半陰半晴。氣分怏〻として何事をも爲す能はず。終日困臥。夕刻風吹出づ。日暮黑雲天を蔽ふ。北の空に電光閃く。二更大雨懸淙の如し。
空どんよりと曇りて蒸暑し。午下D君を地下鐵道驛に見送る。漫畫の草稿をつくらむとせしが感興來らず、一枚をも書き得ずして已む。倦怠感甚しく夕刻まで寢臺に橫はる。六時頃小雨降り來りしが須臾にして歇む。夕食後溫泉。客いつもより多し。二更BSプレミアムにコントの劇塲八月號を看る。伊東四朗客演すると聞き鶴首してこの日を待ち望みしが、脚本いづれも拙劣一つとしておもしろきものなし。三更河畔をあゆむ。溽蒸甚し。雲散じて星出づ。氣分陰々滅々たり。
薄く晴れて稍むしあつし。午後D君父上母上を伴ひ色金山歷史公園に徃き散策す。D君德川家康が腰かけしと傳はる床几石に腰かける。木造の展望臺より東山公園と名驛ツインタワーを望む。つく/\法師の啼きしきる聲せはしなし。歸途咖啡所コメダに立寄り輕食をとる。母上の注文したる味噌カツサンドイッチ人の顏ほどもある大きさにて一同呵々大笑す。三時歸宅。夜D君書齋に來る。蹴球、映畫、電腦のことなど談笑深夜に及ぶ。
晏起。けふも晴れて風涼し。午下千葉より甥D來訪。蹴球三昧の日々を送りて全身眞つ黑に日燒けし、背丈また少し伸びて宛然牛蒡のごとし。ケーキを茶請に咖啡を喫し談笑す。程なくしてDは父上と將棋を弄ぶ。余は書齋にて執筆。二更川端をあゆむ。
晴れて凉し。執筆。ニコニコ動畫に笑福亭たまの落語五席を聽く。疲勞と倦怠感を覺えて晡時午睡二時間ばかり。二更坡上をあゆむ。
寒冷前日にまさる。烟雨ふりてはまた歇む。漫畫原案推敲。何故にや倦怠感甚しく困臥半日。
陰雨冥〻。寒冷暮秋のごとし。夕刻雨霽れて靑空現る。初更川緣をあゆむ。風濕氣を含みて冷なり。二更CBCに北野演藝館 たけしが本氣で選んだ藝人大集結!やゝ新ネタSP!を見る。六囘目の放送なり。囘を重ねるごとに面白み失せゆくは殘念なり。思ふに出演者の緊張感薄れゆくが故なるべし。インパルスの惡靈退治コントのみよし。
曇天。夜中まで雨ふりつゞきしとおぼしく、涼風炎暑を洗去る。鰯雲の棚引くさまいかにも秋の空合なり。夜初更河畔を步す。何處か遠方より花火を打揚る響頻なり。雲の奧に赤く染まりし十八夜の月の昇るを見る。蟲聲喞々。三更枕頭たまテレビの/\Eテレをつけるに、富士山と日本人~中沢新一が探る1万年の精神史~といふ番組の再放送あり。思はず仕舞まで見る。大權現家康は威光の根據として富士山を崇めたり。江戶に伊勢國出身の伊藤伊兵衞といふ油賣ありき。日頃より惡政を難じて財產を貧民に分け與へ、自らを身祿と稱し、享保の飢饉の翌年に富士山八合目の烏帽子岩にて斷食を行ひ、三十四日目に入滅しぬ。彼の遺德を偲ぶ行者が今日の富士講をつくりたり。
半陰半晴。溽蒸甚し。氣溫攝氏三十六度に昇る。漫畫原稿を書くこと日課の如し。昏暮理髮舖に徃く。北の空に電光閃々〻たり。歸路溫泉。一汗流して外に出づれば待望の雨降り來れり。今月六日以來十九日ぶりなり。稻妻頻に閃く。然れど氣溫は下がらず、あたかも溫室に在るが如し。
晴。むしあつし。紐育ヤンキースのイチロー選手日米通算四千本安打の大記錄を達成す。けふも漫畫原案を改削、新作數篇執筆に知惠を絞る。酷熱退かず。氣溫けふも攝氏三十七度に昇る。夕餉に三河安城產の冷麦を食す。
隂。殘暑いよ/\烈し。今月六日より一滴の雨なし。漫畫原案を推敲す。午後ヤマト運輸に赴きS子に自家製紫蘇ジュースなど一凾を送る。役塲前の寒暑計攝氏三十七度を示す。晡時一睡わづかに苦熱を㤀る。夜三更に至るも氣溫三十度を下らず。熱中症に罹るを虞れて速步は斷念す。滿月皎〻たり。
半陰半晴。秋暑ます/\甚し。寒暑計三十六度を示す。けふも漫畫原案をつくる。午後主治醫を訪ひ診察を請ふ。焦燥感は去りしに日中の氣怠さ眠氣はまだ依然たり。ドグマチールを一日六十瓱より四十五瓱に減らして樣子を見ることゝす。市中の田疇に垂り穗を見る。黃昏溫泉。雲間に幾望の月の昇るを見る。初更BS11ようこそ藝賓館に落語藝術協會新眞打特輯を聽く。雷門小助六兩泥、春風亭笑好雜俳、三笑亭世樂花甁の三席なり。三更川緣をあゆむ。濕氣夥し。BSフジ落語小僧十一囘放送を見る。小學六年生紅巣亭真直の十德、泰然自若たる高座に一驚を喫す。しかも要所々々に人を爆笑せしむ。小學五年生快楽亭幸志のえんぎかつぎ(ざるや)も惡しからず。指南役柳家三三加賀の千代を語る。
半晴。コメダ咖啡店に朝餉を喫し、MOVIX三好に徃き宮崎駿の風立ちぬを看る。風の描寫精緻を極む。音響效果もまた絕品なり。音聲のステレオではなくモノラルなりしは大正より昭和にかけての物語なるが故なる歟。大人こそ見るべき作品なり。豫告篇タイムスクープハンター、ローン・レンジャー、くもりときどきミートボール2、清洲會議、ガッチャマン、永遠の0、くじけないで、アナと雪の女王、かぐや姫の物語。一時半歸家。けふも漫畫原案をつくる。二更NHK總合テレビに今井翼×サムライ支倉を見る。久振りにて小島章司氏の踊りを見る。三更堤上を步す。むしあつし。風濕氣を多く含みて流るゝ汗夥し。蟲聲夜每に多し。十三夜の月鏡の如し。
晏起午に近し。半陰半晴。無風。漫畫原案をつくる。書齋寢室の塵を掃ふ。晡時櫻島噴火。三更インターバル速步日課の如し。十二夜の月皎然たり。殘暑退かず夜も暑し。
晏起。晴。殘暑やゝ忍び易し。漫畫原案をつくる。YouTube に本日より二日間限定の貴重なるライブ映像公開せらる。昭和五十六年六月朔新宿厚生年金會館にて行はれし大滝詠一ロング・バケイション・コンサートなり。Sheila~シャックリマヽさん~Love's Made A Fool of You のメドレー極上。演奏者は唄&アレンジ大滝詠一、ドラム上原裕、ベース松下英二、ギター鈴木茂・村松邦男、アコースティックギター吉川忠英・安田裕美、キーボード松任谷正隆・大浜和史、パーカッション鳴島英治・川瀬正人の諸氏なり。夜七時ドーンと花火を打揚る音聞ゆ。七時半ドヾーン、パラ/\といふ響頻なり。
晏起。薄く晴れてむしあつし。旬日雨なし。黃昏N子を地下鐵道驛に見送る。歸途いつもの溫泉に徃く。盆休みの最中なるが故客いつもより多し。三更川端をあゆむ。十日頃の月空に在り蟲語喞々たり。ドラッグストアの駐車塲に一匹の猫あり。ちよこんと坐り余の顏を眼で追ふその姿哀れを誘ふ。捨て猫なるや。この頃よく見かけるなり。深夜零時NHK-FMに大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳第四部最終囘を聽く。後日第五部の放送ある由なり。
薄晴。風なく殘暑ふたゝび盛なり。けふも漫畫原案五篇をつくる。午後舊稿を刪訂す。N子眼のまはり原因不明の腫れ生じて、試合を終へしボクシング選手のやうな顏になりぬ。高崎一郎死去。享年八十二。夜三更坡上を步す。深夜零時NHK-FM大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳第四部第四夜を聽く。五十七年より五十九年までの紐育白人ドゥーワップの名曲次々とかゝる。いづれも余が最も好む樂曲ばかりなり。
薄晴。風やゝ涼しくなりぬ。朝飯の後漫畫原作五篇をつくる。午後舊稿を刪定す。夕餉の後N子と談笑刻を移す。商品デザイン、漫畫、映畫のことなど話題盡きず。紅に染まりたる上弦の月中空に浮ぶを見る。深夜零時NHK-FM大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳第四部第三夜を聽く。今宵はフォークソングの歷史を語る。この日の樂曲を爰に記し置く。
薄く晴れて秋暑なほ熾なれど昨日に比すれば稍忍びやすし。蚤く起きて漫畫の草案をつくる。妙案次々と思ひ浮び、電腦の鍵盤を打つ指も追ひつかぬほどなり。一氣呵成に五篇ほど書き得たり。直に編輯人に交附す。今日までの經驗によれば、名案といふものは屢早朝に思ひつくものなり。晡刻一睡わづかに苦熱を忘る。夜二更にならむとする頃地下鐵道驛にN子を出迎ふ。埼玉縣に比べて尾張の夜は涼しく感ぜらるゝといふ。頃日東京近郊にては眞夜中にも氣溫攝氏三十度を下らざるを思へば宜なるかな。草蘆近くにて信號待ちのあひだ車の窓を開けるや蟋蟀の聲聞ゆ。N子を家に送りて後そのまゝ自動車を運轉し、ことぶきの湯に徃き一浴す。三更河畔を步す。深夜零時NHK-FMにて大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳第四部第二夜を聽く。
蚤起。晴れて酷暑燬くが如し。コメダ咖啡店に朝餉を喫す。盆休みのことゝて店内親子連れの客多くほゞ滿席なり。カウンターに僅に一席空席あり。十時半MOVIX三好に徃く。二番館にてギジェルモ・デル・トロ監督の新作パシフィック・リムを觀る。駄作。脚本退屈この上なく後半三四十分は居眠りしたり。スクリーンサイズはシネスコと思ひきやビスタなり。豫告篇ローン・レンジャー、許されざる者、TIGER&BUNNY、ホワイトハウス・ダウン、エリジウム、マン・オブ・スティール、劇塲版タイムスクープハンター、戰塲のエンペラー。一時半歸家。漫畫原稿の執筆夜二更に及ぶ。三更夜風やゝ涼しく感ぜられしかば六日ぶりに川緣をあゆむ。兩岸の叢より蟲の音繁し。闇に沈む川よりブオヽ、ブオヽと牛蛙の低き聲さながらチューバの如し。深夜零時NHK-FMにて大瀧詠一のアメリカン・ポップス傳第四部第一囘放送を聽く。今宵かゝりし樂曲を茲に記す。
四更CBCにて世界陸上莫斯科大會を見る。棒高跳び決勝に山本聖途君出塲す。山本君は三年前余の授業を受けし學生なり。五メートル七十五センチを跳び六位入賞を果たす。前囘優勝のハンマー投げ室伏広治は全力出し切れず六位に終りぬ。
晴れて苦熱依然たり。机に憑る可からず。十一時ごろセキセイ鸚哥のアサリ君羽を閉ぢたまゝ脇のところを開くこと頻なり。この仕草は暑さに堪へかねる時脇に風を送らむとして行ふなり。午下除濕。晡刻Eテレ日本の話藝に三遊亭小遊三の蒟蒻問答を聽く。夜初更BS11イレブン・シネマズにてハワード・ホークス監督のモンキー・ビジネスを見る。祕藥を誤飮して若返りしジンジャー・ロジャースのはしやぎぶり見事なり。
薄く曇りて炎熱堪ふべからず。慈君と俱に買出しに行く。農協にて靑硏の林檎汁を買ふ。安昌寺の境内に盆踊りの櫓組まれたり。あぐりん村に赴き赤紫蘇を買ふ。一袋二百圓。親子連れの客多し。前庭の芝生に動物ふれあいコーナー設けられ、ビニールプールに大きなる陸龜一匹あり。鄰には蟲除け網を四角なるテントに組みて中に櫟らしき木の枝を竝べ、兜蟲を展示したり。三歲ぐらゐの男兒興味深げに指先にて突きをれり。その橫にては宿借りを販賣す。一匹三百圓。芝生を眺めながらかき氷を食す。園藝店くすの木に立寄り鉢植のベゴニアを購ふ。正午過ぎ家にかへる。三時より五時まで午睡。
輕陰。無風。犯罪的と呼びたきほどの暑さなり。朝飯を食し終るころ寒暑計旣に攝氏三十一度を示す。陋屋にては日中風の吹通ふ中は空調機を使はず、日暮れて風の吹き止むを見て初て除濕するを常となすなり。然るに今日の暑さは尋常ならざれば午下除濕せり。秋田岩手兩縣にて未曾有の豪雨ふる。報道記事はこれまで經驗したことのないやうな大雨と書く。三時より五時まで午睡。F君の返書に接す。去六日司法書士事務所を開業したる由。夜初更溫泉。三重テレビ淺草お茶の間寄席に鈴々舍馬風の酒と噺家、柳家權太樓の寢床を聽く。客席大に涌く。
薄く晴れて酷熱机に向ひ難し。午睡わづかに苦熱を㤀る。初更叢より蟲の音聞ゆ。八代目三笑亭可樂が悋氣の見本、尻餠、二番煎じ、文違ひ、三方一兩損を聽く。
舊七月朔。晴。立秋の節なれど炎熱堪ふべからず。戲曲D改削に半日を消す。作業の遲れを取り戾さむがため一氣に脫稿したしとの思はあれど、余には根を詰めすぎる惡癖あり、沒頭するあまり精神疲勞して恢復するに時間かゝること屢なれば、なるべく焦らず常に餘力を殘して仕事するやう自らに言ひ聞かせるなり。草蘆裏の正文館書店に赴くに拙著日本文學の言葉自己啓發書の棚に陳列してあり。二時半除濕。先月廿二日參議院選擧の翌日東京電力初めて福島第一原發の放射性物質汚染水地下より海中に流出しゐることを認めたり。前日まで認めざりしは選擧に於て自民黨に不利なるが故なり。爾來新聞各紙日々汚染の報道をなし、今日に至りて政府原子力災害對策本部每日三百屯の汚染水が海に流出しゐることを初めて明言せり。而も流出し始めたる時期は不明にて、一昨年の事故發生直後より絕えず海に流入し續けゐるやも知れずといふ。東電及び政府は發電所の實態を國民に公表せざること戰時中の大本營發表と異るところなし。專門家の話によれば對策は塲當り的にて殆爲す術なしといふ。海水の汚染二年半に及びたるは間違ひなかるべし。チェルノブイリの癈爐作業遲々として進まず百年後に癈爐し得るや否やも知れざるを思へば、福島第一原發の癈爐も數百年の歲月を要すべし。我ら國民は未來の子孫に對してとりかへしのつかぬ犯罪を犯しぬ。
雨後の空晴れしが白雲多し。朝の中より倦怠感甚しく机に倚りがたし。寢臺に橫はりて一時半まで眠る。主治醫を訪ひ診察を請ふ。日中の倦怠感と焦燥感を訴へるに、ドグマチールを一日七十五瓱より六十瓱に減らし、ウィンタミンを三瓱より六瓱に增やして樣子を見ることゝす。オリバー・ストーン廣島原爆の日平和紀念式典に參列す。アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏私財を投じてワシントン・ポスト紙を買收す。買收額二億五千萬弗なり。夕刻伯母Kより電話あり。惠贈せし拙著の禮を陳べらる。夜初更溫泉。今日は風呂の日(六の付く日)なるが故にや駐車塲ほゞ滿車の盛況なり。混雜さぞかしと思ひて男湯に赴くに脫衣塲も洗塲も不斷と異ならず。女湯は定めし芋を洗ふが如くなるべし。BS11ようこそ藝賓館に桂米團治の代書を聽く。噺よりも幼き頃桂朝丸(現ざこば)と遊びし思ひ出また米朝一門の内輪話に興味を覺ゆ。現米團治が月亭可朝より聞きし話によれば、若き日の米朝桂文樂より三木助を襲名するがよかるべし、三木助は大阪由來の名前なるが故なりと勸められ有頂天となり、黑門町のお墨付きをもろうたで、わしは三木助になる、その曉にはお前に米朝の名をやると可朝に言明せり。然るに或日ホール落語の會ありて、その日はたま/\客不入なりき。三木助襲名の噂を耳にしたる興行主呆れて米朝に、このホールを滿員にすることさへ能はずして何が三木助襲名や、百年早いわと一喝したり。米朝意氣銷沈して可朝に曰く、わしはもう二度と襲名はせずと。この逸話は凡て可朝の說なれば、もとより眞僞たしかならず。十一時半河畔をあゆむ。溽蒸さながら溫室に在るが如し。蟋蟀の聲やゝ多く聞ゆ。明日は立秋なるを思へば蟲の曆に忠實なること驚くの外なし。留守中錄畫し置きたるBSフジ落語小僧第十囘放送を見る。高校一年生でらうえ家てつ子ほめ。林家彦いち門下生なり。小學五年生みるく家くるみ元犬。尻を振る仕草まことに愛らし。指南役立川生志お菊の皿を語る。みるくの需に應じて無理やり與太郞を登塲せしむ。
曇りて風强し。手紙數通をしたゝむ。M交叉點の百圓店ダイソーに行きクッションシートを買ふ。本を梱包せんが爲なり。二十枚入り百五圓。廉價驚くの外なし。手紙を書き終れば日は忽暮れんとす。投函せむとて驛前の郵便局に赴くに、交通局硏修所の敷地にショベルカー四五臺地所を掘返し、建物は蛻の殼なり。建替工事なるべし。夕餉に天然鮎の鹽燒を食す。余は粗忽天皇を僭稱するものなり。その日課を記せば先づ朝は九時ごろ臥牀より起出でゝ朝飯を食ひ、當網站の管理運營をする傍ら雜文を執筆し或は飜譯の原稿をつくるなどする中に日は亭午となるなり。晝餉は食さず、食事は朝晚二度のみなり。一時半ごろ咖啡を淹れ小憩し、菓子を一ツ二ツ食ひて飢ゑを凌ぎ、ふたゝび茟をとる。五時過慈君晚食の支度を始めらるゝを手傳ひ、食後は皿を洗ふが余の務めなり。夜二更を過るころ香流川の岸邊に赴きインターバル速步にてあゆむこと三十分ばかり。然れど今夜は雨もよひの空なれば空しく家にとゞまりぬ。遠雷の響聞ゆ。時折電光中空に閃く。名古屋市港區に記錄的短時間大雨情報といふ警報發令せらる。夜半落雷の音轟然たり。枕上柳田國男遠野物語を再讀す。
晴れてむしあつし。NHK總合演藝圖鑑にナイツの漫才、桂かい枝の受驗生ぶるーすを聽く。ナイツはボケ役塙宣之の安定感拔群なるに加へて、近年は相方土屋伸之の突つ込み鮮やかさを增し行くなり。東京漫才界屈指のコンビとなれり。かい枝の新作落語もまた惡しからず。午下宮城縣沖にて大きなる地震あり。石卷市震度五强、栗原市震度四。FM愛知サンデー・ソングブックにサーフィン&ホットロッド特輯を聽く。Eテレ日本の話藝に三遊亭圓窓の指相撲を聽く。面白からず興味索然たり。指相撲とは聞き慣れぬ演目なれば落語事典を閱するに記載なし。互聯網を檢索して圓窓の創作落語なるを知りぬ。この人は持ち根多の數こそ多かれど余は一度も感銘を受けたることなし。薄暮T氏來訪。釣果の鮎を餽らる。夜に入るも溽暑去らず。夜三更ベランダに出づるに雲氣甚しく、今宵は日課のインターバル速步を行ふべきや否や暫し逡巡す。繼續は力なりと自らを說き伏せて遂に川岸を步す。空いつの間にか雲に覆はれ、街衢の燈火を反映して灰色に廣がりたり。
睡より寤めるや突如陋屋ガタ/\と震動す。震度二くらゐの搖れなり。震源遠州灘。いよ/\東海地震襲來する歟。晴。乾きたる風心地よし。午前三時に錄畫せしBS-TBS落語硏究會に柳亭市馬が船德、三遊亭歌武藏が馬のす、桃月庵白酒が水屋の富を聽く。よき顏付けなり。歌武藏枝豆を食ひながら呟く相撲の噂人をして爆笑せしむ。手紙したゝめる中に日は忽晡ならむとす。夜二更晚涼を得て河畔をあゆむ。蟬の聲繁し。星斗森然たり。
晴れて東南の風强し。兩三日前より Y.Oz Vox の Whim Wind Chime といふ軟件を使ふ。鐵琴の音さながら風鈴の如く涼やかな音色なり。戲曲Dを推敲す。YouTube にニール・ブロムカンプ監督の新作活動寫眞 Elysium 豫告篇を看る。邦題は如何するにや、イリジアムなるや、或はエリュシオンなるや。初更溫泉。夜涼水の如し。三重テレビ淺草お茶の間寄席に三遊亭歌之介の勘定板、古今亭志ん輔の紙入れ、柳家花綠の蜘蛛駕籠を聽く。三更川緣をあゆむ。氣溫下がりしが故にや今夜は蟬の聲を聞かず。蟋蟀の聲夜每に多く秋の近きを知らしむ。
舊六月廿五日。薄く曇りて蒸暑し。曉明雨ふりしとおぼしく路面濡れ、天然の打水により涼味頓に生ず。午下ホームセンターに赴きセキセイ鸚哥の混合餌を購ふ。戲曲添削の筆すゝまざれば姑くにして歇む。突如書齋天井より電氣ドリルの音轟然と響き耳を聾せんばかりなり。何事にやと慈君外に出でゝみるに昇降臺の修繕中なり。夜三更堤上を步す。枕頭岩波ジュニア新書の木村龍治著自然をつかむ7話を再讀す。鳥の視覺に關して興味深き記述あり。人間の眼は二つ竝びたるを以て、視野にとらへるものは立體的に見え、遠近を容易に察知し得るなり。然るに鳥類の眼は顏の側面にあるが故、兩眼を用いて遠近を測ること能はず、片眼にて立體視を行ふ、或は左右の時間差に基づいて遠近を知るなるべしといふ。我が家のセキセイ鸚哥二羽もまた片眼にてものゝ遠近を測りゐるなるべし。動物の能力驚くの外なし。