八時起牀。快晴の空雲翳なし。小春昨日の如し。「日本語の玉手箱」更新。東京藝人のギャグを披露す。
ハラハラと落つる淚を小脇に抱へ | 大辻司郞 |
勝手知つたる他人の家へ | 大辻司郞 |
きいてちょうだいはべれけれ | トニー谷 |
からだ大事にして下さい | トニー谷 |
相變はらずバカか? | 渥美清 |
てめえ、さしずめインテリだな? | 渥美清 |
セキセイ鸚哥のレモン言葉を覺えたり。「レモンちやん」と呼びかけるに嬉々として飛び來りて余の肩にとまる。東京外語會會報屆く。中嶋嶺雄學長退任、大學附屬圖書館長池端雪浦氏新學長に就任するを讀む。午前宅配便でDVD屆く。ウディ・アレン『世界中がアイ・ラヴ・ユー』、フェリーニ『ジンジャーとフレッド』、スタージェス『荒野の七人』、ヴットリオ・デ・シーカ『ひまはり』、スコセッシ『タクシードライバー』、ジャック・レモン初監督作品『コッチをぢさん』、ジャックレモン出演『チャイナ・シンドローム』。午後三郷やまとの湯で湯治。晡時實家。父上監査業務、胃と腸の内視鏡及び前立腺檢査等の所用ありて札幌へ發ちぬ。お八つに知立名物「冨士田屋」の大あんまきを初めて食す。無闇矢鱈に大きい。二つ食べ腹膨れぬ。夕餉に伊勢芋と麥飯のとろゝ飯、鮭のグリル燒き、はうれん草のおひたし、糠漬、サヤエンドウとエノキ茸の味噌汁を飯す。初めて自分で削り器で鰹節を削る。風味佳なり。おひたしに恰好なり。食後刀根柿。八時過ぎ歸宅。枕頭のDVD、ウッディ・アレンの『世界中がアイ・ラヴ・ユー』。『巴里のアメリカ人』の現代版。マルクス兄弟『けだもの組合』、ビリー・ワイルダー『お熱いのがお好き』への讚歌。
六時半起牀。小春の好天氣打ちつゞきぬ。掃除。牀を磨く。主頁改良。「溫泉無宿」「equus」削除し、バイオグラムとけふの運勢を占ふ頁を加へる。『聲に出して讀みたい日本語』繙く。響きの良い言葉數多あり。
あたりき車力よ車曳き
蟻が鯛なら芋蟲や鯨
おつと合點承知之助
何がなんきん唐茄子かぼちや
困つた膏藥張り場がねえ
困り煎豆山椒味噌
主頁で今日の俳句を自動的に詠ませる。
「お父さん ファーストクラス 一人旅」
ついでに都々逸も自動的に作成させる。とんでもないものが出來る。
「滑つて轉んで 鬼でも蛇でも サボテン枕 寄れば刺す」
セキセイ鸚哥のレモン言葉を覺えぬ。「レモンちやんこんにちは」といふと必ず飛び來りて余の鼻先にちよこんととまる。二時午睡。四時起牀。夕餉後、『聲に出して讀みたい日本語』を眞似て、主頁に「日本語の玉手箱」といふ頁を拵へる。枕頭のDVD。古今亭志ん生の「稽古屋」と「うなぎの幇間」。粹なことこの上なし。
三時半起牀。空晴れて暖なり。いかにも小春らしき天氣なり。風强し。茟秉る。「夕空の法則」をご愛讀の「なかよしさん」と主頁に相互リンクを張る。午前主治醫の診察を乞ふ。野鳥の會探鳥會は復職後も是非とも續けられたしといはれる。九月末より體調頗る良好なり。これほど長期にわたり心身ともに健やかなのは初めてのことなり。三郷やまとの湯で湯治。實家を訪ふ。昨夕H氏に頂戴した松本の老舖和菓子屋「開運堂」の老松を茶請けに抹茶を喫す。至福の一時なり。二時歸宅。糠牀に玉蕪を漬ける。小一時間午睡。夕刻ふと思ひ立ち、筆記本電腦の内存增設す。64MBから192MBに增える。畫面の動きが速くなりたり。寢しなにDVDで古今亭志ん生の「たがや」と「饅頭こはい」を聽く。絕品。
三時半起牀。降りみ降らずみの定まらない天氣なり。茟秉る。微熱あり午下午睡。四時。藤が丘驛で友人H氏と會ふ。松本市から勤務先の大阪に歸る途次名古屋に立寄られたり。「咖啡農園」で歡談すること二時間に及ぶ。仕事、精神醫學、家族など、話題盡きまじ。京都西本願寺で淨土眞宗に入信せりといふ。余は野鳥の會會員になりし旨報告す。六時藤箇丘驛に送り別れる。
六時起牀。曇りし空より薄き日の光漏れ落ちる。微熱下がり平熱に戾りたり。感興大いに催し茟秉る。午前三郷やまとの湯で湯治。斎藤孝『聲に出して讀みたい日本語』屆く。良書。
三更覺醒。二度寢。四時起牀。隂。茟秉る。二度寢。十時半起牀。午下實家を訪ひ、父上手づくりのソーセージを賞味す。美味なり。余が漬けし糠漬三人で食す。二時半歸宅。三郷やまとの湯へ徃く。風呂には入らず囘數劵のみ贖ふ。微熱あり。DVDで志ん生の「こんにやく問答」を聽きながら午睡。セキセイ鸚哥のレモン飛び來りて余の額や鼻先に留まる。燈刻起牀。寢轉んでDVDで大友克洋『AKIRA』を看る。臺詞を先に錄音してから畫像を作成してをり、唇の動きと聲が見事に一致して感心す。何度看ても佳なり。
四時起牀。半隂半晴 茟秉る。九時實家。父上伊勢松阪にソーセージ作りに出かけて留守なり。母上のために電子郵件軟件の調整をするが解決せず。三時辭去。三郷やまとの湯で湯治。四時歸宅。抑鬱亭の電腦に Office XP を安裝せんとするも何故かエラーが出る。原因不明なり。
四時起牀。半隂半晴。風穩やかで暖なり。机に凭りて茟秉る。感興大いに來たる。九時半實家。父上母上を車に乘せて尾張旭森林公園植物園に徃く。岩本池にカルガモ多數をり。對岸の木立にアマサギ十羽ほどとまりをり。どんぐりの森を拔け、見事に剪定された宏大な芝生に寢轉がり、持參せし紅茶とビスケツトで休憩す。極樂氣分なり。嘴細烏多く芝生を徘徊す。名の知れぬ大樹の天邊に百舌一羽邊りを睥睨す。コガラ數羽見かける。昨日午後に較べるに野鳥の數甚だ多し。森の小道で蛇を見る。植物園出口附近では兎跳ね踊りたり。一時實家に歸る。晝餉に鷄麵を飯す。四時半志ん生の「黃金餠」を聽きながら午睡。七時半起牀。八時半實家。母上新たに電子郵件帖號取得。Outlook Express の設定を指南。無事終了。談笑深更に到る。十二時歸宅。
五時起牀。天氣牢晴。風强けれど暖なり。机に凭りて茟秉る。糠牀に胡瓜と茄子を漬ける。近鄰の電腦販賣店で封筒に貼り附けるコクヨ社の宛名シートを贖ふ。歸宅後、コクヨの主頁で宛名印字軟件を下載し、差出人用シールを作成す。封筒に裏にこれを貼れば住所氏名を手で書く手間が省ける。父上母上のものも作成す。正午實家。父上木曾川の笠松の渡しを見物に出掛けて不在。母上と晝餉を飯す。食後、母上と尾張旭市森林公園内植物園を逍遙す。園内の岩本池にマガモの親子數羽泳ぎをり。けふは鷺の姿見當たらず。ことりの森、こどもの森、どんぐの林など散策す。所々に綺麗に剪定されし芝生靑々と茂る。以呂波紅葉の葉少し色づきたり。倂し彩り芳しくなく、色づく前に散る葉多し。彼方此方で樣々な鳥の囀り聞こへども雙眼鏡でも姿を捉へること能はず。木漏れ日の中逍遙すること一時間半弱に及ぶ。實家への途次、長久手町「咖啡農園」で咖啡を喫す。着物姿の三人連れの女性客、世間話の聲甚だ五月蝿い。「姦しい」と書いて「かしましい」と讀むは言ひ得て妙なり。笠松より父上歸る。夕餉に鰤の照燒き、さやえんどうの玉子とぢ、豆腐とエノキ茸の味噌汁を飯す。食後富有柿と刀根柿を食す。暮刻歸宅。
四時起牀。降りみ降らずみの定まらぬ天氣なり。茟秉る。自動的俳句生成程序を更新す。十時半三郷やまとの湯。惡天候故か客足疎らなり。十二時歸宅。主頁に『森羅萬象』といふ投稾型の辤書作成頁を開設す。閱覽者が好みの言葉を好きなやうに定義して登錄する仕組なり。早速福岡縣在住のばしばし君が單語登錄せり。續いて同縣在住のあけみさんと重虎君も登錄せり。窗外俄に暗くなりぬ。燈刻實家に兩親を訪ふ。札幌西山製麵のラーメンを飯す。初めて削りたての鰹節を食す。香り芳醇、深き味はひなり。食後三種類の柿を食す。地元の筆柿、岐阜產富有柿、和歌山產刀根柿なり。いづれも甘く美味。
四時前起牀。曇りて風寒し。机に凭りて茟秉る。窗外の電線に百舌舞降りる。九時半瀨戶市岩屋堂公園の探鳥會に參加す。總勢十八名。殆どが五十代以上の年配なり。こんもりと茂る森にせゝらぎが流れる。案内人は三十代の若い男性で、彼方の山の頂に止まりをる鳥をたゞちに肉眼で捕らへ「ゐる!」と發す。全員が雙眼鏡と望遠鏡で覗き「ゐる」「何處」「あそこ」と遣取りを交はす。本日最初の鳥はサヽゴイなり。アオゲラは聲のみなり。茂みの枝に黃鶺鴒を見る。灰色の背に目元が白く、腹が黃色い。ふと空を見上げればエゾビタキ、イワツバメ、アマツバメ、トビが舞ふ。四十雀を見たとひふ女性あれど余は見逃しぬ。けふの成果はルリビタキなり。群生する木の茂みの枝に隱れてゐる。百舌のやうな茶色の背に翼の下が橙色、腹は白い。尻尾が靑く、體全體が眞ん丸い。歸宅途次、三郷やまとの湯で湯治。けふは烏の行水で露天風呂にざぶんと滲かり直に上がる。夕餉食後、馴染みの網站から公共網關界面(CGI)の程序文件を下載し、余の主頁に埋め込む。ひとつは自動的に俳句を作成する程序なり。もうひとつは名前と生年月日と年齡を入力すると馬鹿馬鹿しい履歷書が自動的に作成される程序なり。
三時二十分覺醒。二度寢。六時起牀。快晴。小春の好き日なり。讀賣新聞で劇團青年座總務取締役、金井彰久さんの訃報に接す。『冩樂考』の飜譯のお手傳ひをして以來、懇意にしていたゞいた。死因は肝細胞癌。享年六十五。明日正午劇團で葬儀あり。葬儀委員長は西田敏行。主頁に全文檢索機能をつける。好きな言葉を入力するとその言葉が揭載されたページの一覽が表示される。
五時覺醒。二度寢。六時半起牀。一天拭ふが如く日光清澄なり。感興大いに催し茟秉る。鄰家の柿の木に鵯二羽とまりをり。雙眼鏡で觀察す。須臾にして飛立つ。すぐさま電線に百舌舞ひ降りる。十時三郷やまとの湯で湯治。マッチョをぢさんに遭ふ。風貌といひ物腰の柔らかさといひ立松和平に瓜二つなり。午下、明後日の探鳥會の下見に瀨戶市の愛知高原國定公園岩屋堂公園に徃く。愛知高原國定公園は、東海自然步道を骨骼として當時の七つの縣立自然公園(入鹿池、道樹山定光寺、猿投山岩屋堂、奧矢作及び加茂と本宮山及び段戶高原の一部)を取り入れ昭和四十五年に指定されし公園なり。木曾山地の南端に位置し、愛知縣北部の山嶽地帶なりし三河山地の一部と、その西に連なる三河高原及び尾張北東部にある愛岐丘陵南部を含めし高原景觀と、矢作川上流部及びその支流の巴川を含めし地域の河川景觀が大きな特色なりといふ。綠深い山添を淸流流れたり。午後故鳥の姿は疎らなり。二時歸宅。
三時半覺醒。二度寢。六時半起牀。細雨。傘さすほどにもあらず。寒冷昨日の如し。終日家に在り。セキセイ鸚哥のレモンと大いに戲れる。『斷腸亭日乘』を讀む。午後午睡。
三時半覺醒。四時半起牀。朝來寒雨霏々。夕刻歇む。西北の風吹きすさみて寒し。茟秉る。十時三郷やまとの湯。脫衣所で體重を量るに七十キロを越えぬ。骨皮筋衞門と呼ばれしは遠い昔のことなり。風呂から上がり髮を乾すにマッチョをぢさんと出會ひ挨拶を交はす。十一時歸宅。減量に本腰を入れねばと肝に銘じながら氣がつくと大福餠を頬張つてゐる。意志薄弱なり。少年時代、主治醫に「中年になれば太る」と云はれたが豫言は的中しぬ。
よく眠つたと思ひ覺醒するにまだ三更なり。二度寢。四時半起牀。三度寢。七時起牀。寢足りず四度寢。八時半起牀。曇天。風冷なり。机に凭りて茟秉る。アマゾンから高田文夫の『江戶前で笑ひたい』『笑ふふたり』(中公文庫)屆く。アマゾンは送料無料なり。商賣成立いかならむ。紐育フロリダで炭疽菌に感染せし患者急增す。郵便物が感染源なりといふ。アフガニスタン爆擊に對する生物兵器テロと看做す新聞報道多し。二時午睡。五時起牀。窗外旣に薄暮。
四時起牀。快晴のち陰。机に凭りて筆秉る。一昨日と昨日の野鳥觀察で七時間以上步けど足腰に痛みなし。九時主治醫の診察を乞ふ。病着實に本復に向ふ。これからは毎週ではなく隔週通院することで合意す。十時三郷やまとの湯で湯治。十一時歸宅。ビデオで『ダウンタウンのごつゝえゝ感じコント傑作集』を看る。衝浪で珍しい主頁發見す。「豆腐の角に頭ぶつけて死ね」といふ言ひ草があるが、事實頭をぶつけて死に至らしめる豆腐ありといふ。山形縣西川地方の六淨豆腐。高野豆腐の乾物よりも堅い豆腐なりといふ。鰹節のやうに削り、お吸ひ物等で利用する由。夕刻午睡。
六時起牀。二度寢。八時過起牀。天氣牢晴。初めて日本野鳥の會愛知縣支部探鳥會に參加す。海上は「海上の森」なり。九時。愛知環狀鐵道山口驛前集合。總勢二十三名。四十代五十代の壯健な男性多し。女性も若干名をり。團長は七十歲近くの老人なり。驛前通りを渡り畑を通るに早くもさまざまな鳥發見す。參加者一同野鳥觀察歷數年の兵ばかりで、さつと舞ひ飛ぶ鳥を目擊するや「あつ」と聲を上げる。すかさず全員が雙眼鏡や望遠鏡で姿を捉へる。望遠鏡の持ち主は覗き見させて吳れる。櫻金造に似た中年男性熾に愛嬌振り撒き塲が和むこと頻なり。雀はいふまでもなし。椋鳥、白鶺鴒、ノスリ、鵯、野鶲見ゆる。民家の屋根に靑鷺とまりをり。海上の森に入るに背黑鶺鴒、雉鳩、燕、融通無碍に舞ひ飛びてをり。先導者に導かれるまゝに獸道を分け入る。杉伐採されし跡地は一面背高泡立草の黃色い花咲き亂れてをり。笹の藪を拔けて篠田池に出る。靑空高く大鷹悠然と舞ふ。感歎の聲彼方此方で上がる。池の邉で休憩。辨當を食す家族連れ、水筒のお茶で喉を潤す者などあり。更に森の奧深く進むに大正池に出る。懸巢見かける。飛び方が賴りないのが特徵なり。矢の如く銳く飛ぶ鳥あり。黃鶺鴒なり。一時過ぎ。山中で「鳥合はせ」を行ふ。銘々が目擊せし鳥とその數を順に舉げる作業なり。けふの成果は以下の通り。
雀 | 二十八 |
椋鳥 | 五 |
白鶺鴒 | 二 |
ノスリ | 四 |
鵯 | 二十六 |
野鶲 | 一 |
百舌 | 八 |
靑鷺 | 一 |
背黑鶺鴒 | 七 |
雉鳩 | 六 |
腰赤燕 | 二 |
翡翠 | 二 |
輕鴨 | 一 |
赤啄木鳥(アカゲラ) | 二(聲のみ) |
山雀(ヤマガラ) | 十一 |
大鷹 | 四 |
掛巢 | 七 |
頬白(ホオジロ) | 三 |
目白 | 四 |
黃鶺鴒 | 三 |
小鷺 | 一 |
鳶 | 七 |
嘴太鴉 | 六 |
嘴細鴉 | 二 |
四十雀 | 三 |
川鵜 | 三 |
土鳩 | 二十四 |
鶯 | 一 |
柄長 | 三 |
靑鵐 | 三 |
計三十種。鳥合はせが終はり海上の森入り口にて解散。二時歸宅。足腰に心地好い疲勞感あり。四時間半步き體力に自信戾れり。
六時時歸宅。筆秉らんとするも感興來らず。晴れて風靜なり。九時。雙眼鏡と野鳥圖鑑を携へて海上の森へ徃く。愛知環狀線山口驛前に車を停め、畑を進むと「海上の森」の看板あり。森へ分け入る。傍らに流れる淸流きよらかでせゝらぎ耳に心地好し。鬱蒼と茂る森の彼方此方でさまざまな野鳥飛び交ふ。雙眼鏡で姿を追ふも鳥の速さに追ひつくこと能はざり。飛來する鳥を雙眼鏡で觀察するには熟練を要するものならん。梢に止まりをる鳥數多居るが茂みに隱れて啼き聲のみ聞こゆれど姿なし。木漏れ日山道に陰翳をなす。赤蜻蛉多く舞飛びたり。筆柿多く實りたり。一時間ほど逍遙するに「陶龍寺」なる小體な造りの、陶藝アトリエと喫茶店を兼ねた庵あり。一服喫せんと入る。學生服姿の中學生二人のほか客なし。入つて左手に佛壇あり。武田信玄公一族を祀つてゐると云ふ。店主は山田みち江といふ中年女性で、問はず語りに海上の森の歷史講義を始める。「海上」の名の由來は昔麓まで伊勢灣が迫つてゐたゝめといふ。陶龍寺は武田信玄公の隱されし墓地なりといふ。店主の話は齒止めが聞かず、海上の森には大和朝廷があり、世界の總ての文明の源は瀨戶海上の森に發すと大眞面目に珍說を開陳す。話が一段落した頃合を見計らつて暇乞ひす。山中の大正池なる池を目指すも途中から通行止めなり。詮方なく踵を返すに、向かふから見慣れた女性來る。なんと同僚のN氏なり。夫と共に初めて海上の森に散策に來たといふ。まことに奇遇なり。山口驛に戾ると時刻は旣に正午を過ぎぬ。十二時半歸宅。糠牀に人參と茄子を漬ける。晝餉に淺蜊しぐれと梅干のお握り、キャベツの糠漬を飯す。午睡。鸚哥と戲れる。五時實家。在線商店で贖ひしガスパチョを持參す。夕餉にガスパチョ、眼梶木の鹽燒き、舞茸と赤ピーマンの炒め物、ブロッコリーのサラダ、三つ葉の味噌汁を飯す。九時歸宅。
四時覺醒。机に凭りて筆秉る。二度寢。六時四十分起牀。天氣牢晴。裏の畑に秋櫻今を盛りに咲き誇る。何故か向日葵も枯れず咲き殘りをり。十時三郷やまとの湯で湯治。十一時歸宅。日本野鳥の會より獨逸カール・ツァイス製雙眼鏡屆く。早速四鄰を睥睨す。グリーンロードの超級市場アピタの看板眼前に出現す。在線商店の「おそうざい工房」より西班牙のガスパチョ・スープ、「六花亭」よりマルセイバタアサンド屆く。何れも網上贖物で贖ひし品物なり。尾張旭森林公園内の有料植物園に徃く。散策道を步くとすぐ右手に大きな岩本池あり。鴨が群れをなして遊弋。雙眼鏡で眺め持參せし野鳥圖鑑と見較べる。カルガモと判明す。左手の岸を見るに鷺が一羽すつと立つてゐる。アオサギなり。對岸の枯れ木の枝に背の低い純白の鷺一羽をり。アマサギ。池の邉の長椅子で一服喫す。二時歸宅。六時半。長久手町文化の家で蜷川幸雄演出『ハムレット』を看る。客席は滿席。舞臺は天上から幾つものランプが吊り下がるだけの簡素な裝置。絢爛豪華な裝置を排し役者の言葉で魅せるのが狙ひと見たが、殆どの役者は早口で科白聞取れず。市村正親のハムレットは可もなく不可もなし。初舞臺の篠原涼子のオフィーリア、初々しくて好し。他は演技過剩なり。缺伸を噛殺すこと頻なり。「生きてとゞまるか消えてなくなるか、それが問題だ」(松岡和子譯)。九時半終演。
四時覺醒。机に凭りて筆秉る。二度寢。八時起牀。陰晴定まらず。風なく暖なり。デトロイトのK君から電子郵件の返信屆く。新聞一面名古屋大大學院理學硏究科敎授の野依良治博士ノーベル化學賞受賞を大書して報ず。DVDでキューブリックの『博士の異常な愛情』を看る。ヤフー!オークションで落札せし『ダウンタウンのごつゝえゝ感じ傑作集』のビデオ屆く。東京より取寄せし雜誌『東京人』十一月號の落語特輯號を讀む。少年時代の山下達郎が叔父の口利きで三味線漫談の大家柳家三龜松師匠に弟子入りさせられさうになつた逸話發表す。古今亭志ん朝と林家こぶ平の對談あり。志ん朝の遺稾ならんや。 午下母上來宅。不精者の余に代はり家中隈なく掃除す。六花亭のマルセイバタアサンドを茶請けに一服。五時實家。父上母上と夕餉を飯す。
四更覺醒。秋霖霏々たり。二度寢。四時半起牀。雨歇まず。瀧野川在住M氏と早朝恆例の電子郵件による文通。ふたゝび眠を貪り八時半起牀。雨霽れず。英語の電子郵件屆く。なんと十五年前東京板橋でロルカの三大悲劇を上演せし時の舊友K君なり。今は亞米利加はデトロイトに住み、余の主頁を看て懷かしさのあまり聯絡せりといふ。昨夜の謎の花の名前、母上に電子郵件で敎はる。母上は街路樹の花を切り、近鄰の花卉專門店の店員に名を訊ねたれば、アベリアといふ花だと答へられたり。午前机に凭りて筆秉る。「筆秉る」といへども實際には鍵盤を叩いてゐる。ヤフー!オークションで落札せし原一男の『ゆきゆきて神軍』とキューブリツクの『博士の異常な愛情』のDVD屆く。書篋のDVDは百八十枚に達す。母校札幌北高校合唱部が日曜のNHK全國合唱コンクールで銀賞受賞す。一時半三郷やまとの湯で湯治。惡天候故客疎らなり。二時半歸宅。雨やうやく歇む。ふたゝび机に凭りて筆秉る。
四時覺醒。二度寢。六時覺醒。三度寢。八時起牀。曇りて風涼し。早起筆を秉る。互聯網の新聞紙一齊に大書して米英軍アフガニスタン爆擊のことを報ず。午前超級市場に赴き食材を贖ふ。糠牀に日高昆布と鷹の爪を足す。近鄰に背丈の低い街路樹あり。白い可憐な花咲き亂れる。母上に名前を訊ねるに首を傾げる。昨日午後數碼相機で撮影せし冩眞を東京北區瀧野川の友人M氏に電子郵件に添へて送る。M氏は冩眞の趣味があり被冩體は專ら花なり。今朝返事の電子郵件屆く。M氏も分からぬといふ。蟲の音一夜ごとに繁くなりゆけり。日短くなりて夕方六時夕餉の膳に向ふに箸を措かざる中家の内早くも暗くなりゆくなり。
六時覺醒。九時起牀。陰。無風。體育の日で巷は三連休最終日なり。「夕空の法則」二篇執筆。イスラム原理主義テロ勢力に對する掃討作戰を準備せし亞米利加と英吉利兩政府、亞米利加東部時間の七日午後零時半、テロ首謀者と看做すウサマ・ビンラーディン一派と、一派を匿ふしアフガニスタンの實效支配勢力タリバンに對する攻擊を開始す。カブール等複數地點の軍事施設やテロ訓練キャンプを對象に、B2ステレス爆擊機、B52爆擊機等空爆。余はテレビ嫌ひ故讀賣新聞の主頁で記事を讀む。亞米利加のテレビ局、反タリバン勢力「北部同盟」とタリバンが對峙するカブール北方の前線附近の彼方此方で火の手が上がり、タリバンの對空砲と見られる火砲が應戰する映像を傳へてゐると讀む。攻擊はカブール近邊に加へ、第二の都市カンダハルなどでも展開されてゐるといふ。「あらゆる暴力は復讐」なれば報復テロは必至ならん。余はこの戰爭に反對する者なり。午前三郷やまとの湯で湯治。「海の病棟」で共に寢起きした橫濱在住S孃より電子郵件で自作の小說三篇屆く。大學で敎鞭を執る余に是非讀んでもらひたい由。早速拜讀。いづれも短篇で夏目漱石「夢十夜」や夢野久作に通じる世界なり。内容は面白いが、舊假名遣ひと新假名遣ひが混在してゐる。午後午睡。ふと目を覺ますにセキセイ鸚哥のレモン、額の上に鎭坐してをり。見ればレモンも居眠りをしてゐる。
四更覺醒。二度寢。七時起牀。曇りて暖なり。身重で觀劇叶はぬ同僚Y氏宅を訪ひ三津五郎襲名披露公演の入場劵を讓り受ける。午後午睡。はつと氣がつくと三時四十分。飛起きたりて伏見へ徃く。御園坐で坂東三津五郎襲名披露公演を看る。鄰席は獨逸人同僚H氏。丁度「蘆屋道滿大内鑑葛の葉」が始まりしところなり。續いて十代目坂東三津五郎襲名披露口上。落語以外で口上を見物するは今宵が初めてなり。口上を務めしは中村鴈治郎、續いて中村時藏、中村勘太郎、坂東吉彌、中村勘九郎、市川佐團次、坂東秀調、尾上菊之助、坂東正之助、尾上菊五郎。休憩後、「義經千本櫻吉野山」。三津五郎の端正かつ豪快な佐藤忠信に「大和屋!」「十代目!」と大向かうからかゝる聲盛んなり。倂し今宵の余の愉しみは「與話情浮名橫櫛」の「木更津海岸見染の場」と「源氏店の塲」なり。時藏のお富、菊五郎の斬られ與三郎、ともに好い。吉彌の蝙蝠安は聊か愛嬌に缺ける。九時半歸宅。
四更覺醒。五時起牀。天氣牢晴。岩波書店から永井荷風『斷腸亭日乘』第一卷屆く。十時實家。衞星放送でマリナーズ對アスレチックス戰觀戰。イチロー選手、大リーグ現役最多の年間二百四十一安打達成。桑港ジャイアンツのバリー・ボンズ外野手、對羅府ドジャース戰で今季七十一號七十二號の連續本壘打を放ち、一九九八年にマーク・マグワイア内野手が樹立せし年間本壘打の大リーグ記錄を更新す。晝前母上と長久手町ユニクロに徃く。目當てのものが見當たらず尾張旭のユニクロも覗く。此處の方が品揃へ豐富なり。Tシャツ、セーターを贖ふ。十二時實家に歸參す。二時午睡。夢の中で情けないことをしてしまひ、半べそをかきながら四時覺醒。若松監督率ゐるヤクルト・スワローズがリーグ優勝。日本シリーズは近鐵對ヤクルトなり。六時夕餉。大根おろしとカボスで新秋刀魚の鹽燒きを飯す。おでん、インゲン豆の胡麻味噌和へ、靑梗菜の味噌汁。七時半歸宅。ユニクロがソルトレーク冬季五輪の日本代表選手團の制服を無償提供するを聞く。賣上が落込みつゝあり起死囘生を計らんと欲するものやらん。
四更惡夢に魘され飛起る。二度寢。五時起牀。陰。風穩やかにして半袖で丁度いゝ暖かさなり。「夕空の法則」執筆。早朝の恆例行事なり。十時アピタに徃き携帶灰皿を贖ひ、三郷やまとの湯で湯治。マッチョをぢさんと出會ふ。體重を量るに六十八キロを超え啞然とす。新記錄。腹の周りに肉がつく典型的な中年太りなり。晝前實家。劍道防具と劍道着を梱包し、家の斜向かひの便利店から大分縣宇佐市在住の競賣落札者に發送す。母上と車で杁ケ池のユニクロに徃きシャツや帽子を贖ひ、アピタに立寄りスタアバツクスの珈琲を二階のテラスで喫す。足元に雀二羽來りて客が放るポテトチツプスを啄ばむを見る。夕刻實家に歸る。夕餉。鮭のホイル燒き、大根菜と油揚げの炒め物、烏賊の鹽辛、糠漬、キムチ。食後柿。食大いに進む。
六時起牀。陰。夕時雨あり。午前矢野誠一『エノケン・ロッパの時代』(岩波新書)を讀みながらセキセイ鸚哥のレモンと大いに戲れる。矢野氏の文體興趣に缺け左程面白味なし。午下スタアバックスでヘーゼルナッヽ入りラテを贖ひ、表通りに面した休憩所で往來を眺めながら喫す。午後實家。ヤフー!オークションで二十年前の竹刀二本二千圓で落札さる。兵庫縣西宮市の落札者に宅急便で直ちに送る。母上と夕餉を飯す。鰺の開き、肉ぢやが、淺蜊と豆腐と葱の味噌汁、イカの鹽辛、糠漬。食後梨。八時歸宅。
六時起牀。快晴の空雲翳なし。朝暾赫々たり。晝食に梅とタラコのお握りと、余が漬けた胡瓜の糠漬を飯す。美味なり。早朝「夕空の法則」執筆。蒲團を干す。午前三郷やまとの湯で湯治。晝食に梅とタラコのお握り、余が漬けし胡瓜と人參の糠漬を飯す。午下實家近鄰の喫茶店「珈琲農園」で母上と落ち合ひテラスで珈琲を喫す。爾後母上と車で糠牀を求めて超級市塲を巡る。藤箇丘驛前松坂屋ストア、ナフコ、生協、長久手町生協(休業)、アピタ、アオキ、尾張旭バロー、生協產直センター、北本地箇原町ナフコ、三郷イトーヨーカドー、ヤマナカ、ユニーを探せど求むる糠牀何處にもなし。一日に十一店舖も見て廻つたのは初めてなり。燈刻實家。夕飯を馳走になる。鷄と帆立と白菜とセロリのシチュー、鰈、栗ご飯、長葱と若布の味噌汁。食後ジャスミン茶と梨。ヤフー!オークションで競賣にかけし中古劍道防具劍道着一式、初値五千圓なれど二萬七千圓で落札され母上と余は仰天す。日曜に父上東京より戾るまで今週は夕飯を食べに實家に來ることゝす。
七時半起牀。晴。南風强し。暮刻月佳し。新聞各紙の志ん朝訃報欄に目を通す。俳優の中尾彬が志ん朝と談志の二人會を企劃してゐたことを知る。また談志は志ん朝が志ん生襲名する時は口上を務めると約束しぬ。「夕空の法則」更新。毎日の日課なり。午後午睡。矢野誠一『三遊亭圓朝の明治』を讀む。DVDでイッセー尾形の『ハルマゲドン記念集會』と『あたしつて癒し×嫌し系?!』『世紀末つてナニ?』『熊の清次郎』を看る。
夙起。窗外を見るに風雨烈し。じき霽れる。午前實家。蕎麥を飯し食後好物の帶廣六花亭バターサンドを茶請に珈琲を喫す。ラム酒とバタアの風味格別、味佳なり。 ヤフー!で競賣にかけし劍道防具劍道着一式、入札殺到、初値の倍を上囘る。母上に電腦で顏文字を書く方法を指南。三時三郷やまとの湯で湯治。四時主治醫の診察を乞ふ。病狀着實に本復に向かつてゐる。歸宅後セキセイ鸚哥のレモンと戲れる。同病を患ひし友人A孃より感謝の電子郵件屆く。余の「夕空の法則」を讀み鬱狀態輕減せりと云ふ。慶ばしい限りなり。燈刻ラジオを聽き、古今亭志ん朝の突然の訃報に接し言葉を失ふ。享年六十三。若くして才氣煥發、現役では天下一品、昭和平成の大名人なり。落語界は偉大な才能を失ひぬ。余は心にぽつかりと空洞が出來た心地す。