快晴。ゆんさん來訪さる。藤が丘驛より車にて海上の森センターに徃く。來館者をらず閑散たり。繭玉廣塲、窯の歷史館、物見の丘より瀨戶名古屋を一望す。赤池に足を伸ばすも目當のヒツジグサは見當らず。殿樣蛙、大鹽辛蜻蛉、揚羽蝶など見る。三時半驛にて別る。ミケランジェロ・アントニオーニ歿。行年九十四。
薄く晴る。參議院議員選擧自民黨大敗し民主黨躍進す。海上の森駐車塲を下見す。鶯の聲をきく。イングマール・ベルイマン歿享年八十九。小田實歿享年七十五。カール・ゴッチ歿享年八十二。
藥を飮まずに眠るを得たり。散髮。午睡し晚涼を待ちて小學校に赴き投票す。香流川に鴨六羽。路傍のアベリア咲き初めたり。赤き十六夜の月東の空に懸りて物凄し。
晴。苦熱筆を執ること能はず。仰臥終日。七時半北の空に頻に花火を打揚る響聞ゆ。
快晴。炎暑日に日に甚し。執筆二三枚。暑氣忍ぶべからず午睡三時間。晡下地下鐵道にて名古屋驛に出で初めてあおなみ線に乘り荒子川公園驛に向ふ。車中美少女あり。TOHOシネマズ名古屋ベイシティにてアルモドバルのボルベール〈歸郷〉を看る。極上の悲喜劇なり。チュス・ランプレアベの老躯に驚く。アルモドバル・ガール chica Almodóvar と呼ばれしカルメン・マウラも今年六十二歲なり。十時半家にかへり衞星第二にザ・リアル・グループの歌を聽く。今夏初めて空調を使ふ。
雲氣鬱勃、風絕えて溽暑甚し。午前前期試驗を行ふ。試驗後車に乘るや驟雨沛然として濺ぎ來るも十分ほどして歇む。正午歸宅し執筆數枚。病院に徃きカウンセリングを受く。河合隼雄の訃につきてF醫師と雜談す。F醫師は河合氏の孫弟子に當り、弟子らは實の親を喪ひしが如く悲歎に暮れてゐる由。臨床心理學の分裂もあらむやと思はれるほどなりとぞ。三時半家にかへりふたゝび執筆。氣分漸く佳し。この日シジミ初めて母上の掌に乘る。
倦怠感甚しく困臥終日。琴光喜大關昇進。三十一歲三ヶ月の最年長昇進なり。口上は親方が考へるものと思ひゐたりて、佐渡ヶ嶽親方に問ふに自分で考へろ馬鹿と一喝されし由。呵々。
晴。蟬聲雨の如し。手紙二通執筆。晡下午睡。柴田武歿享年八十八。青木啓歿享年七十七。青木啓の FMジャズ番組を聽きしは中學高校時代なりき。
晴れて風爽やかなり。大暑。Tさんより電子郵件あり、余に筆誅を加へる。胃痛甚し。何事もなすを夕刻飯塚W君來宅。玄關にて余を見るなり、瘦せましたね、やつれてますよと云はる。談笑三時間ばかり。九時暇乞ひして去れり。
曇りて溽暑甚し。腹立ちをさまらず、胃痛痊えず。昨今の樂しみはたゞ一つ、ベランダにて煙草を喫することのみなり。名古屋塲處千秋樂、琴光喜は稀勢の里に破れ二敗。然れども新橫綱白鵬を破りたれば大關昇進は確實なり。
霧雨降りてはまた歇む。肌寒し。胃の調子少しく良し。詩飜譯推敲。難澁す。
今日も曇りて涼しきこと大暑の頃とも思はれず。胃痛少しく和らぎたれどまだしく/\痛むなり。晚間雨となる。余の誕辰なり。夕餉に鰻を食す。秋公演タイトル案變更さる。野村萬作人間國寶に認定さる。
くもりて涼し。中京大學前期最終授業を行ふ。午後父上と母上を伴ひ眼科に徃き白内障治療手術を見學す。僅か五六分にて終れり。マドリード滯在中のF氏より電子郵件あり、余の論文を稱揚せらる。桂小米朝五代目米團治襲名を發表す。河合隼雄の訃あり。行年七十九。
事務處より連絡あり、名古屋にての商議中止となる。胃痛增すばかりなり。關脇琴光喜、朝靑龍に敗れ一敗を喫す。サンフランシスコのハビエル地震見舞ひメールを送來る。宮本顯治歿享年九十八。
曇りてのち雨。胃痛瘉えず困臥終日。夕食に桃を食す。何年ぶりなるや。
晴。鸚哥の籠をベランダに出す。胃痛堪ふ可からず。新潟長野にて震度六强の大地震あり。
曇りのち晴。深夜ラヂオのFM放送に颱風四號の進路を聞く。名古屋は雨ばかりで風弱し。中部國際空港發の航空機は午前中缺航し、母上札幌行きを斷念せらる。胃痛痊えず。
感情に齟齬をきたし胃痛忍ぶべからず。終日臥褥に在り。明朝に至れば颱風襲來るべしとラヂオの叫ぶを聞きしが、夜は靜に更け行くなり。
霖雨歇まず。肌寒きこと小暑の頃とも思はれず。呼吸器内科に徃き胸部レントゲンを撮り診察を受く。歸途鶴龜堂に立寄り濃厚とんこつ拉麵を食す。倦怠感旣によし。
豪雨歇みてはまた降り、盆を覆すが如し。授業中大雨沛然として濺ぎ來り、窗外咫尺を辨せず、學生一堂大に狼狽す。午後執筆三枚書くを得たり。某氏の身勝手につきて父上母上に相談するに心配無用と云はる。有難し。
淫雨歇まず、今日も涼し。今夏は未だ一度も空調を使はず。町役塲健康診査結果を送來る。心電圖要經過觀察、胸部レントゲンは精密檢査の必要ありといふ。右下肺野胸膜肥厚、兩上肺野胸膜肥厚、右肺門部腫脹の疑ひありとぞ。肺癌の兆候なるべし。禁煙せざるを得ざるや。珍しくY君より電子郵件あり、S氏の傍若無人ぶりを互いに慨嘆す。イチロー大リーグ球宴七年聯續出塲。球宴史上初のランニングホームランを打ち、三打數三安打にて最優秀選手に選出さる。
雨ふりて涼し。新幹線のぞみ號にて名古屋驛を發ち登塲、品川にて下車し山手線に乘換へ惠比壽に出で、日比谷線に乘りて麻布下車、南麻布の料理屋 CICADA に赴き小島氏と秋の公演のことにつきて商議す。六時半歸宅。某氏より電話あり、身勝手三昧に氣分を害す。ベアトリーチェの返書に接す。大活躍中なり。眠れずエバミール2mgを飮む。
陰。午前父上を伴ひ眼科に徃く。經過異常なし。午後マチャードの畧歷を草す。某氏の我儘身勝手に腹が立ち神經休まらず。明日の東上に備へて七時半寢に就く。九時過エバミール1mgを飮むも眠れず、十一時さらに一錠飮む。一時半漸く眠るを得たり。
曇りて涼し。倦怠感甚しく終日臥褥に在り。ラヂオに日曜喫茶室とサンデー・ソングブックを聽くこと例の如し。喫茶室のゲストあん・まくどなるど氏の村落探訪話頗るおもしろし。
陰。涼し。今年の梅雨ほど過ごしやすき梅雨は初めてなり。父上を伴ひ眼科に赴く。經過順調なり。入院中のI君より電話あり。Mさんの人格につきて驚くべき話を聞く。枕上伊東四朗この顏でよかったを讀む。
喜劇の演技つてのは〝間〟と〝リアクション〟がすべて。觀客はをかしいセリフを聞いて笑ふんじやない。言つた相手方のリアクションでドッと沸くんです。だから相手方は、今初めてそのセリフを聞くつて顏を每日しなければウケない。(九十九頁)
曇りて涼し。父上を伴ひ眼科に徃く。待合室混雜す。術後の經過順調なり。母上にS叔父の病狀を伺ふ。午後胃痛を覺え仰臥して三時間ほど眠る。
晴れて風强し。授業の後主治醫を訪ねカウンセリングを受く。父上手術無事成功す。夕餉に夕張メロンを食す。エバミール2mgを飮む。
細雨。夜また細雨。終日臥褥に在り。
朝疎雨。陰晴定まりなし。終日眠を貪るのみ。
エバミールを飮まずに熟睡するを得たり。陰。疎雨。某氏の身勝手とゞまるところを知らず。思ひ出すだに腹立し。
舊五月十七日。くもりて暗し。暑氣甚しからず。先々週アナフラニールを減らしてより倦怠感纔に輕減したる心地す。但し油斷は禁物なり。午後FMラヂオを聽くこと例の如し。