好晴昨日の如し、空氣淸澄、拂曉起き出でゝ外を窺ふ、今年始めて木曾御嶽山を望み得たり、雜誌の稾を脫す、ルビンシュタインのシューベルト卽興曲第三番を聽きつゝ手紙したゝむ、燈刻實家に夕餉をなす、札幌に購はれし生ほつけ鹽燒き、つきこんにゃく鱈子和へ風味甚佳し、初更歸る、月明なり、
晏起二時、快晴稍暖なり、惡夢に襲はる、昨夜深更はみてーじ大廣間揭示板にてなかよしさんの良人頓死の報に接したるがゆゑなる歟、今月十一日身まかりし由、頓死と云、享年六十六、余夢の中にて東京の巨大齋塲に在り、敷地廣大にして列席者の雜沓甚しく身動きもまゝならぬほどなれば、何事なるやと周りを見渡すに、高倉健神田うの梅宮達夫など藝能人ばかり、樹木希林の葬儀と心附くや、何とも知れず法然として淚なきを得ざるなり、昨日夕刊新聞紙にて左目失明の報に接したるがためなるべし、睡より寤むれば眼は泣張らしたり、從姉Yの來書に接す、T.M. さんより小包屆く、羊の縫包み愛すべし、手紙したゝめて日を暮らす、
快晴、風なし、留守の實家に寄りし後森林公園に徃く、辻の札川をわたらむとするに靑き一條の光矢の如く川面を走る、翡翠なり、雜誌の稾を脫す、風姿花傳再讀し午睡一時間ばかり、燈刻壽司を購ひ實家に立寄り、空港に車を馳せ父上母上を迎ふ、昨日の葬儀列席者四百名餘、伯母Kは氣丈なりしと、伯父Kの拜金主義猶變らざると云、從兄K君舊臘退職したる由なり、佐藤水產の土產を頂戴して歸る、雲間に折々月を看る、
好晴、午前留守の實家に寄り寒風を冐して森林公園に徃きレモンの墓を拜す、墓前の苗木愛すべし、午後過日書き置きたりし雜文を思ひ返して別册にしるす、過半は忘れ果てたれど是日心に浮びたるもの數篇あり、但しいづれも駄文のみ、元ゼミ生Tさんの書に接す、無事祕露に渡りたる由なり、夕刻理髮、夕刊新聞紙に女子高生自殺の記事あり、名古屋驛セントラルタワー十三階テラスの硝子を破りて身を投じたると云、何喰はぬ顏にて日はまた暮るゝなり、
薄く晴れて風靜なり、早朝父上母上伯父の通夜ありて札幌に發ちぬ、是日母上の誕辰なり、何の因果なるや、手紙したゝめれば日旣に午なり、名古屋大學出版會より初版印稅の通知書來る、全額寄贈分に消えたれば余の取分なし、然れど定まりたる收入なき身なれば寄贈代分でもありがたし、余近年健忘性になりたればこゝに記し置くなり、夕刻免費軟件 Kazaa にて互聯網より Marilyn McCoo & Billy Davis Jr. が星空のふたり You Don't Have To Be a Star の文件を下載するを得たり、余三年前入院せし時たま/\錄音したるモノラルのラヂオ番組にて此の曲を知り、飽かず聽きては臥牀に在りても口遊みたること幾囘なるを知らず、今夕念願叶ひてステレオ音源に接す、わが喜び限りなし、二更母上より電話あり、新札幌ホテルSに在り、日暮より雪霏々たる由、星斗森然たり、
空晴れ日の光穩かなり、初稾をユネスコに送る、午下三好にイーストウッドのミスティック・リバーを看る、堂々たるものなり、許されざる者マデイソン郡の橋を經て演出力こゝに極れり、暗淚を催すこと幾囘なるを知らず、イーストウッドのスコアいつもながらよし、ティム・ロビンス、ショーン・ペン稍過剩演技なり、ケビン・ベーコン淡々としてよし、手紙したゝめれば日は忽沒したり、夕刊新聞紙ゴールデン・グローブ賞を報ず、主演賞ショーン・ペン、助演賞ティム・ロビンス、
日は高くして猶起出るに懶し、天氣牢晴風なくて暖なり、終日家に在り、書をしたゝむ、晡下父上母上突然來駕、意氣銷沈して語るに正午のころH伯父肺炎にて身まかりし由、S叔父の通知に接したりといふ、久しくアルツハイマーを患ひゐたりしかば伯母の心勞察するに餘りあり、火曜通夜、余留守居を請はる、小學校に在りし頃よく年賀に來りては叔父伯母らと對酌款語したりき、情味濃なるを覺えたり、余江別より東京に移り住みし時家財道具を運びしは伯父の會社なり、五時半父上母上歸宅せらる、此頃竊に思ひゐたりしに人の壽命ほど測りがたきはなし、さま/″\のこと胸に浮來りて机に向ふ可からず、
拂曉起き出づ。寒氣忍びがたきを以て終日家に在り。プエルトリコのロベルト、ガリシアのアントニオの來書に接す。筆を把らんとすれども得ず。四鄰寂々として物音なく唯鵯の聲を聞くのみ。臥牀に橫はりてアトランティック・スター、ナット・キング・コール、キャロル・キング抔を聽く。枕上頻に去年來の事を憶ひ出して悵然たり。日早くも傾き、やがて黃昏の微光半空を染むさま言はむ方なし。悔恨禁じ難しといへど又つらく思返せば、孤獨の身の果如何ともすべからず。我が生涯も四十歲に及ばむとして行き詰りしが如し。
晏起九時。くもりて寒氣甚し。雪ふりしとおぼしく處々殘雪あり。いつもの白鶺鴒駐車塲を步みゐたり。わけもなく裏淋しき心地せらる。飜譯畢れば日影早くも傾き、窗よりさし込む夕陽明かなり。聯日來書あり、深切感淚に値すと謂ふべし。アン・ミラー歿。享年八十一。シナトラの It had to be you を聽く。
Why do I do just as you say
Why must I just give you your way
Why do I sigh why don't I try to forgetIt must have been
That something lovers call fate
Ketpt me saying: "I have to wait"
I saw them all
Just couldn't fall 'til we metIt had to be you it had to be you
I wandered around and I finally found
The somebody who
Could make me be true
And could make me be blue
And even be glad just to be sad
Thinking of youSome others I've seen
Might never be mean
Might never be cross
Or try to be boss
But they wouldn't do
For nobody else gave me a thrill
With all your faults I love you still
It had to be you wonderful you
It had to be you
舊曆正月元日、睡より覺むれば日旣に高し、時計をみるに午後一時半なり、昨夕園藝店くすの木に購ひしヘデラに水をやる、朔風歇まず寒氣骨に徹す、神經衰弱讀書意の如くならず、舊藁を添削する氣力さへなく、草稾なんどつくらむと思へどその氣力も亦失せたり、昨日大寒に入りてより日の永くなりたること稍際立つやうになりぬ、年の改まりし頃には夕方五時にはあたり全く暗くなりてゐたりしが、今は五時半を過ぎざれば窗外昏黑とはならざるなり、N氏T氏より來書あり、朗報なり、
隂、畑の霜雪の如し、昧爽公園に徃き小松菜を供ふ、終日何事をもなさず、讀書する氣力もなし、唯寐つ起きつして日をくらし實家に徃くべき時の來るを待つのみ、燈刻端書を投函せむと外出するに、本地原郵便局の裏手駐車塲に黑猫ありて余を凝視す、何となく人戀しき樣子なれば屈みてこんにちはと挨拶をなすに、余の膝に摺寄ること幾囘なるを知らず、その擧措レモンを思はしむ、實家に夕餉をなす、父上今日はレモンの初七日なりとて讀經せらる、直に歸宅す、
晏起十時に近し、レモン在りし時每朝六時半に囀り、余は褥中にておはやうと應じたりき、外出して歸り玄關闔を開けるを聞くやピーと囀りて飛來りしが今は窗外鵯の聲を聞くのみ、ユネスコ原稾飜譯半日、晡時クリニックに徃き主治醫の診察を請ふ、曾てに比すれば精神恢復早く全體によき方にて吉兆なりといふ、醫者の診斷は斯くの如くなれど余自身の心持にては讀書創作兩ツながら思ふが如くならず、世の諺に死ぬ苦しみと云ふことあれど藥飮み/\命をつなぎて徒に日を送るも亦たやすき業ならず、されど此度臥牀に橫りたることもなかりしは近來の快事といふべし、舊臘來Aの此の世に在るを思ひてたゞ嬉しくわれ知らず淚を催すこと頻なり、日暮母上より通知あり、見舞より歸らる、伯父猶意識不明、生きながらにして旣に他界のものに異らざる由なり、伯母らの悲痛の情思ふべし、廣告文案につきて小島氏と電話にて商議す、卆業生F氏T氏の來書に接す、晝夜 Singers Unlimited の My Romance を聽く、
My romance doesn't have to have a moon in the sky
My romance doesn't need a blue lagoon standing by
No month of May no twinkling stars
No hideaway no soft guitarsMy romance doesn't need a castle rising in Spain
Nor a dance to a constantly surprising refrain
Wide awake I can make my most fantastic dreams come true
My romance doesn't need a thing but youWide awake I can make my most fantastic dreams come true
My romance doesn't need a thing but you
睡よりさむるに空暗きこと昏黑の如し、置時計をみるに五時なり、午前なるや午後なるや判明せざれば家中の時計をみること幾囘なるを知らず、さめてなお夢に在るが心地す、早朝なるを知り窗外窺ふに雨霏々たり、八時半小雨を衝いて森林公園墓參に赴く、過日ターコさんより贈られたる花とエスリンゲンはりねずみさんの購はれたるチユーリップの寫眞を印刷したるものをレモンの墓前に供ふ、園内寂然として遊步の人なく唯風雨の蕭々たるを聞くのみ、晝の中は雨纔に歇みたり、週末來氣力俄に衰へ飜譯の筆を執らむと欲すれども得ず、午後より燈火を點して書簡をしたゝむ、思ふはAのことばかりなり、Fはひとりの女を愛し得ざる男なりと公言せしUの呪詛ふたゝび甦りて去らず、Aは大輪の花にならむとする蕾なり、是に反してわが身は一年一年に老ひおとろへ今は長くあゆむこともでき難き身とは成れり、通院いつまで續くにや、思へば心ぼそし、
深更輾轉反側せしが黎明に至りて纔に眠るを得たり、父上讀書會ありて上京さる、午下縣大西班牙科四年生TさんO さん來訪、昨年度の余のゼミ生なり、Tさん留學のため二十一日ペルーに發つ由、Oさん卆論提出し春より專門學校に飜譯を學び、今夏西班牙に渡りてカンテフラメンコを習得せんと欲する由なり、若さの特權眩しき限りなり、歡晤時の移るを忘る、六時藤が丘驛に送りて家にかへる、是日甥R十歲の誕辰なり、
三更睡より寤む、曉明雪花紛紛墓參すること能はず、大晦日微雪ありしのみにて今日に至るまで一滴の雨もなかりけり、午前廣告文をつくる、C社の需によれるなり、伯父の病小康を示す由、父上の通知に接す、三時被を擁して臥す、昏黑起き出でるに雪は雨となれり、
睡眠藥にて睡るを得たり、昧爽に起き出で新幹線にて名古屋にかへる、父上今朝母上飛行機にて伯父の見舞に赴きし由告げらる、人工呼吸器の甲斐なく病勢甚檢惡なれば命永らくは保つまじと言ふ、小島氏より電話かゝりてC社の需頗る急なれば原稾斷るべしと言はる、余も亦二日四千字の執筆は到底無理ゆゑ同意す、レモン逝き戀情叶はず伯父生死の境を彷徨ふ、試練之を耐へるべしと雖寔に堪へ難し、午後Tさん來訪、レモンにと花と線香を贈らる、深切謝するに辭なし、晡下被を擁して臥す、〔17日記す〕
埋葬より歸りて旅裝とゞのふ、母上よりH伯父意識不明の報に接す、新幹線にて東上、原美術舘にパトリシア・ピッチニーニ展を觀し後ビセンテ・アランダのカルメン試寫を觀る、凡作なり、六本木壽司屋Mにて小島氏と晚食をなす、三更投宿、疲勞困憊、是日寒氣凜冽、〔16日記す〕
空薄く晴れ日の光穩かなれど寒氣骨に徹す、大道平池畔にて平日探鳥會一行に逢ふ、靑空の家一行に挨拶す、午下T さん來訪せらる、款語薄暮に至る、買物をなして歸宅するにいつものレモンの囀り聞えず、何事にやと籠を覗くに產卵を待つ樣子にて鏡の鞦韆に毬の如く體を膨らませぢつとしてゐたり、八時を過ぎし頃、食卓に一茶しゐたるに卓橫の壁にどんと物の當る音あり、みれば棚の上にレモン蹲りて羽をばた/\と動かしゐたり、書齋より飛來りたるにも係らず羽搏きの音聞えざりき、樣子尋常ならず、さりとて此の時刻に動物病院に診察を請ふこと能はざれば、已むことを得ず兩手に抱へて見守るのみ、尾羽をあげ產卵の構へをなすも出でたるは卵の小さき破片のみなり、兩脚にて體を支へる力次第に衰へ掌に俯せになれり、見るからに哀なるさまなれば蒲團に携へ添ひ寐す、囀らず動かず、ときをり痙攣の如く羽蠢けど直に動きを已め、橫に開き十字架の形になりぬ、首元に幾度も接吻し、ごめんね、ごめんねと囁きやるに纔に頭を動かしたれど遂に瞑目しぬ、時計午前五時半を示す、腹部の溫もり掌に消えず、余はたゞ添ひ寐を續け、ありがたう、ありがたうと言ひて接吻せり、六時半小さき體より熱すつかり奪はれたり、窗外今だ漆黑の闇なり、タオルに包み車を馳せ森林公園に赴き、散策路脇苗木の根本に好物の小松菜と倶に埋葬す、靑暗き空一點の雲影なし、南天下弦の月皎々、東天朝日將に昇らむとす、〔16日記す〕
朝の中薄く晴れしが午後に至りて雪にやならむと思はるゝ空合なり、西風烈しく寒し、森林公園日に/\鳥語欣々たり、四十雀背黑鶺鴒多し、昏黑遽に風雨の音聞えたれば窗外をみるに吹雪なり、
天氣牢晴、午前飜譯、午下父上を誘ひてござらつせに赴くに、祝日の故にや入口に客雜沓すること甚し、やまとの湯はいかゞならむと思ひ向ふに三郷附近大澁滯にて進むこと能はず、長久手に戾り咖啡農園に立寄りて一茶す、父上の話に讀書會ありて月曜上京の由、母上も週末渡道、札幌に叔父夫婦還曆の祝ひをなさんがためなり、實家に父上を送りて晡下家にかへる、商品劇塲大岡氏の隨想を讀む、
曇天、西北の風吹きつゞきて寒し、森林公園散策の人いつもの日曜より尠し、FM愛知にて新春放談第二囘を聽く、正月の娛しみとなして早や二十年の月日を經たり、展覽會資料飜譯昏黑に及ぶ、夜に至りて空晴れわたり星光鮮なり、月明晝の如し、
空どんよりとくもりて風絕えたり、森林公園漫步、白鶺鴒の尾羽を上下させて枯芝生をあゆむさま愛すべし、札の辻川畔に鳩の團栗を突くをみる、その技寔に巧みなり、橋を渡るに中年夫婦の小さき籠を提げ來るに逢ふ、中に白きもの蠢きゐたりしかばそれとなく窺ひみるに白文鳥なり、白き羽根處々黑き染みのやうなものあり、何故冬の朝戶外に持出したるにや、市中至る處道路工事の最中なり、豫算を消化せんがため年度末に集中工事をなす3惡獘今に至るも猶すたらず、今年は舊臘よりその數夥し、午後寒中見舞したゝめれば日は忽晡となれり、買物をなさむと長久手に徃くに西長久手線の澁滯尋常ならず、グリーンロードより鴨田橋北に至るまで車列續きゐたり、晴丘交叉點のマインマート何時しか屋號を改めアルコングとなす、交叉點南今まで日石のありし處松山タイヤ店普請中なり、晴丘の商店も日々知らぬ間に變り行くこと頗急なれば葱に記載して備忘となす、
天氣聯日限りなく佳し、終日家に在り、展覽會資料を閱す、ドルフマンの線の向かふ側を讀む、
今日も空隈なく晴渡りしが西北の風吹きつゞきて寒し、森林公園逍遙、竟日飜譯、Iraq Body Count をみるに民間人犧牲者九千人前後に及びたり、城主成瀨正俊氏より犬山城處有權白帝文庫財團に移管さるゝ由なり、稅金を思へば最早相續し得べきに非らざるべし、立待月よし、
今日も晴れて暖なり、森林公園散策、朝日の光あかるく噴水廣塲の門松を照らしあたり春めき來りぬ、鵯の聲に交りて雀の囀りもおのづから勇しくなれり、枯木の梢に凧あり、近年正月になりても市中にては凧揚ぐるものなきを以てたま/\之を見たれば、そゞろに惠庭のむかしを思ひ出すなり、靑空の家一行に逢ふ、ボリビアK氏の書類飜譯昏黑に及ぶ、昨夜深更衞星第二にて小津安二郎と二十一世紀シンポジウムをみる、オリヹイラの吉田喜重批判のみ面白し、
晴れて暖氣例ならず、小寒とも思はれず、朝食の後クリニックに徃き診察を受く、歸途理髮、店主の左手中指に包帶あり、わけを問ふに正月二日ジヤツキに挾まれ龜裂骨折したりと云ふ、午後褥中にて活動寫眞二篇みる、三時頃大地震動すること數秒に及ぶ、是日Y氏の朗報に接す、朝日舞臺藝術賞發表さる、グランプリは蜷川のペリクリーズ、舞臺藝術賞加藤健一事務處、金森穰、ク・ナウカ、熊川哲也、島次郎、劇團昴、寺山修司賞藤原龍也、秋元松代賞高橋恵子、特別賞市川猿之助、小島氏受賞ならず、是夜滿月、
空隈なく晴れわたりて暖なり、森林公園をあゆむ、中央廣塲の芝霜氣を帶びて齊しく銀盤の如し、大道平池にいつもの如く鷺一羽來りて在り、川鵜眞鴨四十雀多し、川原に背黑鶺鴒の足早にあゆむさま愛すべし、野鳥の會に會費を送る、午後褥中に在りて活動寫眞をみる中いつか日は暮れたり、三遊亭白鳥の勘當舟を聽く、夜小望月の光おぼろにして春宵の如し、
寤めて心づけば四鄰暗黑に沈みゐたり、枕頭の時計を見るに午前五時なり、机邊の亂帙を整理す、亭午N子を停車塲に送らむと實家に電話をかけるに旣に東上したる後なり、午後FMにて新春放談を聽き、ふたゝび褥中に在り昏々として睡る、
NHK總合にてムーティ指揮ウィーン管弦樂團ニューイヤーコンサート再放送を聽く、天體の音樂にて曾て見ざりし映像を見る、樂友協會舞臺上の天井を至近に捕へしカメラ次第に移動し客席後方を俯瞰撮影、そのまゝ舞臺を眞上より捕へる、インディアン・ポルカ佳し、ゲストの石坂浩二例の如く藝術家の自家吹聽に至りて倨傲らしくも見え淺間しくも見ゆるなり、滑稽なり、午睡忽華胥に遊ぶ、〔四日記す〕
睡より寤むれば午前六時なり、午後父上母上N子を携へ本地が原神社に赴く、昨日門を過ぎし時には參詣の兒女絡繹たりしが今日は尠し、何故か御神籤なければ景行天皇社に徃く、父上引かず母上大吉N子中吉余は大吉なり、實家に晚餐をなす、歸途月よし、〔三日記す〕
風なく晴れてあたゝかなり、起き出でゝ顏洗へば忽にして十時なり、天氣牢晴、實家に新年を祝ふ、門前キム・ヘギョン似の少女に逢ふ、あけましておめでたうございますと挨拶せらる、年はまだ十一二とおぼしきに禮儀を辨へたり、午後家にかへり新年の賀狀を閱す、四鄰寂然、新裝本地が原神社年始の客多し、フジテレビ爆笑ヒットパレードに大トリの爆笑問題漫才を看る、感心せず、内海桂子喜味こいし染之助に笑顏なし、晡時午睡、昨夜深更總合テレビにて犬養道子と養老孟司の對談をみる、久しく迎へざりき靜なる年始なり、