今日も晴れて暖なること初夏の如し。公演プログラムの藁を繼がむと筆とるも感興來らず。午下カーマホームセンターに赴き小鳥の止り木を買ふ。セキセイ鸚哥のシジミ啄木鳥の如く止り木を突きては留具より外れること頻なるを以てなり。店舖裏の民家に怪しげなる衣裳を着たりし兒童母親の集團門前に集ひて何やらお祭騷ぎなり。徐行して車窗より眺むるに、黑い三角帽子に灰色の鬘をつけ魔女に扮する者あり、また南瓜の面など被る者あり。四十がらみの男は道化師に扮裝せり。暫くして萬聖節の催しなるに心附きたり。總勢二十人ばかり沿道の家を訪ね步きて trick or treat の眞似事をなす。何處かの英語塾なるや。扮裝いかにも本格的なれば宛然亞米利加の地方都市に在るが如し。余はハイツセンターイングッシュスクールに學びし頃を思ひ出しぬ。每年この時節にハロウィーンの行事あり、Halloween の文字を竝べ替へるアナグラム遊びに興じたりき。余は每年三十餘語をつくりて優勝したりき。敬慕してやまざりし粥川先生旅行先の比律賓島にてマラリアに罹り病沒せられしは二三年後なるべし。昭和五十二三年頃の昔とはなれり。二時歸宅して再び筆をとりしが一枚をも書き得ずして已む。
窗よりさし込む日の光、眩しきこと夏の如し。氣溫攝氏二十五度を超ゆ。終日執筆。午後氣晴らしを兼ねて自動車を運轉し圖書舘に赴き本三册借り、アミカに立寄りアイスクリームを買ふ。沿道半袖の男尠からず。女は日傘をさすなり。雀莊の下にいつかリサイクルマート出店せり。三遊亭圓樂歿。享年七十六。思ひがけず立川文都の訃に接せり。十數年前NHKラジオ第一日曜のラジオ夕刊司會を務めし頃每週聽きたりき。享年四十九。
晴。兩三日異例の暖氣なり。日の光の强烈なること夏の日の如し。八時半豐田キャンパス到着。大學祭の前夜祭にて準備の最中なり。バス乘塲の自動販賣機にてカフェオレを購ひベンチに小憩するに、近藤產興のトラック來りて學生十名ばかり集りテントのパイプと白布を下ろし始む。一限二限とも不規則活用動詞を用ゐし會話文を暗誦せしめ、メキシコ死者の日のビデオを鑑賞し、再歸代名詞を解說す。正午過廣塲に出るに、半袖Tシャツ姿の學生あり、また襟卷をまとふ女子學生あり。テント設置作業中の男子暫し手を休め、學祭ぽくなつてきたなあと呟けり。一時前歸家。M氏に電話をかけ用事を辨ず。一昨日の政府發表來事務所の電話は鳴り通しでてんてこ舞ひといふ。原稾を添刪す。晡下猛烈なる空腹感に襲はる。レメロンの副作用なるべし。高校時代に戾りたるが心地す。
晴れて日色晚夏の如し。暖氣例ならず。B印刷N氏校正刷を送り來る。檢閱して送り返し、新たに藁を起す。二時半步みて修理工塲に赴き自働車を受取る。エンジン無事作動せり。小島章司公式網站にアクセス急增。昨夜十一時NHK-FMにて大貫妙子懷かしい未來に大瀧詠一ゲスト出演したりしかど、文化功勞者騷動を以て聽取錄音を忘れぬ。大瀧の言に倣へば緣がなかつたといふことなり。
好く晴れたり。欅の葉日に/\赤く色づきゆくなり。終日執筆。筆大に進む。喜び措く能はざるなり。三時病院に行き診察を受く。役塲と郵便局に立寄り用事を辯じて歸らむとするに、自働車の發動機始動せず。バッテリー上がりと見ゆ。N社長に電話し點檢を乞ふ。幸にして直に來れり。電氣系統の故障なるやも知れず、明朝の修理を依賴す。修理工塲より步みて家に歸る。燈刻文化功勞者の發表あり。小島章司岩谷時子兩氏の名前あり。桂米朝文化勳章。吉報を得て喜び限りなし。されど取材祝福の電話殺到すべきを思へば小島氏の煩累さぞかしと察するに餘りあり。夕餉に赤葡萄酒を傾け祝ふ。
細雨輕寒。午後あぐりん村に徃き次郞柿を買ふ。五個入り一袋百七十圓也。理髮舖に立寄り散髮して歸る。終日執筆。今月に入りてより五十四枚書き得たり。黃昏に至り黑雲次第に天を蔽ふ。枕上敎育テレビをつけるに森繁久彌と杉村春子の對談放送し居たり。思はず最後まで見入りたり。新劇に會話劇の衰頽するを嘆き、三十年前倫敦で觀たりしヴィヴィアン・リーの芝居のやうなものを日本でやりたしと云ふ。森繁紫烟をくゆらせ聽入る。森繁の多面體論もおもしろし。昭和六十年の再放送にて今年ETV50リクエストもう一度みたい敎育テレビといふ解雇特輯の一環なり。案内人いとうせいこう氏。
曇りて靜かなる日なり。階前の欅は赤く色づき町内の柿は熟したり。スタッフ出演者の畧歷作成餘事なし。五時疲れて小一時半ばかり一睡せむと橫になるや忽ち華胥に遊ぶ。一時間泥のやうに眠りたり。枕上DVDで久振りに北野武のHANA-BIを看る。編輯絕妙人をして片時も目を離さしめず。この日N子の誕辰なり。
曇りて暗き日なり。雨來らむとして來らず。朝餉の後あぐりん村に行き次郞柿を購ふ。大振り五個入一袋百五十圓。廉價一驚すべし。町内内科クリニックの入口に學童を連れたる親蝟集し、駐車塲に車入りきれず。新型インフルエンザ豫防藥タミフルの接種始まりたるが故なりと見ゆ。大笹吉雄著新日本現代演劇史第三卷屆く。アーティスト・プロフィールを作成夜半に到る。
晴。暖氣霜降の頃とも思はれず。今月に入りてより大に食慾の增進するを覺ゆ。俄に肥えぬ。滿腹中樞機能せざるが如し。O孃の話によれば新藥レメロン(リフレックス)に食慾增進の副作用ありといふ。大にあり得る話なり。余の主治醫は副作用について語らず、また藥局も何ら說明をなさゞりき。近年の處方藥局は患者に效能副作用を記したる說明書を渡すを習ひとす。然るにレメロンは說明書なし。八月に認可され九月に發賣されたるばかりなれば、副作用未だ不明なるを以ての亊なるべし。余は九年前より五年間パキシルを飮みゐたりしが、この藥に靑年の自殺企圖を誘ひ他人への攻擊性や激昂を生ぜしむる副作用ありとの報道に接したりしは去年なり。O孃も余もさながら實驗材料のモルモットに異ならず。N子に荷物一箱を贈る。原稾執筆少々。枕上久振りにDVDで北野武BROTHERを觀る。編輯見亊と云ふ外なし。
今日もまた好く晴れたり。烟草を文机に置き忘れたり。豐田キャンパス手前のサークルKに立寄り烟草を購ふ。喫烟コーナーにて一服せむと鞄を探るにライターもなし。學生に火を借りる。一限二限とも不規則動詞活用を終へ、hacer と ir を用ゐて會話練習を行ふ。來月は活動寫眞を見たしと思ふなれど、何を選ぶべきにや、ボルベールか海を飛ぶ夢か、後者はガリシア語なれば學生には苦痛なるべし。妙案浮ばず。一時前家に歸るにアマゾンより Windows7 Professional アップグレード版屆きたり。定價二萬五千八百圓のところ一萬二千六百六十六圓にて購ふを得たり。直に ThinkCentre M57 Eco Ultra Small に安裝す。クリーンインストールを選びしが、何故かアップグレードインストールせらる。Vista に較べて動作輕快になれり。
快晴の空拭ふが如し。年譜作成、プログラム原稾執筆、書信二三通したゝむ。夕刻散步。小學校の敷地に向日葵未だ散らず咲きゐたり。周圍の畑には柿の實枝もたわゝに實りたり。一大奇觀なり。堀越千秋氏自主制作映畫のDVDを贈らる。萬能役者吉田乙吉の世界といふ題なり。乙吉氏の萬能ぶり正しく萬能ネギの如し。大眞面目に莫迦をやる精神よし。呵々。
惡夢を見ること連日の如し。曇りて今にも降出さむばかりの空模樣なり。午前中慈君を伴ひカーマホームセンターに行きシクラメン數鉢セキセイ鸚哥の混合餌など購ふ。三時病院に赴き診察を乞ふ。病狀恢復するを得たり。アミカに立寄り業務用アイスクリームを求む。二リットル四百九十八圓也。夕刻突然西北の風吹起りて寒し。北九州O孃メールにて近況を語る。心痛措く能はざるものあり。
けふも好く晴れたり。惡熱去りて氣分よし。連夜睡眠劑を飮まずに眠ることを得る。執筆夜半に到る。
天氣連日限りなく佳し。執筆終日。夕刻一睡して後圖書舘に赴き資料を借りる。夜また微熱ありしが入浴後平熱に復す。摩訶不思議なり。
惡夢に襲はる。アサリ今朝も余の箸に乘りてブロッコリーを食ふ。小島章司オフィシャルサイト更新作業。燈刻微熱あり。水曜と同じ症狀なり。加藤和彦輕井澤のホテルにて縊死せり。ザ・フォーク・クルセダーズ悲しくてやりきれないを聽き追悼す。
天氣好晴。町内金木犀の花香馥郁たり。セキセイ鸚哥アサリ今日も余の箸に乘りサラドの胡瓜を食ふ。晝飯の折りには林檎を囓りたり。初めて果物に興味を示したり。年譜作成餘事なし。高野山奧之院護摩祈禱祈修札送り來る。事務所より公演チラシ屆く。S子より電子郵件あり、甥R新型インフルエンザに罹患せし由を告げらる。先週の廣島硏修旅行が禍したるべし。幸にして體溫は下り來れりといふ。
晴。惡寒去り體溫平生に復す。豐田キャンパス駐車塲に車を停めて降り立つに金木犀馥郁人の面を撲つ。二週間ぶりに授業を行ふ。一人稱不規則變化動詞を練習し、マチュピチュ、セゴビアの水道橋と城のビデオを見る。數ふれば余がセゴビアを訪れしは早や二十二年の昔とはなれり。年譜の稾を起す。夕刻事務所の急なる需により筆を執る。夜某氏突然電話をかけ來り。余の都合も問はず一方的に用件をまくしたてたり。不愉快極りなし。連載の稾を脫すれば夜半三更なり。
曇天。電腦に AutoHotkey を安裝す。かくも便利なる軟件を何故今まで使はざりしにや。夕刻遽にだるさに襲はれ血の氣引き惡寒甚し。體溫三十七度一分、平熱より一度上りぬ。喉鼻に異常なし。風邪なるや、新型インフルエンザなるや。
晴。靜岡縣立大學O君靜岡藝術劇塲Y氏メールにて謝意を告げらる。小島章司公式サイトを更新、『ラ・セレスティーナ ~三人のパブロ~』の告知をなす。三時過ぎ病院に行く。金木犀馥郁たり。先週來の不調を訴ふるに、疲勞囘復の頓服として漢方藥を處方せらる。園藝店に立寄り鉢植用の腐葉土を購ふ。家に歸りて園藝店の品物を袋より出すに、腐葉土にあらず培養土なり。この日自働車のサイドブレーキをかけ忘れぬ。夕餉の折には父上と母上の椀をとりちがへたり。頭腦働かざる證據といふべし。
晴。風絕ゆ。體育の日祝日なり。心氣欝々何事をもなすこと能はず。半日被を擁して臥す。アサリ余の箸に乘りサラドの胡瓜を囓る。塵紙を囓りとり、嘴と舌を以て飽かず之を丸めること是又例の如し。蹲踞して顏を籠に近づけるに、とこ/\屋根を驅け來りて余の鼻先瞼眼鏡の緣など輕くつゝきて遊ぶ。仔細らしく余の眼をぢつと見つめることも度々あり。余はアサリの眼を見つめ返し、どうした、ご飯食べたか、今日は好い天氣だねえなどゝ聲かけるなり。小鳥の心は如何なるものにや。計りがたし。人の心は猶更計りがたし。
旦暮新寒脉々たり。九時過ぎ皿を拭きゐたるに、笛の音聞え、ワッショイ/\と子供らの聲徐々に近づきたり。窗より窺ふに、町内會の兒童七八人、小さき神輿を擔ぎて步みゐたり。人數少く、心細き聲なり。岩作警固祭りの當日なるを知る。サンデー・ソングブック放送八百八十八囘に達す。慈君栗きんとんを作らる。茶巾絞りを手傳ふ。
好晴。緊張昂じて膝震へるほどなり。資料も滿足に讀めず。午下驛に向ふ。書籍辭書手巾塵帋を書齋に置き忘れたり。昨來周章狼狽、殆爲すところを知らず。一時半新幹線ひかり號にて靜岡に出で、各驛停車に乘換へ東靜岡驛下車、三時靜岡藝術劇塲に赴く。藝術局長成島氏に出迎へられ、宮城聰藝術總監督に挨拶す。客席に座るや同列にスペイン大使夫人來る。三時半オマール・ポラス演出ドン・フアンを觀る。五時四十分終演。時を移さず宮城氏、演出家オマール・ポラス氏、同志社大學稲本健二氏登壇しアフタートーク開始、余は通譯を務む。宮城氏は司會に徹して觀客のアンケートを三點選びポーラス氏荅ふ。稲本氏も一點質問せらる。觀客席にはイスパニヤ學會員大勢居り、余緊張のあまり言淀むこと幾囘なるを知らず。いつか豫定時間の四十五分は經ちぬ。東京外國語大學Y君と再會、獨協大學N君に會うは十六年ぶりなり。二階ホワイエにて學會懇親會あり。愛知縣立大學舊同僚H氏F氏、東京スペイン語文學硏究會T氏H君K君N君に久闊を陳ぶ。譯ありて不義理を重ねること早や十一年に及びぬ。T先生も出席せらる。先生余を見て白髮が增えましたねと笑ふ。同志社大學T氏の知遇を得る。上智大學Y氏にカンデラリア招聘委員會解散の顚末を聞く。淸泉女子大學K氏に再會。顏から火が出る思ひして生きた心地せず。八時過O君に厚意を謝して退席。新幹線、地下鐵道、乘合自働車の車中眠り通しで家に歸る。
靑空に薄雲廣がる。晴。西北の强風吹きすさみ新寒肌に沁む。伊勢神宮樹齡八百年の杉の古木根元より倒れ參道をふさぎたりと云ふ。文案淨書。旅程とビザ申請の事につきてスペイン人演奏家舞踊家八名と電子郵件をやりすること半日。夕刻困憊して橫臥小一時間。明日の通譯に備へて資料を閱せむと欲せしが、緊張不安頓に襲ひ來たりて止む。オバマ大統領ノーベル平和賞。ヨウジヤマモト經營破綻。
暴風の音に睡を破らる。時計を見るに曉の五時二十分なり。風雨の窗を撲つ音すさまじ。睡眠劑の藥效あり再び寢に就き、七時半起き出づるに、風雨やみ徃來に傘持つ人の姿なし。暗雲散ぜず。大風の目に入りしと見ゆ。窗外穩やかなれど、ケーブルテレビに町内暴風警報發令中なるを知る。中京大學案午前の授業は臨時休講となれり。午前執筆。午後に至りて空見る/\中に晴れ、暴風再び襲來せり。中京大の網站をみるに、十時前暴風警報解除され午後は授業を行ふと書きてあり。學生職員敎員氣の毒なり。甥Rは早朝の新幹線に乘り無事廣島に着きたり。此度の大風は五十年前の伊勢灣颱風に匹敵すべしと報ぜらりしが、さほどの被害なく拍子拔けしぬ。夕刻スペインの演奏家八名舞踊家五名振附師一名計十四名と電子郵件をやりとりして最終確認を行ふ。枕上ふと思ひつきて高校時代のNHK合唱コンクール全國大會のビデオを觀る。課題曲水のうた、自由曲大阿蘇。合唱に明け暮れし當時の事歷々として思ひ出さる。夜月明なり。
暗雲天を蔽ひて暗きこと冬の如し。午後より陰雨冥々。執筆終日。晡下敎務課より電話あり。暴風警報發令を俟たずして明日午前の授業は休講となれり。燈刻より風雨となる。濕氣甚しく、風呂より上るや忽ち汗流るゝばかりなり。
霧雨ふりつゞきたり。颱風十八號木曜にも上陸せむとの話なり。授業は休講となるべし。午後雨を冒して病院に徃く。診察を乞ふにパニック發作に備へてワイパックスを處方せらる。歸宅すれば早や燈刻なり。ComfortablePC で Vista を高速化せしむ。晚間旅行代理店業務再開、作業夜半に至る。
午後より細雨蕭條。氣候再び寒冷となる。されど身心次第に爽快となりゆくを感ず。高野山の靈驗著し。手紙書かむとして不圖渥美清の活動寫眞を思ひ出し、笑ひを噛殺す。晝食に弘法大師お下りの梨を食す。今週の豫定表を理す。イチロー今季二百二十五安打。過日イチロー記念館のアンケートに荅へて余は二百四十三本と豫想せり。
五時半起出づ。六時本堂にて勤行に參加す。團體客多し。朝食の後小島氏假眠をとられ、余は自室にて執筆少々。九時半若き僧侶の車に乘り三寳院に徃く。應接間にて法會部長飛鷹氏と面會。昨夜聲明の獨唱をしたりし修行僧は、佛道四十有餘年の飛鷹氏も驚嘆するほどの逸材と知る。款話小一時半ほどして拜辭、惠光院前の喫茶店に一茶す。日の光眩しきこと夏の日の如し。表參道より奧の院に入る。昨秋建立せられし司馬遼太郎文學碑あり。參詣の人雜沓せり。休憇處に立寄り、昨夜にひきつゞきて御廟を詣で、燈籠堂にて護摩祈禱の申込をなす。歸途ふたゝび休憇所に入るに、先程の卓子に小島氏眼鏡置き忘れてあり。正面に坐りゐたりし初老の夫婦よかつたですねえと頻りに微笑む。意匠からして若者の持物なるべし、寺に屆出ゞべきや、とりに歸り來たるを待つべきやいかゞせむと思ひわづらひしなりと。これも弘法大師のお陰と謂ふべし。中の橋に至れば一時なり。辻自働車を倩ひて驛に行き、柿の葉鮨を購ひケーブルカーに乘り下山、極樂驛より快速急行に乘る。車中柿の葉壽司とナチュラルハウスの杵つき豆大福を食す。暖かき陽射しと心地好き搖れに睡眠を催す。難波の雜沓甚し。四時新幹線のぞみ號にて新大阪驛を發つ。五時前名古屋驛プラトフホームにて小島氏を見送る。家に歸れば丁度時分時なり。堀越千秋氏の怪しげなる自主製作映畫を觀むとてBS朝日しあわせロハスといふ番組をみる。映畫は一向に始まらず、三十分を過ぎて漸くフルトヴェングラーの弟子といふ題名現る。僅か一分ばかりの短編なり。番組終了のテロップに堀越氏の名前さへ出さず。九時過ぎて思ひがけず宮内廰式部官長原口氏の訃に接す。母上手作りの栗きんとんを食す。
雨晴れて靑空に白雲多し。徒步すれば汗いづるほどの暑さなり。旅裝をとゞのへ晝飯を食ひ、地下鐵道にて名古屋驛に出で、新幹線のぞみ二十九號に乘る。小島氏東京より來られて前列に坐りゐたり。今日は余の見舞を兼ねての高野山探訪となり、謝するに辭なし。新大阪驛下車。構内何故か人尠し。御堂筋線にて難波に出でゝ南海電鐡急行に乘る。橋本驛にて各停に乘換へれば一望豁然たる水田にして稻未だ刈取られず黃金色に輝けり。ところ/″\に柿の實燈火の如し。終點極樂橋に至るまで乘客數ふるばかりなり。ケーブルカー最前列より窗外の眺望を愛づ。客四人。五時五十分高野山驛着。正面東天に仲秋の明月鏡の如し。乘合自働車に乘り一心口下車、蓮華定院に荷を置き、若き僧侶輕自動車にて奧の院まで送らる。日暮れて參道暗く、燈籠のあかりに人影盡きるともなく出でつ隱れつ、杉の古木立竝びて幽邃限りなし。六時半燈籠堂に着くに門扉まだ開かず、先づ御廟に詣づ。軒下に小島家永代供養の燈籠あるを確認す。七時燈籠堂にて萬燈會最終日に參加す。思ひがけず松長有慶座主猊下直々のお出ましなり。法會部長飛鷹氏猊下を先導せらる。參詣客およそ百名。小島氏と余は上手の毛氈に坐す。蓮をかたどりし蠟燭のともしび左右の白き壇に竝びて宛然川面を埋盡す螢の如し。若き僧侶の聲明よし。殊に獨唱の若き僧侶の聲絕妙にて余の頭蓋骨全體に響きたり。希有な才氣といふべし。およそ二時間の燈籠會は夢の如く過ぎぬ。九時燈籠堂を出づれば南天高く杉竝木の上に明月雲に出で隱れして時に靑白く時に黃色く輝けり。僧侶の車にて蓮華定院に歸り、上段の間にて小島氏と遲き夕餉をなす。住職來室、款話いつもの如し。
朝來雨蕭條、午後に至つて篠つくが如し。終日二畫面ファイラあふと xdoc2txt の設定に惡戰苦鬪す。雨やまず、溽暑甚しき夜となれり。
舊八月十三日。曇りて風なし。氣溫高からざれど濕氣多し。通常授業を行ふ。忽ち汗流るゝばかりなり。五時過ぎ遽に惡寒を覺え、忽ち血の氣引き油汗額ににじみ出で、指先震へ、油汗衣を霑す。パニック發作の前兆、所謂豫期不安なり。發作を虞れて深呼吸し、夕餉の支度を手傳ひ食事する中幸にして不安は消えたり。この日小島氏古希の誕辰なり。