空は連日どんよりと曇りて風なくあたゝかし。慈君自製のアップルパイを食す。江戶家猫八歿。享年六十六。東京かわら版增刊號東西寄席演藝家名鑑によれば昭和四十三年父三代目猫八に弟子入りして小猫を名乘り、四十七年落語協會に入り、平成二十一年十一月四代目猫八を襲名したり。出囃子梅は咲いたか。余は小猫時代にその藝をよく聽きたりき。舊臘廿日NHK總合演藝圖鑑にて聽きしが最後となりぬ。先月中旬電腦の操作系統を Windows 7よりWindows 10に昇級せしめて以來インク節約ソフトInkSaver 6機能せず。昨日製造業者メディアナビに電子郵件を送りて問合せしに本日鄭重なる囘答あり。常駐ソフトと競合しゐるなるべしといふ。さてはClassic Explorerlが原因ならむと思ひ當り、之を卸載してみるに案の定InkSaver正しく作動するに至れり。
曇りて暗し。午前理髮舖に赴く。舊臘七日午後一時BSプレミアムにて錄畫し置きたる溝口健二の活動寫眞祇園囃子を看る。宮川一夫の撮影照明の纎細なるに感嘆するばかりなり。
隂。午後ことぶきの湯に徃き露天風呂に浴す。夕餉に鰹の叩き筍蕗を食す。BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館最終囘を見る。ゲストとして招かれし三遊亭歌武藏は四年間に最多九囘出演したり。歌武藏後生鰻を語る。金原亭駒三に敎はりし噺なりといふ。喬太郎そば淸を語る。番組は終れど四月より同放送局にて新番組柳家喬太郎のイレブン寄席始まるなり。
隂。昨夜錄畫し置きたる三重テレビ淺草お茶の間寄席に春風亭柳橋の代脈、三遊亭遊馬の手紙無筆、三遊亭小遊三の蛙茶番を聽く。Eテレ日本の話藝に林家木久扇の林家彦六傳を聽く。
輕陰。BS-TBS落語硏究會に柳家小滿んのお神酒德利を聽く。大阪に徃く條までたつぷり語りぬ。NHK總合演藝圖鑑に林家正藏の松山鏡を聽く。乘合自働車と地下鐵に乘り榮に出で愛知縣藝術劇塲リハーサル室に赴く。三遊亭歌武藏獨演會なり。開口一番三遊亭歌むい鮑のしを語る。鮑を買ふ塲面まで語りて高座を降りぬ。いつもながら口跡よく言葉を大切にする人なり。歌武藏登壇し北海道新幹線と相撲のマクラをふりて巖流島を語る。雷門幸福名古屋辯講座退屈なり。仲入後柳家花ごめ悋氣の獨樂面白からず。花綠の弟子なり。歌武藏宗論滿塲爆笑の渦と化す。三時半終演。
快晴。風寒し。BS-TBS落語硏究會に柳家小三治の初天神を聽く。初天神は小三治の獨擅塲なり。
半陰半晴。寒風連日冬のごとし。早朝皮膚科に徃く。市中雪柳滿開。Eテレえほん寄席に柳亭市馬のやかんなめを聽く。本來は女將と下女の噺なれど三人姉妹の設定に變へたり。血は繫がらざれど姉弟の間柄なる姉Mより舞臺制作の依賴あり。一も二もなく快諾す。咖啡を瀹て六花亭百歲とマルセイバターサンドを食す。午後ことぶきの湯に徃き一浴す。
輕陰。西北の風吹きすさみて寒し。門前欅の枝より若芽萠えいでたり。昨夜九時に錄畫し置きたるBS日テレ笑點特大號に笑福亭鶴笑の立體西遊記を聽く。手足を用ひて人形を操る藝なれば聽くといふよりは見るといふべし。
隂。肌寒し。河原鶸の啼くを聞く。階前の夏椿若芽舒ぶ。紅色の滿月おぼろなり。夕餉に餺飥の味噌煮込みを食す。食後慈君と林檎を食べつゝ大相撲春塲所をテレビ觀戰す。結びの一番十戰全勝稀勢の里對一敗白鵬、白鵬が搗ち上げにて稀勢の里の上體を起こしぐい/\押して寄り倒しにて勝ちぬ。白鵬、稀勢の里、豪榮道一敗にて竝びたり。
兩三日空は澄渡りて雲もなけれど風冷なり。Nクリニックに徃く。胃食道逆流症は癒えたり。再發に備へて藥を貰ふ。ポリープは良性の由なり。昨日發賣されし大滝詠一のDEBUT AGAIN初囘限定盤を聽く。
午後主治醫を訪ひ藥を請ふ。歸途ことぶきの湯露天風呂に浴す。三鄉北四辻のファミリーマートは閉店せしと思ひしが然に非ず改裝中なり。圓き月おぼろなり。古曆二月の幾望なるべし。BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に三遊亭天どんの反對俥、林家彦いちの睨み合ひを聽く。
けふも好く晴れしが北風吹きつゞきて終日歇まず。振替休日。オバマ大統領玖馬訪問。先月二十四日BSプレミアムにて錄畫し置きたるウォルト・ディズニーの漫畫映畫ピノキオを看る。躍動する繪の立體感驚異といふ外なし。
春分。天氣晴朗。風强し。昨夜十一時半に錄畫せしNHK總合SONGS大滝詠一を見る。薬師丸ひろ子探偵物語を歌ふ。演奏歌唱ともに絕品なり。鈴木雅之大滝師遺愛のソニー社製マイクロフォンを立てゝ自らはその左に立ち、大滝生前の歌聲に合せてTシャツに口紅を重唱す。三曲目夢で逢えたらは薬師丸ひろ子急遽參加し、大滝のマイクロフォンを挾みて左に鈴木、右に薬師丸立ちて三重唱を披露す。余はこの曲を聽きて感淚にむせびぬ。演奏家一覽を茲に記し置く。
擔當 | 演奏家 |
---|---|
歌唱 | 薬師丸ひろ子 |
洋琴、編曲 | 井上鑑 |
オルガン | 中西康晴 |
電氣ベース | 長岡道夫 |
太鼓 | 上原“ユカリ”裕 |
電氣ギター | 鈴木茂 |
電氣ギター | 村松邦男 |
生ギター | 吉川忠英 |
生ギター | 安田裕美 |
生ギター | 笛吹利明 |
打樂器 | 浜口茂外也 |
打樂器 | 斎藤ノヴ |
打樂器 | 川瀬正人 |
絃樂器 | 金原千恵子ストリングス |
擔當 | 演奏家 |
---|---|
歌唱 | 大滝詠一 |
歌唱 | 鈴木雅之 |
洋琴、編曲 | 井上鑑 |
オルガン | 中西康晴 |
電氣ベース | 長岡道夫 |
太鼓 | 上原“ユカリ”裕 |
電氣ギター | 鈴木茂 |
電氣ギター | 村松邦男 |
生ギター | 吉川忠英 |
生ギター | 安田裕美 |
生ギター | 笛吹利明 |
打樂器 | 浜口茂外也 |
打樂器 | 斎藤ノヴ |
打樂器 | 川瀬正人 |
絃樂器 | 金原千恵子ストリングス |
擔當 | 演奏家 |
---|---|
歌唱 | 大滝詠一 |
歌唱 | 鈴木雅之 |
歌唱 | 薬師丸ひろ子 |
チェンバロ、編曲 | 井上鑑 |
チェンバロ | 難波弘之 |
絃樂器 | 金原千恵子ストリングス |
夜來の雨午に至らずして霽る。父上の印刷機EPSON PX-V780故障せり。九年前に購ひし品なり。慈君と倶にケーズデンキに赴きEPSON PX-105を購ふ。稅拔價格七千四百八十圓也。家にかへりて父上のThinkPad Edge E420及び慈君のThinkPad L540にドライバーを安裝す。午後突如として目痒くなり堪難し。今年も花粉症の時節とはなれり。慈君過日耳鼻咽喉科にて處方されし點眼藥パタノールの未だ開封せざるを讓らる。余が四年前眼科にて貰ひし藥と同じなり。眼にさすや痒み忽ち消ゆ。名古屋櫻開花。セキセイ鸚哥の體重を計る。アサリ君三十一グラム、シヾミ君四十二グラム。
隂。Eテレえほん寄席に桂文我の愛宕山を聽く。僅五分間の番組なれば噺は土器投げの條のみなり。午後ことぶきの湯露天風呂に浴す。リュイス・パスクアルの隨筆 De la mano de Federico (Arpa y Alfil Editores) を讀む。夕刻より雨となる。
晴れてあたゝかき風春の到來を告ぐ。彼岸の入なり。六時半旅亭のレストランにバイキングの朝飯を喫す。支那人の團體客早くも續々と來店す。札幌驛地下一階冨士屋に徃き名物とうまんを買ふ。九時十分快速エアポートに乘り札幌驛停車塲を發す。朝日の光惠庭より千歲に廣がる雪原に映ず。十時半過全日空の飛行機に乘り新千歲空港を發す。機内滿席。AIR DOとかいふ格安航空會社との共同運航便なり。うと/\と眠る中に中部國際空港に着陸す。暴暖初夏の如し。四階のテラスにてスターバックスの咖啡を飮みつゝ筆記型電腦にて執筆。二時高速バスに乘り三時過抑鬱亭にかへる。セキセイ鸚哥のアサリ君シヾミ君ともに健やかなり。アサリ君早速余の眉毛を突きて遊べり。この日より叔父S遺愛の札入れを使ふ。生前叔父が砂川のソメスSOMÈSといふ店にて購はれし品なり。日脚著しく長くなりて六時を過ぎても昏黑とはならざるなり。九日頃の月あきらかなり。
蚤起。薄晴。旅亭のレストランにバイキングの朝餉を喫す。文机に向ひて事務所依賴の文案を練る。十時半脫稿。土產を買はむとて札幌驛に赴く。春日麗朗たり。杉野フーズのほぐし鮭、マルセイバターサンド、わかさいもを購ふ。晡時市電に乘りて叔母Sを訪ふ。笑語の後倶に地下鐵道南北線に乘り大通に出で、拉麵屋久樂本店にて夕餉を馳走す。夜初更旅亭にかへる。半月おぼろなり。
朝は晴れしが正午ごろ天候一變して吹雪となれり。事務所より急なる仕事の依賴あり。應諾す。終日執筆。BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に笑福亭鶴光の西行皷ヶ瀧を聽く。鶴光の正しき發音はツルコなりといふ。名付親たる笑福亭松鶴かつて光鶴と名乘りゐたりしに因みて二文字を入替へ弟子を鶴光と命名したり。然るに鶴光東京に進出して人氣を得るにつれ周圍の者みなツルコー、ツルコーと呼び、當人がいくら否定しても聞入れられず、いつかツルコーの呼稱定着するに至れり。
春雨霏〻。高速バスに乘り中部國際空港に徃く。乘客いつになく多し。十一時四十分全日空の飛行機に乘りセントレアを發す。乘客三割に滿たず。機内のラヂオにて全日空寄席を聽く。U字工事の漫才極上なり。三遊亭遊雀の風呂敷も佳し。去年十月四日イヽノホールにて收錄せし高座なり。一時二十分新千歲空港着陸。春の日うらゝかに照渡りてあたゝかく殘雪僅なり。JR快速エアポートに乘る。車窓に白樺の竝木を望む。白樺林の奧に百年記念塔を眺むる時余は故鄉に歸りしことを實感するなり。新札幌驛に至らむとする時車掌の機内放送あり、四號車に急病人發生し新札幌驛にて救急車の到着を待つことゝす、乘客の皆樣に醫師若しくはJR職員あらば四號車に急行せられたしといふ。新札幌驛には五分ばかり停車して列車は再び走り出しぬ。札幌驛にて下車するに小雨ぱら/\降りゐたり。步みてホテルに赴く。晡下大通公園を渡り四丁目プラザ前四辻の市電乘塲に行くに線路はいつの間にか大通と薄野を南北に結びて環狀線となりぬ。電車に乘り叔母Sをその家に訪ねる。程なくして叔父Y來れり。叔父の運轉する自働車に乘り薄野なるだるまといふ成吉思汗料理屋に夕餉を食す。未だ六時にならざるに一階席早くも滿員、二階に上がるにこゝも滿員なり。五分ほど待ちて坐るを得たり。座敷はなくカウンター席のみにて、椅子に腰を下ろすや鐵鍋旣に熱く、女店員挨拶もそこ/\にラードを溫め玉葱と長葱を鍋に入れて燒き始む。慌たゞしきことこの上なし。上肉、成吉思汗、ヒレ肉を食す。ふと後ろを振り返れば食客陸續と來て壁一面に行列をなし、階段も一階まで行列をなしたり。本店は昭和二十九年創業といふ。食後宮の森なる珈琲堂に立寄り笑語す。夜二更ホテルにかへる。
隂。NHK總合演藝圖鑑に宮田陽・昇の漫才、立川生志の幇間腹を聽く。サゲに工夫あり。Eテレ日本の話藝に桂春若の鹿政談を聽く。マクラに十二分を費せり。大相撲春塲所開幕。豐ノ島寄切りにて鶴龍を倒す。寶富士も白鵬を押出しにて破りぬ。夜初更ことぶきの湯露天風呂に浴す。歸途微雨に値ふ。
快晴。風寒し。NHKラヂオ第一眞打競演を聽く。柳家小菊の粹曲いつもながら佳し。三遊亭圓丈歌司の粗忽長屋面白からず。午後困臥。
春の日うらゝかに晴渡りしが風寒し。舞臺評飜譯餘事なし。午後ことぶきの湯に徃き露天風呂に浴す。休憩所のテレビに天皇陛下東日本大震災追悼式典にてお言葉を述べらるゝを聞く。三重テレビ淺草お茶の間寄席に昔昔亭桃太郎の結婚相談所、神田紫の太閤と曾呂利、瀧川鯉昇の時そばを聽く。
曇りて暗し。胃痛漸く痊ゆ。『A este chino no le canto』の批評を飜譯して公開す。夜雨ふる。
春雨霏〻たり。午前理髮舖に徃く。ケラリーノ・サンドロヴィッチ松本隆オール阪神・巨人日比野克彦藝術選奬文部科學大臣賞受賞。柳家三三藝術選奬文部科學大臣新人賞受賞。暮方より雨降りまさりぬ。
薄く曇りて春暖頭痛を催すほどなり。Nクリニックに徃く。先づ腹部エコー檢査を受く。肝臟膵臟腎臟膽囊いづれも綺麗、肝臟のみ若干脂肪あり。次に胃内視鏡檢査を受く。血壓測定。上百一、下六十八。喉に麻醉を噴霧す。寢臺に橫はり鎭靜劑を注射せられしに效き目なし。抗鬱劑を服する患者は麻醉效かぬ由なり。醫師E氏胃カメラを口より插入して胃と十二指腸を檢査せらる。先週來の胃痛の原因は胃食道逆流症と判明せり。寫眞を見るに胃酸逆流して食道赤く爛れたり。胃壁に白隱元豆が如きポリープ見ゆれど除去するには及ばずといふ。二週間分の藥を貰ふ。晡時主治醫を訪ひ藥を乞ふ。ことぶきの湯溫泉に立寄りてかへる。BS11藝賓館に三遊亭白鳥の老人前座じゞ太郞と三遊亭圓丈の新壽限無を聽く。
曉方雨ふりしと覺しく路面濡れ陰雲空を蔽ふ。胃痛痊えざればNクリニックに赴き診察を請ふ。明朝胃内視鏡檢査を受けることゝなる。折〻小雨降り來れり。
朝早く睡より寤めるや胃しく/\痛みて心地わろし。曇りてあたゝかなり。NHK總合演藝圖鑑になすなかにしの漫才、桂文樂が悋氣の火の玉を聽く。岩波書店圖書に斎藤美奈子が社交としての解說に注意すべしを讀む。渡邉淳一の小說文庫本解說を書く男女文士の粉飾激賞の技を嗤ふなり。呵々大笑す。Eテレ日本の話藝に柳亭小燕枝の小言幸兵衞を聽く。奇を衒はず悠揚迫らず寔に結構なる高座なり。近年聽きたる噺家の中にては出色の出來なり。
曇りて春暖日に/\加はる。NHKラヂオ第一眞打競演に東京ボーイズの音曲漫才、イエス玉川の漫談、瀧川鯉昇の鰻屋を聽く。Diario de Jerezに揭載されし舞臺評を飜譯して公開す。
暴暖四月の如し。胃痛痊えず胃藥を服す。午後ことぶきの湯に徃き露天風呂に浴す。三鄉北四辻のファミリーマート癈業す。本地が丘四辻のカラオケ屋Côte d'Azurも閉業して仕舞屋となりぬ。今宵も粥を煮て啜る。三重テレビ淺草お茶の間寄席に三笑亭夢丸が始末の極意、瀧川鯉朝のにせ金、ナイツの漫才、柳家蝠丸の紙屑屋を聽く。
乍陰乍晴。暴にあたゝかし。昨夜より胃しく/\痛みて心地すぐれず。慈君この日雛祭なればとてちらし鮨を作られしが余は胃痛堪難ければ一人粥を煮て啜り、蛤の吸物を飮む。
陰晴定らず。北風歇まず寒氣昨日の如し。筑摩書房の月刊誌ちくまに橋本治の隨筆を讀む。午後セキセイ鸚哥の餌を購はむとてロイヤルホームセンターに赴き、品物を選びて帳塲に向ひつゝ衣囊を探るに財布なし。家に置き忘れたり。老耄笑ふべし。家にかへりて札入を携へ再び買物に行きたり。この夜小島章司氏ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ市ビジャマルタ劇塲にてA ESTE CHINO NO LE CANTOを上演せらる。エバ・ジェルバブエナ、ミゲル・ポベーダ倶に特別出演す。
舊正月二十三日。空隈なく晴れわたりしが北風烈しく寒氣骨に徹す。正午齒科醫A氏を訪ひ定期檢診を受く。午後いつもの溫泉に浴す。BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に喬太郎の白日の約束、粗忽長屋、拔けガヴァドンを聽く。いづれも再放送なり。