處に在りやなりとぞ。通信社の需により原稾執筆、飜譯、文化廳提出書類を作成すれば日は忽ち晡となれり。晚霞燦然秋色日に日に深し。晚涼水の如し。
昧爽に起き出でゝ筆を秉る。北風颯颯たり。右太股に赤き蕁麻疹擴がりて痊えず。晡下皮膚科に赴き診察を請ふ。待合室混雜、幸にして空席一つあり、坐りて本を讀み始むるや忽ち華胥に遊べり。一時間待ちて漸く診察室に呼ばる。蕁麻疹に非ず濕疹なり、發汗によるものなれば心配無用といふ。この醫者は自働車競爭の愛好者と見ゆ。待合室の飾り棚に小さな模型自働車整然と竝び、何時何處にて撮影したるにや、F1操縱士フェルナンド・アロンソとの紀念冩眞壁に飾られ居たり。診療所名も車に因みて命名したるやうなり。六時歸家。中庭の蟲語昨日に比すれば更に多し。二更エル・パイス紙をみるに西班牙の航空機墜落事故を報ず。馬德里(マドリード)バラハス空港にてスパンエアー社JK五〇〇二便離陸に失敗、墜落炎上しぬ。死者二十七人。機躰は原型をとゞめずといふ。エル・ムンド紙は死者百名を超ゆと傳ふ。知己の含まれざるを祈るばかりなり。
早起日課の如し。薄く曇りて風涼し。公式網站(サイト)の樣式表(スタイルシート)を IE 6 向けに書直す。晝前亊務所の需により廣告文をつくる。亊務所と印刷所より冩眞を電子郵件(メール)にて取寄せ文書に插入、一時間ほどにて書上るを得たり。二時頃買物せむとて駐車塲に向ふに雷聲殷々、黑雲俄に天を蔽ひ西南の方より疾風吹き來りて見る/\中に橫毆りの雨となりぬ。傘開かむとせしが風雨に妨げられて開くこと能はず。自働車に乘込むに豪雨殆ど咫尺を辨せず。郵便局に用件を濟ませ衣料店に赴き買物をなすも降りやまず。已むを得ず店内に姑く雨を避く。晡時小止みを幸に歸家。
輕陰。涼風頓に生じて秋を報ず。旬日雨なし。早朝下痢兩三囘。午前公式網站(サイト)の樣式表(スタイルシート)修正餘事なし。IE 6 の樣式表解釋杜撰なることこの上なし。IE 7 は改善されたり。晝餉の後N子を地下鐵道驛に送りて別る。理髮舖に立寄りて後宅急便集配所に行き一凾發送して歸家。母上土曜に購はれしダイソン社製掃除機を試む。日本製に比して運轉音は五月蠅かれど吸引力頗る大なり。晚間テレヴィジョンに北京五輪女子蹴球準決勝日本對米國戰を見る。解說者頻りに結果を出して欲しいですねと言ふ。當今のスポーツ選手解說者みな結果を出すなどいふ文句を用ゆ。常套句なり。
七時過ぎ床を出でゝ寒暑計をみるに旣に攝氏二十八度なり。九時半の新幹線ひかり號にて東上す。窗外陰りて暗く、熱海驛にて窗外を眺むるに水平線と雲に紛れ空と區別つかざりき。品川驛にて下車するに存外凉し。山手線に乘換へ惠比壽下車、半袖にては肌寒きほどなり。地下鐵道日比谷線車内の冷房過剩さながら冷藏庫内に在るが如し。廣尾に出で、南麻布の西洋料理店 CIDADA に徃き小島氏と商議歡談す。今日の獻立はザクロのジュース、フェタチーズとカラマタオリーブの希臘(ギリシヤ)風サラド、マッシュルームとチョリソーのソテー、骨付き仔羊のロースト・アンチョビ・ローズマリー風味、桃のコンポート・ソルベ添へ、珈琲なり。二時過ぎ別れて品川驛に徃き新幹線の空席を調べるに、盆休み最終日曜なればのぞみ號ひかり號ともに滿席。詮方なく自由席の切符を購ひ、立通しを覺悟でのぞみ號三號車に乘る。果してデッキは立錐の餘地なし。されど客車内に立つは三四人を數へるのみ。一番奧に進み入り荷物を網棚に納め、背凭れに手を添へて躰を支ふ。出發するや左後ろに坐り居たりし婦人二人荷物を纏めて立去りぬ。幸にして空席にありつきたり。余の鄰に坐りしは三十がらみの小太り短足の男なり。この男眼鏡をかけ、頭より玉の汗をだら/\流し、坐る間もなく布鞄より五百ミリリットルのペットボトルを五六本取出しては卓子(テーブル)に竝べ始む。見るともなしに樣子を窺ふに、ボトルの包裝に萠え系美少女キャラ印刷され、英字で Comic Water と書かれ居たり。正しく繪に描きたるが如きオタクなり。それにしても斯くの如き品何處にて販賣さるゝや、不可思議に思ひてふと足許に目をやるに、オタクの必須裝備品たる白き紙袋あり、その表面もまた何人もの美少女キャラにて埋め盡され居たり。袋の側面に東京ビッグサイト74コミック云々と讀めり。いはゆるコミケ歸りのオタクと判明せり。風躰所持品どれをとりても、2ちゃんねるにて屡々目にするアスキーアートに瓜二つなりき。晡下名古屋着。晴れて蒸暑し。五時半歸家。いはゆるコミケ歸りそのものたる人に遭遇したるは初めてなり。紀念にアスキーアートをこゝに轉機す。
昧爽に起き出づ。晴れて雲多し。N子家に大事な用事を忘れたりとて、七時臺の新幹線にて一時歸宅す。連載の藁を遂に脫し、書齋のヴェランダに出でゝ煙草を喫するに、何處よりか三味線の音聞ゆ。同じ集合住宅の住人に相違なし。ピアノや喇叭は度々聞けど三味線は罕なり。一月遲れの盂蘭盆に何處の家にて老親が手遊びに爪彈くにや。晡下地下鐵道驛にN子を迎ふ。上りの新幹線は客尠けれど下りは滿席の由。八時N子と母上と倶に町内納涼まつりに徃き花火大會を見物す。田圃の畦道にビニールシートを敷きクッションを置きて腰を下ろすや、頭上に次々と打上げ花火の花咲けり。爆音腹に響く。人出おびたゞし。九時終了。夏休みらしき夏休みを過すは何年振なるや。
晴。殘暑甚し。苦熱いつまで續くにや。今朝も產直市塲に行くに幸にして町内產西瓜あり、二個購ふ。歸途超級市塲 Sに立寄り買出しをなす。地下食品賣塲を步むに、おとうさん、餃子食べてつてと背後より試食を誘ふ女の聲あり。續けて、お兄さん、と言換へたり。その時初めて女が呼びしは余なる亊に心付きたり。定めし女は余がお父さんと呼ばるゝを嫌ひて無視したるものと思ひ、咄嗟にお兄さんと言換へたるべし。余は子連れでもなくお父さんと呼ばれし亊なかりしかば、余の亊とは露とも思はず。烟草賣塲にマールボロ・ブラックなる新製品あり。試しに購ひ歸家して喫するに薄荷の香り强過ぎて烟草の味はひ薄し。連載の藁一篇やうやくに書上げ、休む間もなく依賴の隨想を起稾す。一睡の後地下鐵道驛に赴きN子を迎ふ。驛前の文具あひる堂肉の豐中ともにいつしか廢業し空家となりぬ。十年前當地に移り住みし時書店三軒ありしかど今は一軒を殘すのみなり。驛前の商店も日々知らぬ間に變り行くこと頗急なれば茲に記載して備忘となす。
曇りて暗き日なり。欝蒸甚し。朝餉の後町内產の西瓜を買はむと農協產直市塲に赴くに黃西瓜二個のみ。あぐりん村に足を伸ばすも入荷せず。店員曰く、露地物西瓜の時節は終りたりと。農協に戾るに黃西瓜は早や賣切れぬ。歸家して困臥兩三時間。給油。レギュラー壹百七拾七圓に下りぬ。病院に行き主治醫に診察とカウンセリングを請ふ。今月は夢の記錄を淨書する氣力なかりしかば報告書を提出すること能はず、その旨醫師に告ぐるに、記憶に新しい夢はありませんかと問はれ、幸にして今朝みた夢を克明に記憶し居たれば仔細に口述し分析を請ふ。今日も原稾進まず。倦怠甚し。
靑空に白雲多し。右太股の内側に蕁麻疹擴がりて旬日に及べり。連載の藁をやうやく一篇書上たり。
陰また晴。日中殘暑盛なり。されど風終日吹きつゞき、靜坐すれば汗出でず。午後眠を貪る。月あきらかなり。共同通信北京五輪開會式の新亊實を報ず。巨人の足跡を模したる花火の映像は電腦動畫(コンピューター・グラフィックス)にして、全二十九步中二十八步の畫像制作に一年を費したりといふ。何故か北京五輪自躰が假想現實に思へてならず。
陰のちに晴。創作の藁を起さむとせしが構想未十分ならず、筆を秉らずして歇む。三時困臥。深更眠れず、ラヂオ深夜便に坂本九特輯を聞く。
薄晴。風凉し。超級市塲Aに買出しをなす。どの階も人出いつもより賑なれど帳塲(レジ)には客尠し。涼を納むるために來店せしものと見ゆ。アイスクリームどれも一囘り小さくなりぬ。實質値上げなり。夕餉の後烟草を購はむとて便利店(コンビニ)に赴くに、空地の叢に蟋蟀(こおろぎ)の鳴くをきゝぬ。今年蟲聲を聞くこと去年よりも早きが如し。
早起連日の如し。朝夕の風俄に凉しく日脚稍短くなれり。創作に筆をとらむとせしが興味湧き來らず、マクロ改良に半日を消す。上越髙槗孫左衞門のくびきの里と翁飴を食す。初更北の空に稻妻頻に閃く。ベニサンピット來年一月閉鎖さるゝといふ。暗轉が文字通り漆黑の闇となる小屋なりき。平成三年の柿ヶ原美枝演出薔薇の花束の祕密忘れ難し。
陰りて暗し。風なく靜なり。けふも蚤起し產直市塲に行く。目當の無花果は一袋のみ。茄子八個百圓。空心菜(ヨウサイ)百圓。胡瓜オクラ蕃茄(トマト)いづれも一袋百圓均一なり。每日筆を把れども感興來らず。日暮雲氣鬱勃として雷光閃き、遠雷の響を聞く。驟雨の來るを待ちしに初更過ぎて雷雨濺ぎ來る。NHK北京五輪開會式中繼始まる。興味覺えざれば東海テレビ金曜プレステージにクリストファー・ノーラン監督の活動寫眞バットマンビギンズを看る。アップとバストショット、カット割過多、格鬪の仔細を辨ぜず。宣傳廣告時間に五輪開會式中繼を少し看る。兵士九千人による集團繪卷、張藝謀(チャン・イーモウ)の活動寫眞 HERO の如し。
晴れて暑かれど風さはやかなり。蚤起連日の如し。鄰家のM君早朝より窗開け受驗勉强に勤む。M君決して空調を使はず、窗の簾に涼をとるなり。八時半農協產直市塲に買出しに行き無花果を購ふ。二個貳百貳拾圓。頗る廉價なり。けふも秀丸マクロをつくる。夕刻カーマホームセンターに行きセキセイ鸚哥の好物オーツ麦を購ふ。去年の暮より原油高のため日用品價格また/\暴騰し最安の凾入塵紙貳百四拾八圓なりしが貳百七拾八圓となる。食麵麭一袋貳百壹拾圓の店もあり。
曉明に起き出づ。輕陰。藥效あらはれたるにや、氣分惡しからず。折々雷鳴あり。溽暑恰も溫室に在るが如し。午後に至り黑雲天を蔽ひ雷雨重ねて來る。忽ち車軸を流すが如し。待望の雨ふれど暑氣去らず。讀書少々。秀丸マクロをつくる。
くもりて雲行穩かならず。炎暑忍難し。攝氏三十七度を超ゆ。便利店(コンビニエンスストア)にアイスクリームを購ふ。昨年八月同じ店にて同じ商品一箇九拾壹圓なりしが壹百貳拾六圓に値上げとなる。物價の騰貴驚くの外なし。網站(サイト)の意匠を修正す。樣式表(スタイルシート)に惡戰苦鬪するに日は忽ち暮れむとす。晡下雷鳴あり。グーグル地圖が今日より始めしストリートビューを試みに眺む。札幌仙臺東京など諸都市の街路恰もその塲に居合せ四方八方自由自在に望むが如し。薄氣味惡し。地表は早晚隈無く情報化さるゝらむ。グーグルは愈世界帝國となりぬ。
薄く曇りて風强し。筆把るも感興來らず、書齋にて呻吟する中セキセイ鸚哥の聲珍しく間近に聞ゆ。書齋を出づるに居間のシジミいつしか余の寢室に飛び來りて在り。シジミの飛行能力瞠目に値す。アサリは羽短く精々一間が限界なり。晚間稻妻閃けど雨來らず。支那新疆維吾爾(ウイグル)自治區にて獨立派のテロあり。去月末には雲南省昆明にて連續バス爆破テロありき。今週金曜開幕の北京五輪風雲急を告ぐと言ふべし。 東京の下町は關東大震災、太平洋戰爭、五輪にて三度壞滅し美風悉く失ひ拜金主義の世となりぬ。今また北京も五輪に浮れ高度成長の凱歌を奏す。マルクス曰く、歷史は繰返す、一度は偉大な悲劇として、もう一度は慘めな笑劇として。
陰晴定まらず。夜中蒸暑さに睡を破らるゝこと兩三囘。名古屋攝氏三十七度を超ゆ。注文せし長椅子三脚屆く。座椅子に脚をつけたるやうな品なり。風なく夜に入りても蒸暑晝の如し。
曇りて暑し。觀劇の日なれど氣鬱甚しく身躰を動かすも意の如くならず。午下假睡より寤めて意を決し劇塲に徃く。地下鐵道車内に浴衣を着たる娘多し。早や夏祭の時節とはなりぬ。藝術劇塲大ホール入口前にてS先生の奧樣に會ふ。思ひがけず洋菓子の土產を頂戴す。本公演に娘御合唱團員として參加さるゝなり。四時半開塲時刻を過ぎても門扉開かず、姑くして入塲を許さるゝも客席の扉閉ざゝれ、クロークも閉鎖されゐたり。定めし舞臺設營または機械の故障、或はカーテンコールの稽古ならむ。定刻より小一時間遲れて、五時半ダンスオペラ神曲開演。前半モダンバレエによるイエルマは三十分の小品なり。主人公はイエルマとフアン、マリーアのみ、ビクトルや不信心な老婆は出でず。筋を知らぬ者には夫殺害理由解せぬべし。後半ダンスオペラ神曲。鐡骨の裝置超高層ビルの廢墟の如し。白河直子の强靱なる踊りのみ堪能す。少年少女合唱團天上の聲然として佳し。初更歸宅。ガソリン高騰留まる所を知らず。レギュラー八圓値上げ壹百八拾五圓となる。赤塚不二夫死去。行年七十二。
舊曆七月朔。目覺し時計鳴るも起上れず、十時漸く床を出づ。卒業生三人と會食の約あれば地下鐵道に乘り名古屋驛に徃く。MさんYさんと會う。Mさん娘優愛(ゆあ)ちやんを連れ來れり。セントラルタワーズ十二階の和食屋寅福に登りて晝餉をなす。姑くして六五郞ことRさん來る。六五郞は富山在住にて、この日は有給休暇をとり高速バスにて四時間半かゝりし由。六五郞と會ふは卒業以來なり。元氣な姿を見て余の喜び限りなし。喫茶店に河岸を變へ閑語。然れども余は鬱去らず緘默するのみ。夕刻別る。歸宅して憔悴、食慾なく夕餉は食さず眠る。